戦姫魔晶シンフォギアD   作:イビルジョーカー

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 ※題名を変更しました。



 訳題『次なる一手と思惑』

 新たな幹部の登場です。








第17話 The next move and speculation

 

 

 悪魔とは、魔界に生息する異形の生物を指す。

 

 姿形。能力。性格。

 

 それらは個体ごとに違っているのだが、共通しているのは『人間を下等な存在と見下す、あるいは嫌悪』している点と、『力とそれに連なる強さを信奉する価値観』。

 

 悪魔にとって、力とは命の次に彼らにとって大事な部分で、だからこそ、人を弱者に過ぎないと思っている。

 

 せいぜい己の魔力を強める『贄』か。あるいは依代という、人間界で活動する為の『服装』程度の認識でしかない。

 

 よって、彼等は何の躊躇いもなく目的の為ならば、容易に人に害を成す。

 

 

『オォォォォッ!!』

 

 

 今宵もまた、悪魔が人間界へ訪れる。

 

 人の苦痛、恐怖、絶望を存分に味わう為におぞましい叫びを上げて人の世へと現れたのは悪魔の名は『ヘルゲ』。

 

 人並みに知能が高く、言語も理解し話すこともできる悪魔で、その生息総数は多種多様とある悪魔の種族の中でも不動の一位を貫いている。

 

 とは言え、彼等は悪魔としてはトッソ(最下位)か、ソプラス(下位)程度の雑魚でしかなく、稀に強い個体が生まれたとしてもコンプレア(中位)しか成り得ないが。

 

 更に特筆すると、ヘルゲには種類が色々ある。

 

 しかし悪魔のイメージを体現したかのような角と尻尾。そして焔を出すことができるという点は例外なく共通しており、今回現れた種類の名は『ヘルゲ・パニッシュメント』。

 

 縦状の両眼と口を持ち、特に口は顔を丸々半分に割るほどに大きく裂けており、並ぶ鋭い牙は人間の頭蓋骨どころか、鉄骨さえ噛み砕いてしまう。

 

 指は4本あり、牙と同じ性能を誇る為、一振りでも容易く人の命を奪い、頑丈なものでも破壊せしめる。

 

 

『ハァァ……イイね。旨そうな人間どもの匂いがたまらねぇぇなぁ』

 

『早く食っちまおうぜ。ガキの血肉は俺に寄越せよ?』

 

『ハッ! 相変わらず食いの好みがなってねーな。ガキ臭い肉より若い女の肉が絶品だぞ』

 

 

 そんな会話を仲間内で弾ませ、計8体のヘルゲは雑木林の茂みから、キャンプ場の様子を伺う。

 

 時刻はもう深夜なので、テントを張っている客はその中で眠りに就いている。

 

 音もなく襲いかかれば、容易に中の人間は悪魔たちの晩餐へと早変わりだろう。

 

 人間を一人や二人と複数襲うことなど、造作もない。悪魔に対する知識を持っていれば話は別だが、生憎、このキャンプ場に訪れている客は

 紛れもなく一般人。

 

 対抗する術を知らないどころか、悪魔など、その存在すら信じてはいない。

 

 そんな信じていない存在の腹を満たす為の喰い物へと成り下がる恐怖。家族連れの客達は、それをこれから嫌でも味わい尽くされる羽目になる。

 

 命乞いは通用しないだろう。

 

 運良く逃げることに成功しても、容易く追いつかれ、捕まって苦痛を与えられながらじっくりと喰われ、そして終わるだけ。

 

 ほんの一時の生を得るだけで、真に逃れることなどできはしない。

 

 "何事も起きなければ"の話だが。

 

 ボォォッ! 

