戦姫魔晶シンフォギアD   作:イビルジョーカー

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 訳題『雷の少女』

 遅くなりました。おまけに短めです(^_^;)

 


第29話 Thunder Gard Part1

 

 

 

 

「で、ここが目的の場所でいいのか?」

 

「間違いない。ここに奴はいる」

 

明朝3時。未だ人の気配を匂わせない街並みの一角。そこにあるライブ会場『Rose bound』の前でトムとKの両者が並んで立っていた。

目的は、ここを根城にしていると思われるケルベロスを狩ること。

 

「結界はきちんと張ってある。いつでも行けれるぞ」

 

ライブ会場の周辺は既に人払いの結界は張ってある。誰一人として犠牲を出すつもりは毛頭ないKはその言葉に安心し、ライブ会場に張られた強力な結界を解除する為に胸元のコートの裏側へ手を伸ばす。

そしてそこから、ガングニールの欠片を取り出した。

 

「……なんつーか、本当にそんなもんで結界解けるのか?」

 

懐疑的な視線を向けながらそう零すトム。

グリフォンも似たような反応だったが、何も知らない側から見ればチンケな欠片一つが強力な悪魔の結界をどうこうできるとは露程も思い至らないだろう。

謂わば…これは小石で家一軒を倒壊させるようなものだ。

そう考えれば、疑念が湧かない方が無理がある。

 

「百聞は一見にしかず。見ていろ」

 

しかしKは、ただそう言うのみ。

ここで一から十まで理屈で凝り固めた言葉をダラダラと口から垂れ流すよりも、たった一回でも見た方が伝わり易いし効率的だ。

 

「Croitzal ronzell gungnir zizzl……」

 

力強く、勇ましく。しかし凛々しくもある歌声が周囲に響くのと同時にガングニールの欠片が夕焼けの如き色彩の閃光を放ち始めた。

閃光の本質はフォニックゲイン。

それが強烈な輝きを見せると言うことは、それだけ膨大なエネルギーを発している証拠だ。

やがて……閃光は一筋の直線となり結界へと当たる。

 

■■■■■ッッッッッ!!!!!!!!

 

表現しようのない甲高い音と共に結界は消滅。結界が破壊された以上、ケルベロスは気付く筈。配下の悪魔をけしかけて来るかもと踏んではいた二人だが、今のところその気配は見受けられない。

ケルベロスは決して間抜けな悪魔ではない。

用意周到に計画し、裏工作も完璧だった。Kがアンノーウスへ精神をリンクさせるという予想外の裏技が無ければ、発見が困難を極めていた可能性だって有り得た。

そんな頭のキレる悪魔が結界を破壊されたことに気付かない訳がない。

とすれば、考え得る理由は二つ。

元より居ないのか。

あるいは……。

 

「誘ってる……ってことか?」

 

敢えて自身の陣地へ誘き寄せようとしている…とすれば、何も不思議なことではない。

己が最大限に力を、術を、戦略を発揮できる陣地に敵を嵌めるなど常套手段。それが悪魔ともなれば尚更だ。

そして、まるでそれが正解とでも言いたいかのように。トムの言葉に応える形でゆっくりとライブ会場への扉が開いた。

無論、決して電気仕掛けの自動ドアではない。

ケルベロスの魔力によって扉は一人でに開いたのだ。

 

「大当たり、だな」

 

不敵に笑いながら、そんな言葉を零すK。

 

「なら素直に応じようじゃないか」

 

「そうかい。まぁ、ブチのめせば問題じゃねぇわな」

 

そんな掛け合いを交わし、二人は扉へと歩み寄りそのまま入っていく。

中は薄暗かったが、すぐに電気が点く。

どうやらフロントロビーのようだが、人は一人もおらず、代わりに数匹の悪魔が電気状の火花を散らせながら出現する。

 

「"プラズマ"に"ボーン・ホロウ"かよ」

 

分類的に見て2種類。青白い稲妻の集合体で、コウモリのような形状をした悪魔"プラズマ"と、黒いモヤのような気体に動物の頭蓋骨という姿をした"ボーン・ホロウ"。

ボーン・ホロウはトムの前世における魔界にはいなかったがプラズマは別だ。

雷属性の下級悪魔で、その身体はケルベロスと同様に電気で構成され、一つ目の蝙蝠の姿をしている。

この悪魔の特徴は相手を読み取り、その似姿になることで行動パターンや技までもコピーして攻撃するという点だ。

おまけにこちらが攻撃すると分裂するので中々に厄介な敵だと言える。

この世界での位はコンプレアで基本的な能力や攻撃手段は前世と変らず

、一つ目から放つ光線や雷撃などを放って来る。

 

「オォォラァァァッッ!!!!」

 

活気良く声を張り上げるトム。

自身のかつて名『ファントム』を冠する魔具を振るい地面に突き刺す。

すると地面がひび割れ、マグマの大柱が勢いよく吹き出し、容赦なくプラズマやボーン・ホロウを飲み込む。当然無事では済まない。

実体の無い彼等は灼熱のマグマによって塵すらも残さず消滅してしまう

 

「行け、シャドウ。あの仮面を砕け」

 

「■■ッ!!」

 

活気良く獣らしい鳴き声で応えるシャドウは、

ボーン・ホロウの依代である仮面めがけ、自身の身体を刃の歯車に変化させて次々と破壊していく。

依代がなければ、この世界において実体化できない悪魔は死を迎える以外にない。

 

「ーーーーッ!!」

 

