戦姫魔晶シンフォギアD   作:イビルジョーカー

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ギリギリ間に合った………できれば4月に出したかったんですが、ダリアマに集中してました。

感想があれば、作者の励みになります! 





第12話 Arachnea part2

side アラクネア

 

 

 

 

 

アラクネアが気づいた時には既に遅かった。

 

管は薄黄色の液体を漏らし、完全に断たれてしまった。これでは魂を良質化させる物質を上の施設内部にあるミキシングルームへ送る事ができない。

 

 

"何処のアバズレだぁぁッ?!"

 

 

してやられたアラクネアは怒りに顔の一つを歪ませるが、それよりも先に特大級にして、最大出力を惜しみなく出したグリフォンの雷が落ち、脚の先まで焼き焦がしていく。

 

 

「ギィィィィィィヤァァァァァァァァァーーーーーーーーーーー!!!

!!!!」

 

「ハッハーッ! どうヨ! 軽くウェルダンになれる気分だろ?」

 

 

グリフォンは今までにない位に最大威力の雷撃をアラクネアに喰らわせ、余裕な台詞でそう吐き捨てては、彼女を挑発する。

 

当然、舐めた態度を取られて怒りが湧かない筈もない。自尊心と己が力への誇りが強い上位……アバルトの位に位置する悪魔であるアラクネアにとって舐められるという行為は、かなり屈辱的であり、卑しく、下劣なもの。

 

何がなんでもツケを払わせるに値する罪なのだ。

 

しかし雷撃を浴びて直後。更なる追撃が彼女を襲う。

 

回転する刃と化したシャドウがKの身体から解き放たれ、アラクネアの頭の一つ……片方の目が肉に覆われたモノに喰らいつく!

 

 

「ギィィィィィィッッッッ!!!!!」

 

 

言葉として意味を成さない叫び声を上げるアラクネアだがシャドウは決して威力を弱らせず、むしろより一層力を込めて刃を深く、深く深く突き立てていく。

 

その結果、頭を二つにかち割ることに成功。

 

再生される様子はなく、鮮血を滝のように吹き出しながら崩れ落ちていき、泥状の何かとなってそのまま消滅した。

 

 

「やってくれたなァァ。クソ野郎が」

 

 

怒りを滲ませるその声は、地獄の底からでも来てるんじゃないか?と錯覚させるだけの恐ろしさを秘めており、一般人から腰が引けて動けなくってしまうことだろう。

 

だがグリフォンとシャドウ、Kにとっては恐るるに値しない。

 

上位に君臨する悪魔としての実力に警戒し、恐れを成したとしても、たかが威圧感や言葉程度、そんなものでビビるほど彼女らの心はヤワではない。

 

 

「チッ、そんなに喰らってネーな」

 

「仮にも上位の悪魔だからな。不意打ちの一つ程度で取れるとは思ってないさ」

 

 

バサバサと羽ばたきながら、与えたダメージが言うほどのものではないと。目で見て悟ったグリフォンは悔しそうに舌打ちを鳴らす。

 

が、Kは微塵も気にする様子はなく当然といった様子だ。

 

どうやらこの程度で一発決められるなどと夢想してはおらず、むしろ結果は予測通りなので別段問題はない。

 

問題なのは、次の一手をどう攻めるか、だ。

 

 

「あァァ、クソ忌々しい! 腹立つゥゥゥ!! テメー等は知らないだろうけど、あたしは5千300年は生きてる古株なんだよ! そして、

大事な仕事の真っ最中だったんだァァァァァ!!!」

 

 

人の指のような細い脚を振り上げ、打ち付けるという行為を繰り返していき、その都度ダァァンといった具合に激しく重い音が響き渡る。

 

そんな彼女をKとグリフォン、シャドウでさえ呆れたような視線で見据えている。

 

当のアラクネアはソレに気付くことなく、暴言を吐き散らかす。

 

 

「なのに、何邪魔してくれてんだよクソッタレェェェ!! テメー等木端悪魔ごときがァァァ!!」

 

 

一番前にある二つの顔の内、汚らしい声と言葉でKを責め立てる。しかし、そんな苦情なんぞ彼女の知ったことではないのだ。

 

 

「お前のような醜いだけの肉達磨に配慮なんぞ必要あるか? それよりも。私はお前に聞きたいことがあるんだ」

 

「ハァァッ?!」

 

「お前たちは何を企んでいる。正確に言えば、お前を従えてるボスはどういうつもりでフィーネと手を組んだ?」

 

