神山思いつき集   作:神山

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今回は久しぶりに長くなりました。

就活舐めてた。キツイ。


女神転生8

ナラクへと入ったフリンは仲魔達を順番に出してストレスを解消させていた。中でも一番しゃべっていたピクシーのストレスは半端ではない。最初から仲魔だった彼女はナバールのことも知っているので、普段からフリンを馬鹿にする彼を嫌っていたのだ。それもあって完全にキレている。それはもう、新しいスキルを覚えるほどに。

 

「メギド!」

 

彼女の声と共に万能魔法であるメギドが悪魔達の頭上に展開される。そして全てを破壊する光の爆発が起き、そこにいた悪魔は軒並み吹き飛んでいた。万能属性のために属性耐性は関係なく、防ぐ手段はないのだ。

 

「ちょっとすっきり。次行くぞぉ~!」

 

「ピクシーが覚える魔法じゃないわ……」

 

「まずもって使えないはずだけどね」

 

心なしかテンションの上がりだしたピクシーに隠れて戦々恐々と話す仲魔達。彼女達の言っていることは間違いではなく、本来下級悪魔のピクシーが万能魔法など覚えられるはずがないのだ。仮に使えたとしてもその消費魔力に耐えられず、すぐに魔力切れを起こして最悪生命力ごと持っていかれて死ぬこともある。

 

だが、このピクシーは違う。フリンによって超強化されているために怒りを起源として新しいスキルを覚え、フリンの精を受けたことでレベルとステータスは軒並みアップしているのだ。今ではパーティの主戦力と言っても過言ではない。メギドを先程から連発しているのに疲れていないのだから。

 

まぁ、ドロップしたチャクラドロップやフリンの精神力を時折取っているのもあるが。

 

ナラクの悪魔を虐殺しながら先に進んでいると、急に物陰から茶色いフードを被った男が現れる。口元は嫌らしく歪んでおり、こちらの敵であることがすぐにわかった。

 

「もう一人のやつと同じだな。無知ゆえに退くことを知らない。だからお前達はカジュアリティーズなんだよ」

 

出てきた途端急にしゃべり始めたフードの男にため息をついて、ピクシーに精神力を吸わせていくフリン。少し気だるい気持ちになるも、ピクシーのやる気は満ち溢れており、いつでもメギドの打てる体制に入っている。

 

「……いいだろう。後悔って概念をその身に叩き込んでやる」

 

そう言うと、フードの男は雪男の悪魔、邪鬼ウェンディゴを召喚――――

 

「メギドォォ!」

 

「ウガァァァァ!?」

 

「なにィ!?」

 

――――と同時にピクシーに潰された。だがそれでもめげなかったのか、フードの男は続けて同じウェンディゴの群れを呼び出した。それを見てピクシーが顔を俯ける。それに気を良くしたのか、フードの男は笑い出した。

 

「フ、フハハハハハ……その身分にふさわしく、地に這いつくばらせ「はぁぁぁ……」な、何だこの妖精」

 

言葉を遮られて不機嫌になりながらも、大きく光悦とした表情で息を吐くピクシーに中てられて恐れる。正直な話、フリン達ですらどうするのかわからなくて困っていた。まぁこいつ一人で何とかなるだろうとは判断していたが。そしてそれは敵にとって最悪な形で当たることになる。

 

「的がいっぱい!これは一気にストレスかいしょーだね!お兄ちゃんぎぶみー精神力!」

 

「はいはい……」

 

「やったー!じゃぁいただきます!」

 

テンションの上がりきったピクシーはフリンに熱烈なキスをすると同時に彼女の内包しえる分以上の精神力を奪っていく。本来ならばはじけ飛んでもおかしくなかったが、フリンからのキス(自分から)と怒りや連発したメギドなどもろもろの効果でそれらの上限が上がっていたのだ。どんどん強化されていくピクシーは、一体どこに向かっていくのだろうか。

 

「メギド!メギド!メギド!メギド!」

 

爆殺、粉砕、大喝采。そんなおかしなことを考えながら強くなった彼女をどこか微笑ましく思いだしたフリンは、後ろから声をかけられてチャクラドロップを口に放り込みながら振り向いた。そこには呆然としたヨナタンとイザボーがいた。

 

「K殿に話を聞いて多勢に無勢だと思って駆けてきたのだが……」

 

