戦姫魔晶シンフォギアD   作:イビルジョーカー

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訳題『ピエロの悪魔は笑う』







第15話 Clown devil laughs

 

 

 

 

 

 

 

「お前は……」

 

「途中からしか見ていないが……風鳴翼。貴様、今立花響を攻撃しようとしたな?」

 

 

 漆黒と蒼の視線が交差する。Kの追求に対し、翼は否定せず事実だけを口にした。

 

 

「……その通りよ」

 

「どういうつもりだ?」

 

「貴方に言う必要はない」

 

 

 そう簡単に口走るつもりはない。そんな意図が嫌でも分かるほどに翼は言葉と言葉で交わる気はなく、純粋に己の武をもっての果たし合いを望んでいる。

 

 そんな彼女の姿を見て、一つ。

 

 呆れと、言い知れぬ悲しみを孕んだような表情を見せながら溜息を吐いた。

 

 

「………一つ、言っておきたいことがある」

 

 

Kは、静かに語り始める。

 

 

「この子は、あくまで一般人だった。朝目覚めて、学校に行って、友達と笑い合い遊んで、色々を学び、眠る。そんな何一つ変らない日々を生きていた女の子の一人だったんだ」

 

「……」

 

 

特に何も言うことはなく、翼はただ聞き入れつつ、立ち上がり刀を構える。

 

 

「それをお前は壊そうとした。この子はこの国で生まれた、たった一つの人命。シンフォギアという力を手に入れたからって、それは変わらない」

 

「!!ッ……いったい、どこまで知っている!」

 

 

 初めて出会った際、二課を知っているかのような風を匂わせていたが、それのみならず、シンフォギアのことまで知っていた。

 

 ますます警戒心が跳ね上がる。

 

 一体何者で、何の為に行動しているのか。

 

 何から何かまで不明な部分が。得体の知れない不気味さが。異常なほど、翼の心中を掻き立てた。

 

 だが、掻き立てるのはソレだけではない。

 

 感じるのだ。郷愁を。懐かしさを。

 

 そして……哀しみを。

 

 何故こんな感情が呼び起こされるのか、分からない。分かる筈もない。

 

 たった一度出逢っただけの少女に何故自分は、こんな気持ちを抱ける。そんなことありえない筈なのに。

 

 思考と感情がグルグルと頭と心中を巡る。

 

 そんな彼女を察することなく、Kは言った。

 

 

「防人の使命を忘れたか。風鳴翼」

 

「!!」

 

 

 気がつけば、翼は弾かれたように天ノ羽々斬を渾身の力で振るい、切り掛かっていた。

 

 常人ならまず対応することなく残酷に切り捨てられるだろうが、Kは違った。

 

 

「いきなり、とは。ご挨拶だな」

 

 

 手に入れたばかりの魔具『透魔剣インビス』で、翼の剣戟を見事に防いでみせた。おまけに口からは余裕をも感じさせる言葉が紡がれ、造作もない、とでも宣っているようだ。

 

 それが癪に障ったのか、舌打ちを鳴らす同時に力を押し込んでインビスを弾き押し返す。

 

 そこを袈裟斬りに襲いかかるが、Kはインビスを思いっきり、空高く投げた。

 

「!!ッ」

 

 今まさに斬られようとしている最中で自身の手にあった剣を捨てる。当然、そんなものは自殺行為以外の何者でもない。

 

 翼もそんな間抜けなことをする筈ないとタカを括っていた為に、思わず視線を上へと舞い上がるインビスに向けてしまった。

 

 

「斜め下に注意だ。悪く思え」

 

 

 その隙をKは見逃さない。元より、こんな奇抜な行動の真意がこの為なのだから。

 

 すかさず魔力によって生成された赤色の光球を放ち、見事それは鳩尾へとめり込む。

 

「ガハァッ!」

 

 人体において鳩尾とは、腹部上方中央にある窪んだ部位のことで、ここの内部奥にある腹腔神経叢には多数の交感神経(神経叢)が走っており、ここを攻撃されると痛覚が鋭敏になっている為、直接攻撃を受ければダメージはかなり大きい。

