戦姫魔晶シンフォギアD   作:イビルジョーカー

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訳題『悪夢は少女と共に』

新年初投稿です。






第8話 Nightmares with girls 

 

 

「味気ない、感動の再会もあったものだな」

 

 

ぼそりと。Kは面倒だと言わんばかりの溜息と共に、誰にも聞こえない位のか細く小さな声音で呟いた。

 

もっとも、少女と女の子には聞こえていなかったが、グリフォンとシャドウにはしかと耳に届いていたが。

 

 

「ハッ!」

 

 

給水塔から高く跳躍した翼は、一切の怪我などを負わず、Kたちのいる建物の屋上へと舞い降りた。

 

普通の人間ならば、まずできない芸当だが彼女の纏うモノ……対ノイズ兵器として開発されたシンフォギアがあるからこその賜物である。

 

とは言え……彼女の周囲には、シンフォギアやその元となる聖遺物を使わずとも、化け物染みた離れ業をやってのける傑物がいるが。

 

さておき。この状況はKにとって非常に危うく、同時に面倒な事この上ない。

 

 

「質問に答えて。何者? そしてついさっきまでいた筈のノイズ…消し去ったのは、貴方? それとも其処にいる人型の何か?」

 

 

翼はそう言い、自身のアームドギアであるアメノハバキリの切っ先をKへと向け、問いを投げつける。

 

見ただけで分かると思うが……妙な動きをせず、質問だけ答えろと言っているつもりだ。

そして人型の何か、とは。ナイトメアのことを指しているのだろう。

そうとしか言い表せない存在など、今のこの場ではナイトメア以外に考えられない。

事実、翼はKだけでなく、ナイトメアにも警戒を込めた視線を向けているので、間違いないだろう。

 

 

「生憎、身元を特定できる物がないんだ。免許証でも持っていれば良かったか?」

 

 

間違いではないが、なんとも皮肉なジョークで

はある。もっとも、向けられた相手は一切笑ってなどいないが。

 

 

「オイオイ!人様に刃物向けるとかヨ、アイドルとしてドーなんよソレェッ!!」

 

 

そんな折、グリフォンが唐突に非難の声を上げた。まぁ、彼女の事を知っているとは言え、直接の面識が一切ない初対面にも関わらず刃を向けられるなど、グリフォンから見ても物騒としか言い様がないのだろう。

 

 

「ッ!……と、鳥が喋っただとッ?!」

 

 

心底驚いた様子だ。まぁ、普通に考えれば鳥は明確な意味をもって人語を介したりはしないものだ。

インコやカラスなど人の言葉を真似る鳥はいるにはいるが、アレはあくまで、言葉を真似て喋っているだけだ。

意味を理解して喋っているわけではない。にも関わらず、この鳥は明確に人の言葉を口にしてみせたのだ。

 

驚くのも無理はない。

 

 

「イイ驚きっぷりドウモ!! ギャハハッ!」

 

 

まるで悪戯が成功した事に楽しむ子供のような様子で笑うグリフォン。そんな相棒の悪魔に溜息を吐きつつ、Kは自分のすぐ隣にいる女の子と響に視線を向ける。

 

 

「とりあえず、この子達を安全な場所まで頼む。小さい子は親とはぐれてしまったようでな。二課なら謹んで聞き入れてくれるだろ?」

 

 

二課。その言葉に対し、翼は視線を鋭くする。

 

 

「どこまで知っているの?」

 

「重要なのはそこじゃない。二人を無事に保護してくれるのか。その、一点だけだ」

 

 

質問に答えず、諭すようにKは言うが、やはりそれでどうにか納得する筈もなく。両者の間に緊迫した沈黙が流れる。

 

が、それは予期せぬ形で破られた。

 

 

「グッ……ウゥ」

 

 

響が胸を押さえ、その場に蹲り出した。

 

 

「ドォーした嬢ちゃん!つか、なんか光ってんぞオイィッ!」

 

 

グリフォンの言う通り、響はどういう理屈かは全く分からないが、身体全体が光り輝いている。

 

しかもそれは、段々と増していた。

 

そして刹那の間。光は一筋の天を指す柱になる程の光量を放ち、少女の身に何かが纏い始めた。

 

 

「ゥ、ウゥ……ーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!」

 

 

発せられたそれは、まるで世に生を受けた事を喜ばんばかりの歓喜溢れながらも獰猛性を感じさせる獣の如き咆哮。

光が止み、咄嗟に腕で光を遮りつつ目を閉じていたKは、何が起きたのかを確認する為に響の姿を見る。

 

