戦姫魔晶シンフォギアD   作:イビルジョーカー

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新年一発目の初投稿です! 



第23話  tears of blood part2

 

 

 

 

 

 

 

「翼さん! どうしたんですか?!」

 

「……」

 

 

響の返事に翼は答えず、光のない虚な目でただちゅうを見ているだけ。

 

まるで魂でも抜き取られたかのような状態に陥っていた。

 

 

『無駄だよ。彼女は我が幻夢にてもはや籠の中の鳥。外界で何が起ころうとも彼女は何一つ認識できない』

 

 

ドリームウォーカーは響の呼び掛けを無駄だと断じる。どうやらコレがこの悪魔の能力らしい。

 

 

「翼さんを元に戻して下さい!」

 

『断る。君も眠るがいい。優しく甘い幻夢が迎え入れてくれるぞ』

 

 

また妖しい光を放とうとするドリームウォーカーだが、そうはさせまいと。

 

ナイトメアがその巨腕で響の視界を遮る。

 

 

『ム。煩わしい真似を……』

 

「なんかデカいの出てきたな。しかも、見た目の割に頭が回りやがるな」

 

 

邪魔をされた事に苛立ちを覚えるドリームウォーカー。そんな悪魔とは対照的に少女はナイトメアがドリームウォーカーの能力の事を理解し

、視界を遮らせた知性の高さに驚きを示していた。

 

わざわざ響の視界を遮ったということは、初見でドリームウォーカーの能力を分析し、見抜いた可能性が高い。

 

そうでなければ、直感によるものという線もある。

 

実際のところは……前者が正しい。

 

"知性が高い"という、少女の推察は間違いではないのだが、正直そんなこと、ドリームウォーカーにとってはどうでもいい。

 

邪魔をされた。

 

ただそれだけの事実があれば、その下手者を殺すだけだ。

 

 

「あんのデカいの。任せて大丈夫なのか?」

 

『構いません。貴方はさっさと黄の少女を殺しなさい』

 

「ハッ! 言わずともやらァァァァッ!!」

 

 

ドリームウォーカーはナイトメアを。少女の方は響を。それぞれが取るべき相手を見定め、攻撃へと転ずる。

 

 

「まずはデカブツを引っぺがす!!」

 

 

響の真後ろにいるナイトメアめがけ赤刃の戦斧が勢いよく振り払われる。

 

咄嗟に片腕でガードしたが思いの外その一撃は強く、衝撃でナイトメアの巨体は宙へ放り投げられてしまう。

 

これにはナイトメア自身驚きを隠せなかった。

 

ナイトメアの身体は泥のような質感のスライム

状の物質で構成されており、その密度は一つの首都を覆い尽くす程だ。

 

そしてそれは人型の身体という一箇所に集積している為、超重量を誇る。

 

そんなナイトメアをたった一人の少女が吹っ飛ばせる筈がない。

 

しかし現実であることに違いはない。ナイトメアと響の距離は10mほどの間隔になり、すぐに響の下に戻ろうしたナイトメアだが、そうはさせまいとばかりに先程光線に撃たれ沈黙していた筈のピートウィッチが眼前に立ち塞がる。

 

 

「ギィ、イィィィ、ギィギィッ!!!!」

 

 

不快音に等しい金属的な鳴き声でナイトメアを

威嚇する。無論、そんなものでナイトメアが阻める筈もない。

 

鬱陶しいものを払う感覚で片腕を繰り出したが

、その剛腕にピートウィッチのムカデが絡みつく。

 

強く巻きついて中々離れないと判断したナイトメアは、腕のみ液状化させ容易く脱出する手段を選択。すぐに巻きつかれた腕を液状させようとしたのだが……中々上手くいかない。

 

別に難しい事ではない。だから何の問題なくできる筈なのだ。なのに、そうすることができない。

 

ナイトメアの中で疑問が生じる。

 

何故液状化することができないのか。

 

その疑問を解決するのにそう時間は掛からなかった。

 

魔力で構成された薄い膜が、ムカデを中心に腕全体を包み込んでいたからだ。

 

しかも、薄いと言っても脆くなく、かなり丈夫な部類に入るせいか中々壊すことができない。

 

ならば、腕を切り離そう。

 

蜥蜴の尻尾などでよく見る"自切"という手段でムカデの拘束から逃れようとしたナイトメアは、その思惑通り腕を切り離したおかげで拘束から逃れることができた。

 

自由を勝ち取れば、あとはあの技(・・・)を繰り出して今度こそ完全に消し去ってしまえばいい。

 

そこまで考えるとナイトメアはモノアイ部位に魔力を収束。かなりの光量をもって輝く魔力はナイトメアの腕を未だに拘束しているムカデへと向けられる。

 

そして、途方もない威力の光線が解き放たれた。

 

"ドミネーション"と呼ばれるソレは、耐久力の高い防御性を誇る悪魔であろうと、木っ端微塵に消し去るに足る威力の技で、ナイトメアが誇る"必殺の一撃"である。

 

ムカデは成す術なく紫の極光に飲み込まれ、塵一つさえも残さず消え去った。

 