「?!ッ……どこでそれを!」

 

 

フィーネ。この言葉にアラクネアは露骨な反応を見せ、それが『情報を持っている』という事をKに悟らせてしまった。

 

 

「悪魔が人間に手を貸すのは、手を貸すだけの利益が悪魔にとってあるからだ。そうじゃなきゃ人を虫も同然としか考えない悪魔が、人間相手に自分から手を差し伸べて来る訳がない」

 

 

アラクネアは、とりあえずKの言葉に耳を貸していた。油断は一切ない為、単純な不意打ちは何の意味も為さないと一目見て理解したからこその判断だ。

 

彼女は強力な悪魔だが、だからと言って油断は一切しない。ただKを見据えて、次の一手をどう繰り出すか。

 

それだけを考えていた。

 

 

「なら、フィーネと手を組むことで得られる、お前たちのボスにとっての利益とは、何か……生憎そこだけは答えが出ないんだ」

 

 

少しばかり長々と語ったKは、最後に手に持ったインビスの刀身。その切っ先をアラクネアへと向ける。

 

 

「教えろ」

 

「くたばりなァァァァッッ!!」

 

 

交渉の余地なし。Kの耳に返って来たのは怒りをこれでもかと染み込ませたような怒号と、振り下ろされたアラクネアの脚だった。

 

しかし、それはK目掛けて振り下ろされたものではなかった。

 

 

「捕まえて、臓器を全部バラしてやる!」

 

 

振り下ろされた脚はアラクネアのすぐ目の前。

 

Kがいる位置とは大分数mほどの距離があり、当たらないのは明白だ。

 

だがこれを合図とするかのように空間全体が揺れ始め、足元や天井。左右の肉の山や壁の一部が異様に盛り上がって蠢き、無数の触手と化してKを捕らえようと迫る。

 

 

「グオォォンッッ!!」

 

 

させない。そう言わんばかりに四方八方から迫る肉塊を自身が変化した巨大な回転刃で肉塊を細切れにしていくシャドウ。

 

おかげでKへの被害はないが、細切れになっても捕らえようと足掻くのを止めない触手には、グリフォンが雷撃で止めを刺した。

 

 

「キッショッ!! あーもう、イヤになるぜ本当!」

 

 

昔から、それこそ大悪魔時代から何かと虫系や、手足のない長い物系の悪魔に嫌悪感を覚えていたグリフォンにとって、この場所はまさに地獄だった。

 

悪魔なら地獄にいて当然だと思うかもしれないし、そのイメージもあるだろう。

 

だが、誓ってグリフォンは嫌悪感以外にないし、住み心地がいいと思うなど以ての外である。

 

さっさと終わらせたいと心中で願いつつ、自慢の雷撃を再びアラクネアへと当てる。

 

 

「一回で決まらないってナラ、何発でもご馳走してやるっての!!」

 

「キシシ。無駄さ。喰らった攻撃はねェ!」

 

 

そんなものは無意味だと宣うアラクネアの言葉は、決して強がりで無ければ、虚勢の類でもなかった。

 

雷撃はただ当たっただけで終わった。

 

アラクネアは先程のようにダメージを負ったような様子はなく、僅かな焦げ跡さえ見れない。

 

 

「ハァァァァッッ?!」

 

「効いてない、だと?」

 

 

大袈裟に驚くグリフォンとは対照的にKは慌てることなく、少々驚きはしているが冷静にこの不可解な現象を分析していた。

 

 

「ハッ! 年季が違うんだよ年季が!」

 

 

異形の肉塊の女悪魔は嗤いながら、今度は顔の上半分が飛び出し、下半分が肉塊の身体に埋め込まれた赤い瞳に黒目の頭がその瞳に魔力を集中させ、そして漆黒の光線として放出。

 

 

「グギャッ!」

 

 

それをモロに喰らってしまったのは、グリフォンだった。あまりに強力な攻撃だったらしく、肉の地に堕ちると共に身体が粒子状になり、丸い核の部分が露出した状態……ステイルメイトになってしまった。

 

 

「羽虫は地面に落ちてりぁいいのさ!」

 

 

その様を見下し、嘲笑するアラクネアは今度は緑目の頭の口を開かせ、そこから緑色に妖しく輝く糸を吐き出す。

 

糸は一本の束になっていたが、ある程度シャドウとの距離を詰めると、糸の先端からまるで植物の開花のように分裂。

 

