俺はめーりんに会いに行く!   作:憩 恋子

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初投稿っ!続けば嬉しいなぁ。


出会い
第1話 濃厚プリンは強かった


「…………は?」

 どこ、ここ……?

 瞬きをした瞬間、静哉は見たこともない場所にいた。

 目の前に広がる草原。周りを見渡してみるも、山と森しかない。

 静哉は状況を整理してみようと、混乱する思考を巡らす。

「俺の名前は、下川静哉。年齢は19歳。童貞。死んだ遠い親戚の遺産で暮らしているニート。よし、全部憶えてる。…………自分で言うのもなんだけど、俺ってつくづくダメな人間だなぁ」

 静哉に優しくしてくれていた遠い親戚のおじさんが病気で亡くなった時、莫大な遺産がそっくりそのまま彼のところに流れてきた。

 その日以来、静哉はなんとか高校を卒業できる程度の成績を稼ぎ、あとは自堕落な生活を送った。

 高校を卒業した現在も、莫大な財産を前に大学に行く気にもなれず、気づけば半ば引きこもりと化していた。

 今日外に出たのは、コンビニで新発売のプリンを買う為だった。

 確かそのプリンの名前は——

「ねー、食べていいー?」

「…………っ!」

 ゾクリ、と。背後から、可愛い声に反して底冷えするような、酷く悍ましいものを感じた。

 振り向くと、そこにあったのは闇だった。

 全てを呑み込むような漆黒の闇。触れればその瞬間にも食い尽くされそうな、そんな雰囲気を放出する闇の球体だ。

 しかし、ここで静哉は思い出した。

 可愛い声が聞こえたではないか、と。

 一か八か、静哉は賭けに出る。

「ちょっと待ってくれ。君に美味しいものをあげるから、だから俺を食べないでくれ」

「…………」

 突き返されたものは、無言だった。

 駄目だ、おしまいだ。そう思い、覚悟を決めて瞼を閉じる。

「それって人間より美味しいのー?」

 彼女? は無言の間に悩んでいただけのようだ。これを好機と捉えた静哉は、右手に持っていたコンビニ袋からある物を取り出した。

「テレテテッテテー!リョーソン限定濃厚プリン!」

 プリンを取り出した時の声は、もちろんダミ声だ。某国民的アニメの青ダヌキとそっくりである。

「見たことないー。どうやって食べるのー?」

 その場に漂う闇は濃厚プリンに興味を示す。

「ええっと、まずフタを剥がして。次にプラスチックのスプーンを取り出してっと」

 そこで、静哉は気づいた。あれ、これどうやって食わせようかと。

 このままあーんをすれば腕ごと持っていかれそうで恐ろしいが、ここまでして与えないのはもっと恐ろしい。

 そこで、ある提案をした。

「君って、もうちょっと人っぽくなれたりしない?」

 静哉は考えた。

 漂う闇ということは、つまり、弛んだ腹に力を入れるように、闇も凝縮して人の形を取れないのか。

 そうすれば、あーんをしても不確定な形を気にして怯える必要がなくなる。

「できるよー」

 少女の声を発する闇は、暢気に肯定した。

 ——瞬間、闇が霧の如く霧散する。

 そこから現れたのは、あどけない表情の少女だった。

 ふんわりとした金髪と綺麗な赤い瞳。左側頭部に、全体が赤一色で、先端部だけが白いリボンを付けている。上半身は長袖の白シャツに黒いベスト。そして、小さな赤いネクタイ。履いているスカートにはフリルがあしらってあり、誰がどう見ても、年齢が一桁から、辛うじて二桁に足をかける程度の少女だ。

「めっちゃ美少女やん……」

 ロリコンじゃなくて良かったと、静哉は人生で初めて心から安堵した。

 もし自分がロリコンだったとして、理性の枷が外れて襲いでもしたら、その瞬間、自分は闇に取り込まれどうなっていたか分かりもしないのだ。

「ねー、どうやって食べるのー?」

「あっ、えーっと、まずこれを持って?」

「こうー?」

「そうそう。次にこの濃厚プリンを反対の手に持って、その透明の棒でこれを掬って口に入れてみて。透明の棒は食べちゃダメだからね」

「わかったー」

 少女はスプーンをグーで握り、濃厚プリンに突き刺して、大きな口へと運んだ。

「んー!美味しいー!」

「だろ? これはあのスイーツの種類に関しては他の追随を許さないリョーソンが一流のプリン職人と作った、低価格最高品質の具現化ともいうべき代物なんだ。俺は元々リョーソンのプリンが大好きなんだけど、この濃厚プリンが出ると聞いた瞬間震え上がったよ。こんなに良いものがこの世に——」

「ねー、無くなっちゃったー」

 小さな手に引かれて少女の手元を見てみると、確かにプリンが無くなっていた。しかも舌で可愛く舐めとったらしく、容器の底周辺以外は綺麗になっている。

「もっとちょうだいー」

 少女はさらなる濃厚プリンを静哉に求めた。

 静哉は悩む。濃厚プリンはあと10個あるが、無くなれば自分は恐らくこの少女に喰われるだろう。それだけは何としても阻止したい。

 そこで、更に静哉は閃いた。

「なぁ、もう一つ濃厚プリンをあげるからさ。代わりに、君に優しくしてくれる人のところまで連れて行ってくれない?」

 この発言の裏には、ある考えがあった。

 この少女は、明らかに人外で、超常の力を有している。そんな彼女に優しくする存在となれば、それは少女よりも格上か、またはこの少女にとって価値のある存在というわけだ。

「いいよー。じゃあ霊夢のところに連れてくねー?」

「おう、霊夢って人がどんな人かは知らないけど、その人のところまで連れて行ってくれたら濃厚プリンを1個あげよう」

「やったー」

 先ほど食べた濃厚プリンを思い出して涎を垂らす少女を尻目に、静哉はこの先に多難が待ち構えているのではないかと頭を抱えていた。

 

 




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