戦姫魔晶シンフォギアD   作:イビルジョーカー

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※ 文章的におかしなところがあったので、一部修正しました。



今回、あの悪魔がッ!!




第5話 Nightmare Revival part1

 side ナイトメア

 

 

 

 

 

 

 その悪魔の誕生は決して自然的なものではなかった。かつてスパーダによって倒され、魔界ごと封印されたムンドゥスは幾ばくか取り戻した自身の力を使い、最強の悪魔を創り出そうとした。

 物資的な物から、命。空間。およそ不可能とされる物を創造し生み出してしまうムンドゥスはその力で数々の悪魔を生み出して来たが、今回は憎きスパーダに復讐する為、まさに悪夢の再現とも呼べる最強の悪魔を創造したかった彼は試行錯誤を繰り返し、とうとうソレを完成させた。

 

 nightmare(悪夢)。

 

 そう命名された悪魔は固定の身体を持たない黒のスライム状のソレで、取り込んだ者を悪夢の異空間へと誘う能力を秘めていた。

 だが、ナイトメアは魔帝が望んだ以上に強力過ぎた。一度暴走すると魔界全てを滅ぼしかねないと言う凶悪性を持っていたのだ。

 結果ムンドゥスはこのナイトメアを専用の拘束具で抑え込み、その力を制限せざえる得なかった。

 それが敗因かどうかは分からないが……ナイトメアは倒されてしまった

 。スパーダではなく、その血と魂を受け継ぐ息子のダンテによって。

 しかしナイトメアは復活した。

 ダンテの兄であるバージルが自身の負の記憶と“人としての自分”を切り離す為、愛刀にしてスパーダが鍛えた一振り『閻魔刀』で自分を刺し貫き、そのはずみで体内にあった因子が吐き出され負の記憶と結合

 。

 実体を持たない悪夢として蘇ったのだ。

 明確な意思を持たなかったナイトメアはその力を求めてやって来た“人間としてのバージル”と戦い、契約。以降彼の力となって戦った。

 そして人間としてのバージルが悪魔としてのバージルと一つになり、完全なるバージルとして復活した際はグリフォン、シャドウと共に因縁のある宿敵ダンテに勝つ為、自らの意思で選択しダンテと戦った。

 今にして思えば、感情も意思もない筈のナイトメアがダンテに勝ちたいと願い、そして主たるバージルが二度と悪夢を見ないよう自らの消滅を選んだのは、文字通り“魂が宿った結果”なのかもしれない。

 

 しかし運命は、ナイトメアの消滅を書き換えた。

 

 気が付けば、ナイトメアはノイズによって引き起こされた地獄の真っ只中にいた。

 

 当然疑問が湧いた。

 

 何故、消滅した筈の自分がここにいるのか。

 

 ここは何処か? 見た感じでは人間の街だ。

 

 そして、悪魔ではないあの異形はなんだ? 

 

 何故、人間を襲っている? 

 

 冷静に分析するナイトメアだが答えは出なかった。答えを導き出すよりも先に親と逸れて泣き崩れていた小さな園児位の齢の女の子の、背後から襲いかかろうとした1匹のカエルのような異形……ノイズを自身の瞬間転移を用いて、上から押し潰していた。

 何故、悪魔たるナイトメアが小さな女の子を守ったのか。ナイトメア自身もよく分かってはいなかった。しかし彼の記憶の中で鮮明に覚えていた事柄がきっかけなのは分かった。

 それは自身と契約を交わした人間としてのバージル……Vが沸き起こる使命感に従い人間を助けた時だ。

 バージルはダンテと違い人間を省みることなく、ただ自身の目的の為に行動する冷淡さとその為の障害となり得るなら人間であろう何だろうと構わず切り捨てる。人間としてのバージルも目的の為に他者を欺き利用していた。

