戦姫魔晶シンフォギアD   作:イビルジョーカー

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訳題『血涙』




まさかXDがガメラとコラボするとは……これはもう、ガンダムや仮面ライダーと共演してもおかしくないですね、ここまで来ると。

そして今回は原作の『絶唱顔を晒した』回、その前編的な回です。


ちなみに今回XDからのキャラが登場します。その正体は……。







第22話  tears of blood part1

 

 

 

side 立花響

 

 

 

そう望んだ訳でもなく、思わぬ形でシンフォギア装者となってしまった立花響だが、それでも彼女の中に戦いから"降りる"という選択肢はなかった。

 

確かに、今まで平凡に生きてきた、ただの学生である自分がノイズという異常な存在を相手に戦うなど無謀で、愚かな事なのかもしれない。

 

そう思う気持ちがあっても降りなかったのは、彼女にとって『人助け』という行為が自分自身を形成する上での芯になっているからだ。

 

弦十郎に『シンフォギア装者として戦ってもらいたい』という、一般人に対して無茶で強引に思えるような要望を聞いた時、即答で了承するほどだ。

 

それだけ響にとって人助けというのは、当たり前で、優先事項なのである。

 

しかし。それは他人から見れば、ある種の自殺願望と捉えられてもおかしくはない。

 

考えてみてほしい。

 

ただの平凡な一般人として学生業に勤しみ、仲の良い友達と遊んだり、他愛無い談笑をして過ごして来た少女が何の脈絡もなく、『君には力がある。だから是非人類を脅かす敵と戦って欲しい』などと言われて、即答できるだろうか?

 

普通ならできないだろう。

 

力があるからと言って、十分に戦えるのかと聞かれれば、答えは『否』

 

 

無理にも程がある。

 

戦う為の術や方法を習う以前に『戦う覚悟と意思』、その精神的な基盤が全くないのだから。

 

その要請を願い出た弦十郎自身、いかに自分の言っていることが支離滅裂なもので、響本人のあるべき未来を摘み取りかねないある種の外道な発言であることは、十分理解している。

 

故に、考える余地なく即答で言ってのけた響に対し弦十郎は懸念を抱いていた。

 

立花響という少女の心に根付く"歪み"を。

 

しかし当の本人はそんな自覚などなく、今日も現れたノイズを倒す為、ガングニールのシンフォギアを纏って現場へと駆けつける。

 

幸い、既に民間人は残さず避難しており、誰もいない。

 

ただ……今の響は、心底腹の虫が悪かった。

 

 

「見たかった……未来と一緒に、見たかったのにッ!!」

 

 

原因は、親友である未来と約束した『今晩一緒に流星群を見る』という予定を叶えられなかった事にある。

 

大好きな親友との約束を、何の予兆もないノイズの発生という緊急事態で台無しにされた。

 

その怒りの矛先が元凶であるノイズへと向けられた。

 

地下鉄で発生した様々な形状のノイズたち。一番手に響に襲いかかって来たカエル型を殴り倒し、続いて手がアイロンのようになっている人型ノイズの何体かを回し蹴りで吹き飛ばし、炭素の塵へと還す。

 

このままではやれるだけだと思ったのか、大勢で響に覆い被さるがそれも無意味だった。

 

橙色の極光を迸らせ、エネルギーの衝撃波がノイズたちを容易く吹き飛ばす。

 

倒れ込んだ人型ノイズを馬乗りの状態で、その顔らしき部位を胴体から引き千切る。

 

そこに技量的なものは一切ない。ただ胸の奥から湧き起こる怒りをエネルギー源に、力任せに倒していくだけ。

 

さながら、野獣のようだ。

 

表情も顔に陰が差し、凶暴性を帯びた赤い眼光を放ち、まるで他者を壊し蹂躙する事を楽しんでいるかのように狂気的な笑みを浮かべている

 

このままやり合っても勝てない事を悟ったのか、1匹のノイズがその場から逃げていく。

 

しかし不幸なことにそれを目撃した響はすぐに逃すまいと、追いかける

 

ノイズを追っていく内にやがて地下鉄を出た響は、ある場所へと辿り着く。追っていたノイズは制限時間を超えた為、既に消滅している。

 