 

 炎が燃え上がる音が唐突に聞こえて来たかと思えば、一匹のヘルゲ・パニッシュメントが一瞬……数字で表せば、ほんの2秒程度。

 

 体色が黒ずんだものに変わり、口から煙を吐き出す様に生命の鼓動も息吹も感じられず。

 

 それを見た他のヘルゲたちは、本能的に察する。

 

 立ったまま、それこそ物言わぬ像のように一匹のヘルゲ・パニッシュメントは絶命したのだと。

 

 

『どうなってる?! 何が起きた!』

 

『"術師"どもか? だが気配がない!』

 

『隠れてやがるんだ! クソッ! どこにいやがる!!』

 

『ギィッ』

 

 

 混乱の中、また一匹。

 

 今度はヘルゲ・パニッシュメントの胸を背後から何かが貫く。その衝撃と焦げ付くような熱い痛みに短い声を漏らし、命を散らすと共に身体は薪の如く燃え上がる。

 

 

「ふん。待ってみれば……とんだ雑魚だな」

 

 

 悪魔の身体を貫いたのは、なんと『髪の毛』だった。

 

 ヘルゲ・パニッシュメントを相手にそんな台詞を吐いた一人の少年は、その長い髪の毛を一本の束、ポニーテール状の三つ編みにしており、それがヘルゲ2体の命を奪ったものの正体。

 

 最初の"見えない攻撃"は、近くの木の枝。

 

 その茂みから髪を瞬間的にのみ伸ばし、人間はおろか並の悪魔の動体視力さえ捉えきれぬ高速の捌きで、ヘルゲ1体の首を断ったのだ。

 

 あくまで様子見するつもりだったのだが、今の自分でも対処できると判断した少年は、堂々と姿をヘルゲたちの前に晒したのだ。

 

 

『テメェか小僧!』

 

『ヒャハッ、見えりゃあ問題ねーよッ!!』

 

 

 8体の内、2体を葬った。

 

 そして、こうして姿を現したのはおそらく慢心しているのだろう。

 

 偶然とは言え、悪魔を2体も狩った。

 

 だったら他のも余裕で狩れると踏んで、その姿を晒した。

 

 少なくとも、6体となったヘルゲ・パニッシュメントたちはそう考え、一気に少年へとその牙を、爪を。

 

 突き立て、八つ裂きにしようと迫る。

 

 

「アホが。間抜けはさっさと死ね」

 

 

 だが、それは根拠のない"慢心"に侵された……愚かな持論に過ぎない。

 

 少年の髪は、"灼熱"を迸らせ6体のヘルゲ・パニッシュメントたちの首を瞬時に"焼き斬る"。

 

 

「掃除完了。さっさと報酬貰いに行くか」

 

 

 大して騒ぎを起こさず、迅速的に。且つ、比較的大きな音を立てずに夜のキャンプ場を守った少年は、そんな呟きを虚空に残して闇夜に紛れて消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘッヘッ! まずは黒幕への痛手に乾杯ってな。ほらよ」

 

 

 魔界。悪魔たちが右往左往と溢れ蠢くその世界の、小さなボロ屋で情報屋を営んでいる矮小な悪魔である酒喰らいのバクスは、手に持ったワイングラスの中に半分と注がれているビールを傾けながら、それを勧める形でKへに差し出す。

 

 しかし、とうの本人はパラパラと分厚く、それなりの年数を感じさせる風化を伴った古本のページをめくり、見聞している。

 

 このまま無視するのかと思いきや、Kは本をパタンと閉じて、冷え切った目をバクスに向けた。

 

 

「悪いが酒は口に合わない」

 

「んだよ。一杯やれよ」

 

「大体それはお前が口をつけたのだろ。別のをよこすのが客に対する礼儀じゃないか?」

 

「そりゃ"悪魔"だからな。礼儀なんて高尚なもん期待すんなって」

 

 

 バクスはそう言って、ビールをゴクリと一飲みし汚らしいゲップを吹く。その臭いと無神経な行為に顔を嫌そうに顰めるK。

 

 するとKの刺青が蠢き、グリフォンとシャドウが出てくる。

 

 

「オイ! くっせーっての!! 猫チャンがやめろって言ってんぞッ

!!」

 

「グルル……」

 

 

 どうやら、グリフォンもシャドウも良く思ってないらしい。

 

 当たり前だが。

 

 

「どーどー! 落ち着けって。はいはい、わーるかったよ」

 

 

 とりあえず口では謝りつつ、適当にそう言って遇らう。バクスがこういった性根なのは知っているので、Kは敢えて目を瞑り、気分を切り替える為に新たな情報を求めた。

 

 

「アンノーウスの従えてる他の悪魔は? 勿論、雑魚じゃなくて幹部のだ」

 

「教えてもいいがよ、あと一つ分だけだぜ?」

 