幾つもの糸となって捕らえようと迫る。

 

すぐさま回転刃で糸を切り裂こうとするが、糸は肉の触手のように簡単には切れなかった。

 

それどころか回転を利用してどんとん絡んでいく。動けば動くほどに糸は巻きつき、しかも糸の特殊な性能か、シャドウに体表に張り付くと

同時にその魔力でシャドウ自身の魔力循環を阻害しているのだ。

 

悪魔には様々な能力があるが、その全てが魔力によって齎されるもの。グリフォンの雷撃も、シャドウの変形能力も魔力があってこそ実現する為、魔力による正しい循環の流れを阻害するということは、悪魔の力を封じることに等しい。

 

ソレをアラクネアはして来た、という事なのだ。

 

 

「させるかァァ!!」

 

 

シャドウの異変に即座に気付いたKはインビスを斜め縦一線に振るう。

 

一本から幾つもの糸へと変化している部分を切り裂いたことで、アラクネア本体から送られていた魔力が絶たれた。

 

アラクネアの魔力が送られることがなくなれば、あとはシャドウの魔力の流れが正常に戻るだけ。

 

魔力を阻害されたダメージもあって地面に着地できなかったグリフォンは、そのまま身体を打ち付けてしまったものの、すぐに立ち上がり『

大事ない』という言葉のない意思表明をKへと送る。

 

 

「チッ、厄介な剣だね」

 

 

しかし、ソレを見ていたアラクネアは気に食わないと顔を歪ませては、Kが持つ魔剣へと視線を送り、舌打ちを鳴らす。

 

 

「覚えがないのか? この剣に」

 

「んん? ……あぁ、そういやアンティークがてら、部屋の一つに飾った剣があったねぇぇ」

 

 

思い出したとは言え、ソレがどうしたとアラクネアは魔剣を嘲笑う。

 

 

「さぞ高名な悪魔だったんだろうねぇ……魔力を見ればよく分かる。

あーあー、そうだそうだった。確かインビスって名前だっただろう?」

 

『ふん! 忌々しい肉ゴミが。我に対しての狼藉、安くないと知れ!!

 

 

とことん自分以外の他者を、悪魔や人間関係なく劣ると判断するその性悪な感情が込められた物言いに、我慢が限界を迎えたインビスは堂々と、自らの怨敵に叫んで唾棄する。

 

 

「プファ〜! 危ない危ない! マジで死ぬかと思った…ゼッ!!」

 

 

ステイルメイト状態から元の姿へと回復したグリフォンは、呑気にそう言いつつ、雷を棒状に収束させて放つ『雷光槍』という技を繰り出す。

 

しかし、この技も先程の雷撃と同じように命中こそしたが何の効果も齎さなかった。

 

 

「だから、言ったろぉ? もうお前の攻撃は効かないってね」

 

「ハッ、クソ位に頑丈だなオイ」

 

 

悪態を吐きつつ、しかし自慢の雷の属性による攻撃が通用しない事実に苦虫を噛み潰すみたいな、苦悶の焦りが顔に滲み出していた。

 

 

(耐性を獲得する能力か……あるいは魔術。どちらにせよ、もしそうなら闇雲に攻撃するだけ無駄だな)

 

 

Kはアラクネアから目を離さず油断を見せず。しかし思考を巡らせ、そんな考察を構築していた。

 

とは言え、その考察から得た結果は『ただ闇雲に攻撃するのはあらゆる面で無意味』という、その程度のこと位だが。

 

 

(さて、どう出るか。時間は1秒でも惜しいんだがな……クソ)

 

 

思わず悪態を吐くK。インビスの発動からの制限時間はもって3分。

 

状態に異常があるか、あるいは肉体的・精神的に弱っている場合においては、それ以下になる可能性がある。

 

そして能力発動を終えてからの次の発動には、5分かかる。

 

たった5分。

 

とは言え相手が上位の悪魔であることを考慮すれば、それは致命的な弱点になりかねない。

 

上位の悪魔はそれだけ厄介で面倒。たった一つの小さなミスが死に直結することだって、有り得るのだ。

 

 

(……シャドウの攻撃は避けずに糸で防いでいたが、物理的なものは無効化できないのか? それとも、そう思わせる為のブラフなのか………とりあえず、時間まで粘るついでに試してみるとするか)

 

 

時間稼ぎをしつつ、相手の特性を見極めようと結論付けたKは魔剣を構え、一気に駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

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