戦姫魔晶シンフォギアD   作:イビルジョーカー

28 / 34



なんとか書き上げました……遅くなってすみません(−_−;)

亀更新ですが、楽しみに読んでもらえると幸いです。





第26話  tears of blood part5

 

 

 

 

 

「お目覚めか? 眠り姫」

 

 

体感で1分程度だろうか。尽きてしまった魔力が補充され、すぐに起動状態となって目を覚ましたナイトメア。

 

そんな彼に声をかけて来たのは、ここへ到着したばかりのKだ。

 

 

「起きたのならそれでいい。寝起きで悪いが、悪魔共の掃除をしてもらうぞ」

 

 

Kの目線の先には魔界に続く地獄門と、そこから尽きることなく次々に湧いて出てくる悪魔の群れ。

 

そんな異形の集団を相手にしているのは雪音兄妹と自らが守らなければならない響の3人。

 

一見すれば3人の方が優勢だが、この勢いは長くは続かない。

 

長引けば、消耗戦に陥る。

 

悪魔は吐いて捨てるほど際限なく出て来るのだ。勝ち目がない戦いなのは明白だ。

 

 

「私にはやる事がある。お前はあの3人と一緒に悪魔を駆除しろ」

 

 

それだけ言い残し、Kはある目的の為に駆けていく。その姿を確認したナイトメアは、すぐさま自身の状態を分析。起動状態及び魔力状態に問題なしと結果が出た為、彼女に言われた通りすぐさま3人への加勢を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「翼! 風鳴翼!! しっかりしろ!!」

 

 

Kが向かった場所。それはドリームウォーカーが死んだというのに、幻術が解除されない翼の下だった。

 

基本的に悪魔が齎した魔術や呪いの類はその悪魔が死ぬと同時に効果を失うもの。しかしそれはあくまで下位〜中位クラスの悪魔の話だ。

 

そこから上となるレベルの悪魔の場合、何らかの干渉がない限り永遠に作用し続けるものがある。

 

おそらく翼が掛かっている幻術がソレだ。

 

 

「クソ、ダメか……」

 

 

分かっている。悪魔の力が働いた事象・現象に関しては並大抵のことでどうにかなる訳がない。

 

分かってはいても、元に戻す手段や方法が今の

Kにはない。

 

それなりに魔術は行使できるが、それらは基本的に攻撃手段としてのものばかりだ。

 

精神に干渉する類の魔術はからっきし。我ながら、こういった時に役に立たない自分の魔術の知識に嫌気が差す。

 

 

「おい! そいつ連れて離れてろ!!」

 

 

そんな折、トムの声がKの鼓膜を揺らした。

 

 

「今こんな場所でその状態治すのは無理だ! 危ねぇからさっさと……あっぶねぇぇだろぉぉゴラァァッ!!!!」

 

 

背後から襲い掛かって来たアサルト…人語を介していたストルムとは別個体の攻撃をギリギリで避け、その際にファントムで心臓を突き刺す。

 

それと同時に地面から轟音と爆炎が二重に奏でられる。

 

衝撃で大半の悪魔は吹っ飛ばされ、中にはそれで呆気なく死んだ者もいる。

 

ナイトメアの"ストロング・メア"が原因だ。

状態が完全に復活し、デビルスターと呼ばれる星形をした紫の魔石の効果により、魔力は十分過ぎるほど補填されている。

 

かなりの魔力を凝縮して作ったデビルスターなので、一般的なモノと比べると一個だけでダムの水量レベルに近い魔力を得られる代物。

 

強力故に消費が激しいナイトメアにとって、これほどありがたい燃料は無いだろう。

 

 

「……いや、一つだけあった」

 

 

事ここに至って、Kは一つの閃きを得る。

 

戦闘以外では役に立たないと思っていた中で見つけ出した、翼を幻夢の牢獄から解放する術。

 

懐からある物を取り出したKは、ソレに魔力を込める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燃える。壊れる。人が、建物が、命が易々と壊れ消えていく。

 

異形の雑音たちが人々を襲い、塵芥へと変えていく。

 

悍しく、傷ましく、地獄の釜底のような光景がそこにはあった。

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

そんな中を一人の少女が歩いていく。

 

風鳴翼だ。彼女は手を伸ばして来る人たちを救おうとその手を伸ばすが、間に合わず。

 