 

 いくらシンフォギアに守られているとは言え、翼も例外でなかった。

 

 胃の中のものは吐き出さなかったが、代わりに軽く唾液を飛沫させ、その場で片膝を突く。

 

 戦慣れしている翼からすればこの様な体制など言語道断。敵に『どうぞ攻撃してください』と自分から言っているようなものだ。

 

 しかし、だからこそ。

 

 翼がそうなってしまう程に、生半可な攻撃ではなかったことが伺える。

 

 

「どうした? もうお終いか?」

 

 

 再び手に収めたインビスの切っ先。

 

 その腹の部分に翼の顎を乗せながら、平然とそんなことを宣うKの姿は、さながら悪役のソレとしか言い様のない。

 

 だが、何を言われようと、剣を収める気はない。

 

 仕掛けて来たのは翼だ。こうして無力化したとは言え、剣を収めてまた斬りにかかって来ないとも限らないのだ。

 

 それだけ彼女の心が荒んでいるのを……知りたくない程に知り得てしまっている。

 

 とにかく。

 

 少なくともこの場から早々に撤退する姿勢がなければ、剣は出したままだ。

 

 

「大人しくここは退いてくれ」

 

「……私は、防人だ」

 

「だから無理か。しかしこの状況で何ができる

 

 

 現に翼は人体の急所の一つである鳩尾へと攻撃を喰らい、ダメージから動けない状態。

 

 そしてKからは妙な動きをすれば斬り捨てると言わんばかりに剣を突きつけられている。

 

 ここで奇跡の形勢逆転を起こすには、何かしらの要因がなければ無理だろう。

 

 しかし、残念なことに助けは来ない。

 

 万が一の為に人払いの結界を周囲に形成し、暗示による認識的な意味はそうだが、物理的にも人が入ることは到底不可能。

 

 魔術に関する知識があれば話は別だが、生憎のところ二課にそのような人材は皆無。

 

 つまり、現時点で翼は詰んでいるのだ。

 

 

「あ、あの!」

 

「?」

 

 

 緊迫した空気の中。響の声がKの耳朶に届く。

 

 

「つ、翼さんに剣を向けるのは止めて下さい! そんなことしちゃダメですよ!」

 

 

 人に剣を向ける。

 

 なるほど、確かに一般的な常識の範囲で物事を鑑みれば、コレは止めに入らない方がおかしい

 

 尤もそれは"荒事に向いた職種の人間がすべき行為"であって、対人の護身術さえ身につけていない元一般人だった少女がするには、相手も相手である為、かなりの無謀だろう。

 

 

「立花響。悪いがこっちの問題だ。大人しくして欲しい」

 

「へ? どうして私の名前…あがががッッ!!」

 

 自分の名前を見知らない…いや正確に言えば、前に一度助けてもらった顔しか知らない誰かが、どういうことか自分の名前のを知っている。

 

 当然疑問に思い、問い質しかけた瞬間。

 

 身体中を目紛しく巡り、神経という神経を刺激されるような麻痺的な感覚が軽い痛みと共に身体の自由を奪い、響はコンクリートの道路にうつ伏せに倒れてしまった。

 

 

「オォ〜ッと! 悪いな嬢ちゃん! Kチャンは大事なお話の真っ最中って訳ヨ。イイ子にオトナしくしてナ」

 

 

 突然響を襲った現象の正体は、グリフォン自身が威力を痺れさせる程度にまで弱めた雷撃だった。

 

 スタンガン程度と変わらないので、死にはしないものの、身体の自由を奪うことが可能でこういった相手を動けなくさせるのに必要な場面においては役に立つ能力と言えるだろう。

 

 

「ドワァァ!!」

 

 

 響の頭の上に乗って揶揄うように嫌な笑みを浮かべるグリフォン。悪ふざけな鷹悪魔の被害に遭う響を見かねてか、ナイトメアは豪腕を背後から振るい、グリフォンを容赦なく殴り飛ばしてしまった。

