何とか、もう一個分のストック、作れるくらいに書きまくりました(^◇^;)
思いの外執筆が進んだのでよかっです。
「シャアアッァァ──ーッッッ!!!!」
甲高い奇声と共にアラクネアの脚が素早く振り下ろされ、Kを刺し貫こうとした。
間一髪のところでグリフォンが両足でKを掴んだおかげで直撃せず、直後に迫り来る緑色の糸の雨を波を描くように滑らかな飛行テクニックで掻い潜っていく。
「俺の攻撃が全然効かないっつーことは、頼りになるのは猫チャンだけ……コレ、まさにピンチってヤツゥ?」
「その割に口は止まらないんだな」
窮地に立たされようとも決して閉ざさないグリフォンの口先には、別の意味で敬意を表しかねないと内心思うK。
それがグリフォンという悪魔の性であれば、何を言っても無駄と既に諦めているKは、理解が良いという点では賢いかもしれない。
もっともコレをK本人が聞けば、『下らない評価なんぞお断りだ』とでも言うのだろう。
とにかく、状況はKにとって芳しくない方向へと傾いていた。
耐性能力か防御効果を齎す魔術か。理屈は今の段階では決めあぐねているが、いずれかだろう。
とは言え、仮にどちらであろうとグリフォンの攻撃が無意味である以上、シャドウでアラクネアを討つ為の策を考えなければならない。
いや、シャドウ以外にもう一つある。
『主よ。発動できるぞ』
透魔剣インビスの持つ、存在の希釈化。
気配も姿も、保有する魔力でさえ察知されなくなるという隠密に特化したこの力は、アドバンテージを獲得するには必須だろう。
そして、一回の発動からの再度行使する為の時間が5分経った為使えるようにはなった。
だが、Kはソレをおいそれとすぐに使う気はない。相手がそこいらの雑魚であれば話は違うが、アラクネア相手に手札をすぐ使い切る訳にはいかない。
(まだだ。確実に仕留められる時が来る。使うとすれば、その時に)
「使わないのかいぃぃ? その剣の力を」
「……」
「ケッケッケッケ! このあたしが、管を切られたのは単にお前らの運が良かっただけ、なんて。それでスルーするとでも?」
「もし、そうだとしたら?」
Kは敢えて直接言わず、あくまで疑問形に返した。
「見え透いてんだよぉ! クソメスのガキぃぃぃぃ」
また、床を叩く。
今度は倍の量の触手が四方八方から迫り、それをシャドウとグリフォン、K自身が切り刻んでいく。しかし、触手による攻撃は絶え間ないもの。
一つ二つ切り落としたところで一瞬とばかりにすぐに新しいのが生えていき、おまけに切り落とした触手でも暫くは動いているので油断はできない。
グリフォンが雷撃で徹底的に黒焦げにしてるとは言っても、量が量だけに捌き切れなくなる。
それが一つのミスを生んだ。
「K!」
「!! ッ」
叫ぶグリフォン。それに反応して気付いたKは触手が自身の足元に絡み付くのを見た。黒焦げを免れた触手だ。
両足にぬるりと巻きつき、そのはずみで転倒。
運の悪いことにその際、インビスを手放してしまった。
「一本、いただきさね」
「しまっ……ぐあぁッ!!」
慌てて何とか対処しようと試みたKだが、それをミトリウスから伸びる触手の数々が彼女の体を巻きつく形で拘束し、動きの一切を封じた。
「その気色悪りィ触手をどけなッ!!」
「ガウァァァ!!!」
囚われた主を助けようと、二匹の魔獣は触手を焼き焦がし、切り裂こうと迫る。
無論、それを許すわけもなく、触手が二人を絡め取ろうとウネウネとくねらせ、襲い掛かる。