 

 バクスは情報料に金銭を要求しない。彼にとって札束は紙屑に過ぎず、両手で抱えるしかないほど大きい金塊も金属のガラクタになるほど、彼にとって何の価値も見出さない。

 

 それよりも求めるのは『酒』。

 

 質の良いレアものなら、情報100個分も提供してしまうほどに彼にとって酒は、命の源といっても差し支えない貴重なものだ。

 

 Kは、そこそこ良い部類に入る酒を三つ分提供しており、二回消費している為、実質バクスから得られる情報は一回きりという訳である。

 

 

「酒ならまたくれてやる。もっと良いのをな」

 

「ヘッヘッそうかい! んじゃ、『ケルベロス』と『クラーケン』っつー、新着ホヤホヤの情報をくれてやるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 side ??? 

 

 

 

 アンノーウスは、フツフツと沸き起こる憤怒の情念をマグマのように煮え滾らせながら、自らの下につく"幹部たち"を前にその口をゆっくりと。重く響くような声を解放させる為に開く。

 

 

「聞け。一言一句聞き逃すな。アラクネアのクソアマが死んだぁ」

 

 

 薄暗く、四方八方と壁や床、天井がまるで生き物のように蠢き、まるで心臓のような脈打ちを息づかせている。

 

 悍しく得体の知れない恐怖を呼び起こしかねない異様な空間の中でアンノーウスは、無数の硬質的な触手の様なものが幾重にも絡んだ玉座に腰を下ろし、威風堂々と。

 

 さながら揺るぎようのない王者の覇気を纏わせていた。

 

 ……ついでに言えば、底知れぬ怒気もだ。

 

 

「アラクネアが死んだのは痛い。アイツ自身に価値はねぇが、魂を良質化する物質を作っていたのは他でもないアラクネアだ。希魂が大量に手に入らないからこそ、代わりに魂の良質化で事を成そうって予定が……かなりぃぃぃ……狂っちまったんだよなぁぁ」

 

「ハッ! 死んだのかよあのキモ女」

 

 

 怒り絶頂という程に精神的によろしくない状態のアンノーウスだが、そんな彼など眼中にないとばかりにアラクネアに対する嘲笑の声を上げる者がいた。

 

 短めの金髪を逆立たせ、袖が異様に広い白色のシャツと青のズボンをラフに身に付けた青年。

 

 一目見たぐらいでは、その程度のことしか分からないだろう。が、彼もまた正真正銘『大悪魔』だ。

 

 

「こいつは嬉しい〜ね! おいアンノーウス! 俺に奴が運営してた企業をよこせよ!」

 

「たかが人間の組織など、どーするつもりだ」

 

 

 アンノーウスではなく、彼の右隣にいたブラウンカラーのスーツを纏った初老の男性が指摘する。

 

 

「金が欲しいんだよ。ボチボチ増やねーと無くなっちまう」

 

「そんなもの、奪えばいいだろ」

 

「人間界に入ったら"ある程度は"法に従うってポリシーがあるんだよ

 

 

 どうやら金髪の青年は悪魔でありながら、人間の布いたルールを言葉通り『ある程度は』尊重するらしい。

 

 人間に対する配慮と気遣いを一切持たない悪魔にしては、妙なポリシーと言う他にないだろう。

 

 そんな青年の言葉に初老の男性はそれ以上何も言うことはなかったが

、明らかに呆れを含んだ溜息を漏らす。

 

 

「ケルベロス。金ならいくらでもくれてやる。アラクネアが運営してた企業もな。だが、今は対策を捻ってもらわねぇぇと困るんだよぉ」

 

 

 金髪の青年……ケルベロスと言う名の悪魔は、その言葉に不敵な笑みを浮かべた。

 

 

「策ならあるぜ。とっておきの、な」

 

「策? 能無しがよく吠える」

 

 

 今度はケルベロスの左隣にいた女性が、冷めた視線と表情で物を言う。

 

 長い銀髪に、ノースリーブの黒いシャツ。

 

 頭には軍帽を彷彿とさせるタイプのキャップを被り、服装は灰色の軍服。厳格さと冷酷さを織り交ぜた軍属の麗人というに相応しかった。

 

 

「あぁ? なんつったコラ」

 

「能無しがよく吠える、と言ったのだ。頭だけじゃなく耳も悪いのか?