人だったモノと成り果てて、次々に崩れていく。

 

 

「なんで……なんで誰も守れないんだ……」

 

 

ここには少女が尤も信頼する赤毛の少女…天羽奏はいない。

 

叔父である弦十郎も、心身に世話を焼いてくれる緒川もおらず、オペレーターの二人もいない。

 

みんな……目の前で消え去った。

 

 

「うっ……うぅ……ゔああああああああーーーー

ーーーーーッッッッッ!!!!!!!」

 

 

斬る。斬っていく。

 

脇目も振らず、慈悲もなく、情け容赦をかなぐり捨てて刀を振るいノイズを切り捨てていく様は……鬼の如し。

 

 

「死ね! 死ね! 死んで償えッ! いや……貴様らに償いなど埒外だ! 地獄で後悔して死に果てろおおおおおおッッッッッ!!!!」

 

 

怨嗟の声を吐き出す姿は、鬼そのもの。

 

翼の中にあるのは憎しみと怨念と、それによって骨組みとして築き上げられた使命感。

 

殺し尽くす。慈悲も容赦もない。

 

そんなものを溝の沼にでも捨てて、斬り捨てろ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も殺すの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!?ッ」

 

 

幼い声が翼の耳朶や鼓膜へと浸透していく。

 

そして気付く。自分がノイズに振るっていた刀は今……ノイズではなく、何の罪もない一般人の少女の胸を貫いていたと。

 

 

「ち、ちが……う、そんなつもりじゃ……」

 

「ノイズを殺し尽くしたら、次は人? 護国の為に人を殺すの?」

 

 

護国の為。それは自身の出自たる風鳴家が存在意義として掲げている一つの指標。

 

果たすべき使命、とも言える。

 

しかし現当主であり、風鳴翼の祖父にして、風鳴弦十郎の父である風鳴訃堂はその信念を尊重するあまり、民草の犠牲を良しとするような漢。

 

もし、ノイズがいなくなれば……間違いなく、シンフォギアを護国の為に利用するだろう。

 

過去の失態から二課の総司令官の地位を降りてはいるが、未だその実力と権威は衰えてはおらず、陰ながら暗躍し続けている。

 

可能性としては十分に有り得るだろう。

 

場合によっては……自身に歯向かう人々を容赦なく排除する為に利用することもある。

 

風鳴訃堂とは、そういう男だ。

 

もし訃堂が非情な命令を下した時、それに自分は抗えるのか?

 

命令で、人を殺せるのか?

 

護国の為に、その手を血で濡らす覚悟など持てるのか?

 

確定のない曖昧な未来に翼は恐怖と不安を覚えてしまった。

 

それを引き金に幾多の声が湧き起こる。

 

 

「殺すのか?」

 

「殺すの?」

 

「殺すの? どうして?」

 

「酷い……殺すなんて」

 

「化け物め! 鬼だお前は!!」

 

「死にたくない……死にたくないぃぃッ!!」

 

 

血濡れの人々が翼の周囲を赤く彩り、情念に満ちた声を上げる。

 

憎悪。怨恨。疑問。生への渇望。様々な情念が混濁した波となって翼へと向けられる。

 

彼等は言わば亡者だ。悪夢の呪いが見せる幻に過ぎない。

 

しかし、そんなこと翼が分かる筈もない。

 

それだけ彼女の精神は追いやられているのだから。

 

 

「あ、あぁぁぁぁッッ!!! いや! いやだ

よぉぉ……」

 

 

とうとう限界が来たのか、幻の亡者が囲む中で翼は頭を両手で抱えて蹲り、泣き始めてしまった。

 

 

「うぐっ……うぅぅ……ごめんなさい、ごめんなさい……」

 

 

誰に対して言っているのか、何の為の謝罪なのか。もはや翼自身分からない。

 

ただ押し寄せて来る途方もない恐怖と不安、絶望という闇に心が蝕まれていく。

 

おそらく最後には完全に心を悪夢に喰われてしまうのだろう。

 

そんなことを直感で思いながら、意識が段々と暗黒に引っ張りれていく。

 

そしてとうとう、両瞼を閉じかけ完全に身を任せようとした直前。

 

 

「全く、翼はホントに世話が焼けるな」

 