「ダァァァッッ!! ウゼェんだよ!」
全くもってその通り。妨害を目的に次から次へと伸びては、それに対処していく終わりが見えない作業に苛立ちを覚えない筈はない。
誰だってそうだ。
グリフォンも例に漏れず、苛立ちから不満を叫び散らした。
「イッヒヒヒヒヒヒ!! 剣は奪われ、自由も奪われ、雑魚悪魔二匹があのザマ。さぞ悔しいだろうねぇぇ?」
触手で捕らえたKを自身の目前まで持って来ては、実に嫌味ったらしい口調でKを詰る。
陰湿もいいところだ。K自身腹は立つが、だからと言ってどうすることもできないこの状況下では、ただ睨み付ける他にない。
"今、この時までは"
「……」
「何も言えないのかい? ヒャハハッ! いい目してるじゃないか。抵抗できず、悔しいけど、憎くても、なぁぁんにもできない!!」
愉快極まれり。今のアラクネアは有頂天状態なのだろう。それはKの目から見ても一目瞭然。
魔具を手中に納め、Kを捕らえて、グリフォンとシャドウを討ち取るのも時間の問題だと考えているのだろう。
それはアラクネアが意図せずして見せた、油断による隙だった。
慎重などと言っても、所詮は己が力を過信する悪魔という種であるからこそ、その油断は必定であり、Kに"手札を切る"という判断をとらせるには十分だった。
「グリフォン! "使え"!」
「ヘッ! ようやくかよ!!」
Kの"合図"を聞き、グリフォンは首元の羽毛に隠していたある物を嘴で器用に取り出す。
それは紙ほどの厚さの星形の形状をしていた。
色は金色で、淡い光を放つソレは宝石のように見えなくもないが、そうではない。
宝石ではなく、"魔石"である。
多くは悪魔の血が凝固した"レッドオーブ"という物質を材料に魔術で作り出され、その効果は種類ごとに異なる。
例えば、緑色をした魔石バイタルスターを使えば、傷が癒えるばかりか体力も回復できる。
紫色の魔石デビルスターなら魔力が回復する。
そしてグリフォンの持つ金色の魔石……アンタッチャブルは、膨大な魔力によって肉体を強化させると同時に肉体をいかなる攻撃からも無効化するバリアコーティングが身体を覆う。
その性能は凄まじく、かの魔帝レベルの強大な悪魔の攻撃でさえ通用しなくなる程だ。
無論、それだけ凄ければデメリットとして時間に制限がある。1分間程度だ。
だが、それでも十分。
グリフォンは嘴で咥えたアンタッチャブルをそのまま飲み込む。星形だったのでやや飲みにくかったものの、何とか顎の力で砕いて飲み込むことができた。
瞬間。爆発的な魔力の量による増大と質の上昇をグリフォンは感じていた。
"ああ。なんてイイんだ。"
"ヤバすぎて、狂っちまいそうだぜ!"
「雷撃が効かないってならヨ、こいつはどうだ!!」
グリフォンにとって雷とは武器なのだ。しかし、主要がそれと言うだけで他にない訳ではない。その鋭い嘴と爪も、雷と比べればやや劣ってしまう。
しかし、それでも立派な"武器"であることに違いない。
「オラァァ!!」
活気溢れんばかりの声と共にアラクネアめがけ、速度を上げた飛翔状態で突っ込んでいく。
それを防ごうと触手がグリフォンを狙い定めるが、向かって来る触手の群れに対し、今度は避けるという選択肢をグリフォンは取らなかった。
何故なら。
「ローリングアタックってナァァァァァ!!」
翼を一旦折り畳み、身体を回転させることで魔力の奔流を作り出したからだ。
膨大且つ良質化した魔力による鉄壁。それを防衛ではなく、攻めに転じれば、どうなるか?