 

 

 一瞬触発。まさしくそれを絵に描いたような、空気が重く張り詰めていく光景が展開される。

 

 

「……まぁ、いい。まずは聞けや」

 

 

 今にも彼が得意とする"雷撃"が放たれてもおかしくなかったが、寸前のところでケルベロスは抑えた。

 

 ここで暴れることは簡単だ。しかし、そうなれば黙っていないのがアンノーウスだ。

 

 ケルベロスもアンノーウスが極度の怒りに在ることは、わざわざ説明しなくとも理解している。同時にそれを一気に爆発させると言うことが

いかに愚かなことなのか、それも重々承知している。

 

 だからこそ自分に向けられた挑発に対し、その苛立ちと殺意を抑え込み、飲み込んだのだ。

 

 

「人間の血を集めればいい。人間の血は魂と同じで魔力を高めてくれる最高の嗜好品だ。けど分かってると思うが……ただ集めただけじゃ意味

がねぇー。どうしたって魂には劣るからな」

 

「自信満々に言うってことは……きちんと考えがあるって解釈していいんだろぉぉな?」

 

 

 アンノーウスの嫌にトゲの篭った指摘に動じることなく、ケルベロスは答えた。

 

 

「もちろん。そもそもなんで血が魂と同じ魔力を強める要因になるのかってー考えたことあるか? 血そのものじゃなくて、それを媒介に生命力が含まれてるからだ。そんで、この生命力を一気に向上させる儀式をやって『人間の血で出来たレッドオーブ』を精製するんだよ」

 

 

 レッドオーブとは本来、悪魔の血が凝固し石のように硬質化した楕円形状の物質だが、ケルベロスはそれを悪魔のものではなく、人間の血を材料に特殊な儀式を用いて造るというのだ。

 

 

「どうだ? これが俺の掲げる『ヒューマン・ブラッドプラン』だ。悪くねぇーだろ?」

 

 

 ケルベロスの提示して来たプランにアンノーウスは、暗く黒い瘴気に覆われた内側からスッと……満足そうに目を細める。

 

 

「確かに。発想はいいな。だが一つや二つ造る程度じゃ足りないぞ。人間が大量に消失すれば騒ぎになる。そのせいで嗅ぎつけられた場合、どうするのか。その辺のところも考えてんのか?」

 

「んなもん、大事にならないよう人を集める方法なんざ、いくらでもある。もし万が一嗅ぎつけられたってんなら……俺が直に始末する」

 

 

 揺るぎようのない確固たる自信。それを嘘偽りのない言葉で示した以上、アンノーウスは何も異議の一つさえ発言することはなかった。

 

 ただ、命じるのみ。

 

 

「ならやれ。"雷獄の覇龍"の名に期待する」

 

 

 それを聞いたケルベロスは、ニヤリと。不敵な笑みを深めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雷獄。魔界の深層にある『地獄界』において、落雷が常に降り注ぎ、絶えず地面を稲妻が疾り抜けるその領域は、生半可な強さでは意味を為さず、命を落とす程に過酷な環境となっている。

 

 その雷獄の頂点に君臨する悪魔がいた。

 

 "雷獄の覇龍"と謳われ、恐れられる三つ首の龍の大悪魔。その名を"ケルベロス"。

 

 彼が放つ稲妻は幾億と犇く悪魔の大群を容易く消し炭に変え、地形さえも変えてしまうほどに強力であり、無慈悲。

 

 その身体は一切余さず"雷"で構成されているので、物理的な攻撃はおろか雷属性の攻撃は全く意味を為さず、通用しない。

 

 つまり……。

 

 

「オレ用無しィィィィィッッッ!!」

 

「よく分かったな。チキン頭にしては上出来じゃないか」

 

 

 バクスの酒場で絶叫するグリフォン。その様は自分が次に戦うであろう相手に対し、一切役に立たないという現実を前に絶望するかのような

……いや、実際してるのだろう。

 

 暗い雰囲気を纏わせて端っこの方で項垂れる彼の姿は、見る者によっては哀愁を匂わせるかもしれない。が、Kはあくまで無関心。

 

 

