神山思いつき集   作:神山

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女神転生7

翌日。また秩序と混沌、どちらにつくか。などという夢を見たフリンは少し寝坊していた。ワルターやヨナタンが起こしに来るまで爆睡しており、バロウズや仲魔達の声でも起きなかった。

 

「寝過ぎだぞお前……ん?俺の顔に何かついてるか?」

 

「いや、すまん。ぼーっとしてた」

 

「なんだそりゃ。顔洗ってこい!」

 

ワルターに急かされ準備をする中、ヨナタンはそれを笑いながらホープからの伝言をフリンへと伝えた。

 

「ははは!おっと、お頭からの伝言だ。新人はアキュラ像広場にあるKの酒場に顔を出せとのことだ。僕らは先に行ってるよ」

 

「二度寝とかするなよ!」

 

出ていく二人に返事をし、フリンは急いで準備をする。あの夢は毎度毎度自分の起床の邪魔をするのでフリンは嫌っていた。

 

そして飛び出すようにKの酒場へと向かい、途中でなんとかヨナタンとワルターに合流することが出来た。余りの速さに二人が脱帽したのは余談である。

 

「おぅ、見ねぇ顔だな。新人さんかい?」

 

Kの酒場。そこはサムライ達が思い思いの休み時間を過ごす場所であり、唯一気楽に過ごせる場所でもある。酒場というだけあり飲食はもちろん、情報交換も行っていた。

 

フリン達が到着すると、カウンターにマスターと思しき義手の黒いアイパッチをした初老の男性が声をかけてくる。近くにはイザボーとへこへこ頭を下げるナバールがいた。

 

「一緒にされるとは不本意ですK殿!偶然選ばれたカジュアリティーズ共と!」

 

「……あんまりつまんねぇこと言っると、その髪の毛毟っちまうぜ?」

 

「およしなさいよ二人とも……まったく、男はいつまでも子供ね」

 

いつものごとく絡む二人にイザボーは呆れる。それに居心地が悪そうにする二人だが、慣れてしまったヨナタンがそれを無視して先を進めた。お頭はどこかと。

 

「ホープなら来ないぜ。今日はこのKがお前達を指導してやる」

 

「指導って、アンタがか……?」

 

「ワルター君!君ってやつはなんて無礼をッ!いいか、この御方は……!」

 

「……単なる先輩って話だろうが。あんまり持ち上げすぎてくれるな」

 

「な、ぐぅ……」

 

口をパクパクして苦虫を噛んだような表情をするナバール。実際Kは前サムライ頭であり、ホープも頭が上がらないほどの人物なのだが、今は一酒場のマスターだ。さっぱりした性格からもわかるように、彼はこうして前の経歴をとやかく言われるのを嫌っていた。

 

「指導っつっても大げさなモンじゃなくて、サムライ稼業を楽しむ秘訣ってやつさ。まぁ店にある黒板を見てくれや」

 

そう言われてカウンターの奥にある長い黒板を見てみると、そこには依頼めいた文章やサムライ達のランキング表が書いてあった。

 

「正式な任務以外のクエストを募ってその黒板に書いてるのさ。好きな時に挑めるクエスト……みんなはチャレンジクエストって呼んでるよ。もちろんチャレンジクエストだって達成すれば依頼者から報酬が出る。毎日ナラクに入って悪魔を倒すだけじゃ、いい加減退屈しちまうからな。先輩連中はてめえらで楽しみをこしらえてるってわけよ」

 

そう言って義手で黒板を叩くKにつられて再び黒板を見る。ここナラクのみならず、他の地域の物もあるようだ。そちらに出向くサムライ用だろう。

 

「賞金が目当ての者もいるが、本当の目当ては仲間からの賞賛と尊敬だ。そのサムライのお楽しみに、お前ら新入りも混ぜてやろうって寸法さ」

 

バロウズを黒板に向けると、黒板の依頼内容を認識し、それをリストに加える。操作すればきちんとチャレンジクエストとして登録されていた。

 

そしてKの説明が終わると、ナバールがフリンとワルターの前にずずいと出てきた。

 

「フリン君とワルター君に勝負を申し込みたい」

 

「……はぁ?」

 

「我々三人の中で誰が一番早く三つのチャレンジクエストを達成できるか。三つのチャレンジクエストを達成して先にKの酒場へ戻った者が勝者だ。ラグジュアリーズの方が優れていることを君たちに知らしめてくれる!」

 

阿呆臭い、とフリンは思いワルターに向くも、彼は完全にキレていて速攻で依頼の確認を行っていた。

 