「凄いわねあなたの仲魔。群れがもういないわ」

 

残るは数匹。しかも余りの威力に恐れおののき、自身の方がピクシーよりも上位であるはずなのに逃げていく。しかしそれを見逃すはずもないピクシーは楽しげに笑いながらそれらを叩き潰した。

 

「んー!満足っ!じゃぁ私は一休みするね!いっぱい手伝ってくれてありがと!愛してるぅ!」

 

「あぁ、俺もだよ……」

 

無性にどっと疲れたフリンはガントレットに自分から入っていくピクシーを見送り、フードの男に向き直る。彼は怯えて後ずさりを始めた。

 

「ヒッ……ぶ、分不相応に目立つカジュアリティーズ共に灸を据えてやるだけだったのに、何なんだ今年の新人は!?」

 

フードの男が喚くように言うことはKとフリンの予想通り、完全な言いがかりによる新人いびりだった。それにフリンは完全に呆れ、フードの男を瞬時に掴みあげるとナラクの壁に叩きつける。ヨナタンとイザボーが止めようとするが、フリンの睨みで動けなくなってしまった。

 

「そんなふざけた理由で新人に悪魔をけしかけたのか……サムライとしての誇りもない屑が。俺でなければ死んでいたところだぞ!恥を知れ!」

 

「ヒッ、ヒィィィッ!!わ、私は悪くない!私は君らをおびき寄せるだけの役割なんだ!」

 

今回の戦い、明らかに新人へと向ける戦力ではなかった。複数で当たれば大丈夫かもしれないが、単体では確実に負けていたことだろう。実戦経験も少なくレベルも低いため仲魔も全ていなくなるはずだ。新人に対する嫌がらせの域を越えている。フリンと仲魔達であったから楽に済んだものの、他の新人では殺されずとも結構な痛手をこうむることになっただろう。そしてそのままナラクに残されればどうなるか。

 

それを理解したフリンは呆れと共に怒りが湧き上がり、情けない恰好のサムライに怒りを向ける。フリンの高密度な覇気を目の前で当てられたフードのサムライは釈明の言葉を叫び、フリンに許しを請う。その情けない姿に怒っているこちらまで情けなくなると感じたフリンは一旦怒りを鎮め、静かにナバールの居場所を聞く。

 

「お、奥にいる!本当だ!」

 

「……ならば去れ。地上では他のサムライ達やお頭が待っていることだろう。自分達のしたことをよく考えるんだな」

 

走り去っていくサムライに深くため息をつきながら二人の方に振り向くフリン。しかし二人は少しばかり怯えており、ますますフリンにため息をつかせた。

 

「おーい……って、え?何だこの空気?」

 

と、そこへ少し疲れた表情のワルターがやってくる。そのおかげで空気が和らぎ、ワルターに説明も兼ねて二人に謝っておいた。

 

「いや、君は悪くないよ。あれは当事者として正しい意見だった。僕らこそ君を避けるような目をしてしまったと思う。許してくれ」

 

「私もですわ。些か驚きましたけれど、フリンの言っていることは正しい。ちょっとあなたが怖く感じてしまったんですの……ごめんなさい」

 

謝罪し返してくる二人に感謝を述べるフリン。こうして自分が怖がらせてしまったにも関わらず、友として仲直りをさせてくれる二人にフリンは深く感謝した。

 

何が何だかわからないワルターは説明を聞くと、普段以上に怒りを込めてここにはいないナバールを恨んだ。下手をすれば友が大変なことになっていたのだ。怒りを覚えずにはいられない。

 

「ナバールの野郎……絶対に落とし前をつけさせてやる」

 

「……僕も同行しよう。こんなことがあった以上、複数で行動すべきだ」

 

「そうね。私も同行するわ。ナバールの治療役としてね。ワルターが派手にやるでしょうし、フリンが怒ると怖いですから」

 

「う、すまん……」

 

からかうように言ってくるイザボーに肩を竦めて謝るフリン。そんな二人に少し空気が和むも、ナバールを逃すわけにはいかないと先を急ぐ。すると奥から焦って走ってくるサムライが出てくる。そしてフリン達を見た彼はさらに焦った表情を浮かべ、早口でまくしたてた。

 

「や、やぁ。この先はやめておけ。行かないほうが良い……へ、変な壁が現れたのだよ」

 