 

 哀れ、グリフォン。

 

 ほぼ自業自得だが。

 

 

「イッテェェ!! 何すんだゴラァ?!」

 

 

 殴られてジンジンと痛む背中に気を配りつつ、すぐに飛び立っては目線をナイトメアに合わせ、グリフォンはいきなり問答無用で背中から殴られた事に抗議する。

 

 が、ナイトメアは何処行く風だ。

 

 

「あン? 『自分はこの子を守る為にいる、だから今のは正当防衛だ』ッテェェ?!」

 

 

 言語どころか、鳴き声一つさえ発さないナイトメアの言葉をどのようにして受け取っているのかは謎だが、ナイトメアの言いたいことが分かるらしい。

 

 そのおかげでご丁寧に翻訳しては、納得いかんとばかりにグリフォンだが、そんな彼の暴走をKが諫める。

 

 

「やめろグリフォン。ナイトメアの意見は尤もだ。それに誰が電気で止めろと指示した」

 

「んな細かいコトいいだろーが。余計なことされたら面倒になったかもしれねぇだろ?」

 

 

 可能性で言えばグリフォンの言葉にも一理ある。が、それでも今現状において守るべき対象である響に対して害を加えるなど、Kにとって許容できるものではなかった。

 

「とにかく、勝手な…!!ッ」

 

 言葉を途中で遮ったかと思えば、どういう訳か驚愕したような表情を顔に出してすぐさま、ある方向へと視線を向ける。

 

 位置的にはKの前方、翼にとっては背後になる。

 

 そこから1mにも満たない距離から、何かが疾走。それは人で、赤い髪に筋肉隆々とした体格の大男だった。

 

 身に纏っている赤いシャツからでも分かる程に引き締まった筋肉は、それだけ日々鍛えている何よりの証明だろう。

 

 そんな一人の男がビル三階建てよりも高く跳び上がる。

 

 もし、この光景を何も知らない常人が目撃すれば、相当自分の眼がおかしくなったと疑うことだろう。

 

 何をどう鍛えれば……いや、そもそも人間の脚力では、どうあがいても三階建てのビルより高く跳べる訳ない。

 

 幻覚だと切り捨て、思考へと費やす労力を止めることだろう。

 

 しかし残念ながら。これは紛れもなく、本当に現実として起っている事象なのだ。

 

 

「ハァァァァァァァッッッッッ!!!!!」

 

 

 雄々しい叫びを腹の底から吐き出して、左膝を折り畳み右脚を真っ直ぐ。

 

 そして螺旋の如く回転。空気が風となり、繰り出されるソレはまさに旋風の豪脚。

 

 それがKの身体へと到達する前にサッと後方へ飛び退いたおかげで、事なきを得た。

 

 しかし、それだけでは終わらず。

 

 標的を失った脚による一撃は、Kがいた位置に深さ30cm程度の小穴を形成するほどにコンクリートを貫き砕いており、これが人の身であるKに降りかかっていたらと思うと、背筋がゾッと凍りつく錯覚に陥ってしまう。

 

 まさにK本人がソレを嫌というほど味わっていた。

 

 

「ず、随分なご挨拶だ。風鳴司令殿」

 

「なに。お前さんなら避けられると思ったからな」

 

 

 結果はご覧の通り。

 

 強面の顔つきに似合わず、悪戯をして、それが成功したと面白がるような童心を恥じることなく曝け出すように、ニヤリと。

 

 筋肉隆々の大男、風鳴弦十郎はまるでそんなことを宣っているかのように笑って見せた。

 

 

「グオォォンッッ!!」

 

 

 弦十郎という男の存在の危険性をすぐさま嗅ぎつけた一匹の黒豹がKの影から躍り出る。

 

 シャドウだ。

 

 回転刃へと形状変化し、凄まじい速度の回転によって生じる刃の切れ味で弦十郎を細切れになったハムのようにズタズタにしてやろうと、そう殺気立っていた。

 