「今受注した三つだな?上等だ。相手になってやるよ」

 

「おい、ワルター」

 

ナバールとワルターは勇んでKの酒場から出ていく。フリンへの確認は一切なしだ。これにはさすがにため息が出た。

 

「やれやれ、二人が心配だから僕も受注するよ」

 

「皆がやるのでしたら、私もやってみようかしら」

 

続いてヨナタン、イザボーまで出て行ってしまう。完全にフリンは出遅れた形だ。Kは後ろで笑っているが、フリンにとっては面倒以外の何物でもない。

 

とりあえず依頼内容を見てみると、随分と簡単なものだった。グリフォンの爪三つと深緑の苔というナラク特有の滋養強壮効果のある苔を三つ納品するものと、ナラク二層に出現した魔獣オルトロスの討伐クエストだ。しかも納品クエストに関してはすでに達成済みである。

 

「なに?すでに持ってやがるのか」

 

「えぇ、何かの役に立つかと思いまして」

 

「ははは!抜け目ない奴だなお前さん。だがそういうやつが一番生き残る。ほらよ、これが報酬だ。まずはお前が一番乗り最有力候補だな」

 

一度寄宿舎まで戻って昨日までの探索中に確保しておいた納品物をKに渡す。遺物回収のついでに集めた物だったが、こんなところで役に立つとは思わなかったフリンであった。

 

Kの酒場を出てQの鍛冶屋に向かったフリンは、回収した遺物と支給された剣を売って業物の剣を購入する。そしてBの薬局にも寄って回復アイテムを補給してようやくナラクへと向かった。パーティはアプサラスとナパイアを合体して作り出した女神ハトホル、もう一度仲間にしたエンジェルと夜魔モコイを合体させた鬼女リャナンシー、そしてアークエンジェルだ。

 

後衛の回復や魔法、前衛の物理攻撃どれも対応できる構成となった。

 

「今度はどうしたの?」

 

「はぁぁ……やっぱり抱き心地抜群ね。もう離したくないわ」

 

「フリン様、おはようございます」

 

フリンへと礼儀正しく挨拶をしてくるアークエンジェルとは真逆に背中に抱き着くリャナンシーと前からよっかかるハトホル。三者三様の出方にフリンは苦笑しながらも、今回の趣旨を説明する。魔獣オルトロスということでレベルが違い過ぎるのではと忠告をされるが、今回は問題ないとフリンは断言した。

 

というのも、ここナラクに満ちるマグネタイトは正直あまり質の良いものではないのだ。人間を喰らい続け、常時活性化している悪魔ならまだしも発生してすぐの形だけで衰弱しつつある悪魔ならば何も問題はなかった。簡単に言えば、レベルが下がっているのだ。可哀想ではあるが、同胞に被害が出始め今後脅威となる可能性が高いオルトロスを放置しておくわけにはいかなかった。

 

「ウググ、ニンゲン 喰ワレニ 来タカ!」

 

「悪いな。お前を殺しに来たよ」

 

「舐メルナ!」

 

ナラク二層の中ほど。そこで運よく獲物を探していたオルトロスとばったり遭遇したフリン達はすぐさま戦闘態勢に入った。どうやらまだ他の新人達は納品クエストをこなしているようだ。

 

魔獣特有の強靭な四肢により、下がったレベルながら素早い動きを見せてきた。そしてすれ違いざまにその爪で、遠距離からは双頭による火炎のブレスを吐いてくる。本来新人に相手取れる悪魔ではない。レベルは下がれど上位悪魔であることには変わりなかった。

 

しかしフリンは違う。様々な経験や身体能力に加え、元から持つ強靭な精神。それによって突撃してくるオルトロスを難無くいなし、開けた場所へと誘導していく。そして何よりフリンと共にある強化された彼女らのことも忘れてはならない。

 

「ブフーラ!」

 

「ジオ!」

 

「ヒートウェイブ!」

 

前へと出たフリンを襲うオルトロスの横合いから一気に放たれる魔法と衝撃。四方から放たれる攻撃に加え、フリンの誘導によりそのうちの一つ、氷結中位魔法ブフーラが氷結弱点であるオルトロスへと直撃した。

 

「キャィンッ!?」

 

これには流石のオルトロスも悲鳴をあげ、吹き飛んで壁へと叩きつけられる。強化されたリャナンシー魔法は、もともと魔力型であったのもあってこのレベル帯では強力な一撃と化していた。彼女は元々ブフーラを持っておらず、事後に変化した魔法であることもあって本人はフリンとの愛の結果だと言い張っているが。