だが、ここでナイトメアは気付いた。

 

大ムカデを付けていた女性型の身体は……何処に行ったのか、と。

 

 

「ギィ、イィィィ!!!!!」

 

 

ふと聞こえた金属音の如き鳴き声。

 

紛れもなくピートウィッチのものだ。どうやら地面に隠れ潜んでいたようで、地中から這い出てきたピートウィッチはムカデのいなくなった片腕の断面から、黒いタールのような泥状の物質を放出。

 

そして口からも泥状の物質を吐き出していく。

 

片腕から出てきた泥は、ピートウィッチの大ムカデの代わりとして、新しい腕として生え変わった。

 

口から出た泥はピートウィッチの暗青い身体を包み込み、胸部と両肩。両足へと覆い、鎧と化した。

 

ナイトメアの体色と同じ黒で、表面が液体のように流動的に不規則に蠢いている。

 

形は女性の腕そのもの。

 

その手を握ったり開いたりして正常に動くかどうか確認したピートウィッチは、泥の腕を砲身の形状へと変化させ…眩いばかりの光と共に一筋の閃光をナイトメアへ直撃させた。

 

 

??!ッ……ッッ!!

 

 

間違いようもなく、閃光は自分の技だった。

 

細長い直線の閃光によって敵を殲滅する"ストロングメア"。

 

威力はドミネーションよりも劣るものの、それでも多数の敵を一気に蹴散らす程はあるその技を何故、ピートウィッチが行使しているのか。

 

簡単だ。"他者の悪魔の魔力を吸収したことで、その技を再現できた"というだけの話なのだから。

 

ピートウィッチの能力は、総じて二つ。

 

一つは、他の悪魔の魔力を吸収することでその悪魔が行使できる魔術や技の再現。

 

もう一つは、霧のような実体のない姿への変身。この状態では完全に気配を消すことができる為、感知に優れた悪魔でも難なくかわすことが可能である。

 

ナイトメアに見つからなかったのは、単に地面に隠れ潜んでいただけではなく、この能力のおかげなのだ。

 

 

『ピートウィッチだけではないことを、お忘れなく』

 

 

そう言ったのはドリームウォーカーだ。

 

ドリームウォーカーは赤い閃光を左右眼窩から放つ。眩い閃光の一筋は見事な直線を描きナイトメアへ直撃したが、それで止まらず、そのまま通過していき遠くの位置にてようやく消え去る。

 

幸い、飛んで行った方角に誰もいなかった。

 

元よりここら一帯は人の目を避ける為、人払いの結界と次元位相をズラす結界を二重に張っている。

 

空間そのものに強大な影響を及ぼす規模の魔力攻撃、あるいは魔術的な手段でなければ、突破することは不可能。

 

 

「……」

 

 

何か言う訳でもなく、モノアイを動かして自らの…人間で言うところの肩に当たる部位を見る。

 

ぽっかりと穴が開き、グチュグチュと生々しい音を立てなから煙が出ていた。

 

コレを見るに、威力はおそらくストロングメアと同等。幸いナイトメアはゴーレムに近い存在なので生き物のような痛覚は持ち合わせていない。

 

だが、ダメージがない訳ではない。

 

ダメージが許容範囲を超えてしまえば、待ち受けるのは機能の停止……死だ。

 

いくら元最強の魔界兵器と言えども、不死身ではない。そうであったのなら……ダンテに敗れるなど有り得なかっただろう。

 

ナイトメアはすぐに風穴を塞ぎ再生させる。

 

そして響の方を見れば、あの赤い少女と何やら会話を繰り広げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 

 

 

 

 

side 響

 

 

 

「おぉ〜。デカい図体の割によく飛ぶねぇ」

 

赤いシンフォギアらしきものを身に纏ったツインテールの少女は、片手側面を両眼の上の位置に押し当てる仕草をしながら、呑気な声を上げる。

 

 

「悪魔さん!!」

 

 

少女の一撃はナイトメアの巨体を吹っ飛ばすには十分なものだが、あまりダメージはない。

 

あくまでも響を引き離すことが目的なのと、ドリームウィッチの獲物であることを考慮して、それなりに加減していたのだ。

 

しかし、そんな事など分からない響は吹っ飛ばされたナイトメアの下へ向かおうとするが、その行手を少女の戦斧が阻む。

 

 

「おっと。ここから先は通行止めだ」

 

「!! 退いて下さい!」

 

「無理だな」

 

 

響の提案を却下するな否や、重量感を醸し出す戦斧を響めがけて振るい落とす。

 

運良く回避はしたが、代わりに響が立っていた地面は戦斧の熱で地面がドロリと抉れ、微量の煙が燻っていた。

 

もし、これが当たっていたなら……と考える響は思わず身を震わせた。

 

誰でも予想できる結末。それが自分だったかもしれなかったのだから、怯えてしまうのも無理はなく、むしろ当然だろう。

 

 

「あー、そうだった。オレの名前、言ってなかった。"フォルテ"だ。

フォルテ・シーモ」

 