 

懐かしい声がその耳朶に染み渡っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「奏ェェッ!!!!」

 

「叫ぶなバカが」

 

 

バチン。

 

乾いた音と共に衝撃が襲い、後からじんわりと額に痛みが広がっていく。

 

 

「いっ、たぁぁ……」

 

「ふん。叫べるなら大丈夫そうだな……」

 

 

片手で額を抑える翼を尻目に、突然叫んだ彼女に対しデコピンを見舞ったKは鼻を鳴らしてそう言う。

 

しかし、ぞんざいな言葉の割に安堵の笑みを浮かべているところを見るに、口に出さないだけでしっかりと優しさが垣間見れる。

 

 

「な、何を……あれ? ここは? 私は……」

 

 

夢とは大概忘れやすいものだ。夢の内容を一から十まで正確に把握し、覚えている者など然程いない。

 

しかし、あの幻夢の世界で起きた全てをきちんと記憶していた。不幸か否か、完璧と言える位に。

 

 

「!!ッ」

 

 

思わず、腹の底から吐き気が込み上げて来る。

 

咄嗟に片手で口を抑える。かろうじて吐くのは抑えられたが、悪夢の中で得てしまった負の感情は脳裏に深く焼き付いてしまい、容易に落とすことなどできない。

 

 

「……自分が何を見たのか、思い出したか?」

 

 

そう言って、下に伏せていた顔を上げる。

 

Kを見る翼の瞳には確かな怯えがあった。

 

 

「ドリームウォーカーという悪魔は相手に幻夢を見せる力がある。それも、相手にとって心地いい夢をな。だが最初のうちだけだ。やがて悪夢に変わる。そうして相手を夢の中で呪い殺す……タチ悪いだろ?」

 

「……では、私はヤツの術中に……」

 

「とにかく。今のお前じゃ足手まといだ、ここで少し休んでろ」

 

 

そう言ってKは翼に背を見せ、自身も悪魔を排除する為に向かった。

 

 

(しかし……まさか"コレ"が役に立つとはな

 

 

ふと掌に目をやるとそこには、一つの欠片があった。

 

宝石か、あるいはガラスで出来ているのか。

 

そのどちらでも放つことのできない赤い光を一瞥して、Kは心中で吐露する。

 

 

("今回も"これに助けられるなんて……ほんと、いいお守りだよ)

 

「Kチャン! ヤバイってコレェェッ!!」

 

 

やや懐旧に浸っていた意識をグリフォンの焦り声が引っ張り上げる。そのことに少し苛立ちを覚えたものの、状況が状況の為、とりあえず耳を傾けてみることにした。

 

 

「マジで際限ねぇーぞアレェェ!! 悪魔共は人間世界にご執心ってかァァ?!」

 

「今更か。悪魔にとって最大のご馳走は人間の魂や血肉。餌がわんさかある所に通じてる道があって、飢えた悪魔がそこを通ろうとするのは

当然だろ」

 

「イヤ、それは分かってるってーの!!」

 

 

グリフォン自身も悪魔であるが故に悪魔の行動など、大方熟知している。

 

問題は悪魔が出てくる動機や理由の追求ではなく、悪魔を次々と出す穴をどうするか。

 

そこがグリフォンの聞きたい論点なのだ。

 

 

「ア・ナ!! 分かる? あの穴なんとかしネーとマズいって!」

 

「……そんなこと、言われなくてもわかってる」

 

 

悪魔を無限に吐き出す穴をどうにかしなければ、どれだけ悪魔を駆除しようと埒が明かず、根本的解決には成り得ない。

 

それはKでも理解できることだ。

 

問題なのは、その穴をどうにかする手段・方法が皆無だという事実。

 

アレは単なる穴ではない。次元と次元を結ぶ抜け道で、物理的な干渉は全くの意味を為さない。

 

アレをどうにかするには、魔力そのものを大量にぶつけるか。あるいは次元に干渉する"次空魔術"が無ければどうにもできない。

 

Kはこの次空魔術に少しばかり心得があるが、あくまで場所から場所への転移を可能とする程度のもの。

 

それでは、あの穴を消すことはできない。

 

 

「フンッ!」

 

 