 

「畳み掛けるぞ」

 

フリンの命令とともに一斉に放たれる攻撃。そして最後にフリンの妖花烈風によってその身は粉々になった。

 

『クエスト達成、お疲れ様。あとはKの酒場に戻るだけね』

 

「あぁ、ありがとうバロウズ。みんなも、ありがとう」

 

「はーい。まぁいい運動になったよ」

 

「フフフ、あなたとの愛の結晶が決め手になったわね」

 

「お疲れ様でした。主よ、此度の戦闘の勝利を捧げてくれたあなたに感謝を」

 

リャナンシーがフリンにキスをし、ハトホルが大きく伸びをする。そしてアークエンジェルは天に向かって今回の勝利を神に感謝していた。

 

少ししてKの酒場まで戻ったフリンはコップを磨いているKへと依頼達成の報告を済ませていた。

 

それと、ここKの酒場はサムライ専用ということもあって特に悪魔の召喚に関して規制はない。デカすぎたり迷惑をかけかねないものはもちろんご法度だが、それ以外ならば特に気にする者もいないのだ。そういった者はまず、ここには来ない。だからここに来て彼女らを呼び出したフリンにとやかく言うサムライはいないのだ。もちろん、寂しい男の嫉妬はあるが。

 

「おぅ、終わったか?」

 

「はい。彼女達の活躍もあり、楽勝でした」

 

「言うじゃねえか新人君。女悪魔をはべらせて入ってくるだけはあるってか?まぁいい。これが報酬だ。それと、お前さんが一番だぞ」

 

『やった!またまた私のマスターが一番ね!ふふふ、他のバロウズが悔しがるのが目に浮かぶわ』

 

仲魔達が後ろで喜び合い、バロウズが微笑む。それをフリンは暖かく見守りながら、他の仲間達が帰ってくるまで一休みすることにした。カウンターでKに飲み物を頼み、彼女らと話しながら時間を潰すフリン。現状見事に女性悪魔しかいないことに最初はKも笑っていたが、次々とフリンへ求愛行動をとる彼女らに少し固まっていた。そして嫉妬の視線が増える。

 

「ねぇ、おじさん。オムライスないの?」

 

「おむらいす?なんだそりゃ?」

 

「えー、オムライスも知らないのー?きゃはは、お兄ちゃんはすぐ作ってくれたのにー!」

 

ピクシーの小馬鹿にした態度もKにとっては馴れたことなので特に気にせず、フリンへと質問した。すると返ってくるのはラグジュアリーズ付きの料理人ですら知らないような料理の数々。オムライスなど最たるもので、そんな馬鹿なと最初は思っていたが、中々どうして悪魔達の評判は軒並み高い。

 

この東のミカド国、実は食文化水準がそれほど高いわけではなかった。食物の輸送や保存などの問題もあり、簡単なスープやパン、肉や干物が主な主食とされていた。それもそのはず。時代的には中世ヨーロッパとさして変わりがないのだから。

 

「で、ここをこうしてこれを入れて……」

 

「なるほど」

 

ゆえにフリンに作らせ始めるのは自然なことだった。幸い食材はあり、足りない物も近くのサムライに食わせてやるからと買い出しに行かせることで何とかなっている。Kのいう事に逆らうサムライがいないので、新人が横に立っていることも誰も文句をいう事は無い。

 

「まだー?」

 

「お腹すいた―」

 

「今あの人が作ってるでしょ?待ちなさいな」

 

「なんだか女性として負けた気がします……」

 

仲魔達も一度食べたことのある料理が待ち遠しく、食器を持って待っていた。悪魔達にとっての主食は殆どが人間や高マグネタイト体、魂、感情といった物である。人間と同じものは一応腹を満たす程度の物であり、そもそも食べる必要が無い悪魔もいる。しかしそれを覆すほどフリンの料理は美味かった。

 

横から摘み食いしたピクシーが絶賛し、フリンの夕食が無くなる程度には好評なのだ。一度も食べたことのない未知の味。人間とはまた違うおいしさ。でも血とか人間は別腹換算なのでこれがあるから食わないというわけでもないのだが。

 

「うーまーいーぞーっ!!」

 

「おいっ!俺にも食わせろ!」

 

「まったく、新人くんの多芸さには感心するぜ」

 

出来上がったオムライスをKと仲魔達、そして買い出しに行ってもらった先輩のサムライに振る舞い、自分のものも食べながら感想を聞いて微笑むフリン。先輩とKの絶賛から始まったそれは周りにいた他のサムライ達も調理中の良い香りから釣られてやって来て絶賛の嵐だ。