 

「!!ッ……まさか、何故ッ!」

 

 

見た先にあったのは……形こそ違うが、Kは確かに感じていた。それはかつて、一人の少女が纏っていたシンフォギア。

 

かの戦の神がその手にとって神々の戦場で名を轟かせたとされる名槍。

 

 

 

 

 

 

 

 

“ガングニール”。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side K

 

 

 

 

「なんで、お前がそれを…」

 

ようやく目の前の事態を正しく認識したKだが、それでも彼女の中に混乱はある。

 

ガングニール。

 

グングニルとも呼ばれ、北欧神話における神々の王にして軍神、あるいは知恵の探究者としての側面を持つ神格『オーディン』が所持していたとされる投擲槍。

敵を定め投げれば、何処までも敵を追い詰め、最後は必ず敵の心臓へ突き刺さる。千や万と無数に分かれて多くの敵を穿つ等。

 

オーディンを語る上で欠かせない、謂わば象徴と言ってもいいだろう。

 

その名を冠したシンフォギアを、立花響という一般人である筈の少女が身に纏っている。

 

おかしいを通り越して、理解不能と言っていい。

 

「へ?………え? うぇえええええ!!」

 

自身の両腕や腰から足の爪先。後ろは無理だが見える範囲で何度も見て確認した響は、自分がどのような格好になっているのか。

 

翼と同じく肌に密着したインナースーツの上に機械的な装甲パーツを纏い、パーツ部位の色は共通して白だが、インナーは翼の青とは異なり黄色の仕様となっている。

 

どう見ても、それはシンフォギアだったのだ。

 

『翼! たった今、こちらでシンフォギアのアウフヴァッヘン波形を観測した! 間違いない! ガングニールだ!!』

 

「!!ッ そんな……」

 

一目見てソレをガングニールだと認識できたKとは違い、シンフォギアである事は理解できたものの、ソレがガングニールだと判別できなかった翼は自身が所属する組織『特異災害対策機動部』の二課の本部からの通信により、響の纏うシンフォギアの正体を知ることになった。

 

「そんな! だってアレは……奏の」

 

「グリフォン! シャドウ!」

 

明らかな動揺。しかしそれはKにとって好都合な隙だった。

 

すぐにグリフォンとシャドウを呼び、シャドウはKの中へと憑依し、Kはそのまま全力疾走で駆ける。その先はビルの屋上の外側。

 

つまり、飛び降りる気なのだ。

 

Kの意図を即座に察したグリフォンは彼女に追従。何もない宙へと身を放り出すように飛び降り、天に向けて翳した自身の主の片腕。

その手首を両足でしっかりと掴み、そのまま逃亡を図る。

 

「ホントッいきなりだなオイィ!!」

 

「仕方ないだろ。……こっちだって混乱してる」

 

『待て!』という翼の声が聞こえるが、それに従う気はKにはない。

 

逃亡をより確実なものにする為、魔術を発動する呪文を口遊む。

 

「我が身は虚空なれど、在りしものなり」

 

簡単に言えば、相手の視覚から自分達の姿を消す隠遁に優れた魔術でこれにより、追うことは不可能となる。

 

「この辺でイイか? ちょい限界」

 

ある程度まで離れるとグリフォンはそう言い、Kを道路脇に下ろす。すぐさまビルの隙間を潜り路地裏へと入ったKは、二課の人間に捜索される事を懸念を考慮し魔術を解除することなく、建物の壁に背を預け一息…疲労を含んだ空気を吐き出す。

 

「……なんてことだ。だが、何故あの子が」

 

「アー、マァなんだ。シンフォギアってのはヨ、誰でも纏えるモンなのカ?」

 

翼を休める為に地面に降りたグリフォンの言葉に、否定の言葉で返した。

 

「そんなわけあるか。もし誰でも扱えるなら装者なんぞ簡単に量産できる。人材不足に苦労する事自体バカらしい」

 

シンフォギアを扱える者は、そのシンフォギア自体に適合することができる素質の者でなければ、扱う事などできはしない。

現にKの知る限り二課のシンフォギア装者は翼のみ。

誰でもそうホイホイと成れるものなら、風鳴翼一人だけ、というのはおかしな話だ。

 

「……恐らく、あの子もノイズと戦う事になるだろう。あの子は……そういう子だ」

 

「? もしかして、知り合いってヤツ?」

 