 しかし……悪魔としてのバージルことユリゼンと切り離されたが故なのか。人々が悪魔に襲われているのを黙っていられず、肉体の維持が限界にも関わらず魔力を使い救った。

 他者を取り込み、その精神と記憶を同調する事で他者にとっての悪夢を顕現させる能力を持つナイトメアだからこそ、Vと繋がったことで何かしらの影響があったのかもしれない。

 

 しかし、原因や道理など、ナイトメアには関係ない。

 

 ただ……その身に宿った魂が命じるままに。

 

 人を守り、人に害を及ぼす存在を排除せしめるだけだ。

 

 ナイトメアはこのまま放置するには危険だと言うことで自身の内部空間へと少女を取り込む。無論、ナイトメアに害する気がない為、空間に囚われても悪夢が現れ何かする心配はない。

 

 その後は実に単純だった。

 

 ゾロゾロと出て来るノイズを相手に自慢の剛腕で殴り飛ばし、一つ目の部位から細く鋭い光線を発射し大群を爆散。時に隙をついて無数のノイズが動きを止めようとして来たが、無駄だとばかりに瞬間転移で逃れ、背中からブーメラン形態となった自身の一部を飛ばし返り討ちにしてやったり。

 まさに圧倒的蹂躙という言葉が相応しく、僅か10分でノイズは完全に殲滅された。周囲の安全確認をしてオールグリーンと判断。

 幼い女の子を自身の内部から外へと戻した。

 

 アレ、気絶、シテル? 

 

 どうやらあまりに非現実的な状況の数々が原因で、少女は気を失ってしまったらしい。どうしたものかと悩むナイトメアだったが、近くで女性が誰かの名前を必死に呼ぶ声を聞き取った。

 

「◾︎◾︎◾︎ッ! ◾︎◾︎◾︎────ッッ!!」

 

 おそらく、この子の母親だろう。

 

 そう予測したナイトメアは身体を人型の固形から、不定形の液状へと変化させ瓦礫を上手く利用し、自分の存在がバレないよう配慮しつつ、少女を母親らしき女性の側へと優しく寝かせた。

 

 そして結果は……当たりだった。

 

「◾︎◾︎◾︎……よかった、本当に良かったぁぁッ!」

 

 女の子を見つけるや否や女性は泣き叫びながら駆け寄り、優しく強く少女を抱き締め何度も先程呼んでいた名前を震えた唇から零していく。

 程なくしてレスキュー隊員や軍関係者と思わしき人間達に無事保護されていくのを確認したナイトメアは、一先ずの安堵感にホッとしたような気分を抱いた。

 それはかつて、魔剣士の息子を抹殺する為だけに生み出され、無機質に。無感情に。敵対する物を万象問わず破壊するだけの魔界の兵器であった頃では決して考えられない思いだ。

 ついさっきまではナイトメアに何かを成す理由も目的もなかったが、今となっては違う。

 

 人間を守り、それを害する存在を一掃する。

 

 またあの悪魔ならざる異形が出て来るかもしれない。直感的な物だったがそう思うに至った彼は各地を転々とした。

 そして直感は正しかった。かつての自分と同じ心無き理不尽な力が人間を煤くれへと変えていく。そこに一切の情は垣間見ない。

 あるのはただ人間を煤へと変えるという一種のプログラム的作用。それに従い異形……ノイズと呼ばれるソレらは容易く人の命を奪っていく。

 

 見ていられなかった。

 

 奴等が現れる度、ナイトメアは自身が秘め持つ力でノイズを屠っていった。その様はまさしく鬼神の如し。

 ナイトメアにノイズの炭素変換は通用しない為、それはもう一方的な虐殺に等しかった。

 しかし相手はノイズ。人間を虐殺する習性を有するのであれば、その逆に遭うのも道理。

 巨腕で押し潰され、強力な熱線で消し飛ばされ、身体の一部を変化させた槍の刺突や同じく一部を切り離し変化させたブーメランで薙ぎ払うと言う一騎当千を絵に描いたような圧倒的な戦いは、見る者を逃げる事さえも忘れさせる程のものだった。