 

三つ目の自分の時に一人暮らしをしていたためにある程度の料理は出来るのだ。材料があり、環境も揃えばある程度の物は作れる自信がフリンにはあった。最もレストランで出されるものとは比べ物にならないが、ここではそれで十分だった。

 

「もし、そこの新人の君よ」

 

と、そこへやってきたのはまだ見たことのない先輩のサムライだった。丁度オムライスを食べ終えたフリンは返事をして彼の近くへと向かっていく。周りはピクシーたちによるフリンの料理談義で盛り上がっているので気づいたのはKくらいだろう。

 

「チャレンジクエストでの活躍、拝見させてもらったよ。見事な物だ。そこで、フリン殿の腕を見込んで頼みたいことがある」

 

どこかよそよそしい感じのする先輩からの頼みごと。フリンは嫌な予感がしつつもこっそりと話しかけてくる彼に近寄るしかなかった。

 

「……実は、ナバールがナラクで行方不明になったのだ。どうか、ナバールを探してほしい」

 

「はぁ?」

 

思わず間抜けな声で聞き返してしまうくらいに間抜けな頼みごとだった。サムライが出来てからどれだけの月日が経ち、サムライ達がナラクの探索と悪魔の駆除に時間をかけてきたことか。ナラク内の地図は当たり前にあるし、それはバロウズに追加アプリとして存在している。実地訓練の時に必ず手に入れているので、ナバールだけデータが消えたなどありえない。どれだけ探索をしていなくとも、そこまでの足取りはしっかりバロウズに残っているのだからそのまま戻ればいいのだ。

 

しかしその先輩はフリンの聞き返しに興味を持ったと判断したのか話を続ける。

 

「ただし、内密に遂行してもらいたい。自尊心の強いナバールの事だ、無事に救出されたとてもしこんな不名誉が公になれば……彼は死だって選びかねないからね」

 

ありえない、とフリンは思う。あのナバールが仮に公になったとてこの位で死を選ぶものかと。というか死ぬことを選ぶ気概も勇気もない。ただ単に偉そうにしてそのことをひた隠しにするか、金の力でなんとかするだろう。それにナラクで何かあっても基本は自己責任なのだ。それをわかってナラクに潜るのがサムライだ。

 

早く助け出してやってくれ。その言葉と共に見慣れないサムライの先輩は去っていく。これはバロウズにクエストとして登録されたが、なにかしらの罠である可能性が非常に高い。バロウズに相談すると、フリンは覚えていないがかつては罠だったことを話してくれた。

 

「……なるほどな。ちんけな野郎どもの新人いびりとカジュアリティーズへの制裁ってわけか」

 

「一応これから行きますが、報告だけはしておこうかと」

 

もちろん早速Kに相談したフリン。Kは露骨に不機嫌になり、周りのサムライ達もそれに憤った。オムライスを振る舞った効果もあるだろうが、仲魔達の幸せそうな表情を見てフリンを好青年だと判断したためだというのが大きい。そこにカジュアリティーズとラグジュアリーズの違いは関係なかった。

 

「多分何かしらの妨害があるだろう。戦闘も覚悟しといた方がいいな。ホープにはこっちから連絡しておくから、気を付けていって来い」

 

「回復を忘れるな」

 

「おい、これも持って行け」

 

「同じサムライともあろう者がなんということを……」

 

Kに続き、サムライ達が次々にフリンへと激励の言葉をかけてくる。中にはアイテムの差し入れをしてくる者までいた。これにフリンは一人一人礼を言い、仲魔を引き連れてナラクへと向かう。食事とおしゃべりを邪魔された仲魔達は大変機嫌が悪く、ナバールを知っている仲魔は口々にあの髪の毛を毟ると言っていた。

 

そうしてナラクへと到着したフリンは、小さくため息をつきながら同じく依頼という名の新人いびりを受けているだろうワルターの無事を祈った。




次にはボスまでいけるかな?怪しい所ですが、今回はここまで。

ってか、普通に考えてフリンのこの行動はあってしかるべきものだったと思うのです。マップ機能はバロウズについてるし、迷う事なんてありえないから馬鹿だなーとは思ってましたが普通にクエスト更新されるので疑問に思ってました。多分カジュアリティーズとして生きてきたから、疑問を持つことがあまりないのでしょうかね。

あ、セインツロウ4買いました。
我らがボス、大統領就任おめでとうございます。完全にDMCのダンテを作って二丁拳銃で楽しんでます。
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