戦姫魔晶シンフォギアD   作:イビルジョーカー

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訳題『アラクネア』


遅くなってすみません(~_~;)

どこもかしこもコロナのアレで本当に大変です……。





第11話 Arachnea

 

 

 

 

 

透魔剣インビス。

 

インビスという魔界ではそれなりに名を馳せた強力な悪魔は数々の激戦の果てに命尽き、魂が残された魔力を利用する形で魔具となった。

 

この剣の特徴にしてアドバンテージは手にした者の存在そのものを曖昧なものへと変え、様々な攻撃を透過させるという特質にある。

 

しかも、目視や気配も察知できない為、まさに最強の暗殺武器だろう。

 

諜報を行う者にとっては喉から手が出る程に欲しい代物であることには違いない。が、この剣はかつての悪魔の意思がそのままある為、持ち主を選ぶ。

 

力無き者の前に姿形を見せず、力ある素質者にのみ魔力を道標にして、自らの下へと誘導させる。

 

そんな主人を選ぶ剣が初めて価値を見出したのがKだった。

 

アラクネアは気に入った物を人界のガラクタから魔界産の物まで収集するという変わった癖の持ち主で、アラクネアは本当に偶々インビスを見つけてしまい、思わぬ拾い物だとばかりに取ったかと思えば、こんな場所にインビスを突き立てた。

 

曰く『大して品がない所だからアンティークには丁度いい』との事だった。

 

ふざけるな。

 

かつては魔界にその名を馳せし悪魔たる我が身をアンティーク呼ばわり。怒りを感じない筈がないのだが、しかし今となっては担い手がいなければ魔力が劣化し、その刀身も錆びるしかない魔具の身。

 

どうこうしたくとも、どうにもできない。

 

そんなもどかしさを抱えたまま時が過ぎ去っていく中、自分の担い手として相応しい存在が現れた。

 

他ならぬKだ。

 

わざわざアラクネアの本拠地に乗り込んで来るのだから、おそらくその目的はアラクネアの討伐であろうと踏んだインビスは残り少ない僅かな魔力を利用し、己の下へと引き寄せた。

 

そしてそれは、非常に正解だったとインビスは激しく歓喜する。

 

 

『オオオオオオオオオッッ!! 素晴らしい! ウッスカとした我が魔力が麗しく、エキセントにエヴォリュートするとは!! なんと、なんと良きことかァァッッ!!!!』

 

 

担い手となったKの魔力供給を受けることで錆び付いた刀身は黄金のソレへと変化し、これがついさっきまで錆の鉄屑だったのか、と思わずにはいられない。

 

それほどまでにインビスはその箇所一つ一つが黄金の光を放っていた。

 

 

「目立たなくする能力の割に随分と派手だな」

 

 

能力と反するインビスの真の姿をマジマジと見据えては、呆れたと言わんばかりに溜息を零す。まぁ、その派手さを能力で完璧に隠してしまうのだから、見た目の有無について議論するのは合理的ではないだろう。

 

そんな考えを内心巡らせていたKの耳朶に、かの魔剣の喧しい声が突き刺さる。忌々しいと苛立つ程に。

 

 

『感謝するゥゥゥッッ!! 其方こそ、まさにスターナイツィート! 故に! 我が剣は御身と共にぃぃぃぃ在らぁぁぁぁぁん!!』

 

 

ブチィ……

 

 

「あ、コレヤバそう……」

 

 

一際喧しく吠えるインビスにとうとう、Kの中でキレてはいけないモノがキレてしまい、本人のみならずグリフォンも感じ取った。

 

 

『どうした我が主よ! さぁ、我が身を携えてあの忌まわしき醜悪な汚物を……』

 

「ふぅぅんッッ!!」

 

 

しかしインビスはそんな事など露知らず。尚も捲し立てる舌を止めない魔剣を、Kは地面へとふんだんに力を込めて突き刺した。

 

そして。

 

一発蹴りを見舞ってやった。

 

 

『ガブフゥッ!!』

 

 

予期せぬ不意打ちに驚く暇もなくインビスは吹き出すような苦悶の声を漏らし、軽く吹っ飛ぶ。

 

突き刺すように立てたと言っても浅いのだ。

 

軽くても蹴りを入れられれば容易く飛んでしまうのは当然。そしてKは足早に吹っ飛んだインビスに近づくと柄を掴み、グイッと顔に近づけた。

 

 

「おい」

 

『と、突然なんなのだ。いきなり蹴りを入れられる覚えは…』

 

「黙れ。口を閉じろ」

 

 

有無を言わせない威圧感、と言うべきだろうか。それをジワジワと背後から滲ませているKは殺意を乗せた視線でインビスを睨む。

 

 