上位悪魔にも届く、無双の一撃となる。
それはすぐに証明された。凄まじい速度の回転でまさに一つの無双の槍となったグリフォンは、柔い肉の触手を容易く切り裂き、アラクネアの一番前にある顔の二つの内。
黒目に白い瞳の方の額にグリフォンの鋭利な、そして身体と共に回転する嘴が突き刺さる。
だが、それだけで終わることはなく、そのまま推進力に従いアラクネアの肉を抉り、骨格にまで届くとそのまま向こう側へと貫通せしめてしまった。
「────────────ッッッッッ!!!!!!」
声にならない断末魔の叫びを、肉塊の女蜘蛛は口いっぱいに開いて吐き出す。
アンタッチャブルの効果が消えたが、それをグリフォンは別段気にすることなく、堪らないといった様子で勝機を取ったとほくそ笑む。
Kも同じだ。
「やはり、非物理の攻撃が効かないだけか」
同時に『物理攻撃は通用する』という、一つの答えを得た。
それさえ分かってしまえば、あとはどうとでもできる。
「シャドウ! トドメを刺せ!」
変幻自在の黒豹は主の命に従い、その身をまた回転刃へと。それも通常よりも一回り大きなものとなってアラクネアを一刀両断にしてやろうと。シャドウはそんな腹積りで向かっていく。
だが、アラクネアに到達する前にシャドウの回転刃は止まってしまう。いや、正確にはこれ以上の前進を止められたというべきか。
触手ではなく、今度は正方形で太い厚みの肉の壁が出現。シャドウの回転刃は勢いを止めてはいないものの、表面がやや削れ血吹雪が舞い飛ぶだけで向こう側へと抉り通せない。
「チッ、最期の悪足掻きか!」
「最期とは言ってくれるねぇ〜。立派な隠してた手札と言ってもらいたいよぉぉ!!」
頭の額部分がかなり抉れて、しかも後ろへと貫通している様は側から見て痛々なんて代物ではない程に悲惨な光景だが、彼女は悪魔。
よほど弱い悪魔でなければ、依代となる肉体が破損したところで擦り傷すらならない。
もっとも、今回はグリフォンの魔力を最大出力で利用した刺突技の一撃。アンタッチャブルというブースター付加も併せて考えれば、ダメージは相当なものだろう。
下手すればこれで討ち取れた可能性だってあった。
だが、"仕留め損ねた"
アラクネアを守っていた壁が、突如としてくねりと後ろへと曲がりくねったかと思えば、そのすぐ側にいたアラクネアに覆い被さってしまう。
そして瞬く間に圧縮でもされているかのように小さくなっていった。 僅か10秒だ。
やがて何かが出てくる。アラクネアのあの細長い人間のような8本の脚だった。
更に肉塊のあらゆる箇所からグチャ……ビチョ……という生々しい音を奏で、あの幾つもの頭が現れる。
それはもう完全にアラクネアだった。最悪なのは、今まで受けたダメージが綺麗さっぱり無くなっていることだろうか。
その証拠にグリフォンによって貫かれた頭部とシャドウの回転刃で抉られた二つの頭部が元の状態に戻っている。
「悪魔はねぇ、依代ってもんがいる。その筋の人間みたいだから知ってるとは思うけど、依代があるから悪魔は人間の世界に干渉できる」
脚を伸ばして、折り畳み。また伸ばしては折り畳む。まるで状態を確認するかのような動作をしながら、アラクネアは別段頼まれてもいない解説を垂れ流していく。
「あたしの依代、何か分かるかいぃぃ?」
"……なるほど。そういうことか"
勝手に語って、嫌らしい笑みを浮かべて問いを投げて来るアラクネア。そんな悪魔の言いたいことに当たりを付けるKは、ゆっくりと答えた。
「ミトリウスだろ。妙に多いとは思ってたが、そういうことか」
「そう! その通り!」
高いテンションを上げ、アラクネアは捲し立てる。
「ミトリウスは悪魔の死骸に人間の負の情念が結びついて生成される物質。人界由来のモノがあるのなら、それは十分依代になるのさ!」
「……」
「ハナから詰んでたんだよ。どれだけダメージを喰らおうが関係ない。ミトリウスは見た通り腐る程あるんだから、ねぇぇ」
「……」
「オイオイ、黙んまりかいぃ? 絶望で何も考えられ「呆れるな」……あ゛あ゛ぁぁ?」
上機嫌だったアラクネアの語りに対し、遮るように挟み込んだKは、そんな言葉を送り、心底見下したような嘲笑を浮かべる。
その直後だった。
「!! ッ ぐ、ぎ、あァァッッ!!」
崩れ落ちる。そう表現する他にない光景だった。先程まで余裕な態度を浮かべていた筈のアラクネアの身体中にいくつもの黒い滲みが発生。
そこを起点に罅割れ、皮膚は黒い塵へと。中身である臓器や筋肉は同じく黒い色の液体となって、流れ落ちていく。
何故だ。何をした。
どうして? なんで? 意味が分からない。
は、早く! ミトリウスで回復をッ!