 そんなことを繰り返す内、いつの間にか貨物船乗り込んでいたナイトメアは海を渡り、日本へ

 とやって来た。当たり前だが人間に見られたら面倒な為、普段は不定形のスライム状になり、更には空間圧縮を利用して手の平サイズに収まる程度の縮小サイズで過ごしている。

 おかげで今までバレずに済んでおり、狭い所や小さい箇所に入り込める利点を考えれば隠密性に優れた形態と言えるだろう。

 しかし、日本に来て早々面倒な事が起きた。

 高校生くらいの年齢と思わしき少女と小学生くらいの女の子が二人揃ってあのノイズに襲われていたのだ。

 これを見て、そのままにしておく道理はない。

 すぐさまナイトメアは空間圧縮を解き、空中で玉状になった後一気に二人の下へ降り注いだ。衝撃で敵を一掃する為だ。尚、その際に生じる高熱と爆風はある程度コントロールできるので二人に被害が出ないよう十分配慮している。

 

 こうしてナイトメアは元の姿へと戻り、二人を守る為に立ち上がったのだ。

 

 

 

 

※ ※ ※

 

 

 

 side K

 

 

 

 

「ノイズを操ってんのはフィーネ。終わりの名を冠する金髪の妙な女だ」

 

 

 時を少し戻し、魔界は情報屋『酒の胃袋』店主ことバクスは酒臭さを漂わせるゲップを奏でつつ、Kの求める情報を提示した。

 

 

「フィーネ……イタリア語で“終わり”の意味合いを持つ言葉だが、随分シャレた名前だな」

 

「まぁ、偽名の線もあるがな」

 

 

 皮肉げなKの言葉にバクスはそう返した。

 

 

「その女悪魔か? Kが言うにはノイズと一緒に悪魔どもが出てくるみたいだが、それなりに強い悪魔なら何匹か従えてもオカしくねェ」

 

「いいや、悪魔じゃない」

 

 

 バクスはにべもなくそう答えた。

 

 

「俺は一回奴をよ、こっそり生で見たことがあるんだが俺の観察眼じゃあ、アレは悪魔じゃない。ただ……人間には違いないが真っ当な人間かって聞かれたらNOって言うがな」

 

 

 顔に酒酔いの赤らみが消え失せ、真剣な声音でフィーネに対する自論をバクスは語った。

 

 

「アレは、魂がおかしい。何度も何度も既存の魂を塗り潰して、そこに全く別の魂をおっ立てた様な感じだ」

 

「……つまり、魂を上書きしていると?」

 

 

 あまり考えたくなかった回答なのか、Kの唇から紡がれる口調は何処か棘が混じっているように聞こえる。

 魂の上書きと言うのは、悪魔が人間に憑依し、その全てを奪い去るに相当する、卑しい匹夫の所業。それを何度も行なっている可能性を考慮すれば忌々しい情念を覚えるのも無理ないだろう。

 

 既存の人格を、魂を無にしてしまう。

 

 それが意味する所は生まれ変わることができず、虚無へ消え去るという救いの無い末路を迎えると言うことなのだ。

 ある意味、死よりも残酷な行為と言っていい。

 内心憤りを募らせるKだがそんな彼女の心中を知る事はなく。バクスは話を続ける。

 

 

「まぁ、例えるならな。ともあれ気をつけた方がいいぜK。フィーネは何体かの上級悪魔と結託してやがる。そしてその連中を束ねる強大な悪魔が真の黒幕さ」

 

「……その悪魔の名は?」

 

「アンノーウス。真偽は知らんが、そいつはこの名で呼ばれてる」

 

 

 アンノーウス。単語だけで考えれば正体不明を意味するunknownを捩ったように聞こえる。

 実際そうなのかは分からないが、とにかく名前が分かっただけでも目的への進歩には違いなかった。

 

 

「仮に偽名だとしても情報は情報だ。フィーネとやらの存在も、分かった事だしな」

 