 シャドウは基本的に人を殺さない。いや、殺せないと言った方が正しい。

 

 悪魔の因子から生じたとは言え、バージルの悪夢を依代に実体化した弊害で生き物を殺害することができない。

 

 悪魔もそうだが、人も例外ではない。

 

 だがこの世界に来てからというもの、悪夢でしかない筈のシャドウたちは、不完全故に契約主からの魔力の供給が必要な身だったとは思えないほど明確な確固たる肉体を手にしていた。

 

 原理など分からない。

 

 理屈など見当もつかない。

 

 しかしありのままの事実として、そうなってしまった。

 

 つまり……その気になれば、人も殺せるのだ。

 

 そう。Kに危害を加えれるほどの実力と覇気を有した風鳴弦十郎という、人間に分類される敵を無慈悲に殺す腹積りでいたのだ。

 

 断っておくがシャドウの行動原理というのは、極めてシンプルなもので、自身。又は守るべき対象に危害を及ぼすものを、及ぼしかねないものを警戒し場合によれば殺すことも厭わない。

 

 在り方は悪魔としてやや異質ではあるが、それでも根本的な本能は何一つ変わってなどいないのだ。

 

 主に歯向かう者は、その牙で。

 

 己が存在を脅かす存在を、その爪で。

 

 殺意を向け襲い掛かろうとする事象に対し。

 

 死と破壊。この二つの形をもって排除する。

 

 ……もっとも。

 

 そう簡単に命を奪えるほど風鳴弦十郎という男は、"非常識"を鍛錬がてらに背負ってなどいない。

 

 

「フンッ!」

 

 

 ここで一つ、問題を提示しよう。

 

 面積の広さが大人一人を容易に丸呑みにしてしまうほどの巨大さを誇る刃があったとして。

 

 それがヘリコプターのローターに匹敵するか、あるいは以上に回転するとして。それが自身に迫って来た場合どうなるのか。

 

 まず身体を真っ二つか。あるいは八つ裂きという言葉が似合う位にバラバラにされて死ぬ。

 

 避ければ、あるいは身を隠して防げれるだけの巨大な人工物や巨岩があればそれを盾にして、難を逃れるかもしれない。

 

 しかし弦十郎の場合は身を守るモノが何一つない道路のど真ん中。

 

 絶望的。そんな三文字を側から見た人間は思うかもしれないが、"現実にシャドウの刃を左手の親指と人差し指の二本だけで摘むように防いでいる"様を刮目してしまえば、そんな三文字は容易に吹き飛ばされてしまうだろう。

 

 

「えェェッ! チョチョ、ちょっと待てよォォ! オイ!!」

 

 

 グリフォンは自分の眼が正常なのか。まさか、遠くから敵に幻術の類にかけられて、おかしくなってしまったのか。

 

 疑問が際限なく溢れ出ていく。

 

 だが、まごうことなき事実。

 

 風鳴弦十郎という、ただの人間が悪魔による攻撃に対し、時間も命も浪費することもなく止めてのけた。

 

 あろうことか、

 

 

「ほい、よっと」

 

 

 ポイっ。

 

 まるでありふれた漫画のアニメでよく見られる擬音が聞こえて来そうなほどに軽く、雑な扱いでシャドウを放り投げ捨てる。

 

 やはり悪魔の力でも持っているのではないか、と勘繰ってしまうかもしれない。だが、紛れもなく弦十郎は『人』なのだ。

 

 ヒト科の霊長類。人間。

 

 そこに間違いは一切ない。

 

 

「はは。コイツは中々元気のいい猫だな」

 

「グルル……」

 

 

 弦十郎に放り投げられながらもシャドウはすぐに回転刃から元の黒豹の姿へと戻り、見事着地して見せた。

 

 が、その顔は納得がいかない。気に食わない。

 

 そういった感情を滲ませ、風鳴弦十郎という男に対しての敵愾心と殺気を隠すことなく牙と共に剥き出していた。

 

 

(……相変わらず規格外だな)

 

 

 Kは口には出さず、心の中でのみそう呟く。

 