そう言うサムライは後ろをちらちらと見ながら挙動不審にフリン達の横を通ろうとする。

 

「壁の向こうに行ったナバールは戻らない。通信も、出来なくなってしまった……き、気味が悪いので引き返すのだ。君たちも先へ行こうなどとは思うなよ。わ、私は別に逃げるわけではないぞ?なぜなら、私は何も知らないのだからっ」

 

喋り終えると一気に駆け出して行くサムライ。それを見送り、嫌な予感を感じながらもフリン達は先を進むことにした。どうなっているにせよ、先に行かなければ話が進まない。

 

「な、なんだこれ?」

 

「すごく禍々しい気配を感じる……」

 

到着したフリン達の目の前には渦状に光る禍々しい入り口らしきものがあった。ここが先程言っていた変な壁なのだろう。明らかにナラクのものではない。

 

新人では判断できないと踏んだフリンは、バロウズを通じてホープへと通信を繋いだ。ホープはフリンへの説明と謝罪の後に、フリンの説明を聞いた。

 

「おそらく、悪魔による結界かと思われます」

 

『なんということだ……結界を張れる悪魔なぞ何百年も現れていなかったというに』

 

そう、結界を張れるほどの悪魔は殆どがサムライによって駆除され、現在では見る事は無い。そんな存在がここにいるのだ。もはや新人いびりの域を越えている。

 

「本来であればお頭たちに任せるのが筋というもの。しかし、結界が張られてから幾分か時間が経っています。中にいるナバール達の安否が不明である以上、早急な対応が必要です」

 

『うむ。もはや我らの到着は待つ時間はないか……よし、新人諸君に告ぐ。これより結界の内部に入り、生存者を救出せよ。なお、結界の悪魔との戦闘は極力控えるように。どうなるかわからんからな。もし戦闘せざるを得ない状況になれば、我らの到着までなんとか耐えるように』

 

「了解しました。それと、別に倒してしまっても構わないのでしょう?」

 

『ふっ、お前ならそう言うと思っていた。出来るのならば構わん。だが、今回の任務ではフリンを先頭にして進むこと。他の者はこいつを支援しろ。以上だ』

 

通信が切れ、それを聞いていた面々がそれぞれ気合を入れる。全員がとりあえず救出後に殴るという結論に達しているのは言うまでもない。結界の悪魔の発生は偶然とはいえ、ナバールがこんなことをしなければ自分たちがここにいることも無かったからだ。

 

フリンを先頭にして結界の内部に入り、バロウズの解析プログラムを起動するも案の定構造は不明と結果が出る。おどろおどろしい空気とどこか幻想的な雰囲気を醸し出しているこの空間は、本能的に長居をしてはいけないと感じさせた。

 

そしてイザボーがふと出入り口を確認しようとするも、何かに弾かれて進むことが出来ないとフリンに言う。結界は悪魔が餌を捕えるための網だ。入り口はあれど出口はその悪魔を倒さなければ出ることはかなわない。

 

「どうやら、容易く戻れそうにないわけね……」

 

「ナバールの野郎、嘘の救出が本物になっちまったじゃねえか」

 

互いに愚痴りあいながらもフリンを先頭にして結界内に蔓延る悪魔を倒しながら進んでいく。入り組んだ構造だが、わりと簡易なもので問題なく進めている。そして進んでいる途中、フリン達はふと気配を感じそちらを見る。

 

「今、誰かいなかった?」

 

「僕もそんな感じがした……」

 

「悪魔の結界の中なんだぜ?そりゃ悪魔がいるんだろうよ。当たり前のことにビクついてないで、さっさと行こうぜ」

 

ワルターの言葉で先を進むことにする三人。しかしその疑念は薄れる事は無く、少しして確信に変わる。目の前を車輪を押して走る少女が通り過ぎたからだ。白い服を着たどこかぼやけて見える少女。それを見たフリンを除く三人は焦ったように声を出した。

 

「やっぱり、誰かいるわっ!」

 

「なぜナラクに女の子が……」

 

「嘘の救出が本物で、おまけに女の子まで?……ややこしいぞナバール!!」

 

ワルターが思わず怒鳴り、ナバールへの怒りを発する中ヨナタンはフリンに女の子の救出も視野に入れることを進言する。それにフリンは怪訝な顔をしながらも頷いた。普通に考えてこんな所に民が迷い込むのはおかしい。一層ならまだしも、ここはそれよりも深い場所だ。無傷でここまで来れる女の子がいるはずはない。明らかに悪魔による釣り得だと思うのが自然だろう。