しかしあの時の少女の反応を見るに、全く知らない人だという感じだったのは、グリフォンから見て間違いない。

 

聞いてみたものの、Kは頭を左右横に振った。

 

「いいや、違う。私が一方的に知っているだけだ」

 

「ナ〜ルホド、そーいうコトね」

 

合点がいったとばかりに納得する。どういう理由で彼女の事を知ろうと調べたのか。

それについて、問うことはなく、さして重要なことじゃないと判断したグリフォンはとりあえず、今後の方針を聞くことにした。

 

「で、どーすんだヨ。何つったっけ? ナントカの組織の連中がお前のこと探してンだろ」

 

「特異災害機動部の二課だ。普通に二課と呼べばいい」

 

「ハイハイ! そんで、なんかプランあんの?」

 

「予想外な事が起きだが、予定通り土蜘蛛企業を襲撃する」

 

Kは壁から離れ、手に持ったバールをブラブラとさせながら言う。

 

どの道、その一点に変更は無いようだ。

 

「けど今日は遅い。身を休めるぞ」

 

しかし今すぐにと言う訳ではないらしい。

まぁ、今夜は本当に色々有り過ぎてさしものKも疲れたのだろう。

何処か陰鬱とした雰囲気を漂わせながらKは、寝床を求めて二匹の使い魔と共にその場を後にする。

 

とは言え、この時、Kは気付いていなかった。

 

こっそりと背中の…服の裏へと潜り込んだ悪夢を……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 立花響

 

 

 

 

結局。謎の少女と喋る鳥、黒豹らしき獣ばかりかいつの間にか姿を消した人型の何か。

 

其れ等の逃亡を許してしまった事実は翼にとって心境的に痛いモノで、恥すべきと断じている程だ。

 

できれば羞恥に染まった心を座禅などで鎮めたかったのだが、ごく普通の一般人である筈の立花響がガングニールを纏ってしまう、想定外どころか、誰も思いつきもしない緊急事態が発生したことで余韻に浸る暇は生憎となく。

 

響をやや強引ながら連行。

 

行き先は、特異災害対策機動部二課。

 

夢のような非現実的な出来事の数々による混乱とそこから生じる不安は、当然ある。

しかし実際に来てれば……なんとそこは自身が通うリディアン音楽院の

地下深くに在り、来て早々想像を遥かに超える好意的な歓迎ムードで対応されるという始末。

 

そして、現在。

 

強引ながらもそう時間を取らない軽い検査を終え、その結果が告げられた。

 

「それじゃあ、結果はっぴょっう〜!」

 

陽気にそう宣言するのは、二課の科学者にして、シンフォギアの生みの親である櫻井了子。

その奇抜な発言と陽気さから変人扱いされる事も多々あるが、しかし科学者としての手腕は天才と称して他ない程もの。

現に彼女がいなければシンフォギアという人類の矛は誕生すらしなかった。

 

それを考えれば彼女の天才ぶりが少しは分かるだろう。

 

ともあれ、その結果内容は驚きのは一言に尽きた。

 

 

「どうやらこの子の胸に聖遺物……ガングニールと思わしき欠片があるの。響ちゃん。身に覚えはないかしら?」

 

 

検査室の広めのスペースには、櫻井了子に立花響。そして風鳴翼とその叔父にして二課の司令官である筋骨隆々とした体格の赤いシャツを身に纏った男性、風鳴弦十郎とその右腕であり、表向きは歌手として活動している翼のマネージャーも請け負っている緒川慎次。

 

オペレーターの男性、藤尭朔也。

 

同じくオペレーターの女性、友里あおい。

 

以上計7人が集っている。

 

そして電子モニターに映し出された高性能な機器によるスキャン画像。それは響の身体を撮ったものに違いないが、その胸の中心にある心臓には無機質な物体……ガングニールの欠片が埋め込まれるようにして存在していた。

 

 

「確か2年前の、ツヴァイウイングのライブの時に……奏さんが私を助けてくれた時に出来た傷です」

 

「……そうか。君はあの日のライブに」

 

 

弦十郎はあの日……翼のパートナーであった天羽奏がその命を落としたツヴァイウイングのライブの日に彼女が居たことを知り、合点がいった

とばかりに納得する。

 

 

「つまり奏が君を助ける際、誤って砕けたガングニールの欠片が君の胸に刺さってしまい、それが今もある……という事か」

 

「あの、そう言えばまだこの力……翼さんや私が着てた鎧っぽいモノのこと、教えてもらってないんですけど……」

 