そこは、なんてことのない森林公園の広場。

 

しかし、何もない拓けた場所だからこそ、夜空を駆けていく流れ星たちを見ることができた。

 

一つ一つ、ほんの瞬く間に線を描き、消えていく。人は太古の昔からその僅かにしか見れない星に願いを込めて祈りを捧げていた。

 

本当なら、今自分の隣には親友の未来がいた筈なのだ。でもそれは叶わなかった。

 

 

「私……呪われてるのかな」

 

 

よく使う口癖が自然と零れる。

 

やや憂愁な気持ちに浸っていると再びノイズが現れ、響はすぐさま対処しようと構えるがすぐに無意味となった。

 

無数の剣を雨の如く降り注ぐことで敵を貫く、『千ノ落涙』と呼ばれる広範囲型の技がノイズを瞬く間に葬り去ったからだ。

 

技を繰り出したのは、風鳴翼本人。

 

響の前へと着地したものの、彼女に声をかけることもなければ、目を向ける事もない。

 

やはり翼は響自身を共に戦う仲間として、見てはいない。

 

彼女にとって背中を預けられる相棒は……どうあっても天羽奏しかいないのだろう。

 

それでも。響は翼に向けて言葉を紡ぐ。

 

 

「あ、あの! 翼さん! 私…」

 

「お前らが、風鳴翼と立花響か?」

 

 

至らなくても、無様だったとしても、一緒に戦いたい。

 

そう告げようとした途端、一つの声が遮る。

 

声の主はすぐに分かった。堂々と現れたのだから。

 

赤い髪をサイドテールに束ね、響より少し下程の身長の少女。

 

年齢も、翼や響とそう変わらないだろう。

 

ただ一つ目を引くのは……彼女が身に纏っている真紅の装束。

 

翼や響が着ているシンフォギアに似た機械的な装甲部位に肌と密着したインナースーツ。

 

 

「まさか、シンフォギア……なのかッ?!」

 

 

翼は、動揺と疑念を織り交ぜたような声を張り上げた。

 

実際どうなのかは分からないが、シンフォギア というものを見て知る者ならば、少なくとも少女が纏うソレをシンフォギアだと断ずるのも、

無理ないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side 風鳴翼

 

 

 

シンフォギアシステムを構築し、対ノイズ兵器の実用化として完成させたのは紛れもなく櫻井了子本人。

 

生みの親といっていい彼女が造り上げたシンフォギアシステムを何故、明らかに二課の人間ではない一人の少女が纏っているのか。

 

疑問は尽きない。

 

故に……問わずにいる訳にはいかなかった。

 

 

「何者なの貴方は。どうして、シンフォギアを纏って…」

 

「ごちゃごちゃすんなよ。お前ら二人を殺しに来たって言えば、十分だろ?」

 

 

しかし、馬鹿正直に答える筈もない。

 

にべもなくそう言われた翼はこれ以上の文言は無用と判断し、刀を構える。

 

 

「ハッ! いい闘気だ。まずはお前からやってやるよ」

 

 

そう言って少女は、翼の刀と同じようにアームドギアを展開していく。

 

最初は何の変哲もない金属の棒状だったソレは、何分と費やすことなく瞬く間に変形し、赤熱の宿るエネルギーの両刃を持つ戦斧へと姿を変えた。

 

 

「や、やめて下さい! 翼さんも! 相手は同じ人間ですよ?!」

 

 

両者一瞬触発という、ただならぬ空気の中で響は二人の間に入り、叫ぶ。

 

元一般人である響からすれば、殺し合う現場というのは度し難いというのもあるが、彼女の信念である『人助け』とは程遠い真逆の行為。

 

それが自分の目の前で行われようとしているのを黙って見過ごせるほど、彼女の中に割り切るという選択肢は存在しない。

 

 

「戦場で何をバカなことをッ! 貴方は下がってなさい!!」

 

 

聞く価値などない。そう吐き捨てる翼だが、対する少女の方はと言うと、至って冷静に言う。

 

 

「なるほど。まぁ、俗に言うところのお人好しって類か」

 

「え?」

 

「俺としてはアンタみたいなお人好しは嫌いじゃないから見逃してやりてぇ……が、生憎とそう言う訳にもいかないんだ」

 

