もこっち以外の視点で描くわたモテSS   作:umadura

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黒木って子よくわからないし、明日香も全然わからない

 

 

 

 

 ……最近、ちょっと思うところがある。

 

 私はいやらしいんだろうか?

 

 あの黒木さんって女子が、明日香の胸を触るとかなんとかって話があってから、その事がどうしても頭から離れない。

 他に優先する事は沢山あるのに、どうして……

 

 そもそも、女子が女子の胸を触るって行為はどうなの?

 いやらしい範疇に含まれるのか?

 

 ……わからない。

 そんなの考えた事もないし。

 

 だったら、自分だけであれこれ考えてても仕方ないのかも。

 女子の胸を触るのがいやらしい事なのかどうか、他の人の意見を聞いてみないと。

 

 でも、明日香に直接聞くのはちょっと……

 最近のあの子、なんか情緒不安定な感じがするし……

 

 一体どうしちゃったんだろう?

 そりゃ人間だし、いくら明日香でも機嫌の悪い時くらいあるだろうけど……

 

 3年になって、明日香は確実に変わった。

 それが良い事かどうかはわからないけど、以前のあの子とは明らかに何か違う。

 

 あの子の変化に、私もついていかないといけない。

 置いていかれる訳にはいかない。

 

 だから私も、知らないといけない。

 私が固執してしまっている行為の真相を。

 それが社会的にアウトかセーフかも……!

 

 

 

 

 ……なんて意気込んではみたけど。

 

「よーし、今日の授業はここまで。ちゃんと復習しとけよー」

 

 こんなの、友達には聞けない。

 気心知れてるからこその気恥ずかしさというか、単純に変人扱いされて白い目で見られるのが怖いというか……

 

 ……いや、自分に正直になろう。

 私は怖いんだ。

 前、明日香に胸を触らせた聞いた時の、あの子の冷たい目……

 

 あの時、明日香は絶対私に失望してた。

 あんな辱めを受けたのは初めて……!

 いっそ殺して欲しかったくらいだ。

 

 はぁ……はぁ……

 ぐっ……思い出すだけで呼吸が荒れる……

 一刻も早くこのおかしな固執から逃れないと……

 

 赤の他人なら、あの時の明日香と同じ目で見られても、きっとそこまで屈辱じゃない。

 そうなると標的は――――

 

「麗奈、今日どうすっか? 2人でゲーセン行く?」

 

「茉咲いねーのに行ってもつまんねーよ。大人しく帰ろーぜ」

 

 あの麗奈って呼ばれてる女子。

 黒木さんと電車の中でいやらしい会話をしてたから、私よりはそっちの見識は広そう。

 

 彼女とはクラスは同じでも、まともに会話した事ないけど……

 身近にいる人の中では最適の人材だよね。

 話を聞いてみるか。

 

「ちょっといい? 聞きたいことがあるんだけど」

 

「あ? 急になんだよ。あー……お前あの時の」

 

「知り合いか? ってクラスメイトか。つーかあたしともそーじゃん。で、何?」

 

 麗奈……さんと、この友達の人なら、私の知りたい事を教えてくれるかもしれない。

 

 私が知りたいのは――――

 

「女子の胸を触る行為って、いやらしいと思う?」

 

「あ?」

 

 ピンと来てない……!?

 

 聞き方が悪かった?

 でも、他にどう表現していいかわからないし、これ以上わかりやすくも出来ないし……

 

「あー、つまりこういう事か? ほれ」

 

「なっ……」

 

 急に人の胸を触ってくるなんて……!

 な、なんて野蛮な女子……

 

「お前な……あんま知らねー奴の胸触るとかマジないから」

 

「なんでだよ? 実際にやった方がわかりやすいだろ」

 

 ま、まだ心臓がドキドキいってる……

 この麗奈って女子は危険ね。

 接近しないようにしないと。

 

 もう一人の方は意外と常識人っぽいけど、私が今欲してるのは淫らな知識に関する事。

 どっちに聞くのが正解なのか……

 

「要するに、今のがエロい事かどうかってのを聞きたいのか?」

 

「そ、そうだけど……」

 

 エロいって言われると、何かとても卑猥な話をしてるみたいで落ち着かない……

 

「あたしは触るくれーなら別にエロくねーと思うけど……杏奈は? お前揉まれまくってたろ」

 

「うっせーよ。まあ触るだけならそうでもねーかな。触ると揉むじゃえらい違いだ」

 

 そ、そっか……確かに触ると揉むでは全然違う。

 あの時、明日香は確か黒木さんに……

 

『それで休みになるなら触る?』

 

 そうだ、こう言ってた。

 揉むとは言ってない。

 

 なら仮に肉体的接触があったとしても触っただけ。

 触っただけならセーフ!