 

やや歯切れ悪く言うが確かに言っていることは間違いなく正しい。

 

それを承知している弦十郎は一言『すまない』と謝罪する。

 

 

「では説明しよう」

 

 

シンフォギアについて大体教わり、小難しい用語や理論云々はさておき

、とりあえず歌うことで生じるフォニックゲインと呼ばれるエネルギーを用いて、通常の兵器や武装が通用しないノイズに有効的な攻撃を与える特殊なシステム。

 

と、言う風に響は自分の分かり易い範囲で理解した。

 

 

「あの、シンフォギア、については大体分かったんですけど……」

 

 

ふと、ここで響は気になったある事を思い出した。

 

 

「ん? 何か質問か? 是非聞いてくれ」

 

 

弦十郎は特に苦言を呈すことなく、質問する事を承諾したのだが、その言葉は彼にとってあまりに荒唐無稽で突飛としか言い様のないものだった。

 

「悪魔……って、本当にいるんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side K

 

 

 

 

「ハァァ……次から次へと面倒な」

 

 

今宵は運が悪過ぎる。

 

そう思わずにはいられない苦労気味な心境など露知らず、眼前に現れた無神経な悪魔どもにKは、隠せない苛立ちを込めた溜息と共に鋭く睨みを利かせる。

 

悪魔は……名を『ブレイド』

 

蜥蜴が人型を取り、その身に頭を守るヘルムと攻撃を弾く盾を着けた姿をしているその悪魔はグリフォンやシャドウにとって懐かしい顔ぶれで

、特にグリフォンはこの悪魔達を軍勢として使役していた過去がある。

 

ブレイドは魔帝ムンドゥスがナイトメアを創造する前、主である人界の爬虫類をベースに造り上げた悪魔だ。その誕生経緯は人界への尖兵として、である。

 

かの名高い魔界の剣豪、魔剣士スパーダが己が主のムンドゥスに反旗を翻す前には既に数え切れない大量の悪魔の軍勢を人間界へと送り込み、多くの国々を攻め落とした。

 

その中でも活躍したのがブレイドだ。

 

ナイトメアやグリフォンのような上位の強さを持っている訳ではない。が、人間界の爬虫類をベースにしたことでその強大な力故に活動限界の時間に縛られる上級悪魔の手と足となり、素早さと統率された無駄のない動きで、人間の兵士達を屍へと変えて来た。

 

このブレイドも、恐らくスピードとコンビネーションが武器であろうが、相手が悪い。

 

 

「いいだろう。そんなに相手して欲しいなら受けてやる。支払いは自分達の命で、だがな!」

 

「イヤー、懐かしい連中相手すんのは心が痛むナァァオイ!」

 

 

グリフォンはそう言うが当然微塵も思っていない。雷球を弾丸の如く発射しブレイドたちへと迫るが、先程言ったようにブレイドは『スピード

』……素早い俊敏な動きが売りだ。

 

大したことないとばかりに容易く回避した尖兵たちは、グリフォンめがけその鋭利な爪を振るう……

 

『ギャァッ!』

 

ことはできなかった。グリフォンに迫って来た4体のブレイドたちが背後から円錐状の棘を繰り出したシャドウによって刺し貫かれ、そのまま息絶えたからだ。

 

 

「ハッハッハッハッ! 後ろに御注意ってコトだァ!」

 

 

グリフォンが軽快に吐き捨てる。

 

生き残っているブレイドは残り26匹。やや多いが、それだけだ。

 

 

「さっさと潰すぞ」

 

 

そう言ってKはバールを飛ばす。

 

バールは魔力を帯び赤色に輝いて、ブレイド1匹の胸に突き刺ささるとそのまま心臓を掻っ攫う形で貫き、続いて高速回転。

 

心臓を串刺しにしたまま、他のブレイドを10匹。

 

なめらかな曲線を描くように様々な角度から首めがけぶち切り、掻っ攫っていく。

 

頭はヘルムで守られているがそれ以外は何も纏っていない裸も同然。

 

それでも体表を覆う深緑色の鱗がその役割を代替しているが、今この時に至っては相手が悪過ぎたとしか言いようがない。

 

 

「汚い花火だな」

 

 

ブーメランのように戻って来たバールを掴み取り、頭のない断面から鮮血を噴水の如く飛び散らせたブレイド達の様を流し目程度に見ては、そんな心許ない感想をKは零す。

 

