WISH and DREAM   作:樋夜柊

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第四十七話 逆境と勇気

(・・・・どういうこと?)

 そんな異変を始めに感じたのは洞窟の中に入る時からだ。

 『嗅覚強化』のSCを持ったアルカルが、おかしいと呟いたのだ。何がおかしいのかと聞いたら、どうも敵のにおいがしないのだと言う。それは、IKNOWの幹部は勿論、モンスターのにおいすらしないのだという意味だった。

 そして、今は中にいるが、驚くことに虫の子一匹いないのだ。すると、

「なんか、聞こえないか?」

 そう止まって言ったのは、修業したことによりSCを変更させ、身体強化系『集中力強化』を得たコルアだった。アルカルはそんなコルアに、

「聞こえないかって、何にも聞こえないが」

「いや、キィーンって。あれ、俺だけか? なんかすごく不愉快な音だ」

「SC解除すりゃいいじゃねぇか」

「あぁ、俺はまだ集中力強化を発動してないぞ。俺のSCはもともと、集中力強化の劣化版、感情系SCの『精神強化』だったんだ。もともと慌てたり、焦ったりすることがあんましなかった俺は周囲の音を消し、周囲の状況や異変を感じやすいSCだった。だから、地雷がうめてあったり、空気が変わったりしたらわかるんだ。そして、修業でそのSCを鍛えてSC変更、というか進化したんだが、別にこのSCが消えたわけじゃない。つまり、この洞窟にモンスターがいないのは何かあるからだ。気を付けろ」

 するとケイが、

「音ですか。微妙ですが、私も聞こえます」

 そして、ムーとマイも

「なんか、聞こえるよね」

「うん」

 私も微妙にだけど聞えた。しかし、

「なんだ? 俺だけかよ」

 と言っているため、アルカルには聞こえないのだろう。なぜか考えた時、

「たしか、アルカルって三十代後半だっけ?」

「な、なんだ急に。俺はまだ前半だ」

「それだよ」

 そう言って、ケイは

「私、本で読んだんだけど、年齢層で普通は聞こえる音と聞こえない音があるんだって。それを確かめる音があって・・・・なんだっけ・・・えっと・・・」

「『モスキート音』。十代、二十代、三十代、四十代と、いろんな年齢により、聞こえる音、聞こえない音を確かめる時に使用する音だ。君が言いたいのはその事かな?」

 そう言って私達の前にあの時の、ギルドを襲ったあの時の男が現れたのだった。

 

                  ◇

 

「しかし、ラット。お前よくわかったな。機械や兵器の弱点が寒い所だなんて」

「あぁ。王国が攻めて来た時、対抗手段を考えたんだ。今はそれに対応した機械も存在するらしいがな」

「へぇ、ってことは王国ともし戦う時に使えないってことか?」

「というか、今回もそれが通じるかわからんかったしな。対応してたのがあのミラー砲とやらだけでよかった。賭けに勝ったって感じだ」

「運のいい若僧よの~」

「・・・・」

 右を向けば、最後のトドメをさした大きなハンマーを持った大男と七鬼のマキさんが一緒に走っていた。

「・・・・あんたらも・・・・」

「ん?」

「・・・えっと・・・・マキさん達も最奥を目指してるんですか?」

 なんか、姉貴とはまた違う圧力を感じ、ついつい敬語になってしまった俺に対して、マキさんは鼻で笑い、

「ふん、まぁな。しかし、なんだ、この貧民街は。ぐにゃぐにゃ迷路みたいではないか。先に走って行ったエマにも会わないし」

「俺らのとこにもエマは・・・」

「わかっとるわ。馬鹿にしているのか?」

「・・・ですよね」

 なんだろ、この人。俺にあたりが妙に強くないか?

「フウの弟だと聞いたが、随分と腰抜けだな」

「姉貴と俺を比べないでくださいよ」

 そうため息をして言うと、マキさんが足を止め言った。

「でも、さすがにこの状況は打破できるだろ?」

 そう言って俺も足を止め、マキさんの見つめている方をよく見ると、貧民街のIKNOWの組織の傘下、もしくは残党らしき人々がたくさんいたのだった。

 

                 W

 

 ケイとアルカルは戦闘不能。

 残るは私とムーマイコンビ、コルアにサナだった。

 ちなみに、ケイとアルカルは奴が現れた瞬間、倒れたのだった。

「お前‼ ケイとアルカルに何をした⁉」

 そう叫ぶ私に、男は言った。

「別に、何も。そう言えば、僕の発明品『極細極小麻痺針』をここに来る前にばらまいたんだっけ。それを踏んだんじゃないかな? だとしたら大丈夫。死にはしない」

 そう言ってニヤリと笑った。私が怒りくらう中、コルアは冷静に聞いた。

「四神の解放。それがお前の、お前たちの組織の目的らしいがそれは本当か?」

「あぁ、本当だ。今さっき、洞窟の管理モンスターは倒してきたところだ」

「なぜ戻って来た。俺等なんかほっといて解放すればよかっただろ?」

「効率が悪い。解放の妨害をされる可能性が一パーセントでもあるなら、潰すのは当たり前だよ」

「そうか、なら・・・・戻って来た事に後悔するんだな‼」

 そう言って、背中にさしていた剣を抜き、男の元へ走って行く。しかし、

「君らの相手は僕じゃない。・・・俺の影だ‼」

 そう言って、自分の影に一滴何か垂らしたのが見えた。すると、

 

 スウィン‼

 

 影が動き、コルアの剣を手で受け止めたのだ。しかも、影は剣を振り払ったのだった。

「『影自立水』。これを垂らせば、無敵の影兵士が誕生する。そして・・・」

 男は何かのボタンを押した。すると、

 

 シュンッ‼

 

 と光の弾が私の頭の横を通り過ぎた。後ろを恐る恐る振り向くと、洞窟の壁に大穴が開いていた。

「一定距離近づいたら、発砲されるようになっている。これ以上来たら、死ぬぞ」

 そうニヤリと笑って言った。まさに逆境だった。この逆境を男は作り上げたのだ。

「噂に聞いているぞ。前にあったギルド抗争で自分よりと強く勝てるはずもない絶体絶命の逆境を打破したんだってな。ならこの状況も打破してみろよ。さて、俺の勇気が勝つか、それともお前らの逆境に対する気持ちが勝つか。見ものだな」

 そう言って、奥へと歩いて行った。

 

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