すると、音波のような甲高い鳴き声を上げる1匹のプラズマが人型を取って着地する。

そのシルエットは、紛れもなくKのもの。

ご丁寧に彼女が所持するバールまで模倣している様を見るに、相手をコピーするのにそれなりの拘りでもあるのか。とは言え、Kからしてみれば石ころ以下に価値が無い位どうでもいい事だが。

そして、1匹のプラズマに釣られてか、他の個体も姿を変えてKの形を模倣していく。

 

「ここはものまね大会の会場か? だとしたら、捻りが無さすぎて全員失格だな」

 

その様を見て、Kは鼻で笑い飛ばす。

 

「ーーーーーーッッ!!」

 

「ーーーーーーーッッッッッ!!!!」

 

1、2匹程が先の甲高い鳴き声を上げならKの命を刈り取ろうと、そのバールを振るって襲い掛かる。

 

「フッ!」

 

軽く息を吐き出し、余裕の表情で回避して行く。動き自体はKのソレをよくトレースしているものだと思えるほどよく似ていたが、結局はよく似ている止まりだ。

アレンジ性と言うものが皆無で、容易に攻撃の軌道を読める。バールに魔力を込め、Kは袈裟斬りにプラズマの1匹を切り裂き、2匹目は首をへし折るようにしてその首を胴体と分離させる。

 

「もう少し骨があると思ったが……コンプレアとは言え、雑魚か」

 

「終わったぞ」

 

トムの声がかかり、振り向けば既にボーン・ホロウとプラズマの二種数体を始末した彼が立っていた。

見るからに体力の消耗などなく、むしろ物足りなさを感じているような顔をしていた。

 

「挨拶にしても、もうちっとばかし歯応えが欲しいな」

 

「無駄な労力は好きじゃない。これ位が最初には丁度いい」

 

そんな会話を交わす最中、連絡放送用のスピーカーからやけにハイテンションな声が出てくる。

 

『ハロハロ〜♪ 生意気にも結界を破って入ってきた不届きモノちゃんたち〜!!』

 

「……ケルベロス……じゃないな」

 

「女だしな。手下ってとこか?」

 

『よく分かったじゃん! ご褒美に私の名前を教えてあげるわ。アタシの名は"ネヴァン"! ケルベロス様の忠実なファンよ!!』

 

 

「ネヴァン……」

 

トムが声主の名を反芻する。

その名前には聞き覚えがあった。と言うより、前世において魔界での知己だ。

 

妖雷婦ネヴァン。

 

多種多様なサキュバスという悪魔の中で最も強力な部類に入っていた女性の悪魔。この世界におけるサキュバスは分からないが、向こうではサキュバスという悪魔は基本的に弱小種だった。

ヘルズという死神姿をした魔界の住人の少し上程度。従って他の凡種の悪魔同様、上級悪魔の配下としてでしかその生を確立できない。

だが、そんな弱小種である筈のサキュバスに突然変異のある個体が生まれた。

それがネヴァンだ。

サキュバスらしく性を貪り、しかし誰に靡く事はなく、敵対する悪魔はその雷撃てもって消し炭になる。

そんな彼女はムンドゥス配下の勢力、下級悪魔を指揮する権限を持った『将王』となった。

当時ファントムは弱小種族の出の悪魔が自分やグリフォンと同じ『将王

』座に着くことが気に食わなかった。

とは言え、ムンドゥスの意思によってそう定められたのなら、何も言うことはできない。

自身より遥かに上の悪魔に歯向かうほど、ファントムは脳筋だってあっても道理が分からない愚者ではない。

ともあれ、ネヴァンは人間界侵攻の為のテメンニグルを守護する大役に抜擢されたものの。結局スパーダの反乱の折、テメンニグルごと封印されてしまったが。

 

「知り合いか?」

 

何やら意味深な呟きだと思ったのか。知己かもしれないという予想を立てての質問だった。

そんなKの問いに対し、トムは面倒臭いとばかりに頭を掻いた。

 

「前世の話だ。ここじゃ知らねー」

 

ぶっきらぼうに返すトム。別人とは言え、前世からいけすかなかった悪魔が出て来た事が彼の中で苛立ちを生じさせた。

おまけに何というか……性格が前世のネヴァンに比べて、かなりのハイテンションぶり、とでもいうべきか。そういった部分でも癪に障る存在だと、内心ボヤく。

 

『残念だけど、ケルベロス様はここに居ないわ。アンタらみたいな不届きモノ共がここに来ることはお見通しってワケ』

 

「……そうか。で? お前が相手になると?」

 

『またまたよく分かるじゃん! まっ、所詮アタシの敵じゃないだろーけどさ!! アンタら雑魚だしィィ!!」

 

そのやけにハイテンションな口調から女子中学、あるいは高校生のソレを彷彿とさせる物言いだが、しかし悪魔としての根幹は一寸たりとも変わらない印象を受ける程に自らの力に対する絶対的な自信が滲み出ていた。

 

「雑魚かどうか、それを決めるのは早計だぞ」

 

「全くその通りだ。あんましダッセェ強キャラムーヴ出すのはやめておいた方がいいぜ? 後でたっぷりと俺たちに泣かされて、惨めな思いすんだからよ」

 

『……………ぶち殺す』

 

ブッ!!

 

かなりの音を立てて、放送が切れる。トムの言葉が相当ご立腹になったようだ。ともあれ、二人はこの場所にもう悪魔が出なくなったのを確認し、先を急いだ。

 

 

 

 

 

 






妖艶で大人な雰囲気を醸し出す原作のネヴァンとは対照的に、こっちのネヴァンは"ギャルっぽさ"を出した子供らしい雰囲気にしてみました
。何気に作者が苦戦を強いられた悪魔です(−_−;)






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