 

しかし、自分の前にまで現れた彼女を放っておくのはサムライとしての矜持に反する。民を救うのがサムライの使命なのだから。

 

「やぁ、君たち」

 

「……誰だっ!」

 

ワルターが叫び、全員が戦闘態勢を取る。そこにいるのは奇妙な形の車椅子に座った赤いスーツを着た初老の男だった。白髪にメガネをかけ、いかにも怪しい雰囲気を出している。

 

しかし、問題はそこではない。フリンも含め、新人とはいえサムライ衆にまったく気づかせずに後ろを取ったのだ。先程は何もなかった場所から突然に。

 

「私の名はスティーヴン。上手く悪魔を使いこなしているようだね。あの子が興味を抱いただけのことはある」

 

「『あの子』ですって?」

 

イザボーの問いにも答えず、無表情に淡々と語ってくるその姿はどこか薄ら寒い物を感じざるを得ない。スティーヴンはそのまま話を続ける。

 

「君たちは出会ったはずだ。ここに来るまでの間に……あの子とは、再び会うことになるだろう。君たちが、彼の者たちに未来を託された者ならばね」

 

「貴方は、何を言っているのですか?」

 

「いずれわかるよ」

 

「……」

 

今は何も答える気が無いとはっきりと意志表明したスティーヴン。彼は一息つくと、辺りを見回してこの結界について語り始めた。

 

「もう気づいているようだが、この結界は結界を張った悪魔を倒せば解ける。悪魔は結界のどこかにいるよ。怪我をしたら奥の部屋に来ると良い。私が回復してあげるよ」

 

「あ、ちょ……」

 

ワルターの制止もむなしく、スティーヴンは少し先の小部屋の中に入っていく。フリン達はお互いの顔を見合わせ、少し考えるもこの先の事を考えれば回復しておいたほうが良いと小部屋に入る。

 

そこではスティーヴンが変わらぬ姿勢でその場におり、先程宣言した通り体力・精神力共に回復してくれた。少し話そうとフリン達は試みるも、彼は一向に応えようとしなかった。

 

「なんなんだあいつ。結界の中にいて無事なのも変だし、全部知ったような口でしゃべってるし」

 

「わからない。だが、あの御仁は現在僕たちの味方であるようだ。この協力関係は今の僕達には必要だと思うよ」

 

「そうね。彼が何者であれこの先がどれだけあるのかわからない以上、回復が出来る場所を得たことは有難いわ」

 

小部屋を出てそれぞれの意見を言い合い、とりあえず現状のまま味方でいてくれるならそれでいいとした。得体のしれない人物であれど、この結界の悪魔がどれほどなのか、またこの結界がどれだけの広さなのかわからない以上拠点は必須であった。

 

それから少しずつ進み、時折悪魔との戦闘に入る。この結界の道は入り組んではいるがマッピングは可能だ。一度進んだ道が変わることもないため、ヨナタンの意見もあり万全を期すために一定以上進むとスティーヴンの元に戻り回復をしてもらう。おかげでヨナタン、ワルター、イザボーの三人のレベルも上がっていた。ここ周辺の悪魔ならば問題なく倒せるだろう。

 

「少しばかり時間をかけてしまったが、おそらくここが悪魔の居場所だろう」

 

「ここまで強くなったんだ。どんな相手だろうと俺達なら大丈夫さ」

 

「そう簡単にいけばいいのだけれど……」

 

結界の悪魔の小部屋前。バロウズが探知した強力な悪魔の反応により、一同は戦闘準備を開始していた。どんな悪魔が出てくるにせよ、彼らの気合は十分だ。

 

フリンは全員の状態を確認し、自らが変わらず先頭に立って部屋に突入した。

 

「なんだあれは……っ!?」

 

ワルターが部屋に入った瞬間に驚きの声をあげる。無理もない。この小部屋の中は先程までの結界の中とは雰囲気がまるで違うのだから。

 

辺り一面に茨が絡まり、どこか神聖な森の中を彷彿とさせる。さらに上を見れば救出対象のナバールと先輩のサムライがいるではないか。茨に絡まり、身動きが取れなくなっている。そんな中フリンはこの植物にどこか既視感を感じていた。