アラク疑問と混乱、そして生命の危機を察知した生存本能が働かせた、死への恐怖が思考するよりも先にミトリウスを摂取させようとアラクネアの身体を動かす。
自らの無数の頭が口を開け、すると呼吸による吸引力ではない何かしらの力が働き、ミトリウスが長く、うねりくねらせて一本の線状となってアラクネアの口の中へと入っていく。
更に足元からもミトリウスを吸収することで崩壊を何としようとする
アラクネアだが、どれだけ大量のミトリウスを摂取・吸収しようと身体の崩壊を遅らせるだけに過ぎず。
自身の身体の崩壊を完全に止めることはできなかった。
「グリフォン。アレを出せ」
無様に生にしがみつこうと必死になっているアラクネアを見据えながら、肩に乗ったグリフォンに何かを出すよう指示した。
「ウッ! オブゥエェェッッ!!」
より正確に言うと、何かを"吐き出した"。
「見ろアラクネア!」
右手でそれを受け止めたK。今度はソレを見せるように前へと差し出す。
ソレを見たアラクネアは、ミトリウスを喰らうことを辞めて、驚きを露わに両目を大きく、血走った目をKに向けた。
「アァァ……そ、そそ、ソレは!!」
「お前の核だ」
ドクン……ドクン。一定のリズムで刻まれる鼓動は正常に機能していることを明確にする。
ソレは、紛れもなく心臓と呼ぶべきものだが、人間や普通の生き物と違い、血液のみならず、魔力も送り込み循環させることで悪魔の生命をどのようなダメージであれ、修復しようとする生命維持の役目を担う臓器だ。
これが悪魔が総じて人間よりも遥かに高い自己の治癒や再生を持っている理由である。
ならば、その核たる心臓が身体から出たとして、その場合悪魔はどうなるのか。
答えは……死を迎える。
頭を抉られようと。
身体中を八つ裂きにされようが。
臓器や血肉を掻き乱されたとしても。
その悉くを容易く再生させてしまう高位の悪魔であろうと、逃れることはできない理なのだ。
「ギィィザマァァァ!!!!」
「最高位、高位の悪魔ほど再生力は並外れた物だ。だが、その能力を発揮させるコレがなければ、再生どころか生命維持も危うくなる」
必死に取り戻そうとする伸ばすアラクネアの前脚は、前脚のみならず
、その全てが完全に朽ち果てて、ただの黒い塵と液体になっている。
これではもう、ろくに進むことは勿論一切の行動が封殺されたに等しい。
「死にたくないなら、答えろ。お前らのボスの目的はなんだ」
「し、知らなイぃぃ……本当に、知ラナイのォォ……私はあの方の命令で人間の魂を良質化させる……あたしが生成した物質を入れた、商品を作ってただけ……うゥゥゥ……」
先程とは違い、弱々しい声で苦悶の声を上げつつも素直にKの質問に答える。
どうやら、命を投げ捨てるほどの忠誠心は皆無のご様子。Kは、そんな彼女に慈悲を与えず、更なる質問を提示する。
「お前たちの配下の悪魔たちがノイズといる所を見たことがある。その理由は?」
「ゼェ……ゼェ……アァ、それは、希魂を回収する為……だよ」
「希魂?」
「希少性の高い人間の魂……さ。それを喰らえば、あたしら悪魔の魔力を強められる」
「仮にソレ目当てだとして、何故ノイズと共に行動する。必要性が全くないぞ」
「ゼェ……ゼェ……いいや……あるのさ。希少性が高いからこそ、ゼェェ…そう簡単には……取れない。確実に探す為の手段が……全くなかっんだよ」
アラクネアの息が荒くなる。崩壊していく部分の範囲が多くなり、言葉と共に深く息を吐き出していく様は、苦しそうではある。
もっとも、彼女の行いを考えれば安易に同情などできないが。
「でも……ゼェ……ゼェ……ノイズには……ゼェ……その問題点をどうにかできた」
苦しみに苛まれようとも決して言葉を止めることはなく、ここで止めてしまえば、もう価値なしと判断され容易く殺されてしまう。
そういったことを懸念し、非常に恐れているからこそ彼女は必死に舌を回す。
「ノイズに殺された人間は……全部って訳じゃ……ないが。魂が希魂に変化する、ことが…ハァ、ハァ、……あるって、分かったんだよ」
「! バカな。魂を取っている風には……」
「希魂は……ゼェ……悪魔の感覚でも見えや、しないし、触ることも…できない。人間のあんたなら、尚更さ」