自身に襲いかかる悪魔を1匹バールで突き刺し、続いて背後から来た悪魔を2匹、悪魔の眼前へと生成した橙色の魔力で編まれたバール2本を

飛ばし、その心臓へと突き刺す。

 

 

「クソッたれどもには、バーベキュータァァイムってなァァッ!!」

 

 

それだけに留まらず、今度は上空からブラッドガーゴイル計4匹が向かって来るが寸前のところでグリフォンが雷撃を飛ばし、一瞬で石像に変え粉々に砕け散らせる。

 

 

「おい! 来たばっかり悪いが、なんか作戦ねぇーか!」

 

「あったらとっくにやってる」

 

 

トム、クリス、響の3人が無数の悪魔を蹴散らしながらKと合流を果たす。開口一番で何か策が無いかと要求して来るトムの言葉を、Kは切って捨てた。

 

 

「トム兄。これ、拙くない?」

 

「ああ。マジもんのピンチだな」

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 

チラリとトムが視線のみを横へ向ければ、響が肩で息をする程消耗しているのが見えた。

 

悪魔という存在を相手にするには、響は技術的にも精神的にも、足りない部分が多過ぎる。

 

ノイズを相手にするだけでも現状は不得手だと言うのに、悪魔と来れば尚更だろう。

 

手詰まり。一寸先は闇。そんな言葉がKの頭の中を掠めるが、ふと一つの歌声が周囲に響き渡る。

 

 

Gatrandis babel ziggurat edenal

 

 

「あ? 歌?」

 

 

紛れもなく、それは歌。

 

声を利用して奏でる、音楽という人類が編み出した文化の一片。

 

「これ……2年前の……ッ!!」

 

突然の歌にトムは疑問符を浮かべるも、響はこの歌に聞き覚えがある。

 

2年前のツヴァイ・ウィングのライブ会場。

 

そこで無限に出現するノイズを一掃する為に用いた命を賭けざる得ない諸刃の剣。

 

その名は……絶唱。

 

 

「!!ッ……そんな、やめろ!」

 

 

絶唱の意味をKは知っている。知っているからこそ悲痛な声で制止をかける。

 

が、歌い始めてしまったものは、もう止めることはできない。

 

 

「邪魔だ! どけぇぇッ!!」

 

 

ならばと翼の下へ向かい、直接止めようと走る。しかしその行手を悪魔の群れが壁となって遮る。

 

悪魔を相手取る時間さえ惜しい。

 

その間にも、翼の歌は続く。

 

そして、とうとう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Emustolronzen fine el zizzl ……

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の一節が紡がれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何が起きたんだ?」

 

「すんごい光となんか…でかい衝撃だったけど

 

途方もない光と悪魔全てを一掃させ、地獄門を消し去ってしまった膨大なエネルギー。

 

その様子は壮絶の一言に尽きるもので、シンフォギアの絶唱という機能システムを知らないクリス(ルビ)やトムにしてみれば、何が起きたのか、完全に理解することは困難だろう。

 

だが、Kは違う。

 

彼女は知っている。どれだけ装者の肉体に負荷を掛けるのか。

 

どれだけ……それが死と隣り合わせなのか。

 

 

「翼! お前、何をしてるんだッ!!」

 

 

だからこそ、Kは翼を糾弾する。

 

膨大で破壊的な威力のエネルギー。その発生の中心だった故に見事なクレーターが形成され、

 

その中に彼女は、風鳴翼は立っていた。

 

まるで何てことはないかのように。

 

 

「私は……みんなを守る剣……防人だ」

 

 

Kからの言葉を意に介さず、彼女はそう言いながらゆっくりと振り返る。

 

 

「防人の剣は……こんなことじゃ、決して折れない……」

 

 

両眼、口、鼻、果ては両耳から尋常ではない量の血が流れ落ち、僅かな血溜まりを足下に作り上げていた。

 

正気のソレとは思えない光景。

 

そんな中でも彼女は笑っていた。

 

自身の成すべきことが出来たのだと。

 

そして……彼女の意識は暗闇へと沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 







ダラダラと引き伸ばした感が否めませんが、その点は作者の力不足です
。すみません(~_~;)

これで絶唱回は終わりで、次回は原作の流れに添いつつ、Kというオリジナルキャラの視点やどうしてクリスがシンフォギアを持っているのか


それに関して触れていきたいと思います。

では。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。