「あ、それとなK。フィーネと連んでる悪魔の中で名前と詳細が分かってるのを1匹だけだが特別に教えてやるよ。“アラクネア”ってヤツだ」

 

 

 アラクネア。聞き覚えが全くない悪魔の名にKがどういう悪魔か聞いてみると、曰く全身が人の頭で構成された悪魔で、喜怒哀楽の表情が頭の顔一つ一つに出ていると言うのだ。

 正直な話、想像してしまえば不気味を通り越して吐き気を催せるだろう。

 

 ちみなみに女らしい。どうでもいいが。

 

 更にこの悪魔には元締めのボスからある役目が与えられており、それは魂の質を上げる物質を生成し、ソレをある方法で人間に配布するというものだ。

 

 

「魂の質を上げるだと?」

 

「人間で言えりぁ豚や牛に出来の良い餌をやって肉の質を上げるのと同じ感じでよ。色んな品……例えば薬や飲料に混入させて人間に飲ませてやがるのさ」

 

「……人間の魂をより良い味に仕上げて喰らう為か」

 

 

 益々憤りが募るのを感じだKはこれ以上耐えられないとばかりにバクスに背を向け、店から出ようとした。

 

 

「オイオイ待てよ、どうしたんだよ! まさか、乗り込む気か?! 場所知ってんのかよ!!」

 

 

 Kの突然の行動にグリフォンが至極真っ当な物言いを投げる。しかし、それを問われることを微塵も予想していないKではない。

 

 

「目星は付いてる。大手製品会社の土蜘蛛企業……そうだろバクス」

 

「bingo! 鋭いじゃないかK。けどよ、あそこは人間に化けた悪魔どもの巣窟。強さもそうたが面倒な能力を持った悪魔もゴロゴロしくさってんだぞ。無駄に死に晒すだけだ。やめとけって」

 

 

「上等だ。例え一人でもやってやるさ」

 

 

 あまりに無謀な言葉。他人が傍から見れば無知な愚か者としか見ないだろう。実際バクスもそうだ。

 しかしそれを馬鹿にしないどころか共に行くと、そう吐き捨てる輩がここに居た。

 

 

「待てよKちゃん! 一人でも? 俺たちを忘れるなんて、ち〜っと酷いんじゃないのォ?」

 

 

 ドアを開けて前を見れば、いつの間に移動したのか。そこには自身が契約を交わした悪魔が2匹、共に行くという意思を見せつけるように立ち構えていた。

 グリフォンは、シャドウの頭に乗って胸を張る動作を見せつつ、Kにそんな言葉を投げかけた。

 

 

「……今更だがいいのか。最悪、死ぬかもしれない」

 

「何度も死んだ身なんでな。それに俺たちは腐っても悪魔。死ぬことにビビって臆病風吹かせた日にゃあ、そこら辺の糞の掃き溜めにも劣っちまう」

 

「……」

 

 

 饒舌なグリフォンと違いシャドウは人の言葉を介すことはできないが、理解することはできる。故にKの言葉に対しシャドウはその姿勢と、見つめる瞳で答えを示す。

 

 

「……そうだな。契約はしたんだ。なら存分に働いてもらうのが礼儀と思おう」

 

「イイ答えだ! それでこそオレ達が見込んだ主様ってナァ! ハッハーッ!」

 

 

 上機嫌絶好調、とでも言いたげた陽気溌剌に言うグリフォンはシャドウの頭からKの肩へと翼を羽ばたかせ乗り移る。

 煩そうな顔を浮かべるものの特に反論することなく、Kは情報屋を後にしようとしたのだが。

 

 

「!! ッ この気配は……」

 

「ノイズじゃねェか!」

 

 

 Kにとっては憎しみしか有り得ない怨敵。その気配を近くで感じたのだ。

 

 

「ホント多いな、ノイズの発生」

 

 

 店から顔を出し、置いてあったのか缶のビールを手に持ちながら酒飲みに耽る傍ら、バクスは忌々しげにそう呟く。

 