 

ほんの少し、あるいは微かか。そんな曖昧な程度の悲哀を滲ませつつ、嘘偽りのない殺気を響へ向けて少女はそう言う。

 

 

「変更だ。余計に苦しませるのは性分じゃねぇから、今ここで俺が一息でお前を殺す」

 

「その前に私がお前を斬る!!」

 

 

翼から響へと優先順位を変えた少女は、自らの愛武器である戦斧を響へと向ける。

 

その態度を嘗め切っていると、勝手に判断した翼が刀を横一閃に繰り出す。

 

狙うは、腹部。

 

勿論加減はしてあるし、アレがシンフォギアと同じようなものであれば何らかの保護システムが働くだろうと踏んでの一手だった。

 

しかし。

 

 

「!?ッ」

 

 

何かに(・・・)に刀身を抑え込まれる形で阻まれた。

 

その何かは……よく見ればムカデだった。

 

それも人間の腕を超す大きさの。

 

 

「ひぃっ!」

 

 

思わず、情けない声が翼の口から漏れた。

 

やはりそこは女の子である為か、虫の類が相当苦手であるらしい。

 

すぐさま振り払うが、ムカデは落ちることなくスルスルと宙に浮きながら後退していく。

 

 

「ギィ、イィィィ……」

 

 

下がっていくムカデの後ろには、一人の女性が立っていた。衣服のようなものはなく、しかしその肌は温もりの通った血の気のいい人肌とは到底思えない、濁った青色の肌。

 

下半身は腰部に妙な渦巻模様が描かれ、上半身よりも濃い青となっており、両足は硬質的な灰色の外殻に覆われた異形の足。

 

これだけでその女性が普通ではないことが分かるのだが、極め付けは『顔』と『胴体の中央』、そして『腕』だ。

 

『胴体の中央』には、胸から腹部にかけて縦に穴があり、穴の中にはまるで生き物のようにうねりとした動きで蠢く黒い紐状のモノが潜んでいた。

 

ただ、ソレは1本や2本程度ではなく、夥しい数が女性の身体の中で犇いていた。

 

顔も同じように縦穴があるのだが、目は一つしかなく、その目の周りには黒い縁のような模様が覆い、胴体の縦穴と同じく紐状の何かが顔を覗かせているかのように這い出ている。

 

胴体よりも、その数は多かった。

 

そして…先程翼の刀に絡みついて来たムカデはなんと、女性の左腕と一体化しており、忙しなく脚を動かしていた。

 

 

 

「なんだ……コレはッ?!」

 

 

あまりに人間とは呼べない、悍しい存在。

 

ソレを目の当たりにした翼は心底から湧き出て溢れ、止まることを知らない『恐怖』という名の感情に手を、身体を震わす。

 

響も同じく、止まらない恐怖に支配され、足が雁字搦めに固定でもされているかのように動くことができなかった。

 

 

「"悪魔"さ」

 

 

そんな二人の心境を露知らず。

 

むしろ、興味さえないと言わんばかりに淡々とした声音で、恐怖を呼び起こさせるその対象の名を、少女は口にした。

 

 

「あ、悪魔だと?」

 

「魔界っつー異次元の別世界からこっちに来る化け物さ。好物は人間の血肉と魂。んでもってそのままの状態じゃ消えちまうから、無機物や生き物に憑依する。よく聞くだろ? 悪魔が人に取り憑いて色々悪さするって類の話。アレ、マジなワケ」

 

 

わざわざご丁寧に解説してくれた少女は、人差し指を女性へと向け、その"悪魔の名"を口にする。

 

 

「コイツの名前は"ピートウィッチ"。見ての通りムカデに似た悪魔が人間の死体と融合して、あんな見た目になってる」

 

「ギィィィ……ギギ、キ、キィ」

 

 

ピートウィッチと呼ばれた、女性の似姿をした

悪魔はまるで答えているかのように金属同士を擦り合わせたような声を上げる。

 

どうやら、人語を介するほどの知性はないらしい。

 

 

「んでもって、コイツも紹介しないとな」

 

 

パチンッ。

 

フィンガースナップの乾いた音が周囲に響き渡る。やがて、ソレは黒いモヤと共に姿を現した。

 

