戦姫魔晶シンフォギアD   作:イビルジョーカー

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訳題『落涙』。

明日に投稿しようとしていたストックを今日投稿します。





第14話 Tears Part1

 

 

 

 

 

 

「ウゲェェ〜……ああー、もう最悪」

 

 

 Kの肩に乗りつつ、気分が悪そうに顔を顰めては吐きそうという風体でいるグリフォンの嘴から、そんな不満が垂れる。

 

 

「気分が優れそうにないな」

 

「アア?! あったり前ダローが! あんな気色悪りィ虫ヤローの心臓を腹ん中に入れてたんだぞ! 作戦でもなけりゃあ、ぜってーしネーよクソッ!!」

 

 

 あの後。土蜘蛛企業から撤退したKたちは、人気のない道路の端を歩いていた。

 

 時刻は既に夜。深夜帯ではないが、しかし道が道な為、走っている車も人影も一切ない。

 

 そんなところを歩いている訳だが、グリフォンが抱えている不満というのは、アラクネアとの戦いの際その心臓を自身の腹の中に隠していたことのようだった。

 

 

「仕方ないだろ。油断させる為にもあの手が良かったんだ」

 

「あのインビスって剣の力を使えばよかったんじゃネーの?」

 

「アレは白兵戦より隠密や誅殺する方が向いてる。敵がこっちを見えない、感知できないからって確実に仕留められる保証はない。防御に徹すれば時間切れと同時にこちらが仕留められる可能性もある。それなら元々用意してあった策を使う方がいいだろ」

 

「ハンッ! それを考慮してもだぞ? あんな気色悪いモン食わなきゃなんないワケ? 俺の繊細なそこんところ、お・わ・か・りィ?」

 

「はぁぁ。いい加減機嫌を直せ。鬱陶しい」

 

 

 今回ばかりは自分が悪かったと自覚はしている。Kとしても、造形的に見て気色悪さを追求したような姿の悪魔の臓器を口にするなど、願い下げなのだ。

 

 自分がしたくないことをグリフォンに押し付けてしまった罪悪感を感じないほど、相手の心境が考慮できない訳ではない。

 

 とは言え、こうもグイグイ突っかかって来られるのも、かなり面倒極まりないのでグリフォンに苦言を呈した。

 

 くどいようだが、グリフォンは虫系並びワーム系の悪魔の類が苦手なのだ。

 

 にも関わらず、その苦手なモノの……それも臓物を一時とは言え、腹に収めるなど気持ち悪いを通り越して、言葉では言い表せない恐怖なのだ。

 

 人間で言えばミミズを食べるようなものだろう。

 

 大半の人間は相当な物好きや変人でなければ、実際に行いはしない。気持ち悪さから来る嫌悪感が半端ないのだから。

 

 だが今回の場合、強力な悪魔であるアラクネアと対峙するのであれば、その弱点を突くことは至極当然なこと。

 

 悪魔の共通する弱点の一つである心臓を、予想外な攻撃によって奪い取る。

 

 成功の確率を上げる為、色々と希少な魔石であるアンタッチャブルを使い、結果的に成功したとは言え、この役目を与えられたグリフォンは

 当初から抗議を上げていた。

 

 そもそも、何故グリフォンなのか。

 

 シャドウは攻撃における全てが肉体の変形によるもの。なので攻撃をしつつ、器用にアンタッチャブルを隠し持つことはできない。

 

 やろうと思えばできなくもないらしいのだが、だからと言って"現状ではできない"のであれば仕方ないし、その為の練習をする時間も惜しい。

 

 ならば、残るグリフォンにやってもらうしかなかった。

 

 抗議しつつも、結局Kに言い包められて、今に至っているわけである

 

 

「機嫌直してほしいィ? ならなんか甘いモンでも奢れよ。そいつで手を打ってやる」

 

「……悪魔が甘党のつもりか? 笑えないな」

 

 

 意外な甘党発言に堪らず失笑するKだが、冗談でも何でもなく、純粋な要望だったらしい。

 

「ハッ! 好きなモン食って何が悪いってンだよ」

 

「前に私がサンデー食べて時は文句言ってた癖に」

 

「それはソレ、これはコレ。とにかく行こーぜKチャン!」

 

 

 全く調子の良い鳥だ。内心そう思いつつ、足を少しばかり早めて人の多い通りへと向かうとしたKだったが、自身の耳にある音が入って来た

 

 爆発音。

 

 およそ、しかもごく普通の街に居ればまず日本では聞くことのない音だ。しかも……

 

 

「オイオイ、メアちゃんの気配じゃねェか!」

 

 

 あのナイトメアの気配も感じられた。響の側にいる筈のナイトメアが

出現しているということは、響関連で何かあったに違いない。

 

 それを理解したK焦燥感に駆られかけるが、焦ったところで何になると冷静に自らを律する。

 