「ケルベロスと言う悪魔については分かった。それで、もう一体のクラーケンに関しては?」

 

 

 勝手に腐っていく鷹の悪魔を無視してKはバクスにもう一体に関しての情報を促す。

 

 

「クラーケンは魔界の表層……つまり、俺達がいる人間界の影であるこの領域全ての海を支配する、まさに"海の女王"ってヤツでな。見た目は銀髪の美人な姉ちゃんだが、気を付けろ」

 

 

 やたら妙に真剣さを含ませて、バクスは語る。

 

 

「クラーケンは自分に楯突いた連中の魂を取ってコレクションにしちまうのさ。それを美術品の中に入れて楽しむっつー、実に悪魔らしい趣味をしてやがる。けどそれは……まだいい方なんだよ」

 

 

 手元にあったビール瓶を手に、グイッと。

 

 中身をゴクゴクと喉を鳴らしながら飲み込んでいき、ある程度飲むと口から瓶を離し、話を続けた。

 

 

「取られた奴等の中には苦痛と恐怖……絶望しか感じることのできない特殊な仮初の肉体に入れられて、とんでもなくヒデェ拷問されてるって話だ」

 

 

「なるほど。とことん悪魔らしい訳か」

 

 

 嗜虐思考はアラクネアと同等か、それ以上か。

 

 何にせよ、悪魔とは大抵自分より下に位置する人間を蔑み苦痛を与えて快楽を見出す輩が大半なので、性格や趣味思考はKにとってはどうでもいい。

 

 もっとも知りたいのは、どういった魔術あるいは能力を持っているのか。または弱点など戦うことを想定した上で、それに役立つ情報なのだ

 

 

「あー、はいはい。肝心の能力とかだろ?」

 

 

 目で訴えていたのが伝わったらしく、説明を始めた。

 

 

「海を支配するだけあって、水を操作する能力は勿論、水を司る魔術も得意だ。あと毒もあるらしいから、こいつには特に気をつけた方がいいぜ」

 

「分かった。それで、その悪魔たちの居場所は判明してるのか?」

 

「いいや。どうにも隠蔽が上手くてな。アラクネアがお前さんにやられてから、慎重になってるらしい」

 

「……なら、こっちから探し出して始末する」

 

 

 そう言うと椅子から腰を上げて、立ち上がる。

 

 開き読んでいた本をパタンと。音を立て閉じ、本来の持ち主であるバクスに差し出した。

 

 

「中々面白かった。ありがとう」

 

「お、おう」

 

 

 返されて来た本を受け取りながら、素直に礼を述べて来たKに思わず、少しながら動揺を見せるバクス。

 

 出会った当初から、素直に礼を言わなさそうな……どこか棘を帯びた雰囲気を漂わせ纏っていた為、まさかこうもすんなりと礼を言ってのけるとは、思ってもみなかった。

 

 それも柔らかい笑顔つきで、だ。

 

 戸惑いを感じてしまうのも無理ないだろう。

 

 

「また来る」

 

 

 そう言い残し、一人と二匹は酒場を去る。

 

 去り際に受け取った本を改めて見てみるが、本自体は別段普通のものだ。散歩気分で人界を訪れたバクスが見つけ、まぁ、暇潰しになるかな

と思いゴミ捨て場から拾ってきたものだ。

 

 普通に書店に行けば買えるであろうソレを、どういう訳か。Kは食い入るように見ていた節があった。

 

 

「……なんか思い入れでもあるのかね? こんな本に……」

 

 

 本のタイトルは『オーディンの詩集』。

 

 北欧神話における最高神にして戦神。同時に詩文の神でもあった彼は神話の物語の中で様々な詩を口にする場面があり、又、それ以外でもオーディンが作り上げたとされる詩文の数々が、この本には余さず載っている。

 

 

「……つーか、アイツ。詩なんて読むのかよ」

 

 

 意外な事実だった。バクスから見ると、とてもそんないい趣味を持っている風には見えないので、素直に驚いたのは……ここだけの話である。

 

 

 

 

 

 

 






デビルメイクライ5が公開されてから、何ヶ月と経ちましたが……こう
、なんか追加ストーリーとか、そういうのが欲しいと思う今日この頃。

冒頭に出てきた少年の正体は、後々……。



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