目を引くのは、角を有した獣の頭蓋骨を象った仮面。ほぼ頭をすっぽりと覆い隠すのに十分なフルフェイス型で、体格はやや細い印象を受けるが脆弱に見えるという訳ではなく、あくまで細型の筋肉質のソレだ。

 

体色は灰色だが、両肩から胸部中央にかけて幾何学的な模様があり、赤や青、緑や紫といったカラフルな色合いで占められ、各色の部位から同色の血管のようなものが張っている。

 

両腕は右手が6本の硬質的な指、左手が棘状の刺突武器と化しており、実質物を掴むといった手先の行為は右手しかできないだろう。

 

そして。ドリームウォーカーの下半身は存在しておらず、代わりに黒い霧とも靄ともつかないものが蠢いていた。

 

 

「コイツは"ドリームウォーカー"。まぁ、カラフル野郎って覚えときゃいい」

 

『聞き捨てなりませんな、少女よ』

 

 

少女にドリームウォーカーと紹介されたその悪魔は、発音・口調とう何ら問題のない人語を話し、難色を示した。

 

 

「間違ってないんだから。別にいいだろ」

 

『……よろしい。我が名を今一度言いいましょう。ドリームウォーカー!

『幻夢の渡来者』と呼ばれし者!!今宵、貴方たちは我が幻夢に魅入られてしまう』

 

 

芝居がかった口上を吐き出すドリームウォーカー。その様子に少女は呆れ果て、その言葉を向けられたとうの本人である翼と響ら2人は困惑を隠せなかった。

 

 

「くっ、もういい! 悪魔だろうと何だろうと敵は斬る! それが防人だッ!!」

 

 

だが、相手が自分達を殺そうと言っている。

 

響は気づいていないが少女から放たれる殺気は本物。幼い時から戦場で戦う者としての培って来た経験が成す、一種の第六感が翼にそう告げている。

 

ならば、剣を手に取って応えるしかない。

 

恐怖を何とか払い除け、半ばヤケ気味ながらも刀を構え、斬り結ぼうとした……

 

 

その時。

 

 

何処からか一つの閃光が飛来した。発生した位置は、響の影(・・・)

 

閃光の向かう先にいたのは……ピートウィッチだった。

 

 

「ギィィィィィィッッ!!!!」

 

 

人のものとは到底言えない、おぞましい断末魔の叫びが轟く。

 

そして。響の後ろ……彼女の影にその悪魔はいた。

 

 

「あ、悪魔さん!」

 

 

背後を振り返った響は悪魔…ナイトメアの姿を見て、思わず安堵の笑みが零れる。

 

 

『ムム。見たことのない悪魔ですな……しかし、実力は下手すれば私より上か』

 

 

ピードウィッチがナイトメアの光線にやられたというにも関わらず、ドリームウォーカーは平然とした様子でナイトメアを分析する。

 

そこに動揺は一切ない。

 

 

「まぁ、いい。まずは青き少女を我が幻夢の中へ誘おう!!」

 

 

ドリームウォーカーは、堂々とした口調でそう言い放つと、仮面の眼窩の奥から緋色の妖しい光を灯し、途端に周囲が闇に包み込まれる。

 

星空も、足下の地面さえない暗黒の中で翼は安易に動こうとはせず、ただ相手の気配を何とか掴もうとしていた。

 

 

「雲隠れのつもりか?! 小癪なッ!」

 

 

視界を断ち、暗闇を利用しての奇襲に警戒して翼は神経を尖らせ、全身の感覚を集中する。

 

彼女の考えは当たっていた。

 

ドリームウォーカーという悪魔のやり口は確かにこの暗黒を利用した奇襲に違いはない。

 

ただこれは視界を遮り、自らを隠す為のものではない(・・・・・・・・・)

 

 

「翼」

 

 

ふと、懐かしい声が聞こえる。

 

不思議と違和感なく耳朶に浸透していくその声は翼にとって、最も相棒として信頼していた一人の少女の声。

 

目を限界まで見開いて後ろを振り返えれば、そこに、彼女はいた。

 

 

「う、そ……か、かなで?」

 

 

あの日。ノイズによるライブ襲撃の際、命を落とした歌姫こと、天羽奏が確かにそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 




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