 

「ノイズは大したことないが悪魔どもがウザったいぜ。そら、悪魔の気配も出てきたろ?」

 

 

 言われて感覚の範囲と精度を上げてみれば確かに悪魔の気配も感じられた。悪魔とノイズ。

 この両方が姿を現したのなら、人界にどんな被害が降りかかって来るか、予想する必要すらない。

 

 誰かが死ぬのは、まず間違いないからだ。

 

 

「気配の出所は……なるほど。人界に戻るぞ」

 

「ジャアな! 呑んだクレッの酒野郎」

 

 

 Kは丁度近くにあった歪に魔力の篭ったバールを突き刺す。元の世界へ戻る際グリフォンは酒好きの悪魔に対し、そんな別れ台詞を吐くがバクスは中指をおっ立てて皮肉たっぷりのイイ笑顔で答える。

 かつての大悪魔に向かってやる事ではないのだが、過去は過去だ。

 今はしがないそこそこ強い程度の使い魔でしかない。それを知っているからこその行為なのだ。

 

 

「また酒をやる。その分、情報を頼むぞ」

 

 

 Kは至って淡々とした様子でそう言った。

 ビジネスライクな関係程度にしか思っていない為だが、そういうのはバクスとしても有難い。

 変に情を移すのも、移されるのも面倒事を極力避けたいのでゴメン被りたいのだ。

 ともあれKとグリフォン、そしてシャドウは歪から生じる光に包まれ一瞬の内に消え去ってしまった。

 

 

「ったく、人の……いや悪魔の忠告ってのもオカしいけどよ。少しは聞けってんだよ全く」

 

 

 残りをグイッと飲み干して、そんな愚痴を零すバクスはそのまま店の中へとノソノソと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 side ナイトメア

 

 

 

 

 

 

 

 ナイトメアにとってノイズなど、そこいらの悪魔にさえ劣る雑魚でしかない。

 故に容易く、迅速に……とはいかないが、それでも二人に害を成すノイズを殲滅することには成功した。方法は簡単。

 モノアイの視覚器官から放射した閃光を一発、薙ぎ払うように横一線に撃っただけ。それだけでノイズの群れは容易く塵と還った。

 

 さて。これで当面の危機は去った。

 

 ノイズを1匹残らず殲滅したことで少女と女の子は救われた。ナイトメアにすれば大変喜ばしい結果なのだが、やはり彼女らにとって自分が

異形の存在であることは変わらない。

 

 分からないからこそ、人は恐れる。

 

 できれば、危害を加えるつもりはないと。

 彼女らに精神的な安心感を持たせてやりたいと思うナイトメアだが、その為の言葉の使い方や術を知らなかった。

 いや、そもそも、どうやって自分が敵意や害意などを持たない存在かを伝えればいいか。そこもこの現状における悩みの種だ。

 人間のような発声する為の器官を持たないナイトメアは、変形することのできる特性を用いて擬似的な器官を生み出す、という器用な芸当が

できないのでどうやったとしても、二人に明確な言葉として伝えることができない。

 

外見だけ見れば警戒心と恐怖を抱かれても文句は言えない風貌をしている為、伝えられたとしても、疑われる危険視される可能性もある。

 

 

 立花響という少女が普通の感性の人間だったら、の話だが……。

 

 

「あ、あの! 助けてくれて、その、ありがとう? いや、ありがとうございます……」

 

「ありがとっ!」

 

 

 そしてそれは響だけではなく、女の子も同じだった。

 二人の言葉にナイトメアは耳を疑った。

 いや、耳は無いが聴覚はきちんとある。ただ信じられなかった。

 人は自分にとって理解を超えた相手に対し警戒と恐怖を抱き、排斥的行動に出るのが心理。

 にも関わらずこの少女は悪夢の具現化たる自分に対し、恐怖こそ抱いてはいるがそれでも感謝を込めて礼を言っている。

 

 返したい。きちんとした声で返したい。

 