「使ってはやる。だがお前のその鬱陶しい口調は閉じてろ。普通に喋れ

。ただでさえこっちにはやたら喧しいアホ鳥が鳴いてるのに、今度は…それと同等、しかも訳の分からない言葉をやたら吐き出す剣と来た。聞き障りもいいところなんだよ、こっちはァァッッ!?」

 

 

最初こそ苛立ちを滲ませる程度の声音だったが段々とソレが増してしまったのか。最後の方でとうとう我慢の限界とばかりに吼えるKの形相は、まさに悪魔。

眉間に皺を寄せ、釣り上がった両目と上下噛み合わった状態で歯を剥き出しにしているのだ。

おまけに視線に殺気をふんだんに込めているのだ。素人でも本能的に理解するだろう。名状し難い怒りを抱えている、と言うことを。

 

 

「分かったか? 分かったんだよな?」

 

『………』

 

 

かなりの圧に何も言えない……が、それでも無言を貫くのは、あくまで拒否の意思を示す為だ。

 

インビスは自分の話し方に対し、何もおかしい所などないと思っている。

 

であればこそKの主張は不服に思わない筈なく、しかし怒りのプレッシャーに圧されているのでこれ以上口答えして煽る訳にもいかず。

 

だからこそ、こうして無言という名の反論で答えているのだ。

 

 

「そうか。別に不服なら結構。こんな場所にお前の眼鏡に適う誰かがまた訪れるといいな」

 

 

遠回しに『お前をここに捨て置く』と宣言されたようなものだ。

 

それをすぐに理解したインビスは、心底堪らないと声を張り上げる。

 

 

『わ、わわ分かった! だから連れてってくれ!! 我が悪かったぁ〜ッ!!』

 

 

やはりこんな場所は嫌なのであろう。

 

まぁ、好き好んでいたがるような奴が仮にいたとしても、その神経をKは愚か、彼女の従者達も理解できないだろう。

 

ともあれ言賃は取ったのだ。

 

再び魔剣の柄を握ったKは顔の近くまで持って来ると、不敵な笑みを浮かべた。

 

 

「それでいい。せいぜい役に立て」

 

『ぬぅぅ……』

 

 

悔しいのか苦虫でも噛み潰したような声を漏らすインビスだが、とうのKは知ったことか。と魔剣を自身の背へと預ける。

 

断っておくがKは鞘と、その鞘を支える留め具の類は一切ない。しかし不思議と背中にピタッと張り付いている。普通という基準にある一般人が見れば相当謎である。

 

しかしグリフォンとシャドウは特に気にせず、別段言及することもなかった。

 

かつて、かの魔の島で自分と何度か相対した魔剣士の息子も同じように剣を背にし、その父である魔剣士スパーダも自らの名を冠した魔剣を筆頭に多くの魔具を背中に装備させている光景を彼等は見てきたからだ。

 

無論、Kのように鞘も留め具もない。

 

しかしどういう訳か。まるで剣が鞘に収まる時のような、金属同士が当たることで発生するカチンという、独特の音がするのだ。

 

単純に魔力を利用しているのなら、留め具も何もない状態の剣が背に付くという現象に対し説明はできるのだが、そうだとしても何故金属音が鳴るのか?

 

そもそも感覚さえ掴めれば魔具をエネルギー状に変換して体内に収納することもできるのに、何故それをしないのか?

 

疑問は尽きないが少なくとも今この場においては一切、何の関係もないだろう。

 

何故なら其れ等はスパーダ一族での話だ。Kは関係ない。たまたま同じような事をしたと言うだけの話、特に意味はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インビスを手に入れた空間とはまた別の広大な空間へと出たKたちを待っていたのは、耐え難い生き物の血肉が腐ったような悪臭と、その臭いの元と思わしきミトリウスの山。

 

やはり、多過ぎる。

 

この地下空間での最初の場所でも感じた疑念が、Kの中で強くなった。

 

ミトリウスは悪魔の死骸に人間の負の因子……正確に言うと怨念や憎悪

、恐怖といった類いの残留思念が結びつくことで生じる魔界の物質だ。

 

考えられる原因としては、かなりの数の人間をここで殺しているのだろう。

 

そしてそれは、自分よりも下に位置する悪魔に対しても同じように行われていたのだろう。

 

悪魔は同族であっても関係ない。人が人を殺すように悪魔にとって同族殺しなぞ日常茶飯。

 

数多くの悪魔と人を醜劣な遊戯の為に無残に殺された人と魔の双方の要素が生み出した産物と考えれば、ミトリウスが異常に多いのにも納得が行く。

 

悪臭は堪えるが、しかしそれを理由に先に進まない道理はない。一歩一歩とゆっくり、しかし油断を絶やさず周囲を警戒しながらKとその側を飛ぶグリフォンは続く。

 

そして。濃厚で、大きな、かなり重圧のある魔力をKとグリフォンは察知した。

 

 

「ナ〜ンカ、ヤバくね?」

 