 

 ……本当にそうなの?

 っていうか私はそれでいいのか?

 

「つーかお前、教室の中でよくそんな話出来んな。意外とビッチなん?」

 

「なっ……ち、違う! 今のはそういうんじゃなくて……」

 

「あー、そういえば前に電車でなんか聞いてたな。黒毛……だっけ? 茉咲のダチの。あいつと偶然会って話してた時にいきなり割り込んで来て」

 

「だっけ? じゃねーよ。一緒にゲーセンで麻雀やった仲なんだから名前くらいちゃんと覚えろよな。黒木だよ黒木。つーか黒毛って何だよ。牛かよ」

 

 黒毛?

 牛?

 

 いや……今は彼女たちの会話は気にしなくて良い。

 もう重要な証言は得られた。

 

「ありがとう。話の邪魔をして悪かったわね」

 

「別にいーよ。大した話してねーしな」

 

 杏奈って子は気遣いが出来る女子ね。

 やっぱりパートナーがいるから、自然とそういう感じになるのよね。

 揉まれまくってた、とか言ってたし……

 

 

 ……は!

 

 くっ、つい想像してしまった……なんてはしたない!

 

 でもこれでスッキリした。

 触られるだけなら、ただのスキンシップ。

 女子同士だし、それくらいの認識が妥当よね。

 

 これでもう、グダグダ悩まずに済みそう――――

 

 

 

 

 ★☆★☆★☆ 数日後 ☆★☆★☆★

 

 

 

 

「――――確か黒木さんが私の胸を触ったかだっけ?」

 

「もう忘れて。くだらないこと聞いたわ」

 

 せっかく本人から話を振ってきたけど……この件はもう私なりに決着を付けてるから、これ以上蒸し返したくはない。

 

 触るだけなんて、ただのおふざけ。

 明日香がそういう冗談言えるようになるなんてビックリだけど、友達としてはそういう変化も受け入れていかないとね。

 

 同じ大学に通う事になるんだし、いつまでも子供のままの明日香ばかり追いかけてても仕方ない。

 大人になっていくこの子の事も、ちゃんと見ていかないと――――

 

「触ってないよ」

 

 ……え?

 

「え!?」

 

 あれ……!?

 

「あっそ……そう……そりゃそうだよね……」

 

 なんで私ガッカリしてるんだろ……!?

 

 黒木さんに触っていて欲しかったの?

 ううん、違う。

 

 私は……冗談で胸を触らせる明日香であって欲しかった……の?

 

 何これ、どんな感情?

 自分でも全然理解出来ない……

 私は明日香にどうあって欲しいんだ?

 

 いや、待って。

 明日香は“触ってない”って言ったんだよね……

 

 それって『触ったんじゃなくて揉んだの』って意味かも……

 

 杏奈さんも『触ると揉むは全然違う』って言ってたし、区別して然るべきもの。

 だとしたら――――

 

「でもそういえば、あの後黒木さんがね……ぷ……」

 

「え!?」

 

 明日香……?

 まさか、本当に……

 

「私の毛触りたいって。それで私……ふふふ。あはは!」

 

 ……。

 

 ?

 

 ?????

 

「ふふふ……私かんち――――」

 

 チャイムの音が聞こえる。

 喋り終わった明日香が教室に戻っていく。

 

 あ……私も戻らないと。

 次の授業なんだったっけ。

 確か――――

 

 

 毛!?

 

 

「それじゃ教科書62ページ」

 

 

 あれ……私いつのまに教室に戻ったんだろう。

 もう授業始まってるし……記憶がすっぽり抜け落ちて……

 

 

「この前の中間考査で出来なかった奴は今の内に復習して理解しておかないと後々大変だぞー」

 

 

 この前の中間考査、何点だったっけ……

 青学は英語大事だから、もっと追い込まないと――――

 

 

 え!?

 毛……!?

 

 

 

 

 ★☆★☆★☆ 数日後 ☆★☆★☆★

 

 

 

 

 毛……黒木……毛……

 

 黒毛?

 

 そうよ。

 あの時は気が動転して『黒木さんが私の毛触りたいって』って聞こえたけど、実際は『黒毛さんが和牛のA3食べたいって』って言ったんだ。

 明日香ったらもう、クラスメイトの名前くらいちゃんと覚えなさいよね、本当に仕方のない子。

 

 

 ……はぁ。

 

 

 いつまでもトイレの個室にこもって現実逃避してても仕方ないわね。

 そろそろ向き合わないと。

 今の明日香と。

 

 明日香があの黒木さん……黒木って子と親しくしているのは間違いない。

 明日香のあんなはしゃぐ姿、今まで見た事ないもの。

 

 そこはもういい。

 友達に仲の良いクラスメイトが出来るのは全然構わない。

 

 でも、そのクラスメイトがおかしな人だったら、話は別。

 全然別。

 

 っていうか……毛を触るって何!?