「それに今の爆発音。お前も聞こえたか?」

 

「もうバッチリな。行ってみるか?」

 

「そのつもりだ」

 

 

 距離は音からしてそう遠くない。脈絡なく発現したナイトメアの気配を頼りにKたちは、爆発音がした方向へと行き先を変えて向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一株の、言い知れぬ不安を心中に抱えながら…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少し遡る。

 

 立花響が天羽奏と同じガングニールのシンフォギア装者として二課と協力し、ノイズ殲滅に当たるようになってからというもの、響にとってかなり労を費やす大変な日々だった。

 

 と言うのも、出動の際は携帯から連絡が入るのだが、親友である未来にシンフォギアのことや

 二課の存在を開示する訳にはいかない為、適当な理由をつけて彼女の下を去ることが多くなった。

 

 秘密を抱えて、何でもないと嘘をつくというのは響にしてみれば気持ちの良いものではない。

 

 それが合理的に理に適っている、としてもだ。

 

 そしてノイズとの戦闘では、やはり元々平凡な民間人だったことが災いし、何においても上手くいかず、翼がその尻拭いをするのがほぼ日課と化していた。

 

 しかしどういう訳か、翼は響と言葉を交わすようなことはなく、それどころか先輩として、何かしらアドバイスをするということさえしない

 

 極端に響を避けているとしか思えなかったのだ。

 

 それに関しては響自身は勿論、彼女の叔父である風鳴弦十郎を含め、二課はきちんと把握している。

 

 響は単純に自分が未熟者だから、という予想でいるが弦十郎並び二課の人間は風鳴翼という少女をよく知っている。

 

 

 だからこそ翼の響に対する非良好的な態度が単に響が未熟者だから、と言うような理由ではなく、新たなガングニールの装者に成って、戦場に出ることにあると確信していた。

 

 響の胸部中央に刺さったガングニールの欠片。ガングニールの元所持者が天羽奏であったのは言わずもがなだろう。

 

 翼にとって奏はかけがえのないパートナーであり、それ故に信頼を置いて戦場で共に戦っていた。

 

 翼と奏は、歌でその性能を上げるというシンフォギアの特性から、アーティスト活動をしていた二人は、両翼という意味の『ツヴァイウイング』の名で国内で高い評価と確かな人気を誇るトップアーティストのコンビとして活動していた。

 

 あるライブの日、その日は秘密裏にライブ会場の地下で聖遺物の起動実験を行っていた。

 

 そもそもライブをすること自体、翼と奏が歌うことで発生するフォニックゲインを利用し、休眠状態における未知の力を秘めた先史文明の遺産……俗に聖遺物と呼ばれるソレを覚醒させるという目的のものだった

 

 だがライブ会場はノイズの襲来により壊滅。

 

 当時その会場にいた響を守る為にガングニールでノイズの攻撃を防いだものの、運悪く攻撃を受け止めた際の衝撃でガングニールが罅割れ、

その時に生じた欠片が胸へ突き刺さるという、思わぬ事故を起こしてしまった。

 

 瀕死の重傷を負った響の為、奏は自身の命を代償にすることで発動する『絶唱』を歌う決断に打って出た。

 

 命を差し出すだけあって強力なエネルギーの衝撃波を生み出す絶唱は、ノイズの大群を一匹残らず殲滅。命を失った奏は……駆けつけた翼の腕の中で灰塵に帰した。

 

 ガングニールは、天羽奏が持つに足るべきもの。

 

 大切な親友の遺品とも呼べるモノを戦場をろくに知り得ぬ、覚悟なき者が手にして勝手出る。

 

 とても許容できるものではなかったのだ。

 

 だからこそ、

 

 

「貴方と私。今、この場で戦いましょう」

 

 

 風鳴翼は天羽々斬の切っ先を向ける。だが相手は討滅対象であるノイズではない。

 

 ガングニール装者である立花響本人へ。

 

 一方、響は混乱し動揺を見せていた。

 

 当然だろう。出動要請に従いシンフォギアを纏い、先に来ていた翼と合流し『一緒に戦いましょう』と意気込んだ言葉を投げかけた返答が、

剣を向けられる行為。

 

 動揺も混乱も当たり前だろう。

 

 もうノイズはいないし、やや頭が残念な響でも決してソレが冗談の類などではなく、本当『敵対する者に向けての目』であることを理解した

 

 でも、納得がいく筈もなく。堪らず響は叫んだ。

 

 

「ま、待ってくだい! そういう意味じゃ……」

 

「私は確かめないといけない。貴方の覚悟を!」

 

 

 これ以上の問答は無用。

 

 対話という言葉を交わす行為を切り捨て、互いの武をもって交わす、実力勝負という形で響という少女がいかに覚悟を持っているのか。

 

 それを知ろうとした。

 