悪魔でも知覚し、認識することのできない魂を仮にも人の枠組みに属しているKが知覚・視認できる筈がない。触れることもだ。
「だ、から……ハァ……ハァ……認識することのできる悪魔を造って、きちんと摂取できるよう……ゼェ……ハァ……加工……するのさ」
「……魂を良質化する品物を売っていたのは?」
「いくら……ゼェ……見つけられるようになったとは、言っても、
ハァ、ゼェ……その数は少ない」
「……」
「だから希魂に劣る……とは言え、ゼェ、ゼェ、ハァ、ハァ……魂を良質化させて収穫すれば……"使う為の魂の数"は、何とか合わせられる
」
数合わせ、という言葉から考えると希魂を得るにあたり、定められた数が必要らしく、現状ではそれを十全に満たせない。ならば、代替品で補おうと"悪魔の観点から見て"、魂を良質なものへと変化させるプランに移行したというわけだ。
そしてこの悪魔は"使う為の魂の数"とも言っていたことから、単純に喰らう為に収穫するのではなく、何かに利用する為のようだ。
それについて、Kは聞いてみた。
「そうか……ちなみに集めた魂は必要な数を揃えて、最終的にどうするんだ?」
「さぁ、ね。……あたしは、本当に何も知らない。これだけ、は、確か……なんだよ。ゼェ……ゼェ……ゼェ、ハァ、ハァ、ハァ」
問いに対する返答は、望むものではなかった。
だがここに来て『希魂』という言葉。そして、それに関係する有力な情報が得られたことはKにとって喜べる進展だ。
そしてアラクネアの得た情報から分かったことがある。それは収穫した魂を何かに利用するつもりだと言うこと。
今のところ、ソレがどういったものなのか。そこの所は一切分からない。
アラクネアも知らない様子ではあるし、これ以上問い詰めるのは時間の無駄だろう。
ただ分かるのは……それを、どうにかしなくてはならない、ということだけは確かだ。
"上等だ。止めてやる。己の全てを賭けて"
心底から湧き起こる気合いの高揚感。そこから生じる覚悟に思わず笑みを浮かべるK。
それに水を差したのは、アラクネアの怒号だった。
「さぁ! 知ってる……ことはァァ! 全部、全部ゲロったんだァァッッ!! さっさとソレを返して、おくれよぉぉぉぉぉぉ!!!!」
泣き寝入りな金切り声でアラクネアは必死に核である心臓の返却を求める。もはや身体の殆どは無くなり、残されたのは頭一つだけ。
その最後の頭もどんどん崩壊が進んでいる。
完全な崩壊による死はもう目の前だった。
「……いいだろう。返してやる」
そう言ってKは特に力を込めず、ゴミでも捨てるような気軽さで放り投げる。
(ハハハハハ! バカが!! んなアッサリ返すとはネェェ!! ヒヒヒヒ、ヒャッハハハハハハハハ───ッッッ!!!!!)
その光景にアラクネアは下卑た笑いを心の中で高々と叫び散らす。
グリフォンに頭を貫かれると同時に自身の生命の核である心臓を気付かず、あっさり盗み取られるという高位悪魔としてのプライドに傷をつけられ、果てはこんな状況に追い込まれたが運は尽きてないと。
アラクネアは確信した。
哀れに思ったが故の行動なのか。
それとも圧倒的有利な立場になったからこそ、己を過信して傲ったのか。
どちらにせよ。アラクネアにしてみれば、バカな真似をした間抜けな小娘という認識だった。
再生したら、一瞬の内に喉元に喰らい付いて嬲り殺してやる算段を立てていた。
「だが」
心臓が地面に落ち、それを経口摂取という形で取り込もうとした瞬間
。Kの言葉が降りかかる。
「無傷の状態で返してやるとは言ってないが」
風を切る音と共に、アラクネアの心臓が……二つに裂けた。
「ナァァッッ!! アガッ! アアァァァァァァァァァァ…………」
低い断末魔の叫び。それを吐き出しつつ、最期に見たのはインビスを縦に振るい、己の心臓を一刀両断とばかりに斬るKの姿だった。
二つに斬られ裂けた心臓はすぐに鼓動を止め、そのまま崩壊。
それと同じタイミングでアラクネアの最後の頭も崩壊し、これで彼女の死は、確実なものとなった。
グリフォンが隠し持っていたアンタッチャブルというアイテムは、実際にデビルメイクライ1で登場しています。効果が一定時間、あらやる敵からの攻撃を無効化してくれる便利アイテム。
ボス戦、ラスボス戦で助けられた人もいる。
自分はよくこれ使ってゴリ押し戦法やってましたww