 己の使い魔が取った行動はKにとっても不意打ちのようなもので、そのせいで対処するに遅れが生じてしまった。

 

 シャドウは弦十郎を殺すつもりだった。

 

 人の命を奪うことに関して、Kはソレを禁忌としている。故にシャドウのした勝手な行動はあってはならない。

 

 主としてきちんと手綱を握り、止めなければならなかった。

 

 もし、弦十郎が只人なら、間違いなくその命は消失していただろう。

 

 だが、日の本の国を古より守護して来た、由緒正しき名家の血筋であればこそ。

 

いかに人外のモノでも、太刀打ちできずに何するものぞ。

 

そんな決意と覚悟を双方併せ持っている男の前では、悪魔の刃は意味を為さない。

 

 

「……。言い過ぎでは……いや、でも……」

 

「ブツブツ言ってどーしたヨ。非常識過ぎて頭が吹っ飛んだ?」

 

 

誰に向けて言うでもなく、何故か手を顎に当てて、考えるような仕草で独り言を零していくKに心配そうに声をかけるが、流暢に喋る猛禽類に"非常識過ぎる"などと語られたところで、『お前が言うな』と。

 

 そんなブーメランで投げ返されるのがオチだろうが。

 

 

「なぁ。とりあえず任意で同行願えないか。俺たちとしても知りたいんだ。何故、君がノイズを倒すことができるのか。君が使役していると思わしき動物たちは何なのか。聞きたいことが山のようにある」

 

「そうか。だがこちらにメリットは何一つない。役所仕事ご苦労とだけ言っておこう」

 

「悪いがそう言う訳にはいかんのだ」

 

 

 弦十郎は再び構え直す。おそらく何らかの拳法を主体とした接近戦へと踏み込んで来るのだろう。

 

 少なくともグリフォンはそう思っていたが、Kは違った。

 

 

(まずいッ!)

 

 

 Kが察した予想は見事に的中した。

 

 弦十郎はその場から一歩も動かなかった。何もしなかったという訳ではない。

 

 右脚の足裏に"氣"を込めてコンクリートを穿ち、それによって生じた衝撃波がKの下まで硬いコンクリートを砕きながら向かって行く。

 

 するとKの周りに更なる衝撃波が生まれ、それによって計8枚の分厚いコンクリートの巨大な瓦礫が出現。

 

 彼女を一歩たりとも逃さないよう取り囲んだ。

 

「奥義・八石封神」

 

 その言葉は、鍵の役目でも果たしているのか。弦十郎が呟いたその言葉と共に、8つの瓦礫がゴゴゴと重量感のある音を立てて動き、互いを隙間なく密着し合っていく。

 

 そうやっていく内に僅かな隙間も上もない、Kを捕らえる為の石牢が完成した。

 

 

「少々荒っぽいが……すまない」

 

 

 この石牢を作り出し、Kを捕らえた張本人である弦十郎だが、彼とて望んでこうしたかった訳ではない。

 

 できるなら穏便に済ませたかった。

 

 しかしノイズを容易く倒せる力を持つことが分かっている以上、放っておくことはできない。

 

 Kという少女が危険性を孕んだ人物であるのか、そうでないのか。

 

 これだけは、国民の安全を守る立場の人間として、白黒ハッキリさせたいというのが弦十郎の本音なのだ。

 

 不本意な方法ではあったが、これでKの真意を聞けるかもしれない。

 

 そう思っていた矢先。

 

 それは起きた。

 

 

『ノーノー、いけないYO。muscle boy』

 

 

 突然己に囁きかけて来る少女の声。聞き覚えは一切なく、翼のものでもKのものでも、ましてや響のでもないことは間違いない。

 

 しかも声は耳朶に入るというより、脳内に直接来るような妙な感覚で、生まれて初めての経験だった。

 

 そのせいか僅かとは言え動揺してしまい、ソレが仇となる。

 

 

『スリーとツーで、ワンッッショータイム!』

 

 