 しかし、とうの響はつい最近まで普通に暮らしていた一般人なのである。

 

 そんな翼の意図についていける程、戦士としてはまだ足りていないし、整ってさえいない。

 

 

「はぁぁッ!!」

 

「うわぁッ?!」

 

 

 天羽々斬という刃を振るい、しなやかながらも鋭い一閃が迫る。それを紙一重で避ける響は、次々と絶え間なくやって来る追撃を、なんとか

逃げの一手に決めて回避していく。

 

 その様は素人のソレで、何かしらの考えがある訳でもなく、ほとんど闇雲だ。ただでさえ苛立ちを募らせていた翼に、その光景が更なる苛立ちを倍加させた。

 

 

「いつまで逃げ回っているの? 早くガングニールのアームドギアを展開しなさい!」

 

「そ、そんなこと、言われても……!!」

 

「……やはり、貴方には覚悟が無いのね」

 

 

 失望。そんな言葉を詰め込んだ溜息を吐き出して、翼は鋭い視線を響に向ける。

 

 

「……アームドギアは、常在戦場の意思の体現。貴方が何者を貫き通す無双の一振り、ガングニールのシンフォギアを纏うのであれば、できる

筈。それができないというのなら……」

 

 

 そこまで言うと膝を折り畳み、シンフォギアが齎す並外れた身体能力で一気に地面を蹴るように跳躍。

 

 かなりの高度まで跳ぶと、地表にいる響に向けて叫ぶ。

 

 

「お前は、奏から何も受け継いでなどいない! 戦知らずが、遊び半分でノコノコと戦さ場になど立つなぁぁぁぁぁ────ッッ!!」

 

 

 そして、そこから天羽々斬を投げつける。その降下先は紛れもなく響が立っている地点だ。

 

 主の手を離れた天羽々斬は降り注ぐ雨の如く、その速さを落とすことなく、むしろ加速していき、その形状を刀から巨大な両刃の大剣へと変化した。

 

 

「ハアアアァァァァァァァァッッッ!!!!」

 

 

 これだけでは終わらず。

 

 翼が大剣の柄があった部位へと蹴りつけることでまた速度が上がり、蹴りの態勢のまま、両足から蒼い炎を灯し響へと向かっていく。

 

 "間に合わない! "

 

 響自身も、それをモニタリングしていた二課のスタッフたちも誰もが思う。

 

 弦十郎は翼が刃を向けた辺りから瞬時に最悪の結果を予見し、すぐさま現場へと向かってはいるが……来た頃には既に、だろう。

 

 しかし、"彼"はソレを許さない。

 

 

「!! ッ」

 

「えっ?!」

 

 

 響と翼の間に入り込む形で突如地面から滲み出すかのように現れた1体の異形。それは紛れもなく、響を助けた悪魔であるナイトメアだった

 

 そして、今度もその目的を果たす為に現れた。

 

 

 ナイトメアのモノアイに紫色の光が瞬時に収束すると共に一筋の閃光が、風鳴翼と天ノ逆鱗と呼ばれる大剣へと変化した天羽々斬を飲み込む

 

 そして、凄まじい衝撃波が道路のコンクリートを砕き、地中にあった水道管が破裂。

 

 吹き出る水が雨のように降り注ぎ、少しして煙から翼が膝をつきながら降り立つ。

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

 

 

 ナイトメアのレーザーに当たる直前に天羽々斬を縦に、全力で防御に徹したのが幸いした。

 

 とは言え、ダメージは皆無という訳ではない。

 

 急な防御に移行した体力の消耗とナイトメアの 攻撃のダメージが二重にして負荷を翼に与えているのだが、当の本人は、それを知ったことか

 と荒い息で肩を上下させつつ。

 

 ナイトメアをさながら怨敵と言わんばかりの殺気の篭った視線で睨みつけた。

 

 

「ハァ、ハァ、…………あの時の、アンノウンが

 何にしに来た! 邪魔をするな!」

 

 

 発声器官を持たないナイトメアに返答はできない。が、それを差し引いても、守るべきものに刃を向ける存在と言葉を交わそうなどとは、露程も思わないだろう。

 

 

「邪魔をするなら「そこまでだ」!!」

 

 

 突然聞こえて来た声。自分と同じ齢を思わせる少女の声は、最近になって聞き覚えのあるものだった。

 

 勢いよく声のした方向……後ろを振り返る。

 

 案の定、予想した通りの人物がそこにいた。

 

 

「どういう状況だ、コレは」

 

 

 言葉を話す鷹、グリフォンを肩に乗せたKが険しい面持ちで、その場にいる全てを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 







う〜ん……なんか原作以上に翼さんがアレっていうか……。

まぁ、奏さんを失っておまけに未知の敵である悪魔が出てきたもんだから、余計に心に余裕がないのかも。

今後の励みになりますので是非ご感想お願いします。


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