 そう思っても喋れる事叶わず。仕方のないと踏ん切りを決めたナイトメアは、頭を下げる、と言うお辞儀の礼儀作法を持って答えた。

 とは言え、首や頭に相当する部位はないのだが、身体を傾けるだけでそれっぽい動作をして見せた。

 

 

「えぇーっと……人間……じゃ、ありませんよね?」

 

 

 肯定。再度頭を下げるような動作で答える。

 

 

「…………もしかして、どこかの秘密結社か何かが造った生物兵器的な

?!」

 

 

 否定。今度は身体を左右に揺らす動作で違うと表した。

 

 

「そ、そうなんだ……」

 

「あ、もしかして悪魔さん!」

 

 

 今度は女の子が言う。それにナイトメアは肯定の意を込めた頷いた。

 

 

「へ? あ、悪魔って……えぇ〜……」

 

 

 人生でこれ程までに常識を卓袱台の如く、容易くひっくり返される非現実的な出来事が連発するだろうか。いや、早々ない。

 だからこそ、響はもはや何も言えなかった。

 ただでさえ、こんなアニメに出てくるようなコスプレに等しい格好にいきなり変身しただけでも頭で処理し切れないと言うのに、自分と女の子を助けてくれたのが悪魔などと、どういう感想を抱けばいいのか。

 

 

「やっぱり! 絵本で読んだ優しい悪魔さんにそっくりだったから」

 

 

 そしてこの子が何故ナイトメアを悪魔だと思ったのか。言葉通りに聞けばどうやら絵本に出て来る悪魔のキャラクターがナイトメアにそっくりだったらしく、しかもどうやら悪魔なのに心優しい設定のようで自分達を助けてくれた=優しくて絵本で悪魔さんに似てる、という方式からナイトメアが悪魔であると導き出したようだ。

 

 

「!! ッ」

 

 

 シュールで何処か笑えて来るような空気から一変。こちらへと近づいて来る何かの気配と魔力を感じ取ったナイトメアはモノアイの角度を上へと上げる。

 予想は的中した。

 虚空から血のように染み出した赤い放射線状の模様が現れたかと思えば、それが漆黒の穴となって何かが飛び出すように現れた。

 

 

「キャハハッ! ハハハハハッッ!!!!」

 

 

 甲高い歪な笑い声。それは人間に恐怖と不安を掻き立てる狂気の旋律に等しく、それを奏でる存在は山羊の頭蓋骨に実体のない黒い霧のようか布類のようなものと言える幻影の影の如き身体。

 細長い指の異形の両手には巨大な鋏の柄の部位を収め、当然柄の先には鋏を鋏たらしめる挟み切る為の刀身がある。

 まさしく、大鎌ではなく大鋏を持った死神と称するに相応しいだろう。ナイトメアはこの死神の如き異形……悪魔についてよく知っていた。

 

 デスシザース。

 

 それが悪魔の名だ。Kが魔界で見たものと全くの同族だが姿が異なり、山羊の頭蓋骨で作られた仮面を依代にした個体で、質の良い依代を得ている分通常のデスシザースよりは数倍ほど強い。

 

 

「キャハハハハハハハッッ!!」

 

 

 絶えない笑い声を上げ、デスシザースは自身が持つ大鋏をガチガチと打ち鳴らす。

 

 “美味しい馳走を前に待ち切れない”、とでも言っているかのように…………。

 

 






初代デビルメイクライにおけるトラウマ……用水路の悪魔こと『山羊の頭蓋骨を被ったデスシザース』!!

ボスでもない癖にまぁ強いこと強いこと……おかげでゴールドオーブを何個も消費する破目に(T . T)

しかも場所によってまた出て来るからホントウザかった……ッ!

そんなデスシザースも、5に出て来た際はかなりレベル的にダウンした感がありましたね。やっぱりあの山羊の頭蓋骨が相当依代として質が良かったのか……。







あと、なんかここのナイトメア……可愛くないっすか?

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