「……少なくとも威勢だけ、ということは無いだろうな」

 

 

グリフォンの魔力を察知する為のセンサーから生じる一つの勘が、危険だと警鐘を鳴らし、その点においてはKも同じだ。

 

今までこの感覚が間違った事はない。

 

だとすれば、これから自分達が相手取る悪魔は、やはり偽りない強さを秘めた悪魔なのだろう。

 

 

『アアァァ……イィィ……クフゥゥゥッ!!』

 

 

ふと、声が聞こえる。濁音が混じったような女の声だ。ある程度進んでいくと突き当たりに差し掛かり、そこから右へと続く道らしき道を進んでいくと拓けた場所に辿り着いた。

 

そこに……悪魔はいた。

 

一言で表すなら"肉塊"と呼ぶに相応しい。

 

ミトリウスに似た薄桃色の肉質に所々青い血管が浮き出ており、計8本

。まるで人の指をか細くしたような異形の脚が生えていた。

 

これだけでも十分グロテスクなものたが、肉塊には脚だけでなく、頭も生えていた。

 

数えれば8個もあり、一つずつ顔の形状が異なっているばかりか、瞳や白目の部位が緑や黒、黄色といった各々に色違いが見られる。

 

毛髪はなく、共通しているのは本体の色に比べて頭の方は全て白い肌で統一されているといった具合だ。

 

 

『アア! イイネェ! どんどん出て来るゥゥゥ!!』

 

 

汚らしい喘ぎ声を上げ、よがり狂う悪魔…アラクネアは一本の生き物の腸に似た謎の管と繋がっており、一定で3秒ほどの間隔でドクン、ドクンと。

 

脈打つ様子は心臓が体内全体に血液を送り出すソレに似ているが、仮にそうだったとして、何を送り出しているのか。

 

考えれる線として濃厚なのは、やはり生産する食品や薬品、飲料などに混入させる人間の魂の味を良質に引き立てる例の物資そのものだろう。

 

 

「ウワッ、キッモ。ニーズヘッグといい勝負だな」

 

『忌まわしい。我をあんな場所に置き去りにした悪魔め』

 

 

恍惚とした表情で、しかもグロテスクな醜悪さ満載の姿を上乗せした気色の悪さにグリフォンは素直な感想を零し、インビスは怒り心頭といった感じに吐き捨てる。

 

 

「……せっかくだ。お前の力を試させてもらうぞインビス」

 

『うむ! 存分に使ってくれ!』

 

 

どうしても意趣返しをしてやりたい。

 

あんな場所に大した理由もなく捨て置いたに等しい行為をやられて、それをチャラにできる程インビスは寛容ではない。

 

躊躇いなくKの要望に承諾したインビスは秘めたる魔力を開放。その力がKの身体を隅々まで巡り、彼女の存在性を酷薄させる。

 

 

『これで気付かれまい。だが持って3分。時間はあまり無いぞ』

 

「十分過ぎるな」

 

 

たった3分。正確には持って、が付くので実際はそれ以上に短いかもしれない。が、そんな事はKにとって些事に過ぎない。

 

目的は、インビスの能力を利用した奇襲による

管の切断。

 

これが成功すれば確実に隙となり、一撃による必殺……とはいかない可能性が高いが、それで

も何かしらダメージを与えることができる。

 

それが大きければ、尚良しだ。

 

「グリフォン。あの管を切った時が合図だ。雷のデカいヤツを喰らわせてやれ。それと同時に

シャドウも繰り出す」

 

「了解! 任せなってKチャン」

 

簡単な指示を出し、了承を確認したKは背負っていたインビスを手にかけ、握り締め同時に両脚に魔力を集中させる。

 

アラクネア本体から天井へと伸びるあの管を切るのであれば、一回で決めるが好ましい。

 

そこにシャドウとグリフォンの強力な攻撃を入り込ませることができれば、最初の一手を打てる。

 

 

「ハッ」

 

 

軽く息を吐く。その瞬間、両脚に集中させていた魔力を爆発的に開放させ、常人では再現することは勿論、やろうとするだけ無駄だと知らしめる程の桁外れな跳躍力が一時的に生じる。

 

Kは、一気に跳んだ。常人ならざる異常な跳躍とインビスの能力の効果で容易く管へと接近できた。

 

そして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

ザシュッ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一本に伸びる管を、二本へと分断せしめた。

 

 

 

 

 

 







次回は本格的なボス戦です。

名前で分かる方は分かると思いますが、ボス悪魔の名前の由来はギリシャ神話に登場する神の怒りから蜘蛛へと変えられた女性の名前からで、
まぁ、簡単にいってしまうと蜘蛛モチーフです。

初代デビルメイクライの最初のボスが蜘蛛(正確にはサソリ要素もある
)のファントムだったので、それのオマージュ的意味でやってみました


次回はなるべく早く更新したいと思います。






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