 そういう事!? そういう事なの!?

 

 それに、まだ『触ったんじゃなくて揉んだ』って疑惑も晴れてない。

 いえ、そもそも『毛を触る』なんて言い出す人なんだから、胸触るだけで満足できるはずない……!

 

 女子同士でも胸を揉むのはいやらしい事だって、杏奈さんや麗奈さんも言ってたし……

 

 ……あれ?

 冷静になって考えてみたら、あの時の会話って……女性同士って事を伝えていなかった気がする。

 麗奈さんが胸を触ってきたから、てっきり伝わってるとばっかり思ってたけど、よくよく考えたら一切確認してなかったし、『揉まれまくる』相手は普通は彼氏……

 

 だとしたら、『触られるのはそうでもなくて、揉まれるのはいやらしい』って男性相手の場合……?

 

 なら女性同士は?

 

 ……また振り出しか。

 新しいサンプルが必要みたいね。

 毛の件もあるし、他に誰か相談出来そうな人を探さないと。

 

 でも、女の子同士のスキンシップを頻繁にしてそうな女子って、私の周りには……

 まあ、いても話せる自信ないけど。

 やっぱり距離の遠い相手の方が話しやすいし、それ以外の選択肢はない。

 

 はぁ……出よ。

 

「吉田さん。もう帰り? 今日はあの二人と一緒?」

 

「ああ」

 

 ん?

 吉田って……確か黒木と一緒に謹慎になってた子か。

 

 なんか見るからに遊んでそうな格好……

 金髪だし、鎖骨を見せびらかすように着崩してるし。

 何度も何度も揉まれて仕上がった牛の乳みたいな胸だし、性に奔放な私生活を送っているのかも……

 

「ゆり、吉田さんと帰りたがってたよ。明日は時間取れない?」

 

「別にいいけど、あたしと帰っても何も面白くないだろ」

 

「そんな事ないよ。ゆりが一番楽しそうにしてるのは、吉田さんと一緒にいる時だから」

 

「お前もだろ。自分だからって抜かしてんじゃねーよ」

 

 ……なんだろう、この会話は。

 

 普通に聞いてる分には、単なる友達同士の会話なんだろうが……明日香と黒木の事を考えている所為で、二人だけの世界に浸っているように思えてならない。

 実際、図書室で一緒に勉強した時の明日香たちのやり取りと、あの二人の会話にはちょっと似たものを感じる。

 まあ、いきなり『おっぱい触りたい』とか言い出す人と一緒にされたくはないだろうけど。

 

「もちろん、黒木さんも」

 

「あいつはな……まあいれば大抵何かやらかすから、飽きねーってのはあるかもな」

 

 黒木?

 ここにも黒木……?

 

 この子たちも黒木の知り合い……

 そう、だから似た空気を感じたのね。

 

「一緒に勉強してる時もそうだった?」 

 

「幾らあいつでも、あんな狭い中でやらかせるのはセクハラくらいしかねーだろ」

 

 女子にセクハラ……!?

 やっぱりあの子、日常的にそんな蛮行を……

 

 でも、だったら話は早い。

 この人達に黒木の悪行を聞いて、それを明日香に――――

 

 ……そうか。

 これが私の本心なんだな。

 

 女子同士のスキンシップだの、胸を触るのがいやらしいかどうかだの、そんなのはどうでもいい。

 要は、明日香を変えてしまったあの黒木を妬ましく思ってたんだ。

 

 でも、今の明日香の変化が好ましいかどうかはわからない。

 事情はよくわからないけど、黒木に良いように言いくるめられて、あんな冗談を言う仲になったのかもしれない。

 明日香は大人っぽい外見の割に、ちょっと世間知らずのお嬢様みたいな所もあるからな……下ネタを言い合うくらいの仲じゃないと友達とは言えない、みたいな言われ方したら、あっさり信じそうな気もする。

 

 それでも、普通なら拒絶しそうなものだけど……明日香、良くも悪くも一つの事に執着するところあるし……

 ネイルにも随分とハマってたっけ。

 今は黒木の事が気になって仕方ないから、あの子の言う事をなんでも鵜呑みにしてるのかも。

 

 もし明日香が正しくない方に向かっているのなら、それは友達として見過ごせない……!

 

「それじゃ、また明日ね」

 

「ああ」

 

 っと……考え事してる間に会話が終わってた。

 今出ていったのは吉田って子とは違う方の生徒か。

 

 もうゴチャゴチャ考えていても仕方がない。

 吉田さんに話を聞いて、全てをハッキリさせる!