刺さっているブレイドの心臓を取って一目見てはそう吐き捨て、そのままその辺に放り投げた。

 

どの道、命を消失させた悪魔は人界にいる影響で存在性が薄れて数分程度で消え失せる。

 

だからゴミのように心臓を放り投げて捨てたとしても、さして問題にはならない。

 

まぁ、絵面的には完全にアウトだが。

 

 

「これで……シマイだァァ!!」

 

 

雷の柱を連続で繰り出す事で遠くの敵に迫り、焦げた煤へと果てさせる『ブロッケイド』で6体を仕留め、それを上手く躱した10匹の内5体は自身の周囲にドーム状の雷撃『ラウンドロビン』でダメージを与え、吹っ飛ばす。

 

吹っ飛ばされた先にはシャドウが待ち構えており、その身体を巨大な禍々しい大口へと変化させ、そこから触手を何本か放つ。

 

触手は無慈悲にブレイドたちの身体を貫き、その身動きを確実に束縛。そしてそのまま5匹を口まで瞬時に持っていき……一気に喰らうように

挟み込んだ。

 

 

バグヴゥゥッ! グギッ……バギィッ……グチュッ!

 

 

後は簡単だ。血肉を引き裂き抉り、骨を砕き、粉々にしながら咀嚼していく。

 

 

「ウヘェッ! んなモン喰ってウマいのかよ、猫チャン」

 

 

ブレイドを始末し終え、シャドウの食事ぶりに明からさまな嫌悪感を出してグリフォンが言う。

シャドウは元より話せないのもあるが、腹が立ったと言うニュアンスの鳴き声や行動を返さないので、スルーしているらしい。

 

ほんの数秒程度で食事を終えたシャドウは元の黒豹形態になり、甘えるようにKの足に擦り寄って来た。

 

それに応えるようにKが少し腰を落とし手で頭や背中、横腹を撫でるとゴロゴロと猫特有の甘える時の撫で声を出して来る。

 

これだけ見ればシャドウが悪魔などとは全くイメージできないだろう。しかしその気になれば数百人の軍人部隊を難なく始末できてしまう事は変わらない。

 

どうあろうとも、シャドウはやはり悪魔でしかないのだ。

 

 

「しかし妙だな」

 

 

シャドウの頭を撫でながら、ふと。Kが独り言のように言葉を零す。

 

 

「ン? ナニがだよ」

 

「明らかに悪魔の出現が多すぎる。前まではこんな事なかったのに」

 

 

本来この世界の悪魔は依代が無ければ活動できず、上位の悪魔に至ってはその保有する力が自身の存在性を歪ませ、相当な負荷となってしまう為にもって1時間しか人界に顕現する事ができない。

 

しかし、依代があれば……話は別だ。

 

まぁそれでも長時間人界で活動することはできないが、どうやらこの世界のブレイドたちは人界の爬虫類を依代にしているようで、グリフォンたちの世界のように強大な悪魔によって創造

されてはいない。

 

とにかく何が言いたいのかというと、この世界の悪魔は条件的理由もあるが、積極的に人間界には姿を現さないのだ。

 

人間界での活動時間をオーバーすれば、その先に待つのは死。人間で言えば、毒ガスや放射能といった人体に致命的なダメージを与えるモノが充満する場所に長居するようなものだ。

 

しかし最近、そんな事などお構いなしとばかりに悪魔の出現率が高くなっている。

 

そもそもブレイドが30匹もの数で現れること自体おかしい。

 

大抵は5〜6匹で現れるものだ。

 

 

「ヘェ〜。この世界の悪魔は色々面倒な縛りがあンだな。まぁ〜それに関しちゃ俺たちの世界も同じようなモンか」

 

 

ざっと程度にKから説明を受けたグリフォンは、そんな感想を零す。

 

 

「とりあえず、ここで寝るとしよう。一応結界は張ってあるから人間にバレはしないだろう……が、その前に」

 

 

薄い黒コートを突如勢いよく脱ぎ捨てるという、妙な行動に出るK。

最初こそ意味を理解できなかったグリフォンだったが、すぐに気付くことになる。

 

コートから何かが滲み出るように出て来たのだ。それは黒く液体のようなもので、妖しく紫色に輝く目のような丸い球体状の物体もある。

 

その正体に気付いたのは、他ならぬグリフォンにシャドウだった。

 

 

「アレェ?! メアちゃんじゃネェか!!」

 

「グォォ……」

 

 

そう。それは紛れもなく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナイトメアだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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