 妙なカウントを取り始めた謎の声はハイテンションでそう言った瞬間、石牢の真下に紫電に輝き迸る魔法陣が展開され、石牢の壁を8枚もろとも粉々に砕かれる。

 

そして。魔法陣の輝きが目で見ても耐えられる程度のものから堪らず隠したくなる程の閃光へと変化し、周囲を飲み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グゥゥゥゥッ!!」

 

「ウギァァァァァッッッ!!!!」

 

 地に足を踏んでいた感覚から一般、フワッと宙へと放り投げ捨てられたKは身体を転がりながら地面へ着地を果たし、グリフォンは飛べる事が幸いして地面と接触するギリギリのところで翼を羽ばたかせ、何とか回避。

 

 シャドウはKの中へと入っている為、特に問題はなかった。

 

 

「いっつ……」

 

「ハァ、ハァ、フゥゥゥ危なかったァ」

 

 

 動揺するグリフォンを尻目にKは衝撃で少しばかり強く打ってしまった頭を抑えつつ、周囲を確認し自分達の身に何が起こったのか。

 

 軽く情報整理を行うことにした。

 

 

「濃い瘴気とその中に含まれる魔力………まぁ、周りだけ見ても魔界なのは間違いないな」

 

 

 魔界の大気を構成しているのは瘴気と呼ばれる人体に有害な気体と、空因子と呼ばれる魔力の二つによって成り立っている。

 

 これが周りに満ちている場所は魔界以外にあり得ない。更にKたちは何処かの森にいるにのだが、その森の木々は異様に捻じ曲がり、顔らしき模様が不気味な声を上げて蠢いている。

 

 人間の世界にこんな森などない。

 

 おまけに空は血を満遍に塗りたくったように赤く、黒い謎の天体が大きく浮かんでいる。

 

 目に映る光景全てが人間界には絶対に存在し得ない。

 

 魔界と断定するに時間を浪する必要がない程に明白なものと言ってよかった。

 

 

「そんでもオレたち、魔界への歪みには入ってないゼ?」

 

「あの無茶苦茶な技に捕らえられた時、足下に広がった魔法陣を見たか? アレは強制的に歪みを作り出して魔界直行の門を作るモノだ」

 

「ビンゴオォォッッ!! 意外とお利口さんだねぇ!」

 

 

突如響き渡るグリフォンとK、そしてシャドウの一人と2柱以外の何者の声。

 

ハイテンションな声の持ち主の姿を捉えようと周りを探るK。意外とあっさり見つかった。

 

近くにあった木の天辺に、"彼女"はいた。

 

 

「……何者だ」

 

「フフ、命の恩人だよ♪」

 

 

笑いながら相手はそう言う。そして意気揚々とした雰囲気で自らの名を語る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたしの名は"ジェスター"。pretty trickyなピエロ女子って覚えといてよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






・風鳴司令

発勁で色々出来ちゃう、最強のOTONA。
発勁でコンクリート砕いて、その瓦礫でKたちを捕らえるとかもう人間やめちゃってますね、ハイ。



・風鳴翼

心乱れ気味で色々と荒れてる。
何故かKを見てると懐かしいような、悲しいような。そんな感情が訳も分からずに心の底から出てくるご様子。荒れ具合は原作よりも酷い人。



・ジェスター

 デビルメイクライ3に登場したハゲ……もといアーカムの悪魔としての姿。独自解釈として、今作の姿こそジェスター本来の姿と性別。  
 『3』に登場したジェスターは、妻を生贄とした儀式によってジェスターの力を奪ったアーカムの『魔人化形態』という解釈です。
 儀式は結局不完全に終わり、そのことも込みで『3』でのあの姿ってことにして下さい。
 あのハゲ本人じゃないにしても、癪に障る言動は一応の女性っぽさがあるだけで、『3』の時と変わらず。性格といったジェスターの根本的部分は原作のまんまです。
 今作ではアンノーウスに仕える悪魔の一柱という立場ですが、自身の思惑を匂わせつつ、あちらこちらで暗躍している模様。



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