 

「ちょっといいかな。聞きたい事があるんだけど」

 

「……あ? 誰だよてめー」

 

 くっ……初対面の相手になんて言い草……!

 だが怒るな……耐えるんだ。

 ここでケンカになったら聞けるものも聞けなくなる。

 

「ごめんなさい、名乗りもせず失礼だったわ。私は3年6組の佐々木風夏。その……あなたの友達と同じクラスの」 

 

「ああ、杏奈か麗奈の知り合いかよ。あいつらなら教室にいるだろ」

 

「い、いや。聞きたいのは彼女たちの所在じゃなくて、別の友達についてなんだけど……」

 

 ここですぐ黒木の名前を出したら、さっきの会話を盗み聞きしていたのがバレる。

 普通の人が相手ならそれでもいいけど、この子明らかにキレやすそうだし、細心の注意を払わないと……

 

「なんだよ? よくわかんねーけど、言いたい事があるならさっさと言え」

 

「ええと、その……私の知り合いが、ある人の胸を触って、それがちょっと納得出来なくて」

 

「……!」

 

 え、真っ赤!?

 もしかして怒ってる?

 

「あ、あなたはそういう人の事をどう思うのか、それを聞こうと思って」

 

「なんでそんな事聞くんだよ……フザけんなよ」

 

 やっぱり怒ってる

 なんで……?

 

 でも、ここまで来て逃げる訳にはいかない。

 最後まで質問を続けないと……

 

「その、気に障ったのなら謝るけど、私は真面目に聞いてるつもりよ。私にはわからなくて……」

 

「な、何がだよ。その……胸……を触った奴の気持ちとか、そういう話か?」

 

「そっちもだけど、それ以上に胸を触らせる人の気持ちが理解出来ないっていうか……つい最近までそこまで親密じゃなかった相手に、簡単に許すなんて……」

 

「し、知るかそんなの! そもそも許すとかどうとか訳わかんねーよ! つーかてめー、ともの知り合いか……?」

 

 友?

 妙に古風な言い方ね……

 まあ、さっきの会話でこの吉田って子が黒木と友達なのは判明してるし、黒木の事を指してるのは間違いないわよね。

 

「ええ。まだ知り合って間もないけど、私の大事な友達の、その……今一番気になってる人っていうか」

 

「あ? 当人じゃなくてダチかよ。だったらお前には関係ねーだろ」

 

「あ、あるの! その友達は本当に大事で……だから、ハッキリしておきたいのよ!」

 

「……ちっ」

 

 鋭い目。

 でも逃げる訳にはいかない。

 

「あなたは、女子の胸を触るような人の事をどう思う……? あなたの友達なのよね?」

 

「ダチっつーか……し、知らねーよ……向こうがどう思ってるとか……聞いた訳じゃねーし……」

 

 また真っ赤!?

 これって一体……この人、黒木とどういう関係……?

 

「兎に角、あれは違うからな! あのクソメガネもなんか勘違いしてたみてーだけど、あたしは触らせてねーし、感じても……」

 

「感じて?」

 

「――――~~~~!」

 

 どういう……事?

 いや、こういう時こそ落ち着かないと。

 早合点する前に、整理しよう。

 

 この吉田って子、自分の友……黒木が女子の胸を触っていることに対して、明らかに過剰に反応してるよね。

 触らせてないし、感じてもいない? 

 いえ、この子の反応は明らかに何かを隠してる。

 

 感じたの?

 黒木に胸を触られて……感じたの!?

 

 

 だとしたら――――明日香は――――

 

 

「……ありがとう、教えてくれて。知りたい事はもうわかったから」

 

「はぁ!? なんなんだよ一体!」

 

 ショック――――いや喪失感。

 

 明日香は感じたくて黒木さんに胸を触らせてたんだ。

 

 もう、私の知ってる明日香はいないのね……

 

「最後にもう一つだけ聞かせて」

 

「あーもう訳わかんねー……なんなんだよ」

 

「胸はもうわかったけど……毛を触られるのも感じるの? っていうか、毛に性感帯ってあるの?」

 

「ねーよ! 知らねーけどねーよ! てめーマジでフザけんなよ!?」

 

「あっやめて! 胸はやめて! 私はそういうのじゃないから! この変態!」

 

「あぁん!? 誰が変態だって!? ざっけんな! こっちは胸ぐら掴もうとしただけだろうが! 変態はてめーだ!」

 

 変……態……?

 私が……?

 

 なんで……こうなった……?

 明日香も……私も……目の前の彼女も……

 

 あの黒木って子と関わったら、みんなこうなるの……?               ┃_╹)

 

 

 

 

 

 

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