「あ、わ、私は立花響です…じゃなくてッ?!」

 

 

つい自己紹介してしまった響だが、今は自己紹介よりも言わなければいけない事があった。

 

 

「なんで、こんなことするの?! 人間同士でこんな……殺し合うなんて間違ってる」

 

「そりゃそーだ」

 

 

否定して来るかと思いきや、少女…フォルテは、響の意見に同意の言葉を示す。

 

 

「人殺しはな、どう理由があろーと悪だ。何せ食う為に殺す訳じゃないし、命奪っても意味なんかねーだろ? あってもんなもんは所詮、こじつけに過ぎねぇ」

 

「なら!」

 

「けどなぁ。そんな碌でもねぇーやり方でも、やらなきゃなんねー時ってのがある」

 

 

そう言って、再び戦斧を構えるフォルテ。

 

 

「じゃあな。恨みたかったら好きに恨め!」

 

 

フォルテが横一線、垂直に振り払われた斬撃の行方は、人体の中で切り離されれば間違いなく即死するであろう『頭』。

 

正確には、"頸"である。

 

頭と身体を繋ぐ首を物凄い速さで斬ることができれば、余計な苦痛を負わすことなく死を与えられる。

 

フォルテは悪魔のように苦痛と恐怖を極限に引き出した上で殺すような真似はしない。

 

彼女の性格として、命を奪う殺すという行為は生きる目的で食べる以外に有り得ない。

 

彼女にとって『悪』なのだ。

 

そして、獲物に対し苦痛や恐怖は最小限に抑えるべきだと考えているからだ。

 

だが、今回……いや、彼女との契約が継続(・・・・・)している限りは、自分の信条を曲げなければならない。

 

故に恐怖は仕方ないが、せめて苦痛だけは無くす形で殺す。

 

そのつもりでフォルテは戦斧を振るい、彼女の即死を狙って頸を落とそうとした。

 

 

「ぐぅッ!!」

 

 

フォルテの戦斧を用いての一撃は、咄嗟に出た響の腕でのガードで防がれ、頸を落とすには至らなかった。

 

とは言え、かなりの衝撃が響を襲い、彼女は吹っ飛ばされてしまう。

 

 

「ぐっ!! うぅ……痛ッ…」

 

「あり? おいおいマジかよ。今の腕ごと頸落とせる筈の威力だぞ? 勘弁しろよ……」

 

 

痛みを伴いつつも、何とか立ち上がる響。

 

そんな彼女に向けてフォルテは溜息を吐きつつ戦斧を逆さまの状態で置き、片手でワシャワシャと軽く掻き乱しながら不満を零す。

 

 

「何度もやりたくねぇってのに……ま、死にたくないだろうし、そりゃ抵抗するよな……っつか、シンフォギアって、んな固いのかよ」

 

「や、やめて下さい! 私は……戦いたくないんです!!」

 

「うん。悪いけど無理だわ」

 

 

至って平坦な口調で、フォルテは無慈悲にそう告げた。

 

 

「オレはある女と"契約"しちまってんだよ。だからある程度の命令は聞かないといけねぇ。それが自分に課した"ルール"でもある」

 

 

響には、フォルテが契約したと言う女のことは一切分からない。

 

しかし、自分や翼を殺すよう命じてくるほどの悪人であることだけは分かる。

 

そんな何処の馬とも知れない謎の女性に自分の命を明け渡すほど、自他共に認めるお人好しの響でも容認できない。

 

 

「で、でも! 私の命はあげません!!」

 

「そーだよな。けど、お前の許可は必要ない」

 

 

再び振るわれる戦斧。しかし今度は握る手を離し、投げ飛ばす投擲の戦法で響の首を刈り取ろうとした。

 

 

「うわぁぁッ!!」

 

 

戦斧の刃が当たる前に間一髪避ける。だが彼方へと去っていくかと思われた戦斧は見事な曲線を描き、もう一度とばかりに響へと向かっていく。

 

しかも、先程投擲された速度よりも倍速く。

 

響は避けた際、誤って背を向ける形で倒れ込んでしまい、尚且つ素人であるが災いして、思うように行動ができない。

 

間に合わない。

 

フォルテはそう確信し、響自身もそれを直感すると共に覚悟を決め両眼を瞑る。

 

しかし、戦斧の刃が響の頸を落とすという悲劇は起きなかった。

 

何故なら……

 

 

「あっぶねぇ……ギリ間に合ったな」

 

 

黒髪を三つ編みに束ねたデビルハンター、トムがかつての自身の尾(・・・・・・・・)に似た魔剣で戦斧を弾き飛ばし。

 

 

チャキ……

 

 

「おっと。動くなよ?」

 

 

フォルテの背後を取り、第二号聖遺物『イチイバル』のシンフォギア (・・・・・・)を纏ったクリスがクロスボウ型のアームドギアを展開し、動きを封じたからだ。

 

 

 

 

 

 




我等がクリスちゃん、イチイバルでの登場!

フィーネに保護されていない筈のクリスちゃんが何故イチイバルのシンフォギアを所持しているのか……それは追々分かります。

では、また次回に。



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