 

「だ、誰だ?誰かいるのか?」

 

「おぉ、おぉ……その声はワルター君だな?助かった……!私だよ、ナバールだよ!君の同胞のナバールだ!さあ、早く助けてくれたまえっ」

 

「おいおい、なんだよあの情けない姿は……」

 

情けない声で助けを求める二人。顔は青く、焦りに焦っている。そんな二人に呆れながらも、ワルターはとりあえず助け出そうと動き始める。しかし、それを素早くフリンが止めた。

 

「……自分勝手な人間だね。騙して痛めつけようとした相手に『助けてくれ』だなんてさ」

 

ずるずると蔦を伸ばしながら現れた悪魔は、妖樹アルラウネ。本来足がある場所には黒い大きな薔薇が咲いており、そこから上半身裸の美しい女性が生えている。身体には茨の刺青があり、その美しいウェーブのかかった赤髪で胸を辛うじて隠している程度だ。彼女は舌なめずりしながらナバール達を見ていた。

 

「こういう人間の血って、美味しいんだよねー。嫌味なくらい濃厚で、舌に絡みつくの。結界を張っててラッキーって感じ?正直私もそろそろ限界だし……」

 

「や、やめ……やめて……やめて……ください……ッ」

 

恐慌状態に陥ったナバールは過呼吸気味になりながら命乞いをする。しかしアルラウネは茨を使いナバールの頬を撫で、より恐怖に陥る様を眺めて楽しんでいた。

 

「ってことだから、あんたたちには渡せないよ。私も死活問題だからね」

 

悪魔のその姿にすぐさま仲魔を召喚し、戦闘態勢を取るワルター達。しかしフリンは一向に動かず、彼女を見据えるだけだった。

 

「おいフリンっ!何してんだ!」

 

「どうしたんだ……まさか、何か状態異常にでも!?」

 

「言っている場合ではなくてよ!周りからどんどん他の悪魔が!」

 

戦闘を開始するや否や結界の周りからどんどん他の悪魔があふれ出てくる。アルラウネの行動を阻止するのを妨害してきているのだ。ワルターたちはフリンを気遣いつつもそれらの対処に追われてしまう。

 

「……みんな、ワルター達を手伝ってくれ」

 

「はいはーい」

 

「わかったわ。あなたはどうするの?」

 

「俺は、彼女と話を付けてくる」

 

フリンは奮闘する仲間に向けて仲魔達を援護に向かわせる。そうして自身はアルラウネに向けて一歩一歩進んでいった。

 

「一人で突撃するなんて馬鹿じゃないの?」

 

「人の子のくせになまいぎゃっ」

 

「うるさい」

 

道中の悪魔はその卓越した剣技で軒並み斬り捨てる。傍から見れば八の字に剣を振るっているだけのように見えてその実高速で振るわれており、悪魔が話す前に斬り刻まれる。フリンの通る道には頭部を切断されたものや頭から両断された亡骸しか残っていない。さらに時折スキルも発動し、その余りある魔力で初期スキルにも関わらず上位スキルにも届くほどの威力をはじき出していた。

 

「へぇ、人間のくせにやるじゃない」

 

「それほどでもないさ」

 

フリンは悪魔を全て倒し、アルラウネの前にたどり着く。未だワルターたちは手こずっているが、フリンの仲魔の援護もあるためそう時間はかからないだろう。

 

「でも一人で私の前に来るなんて、そうとうのお馬鹿さんなのかしら?」

 

「少し、話がしたくてな」

 

「話?あはははっ!お仲間のサムライが今にも死にそうなのに私と話がしたいの?面白い人間ね」

 

フリンがここまで一対一で話そうとするのにはもちろん理由がある。それには二つ目の魂である秩序側のフリンの記憶が深く関係する。

 

彼は魂の一片に至るまで清らかな人間だった。命を愛し、神に祈り、平穏を愛した。結果的には神の先兵として戦いの日々を送ることになってしまったが、その根底にあるのは優しさだった。そんな彼が日々愛情をこめていたのは植物たちである。

 

趣味の範囲から始めたそれは、彼の心に大きな安らぎを与えた。戦いの中でさびれた心を癒す清涼剤となったのだ。幅広く手を出して寄宿舎付近を植物園にしてしまったのもいい思い出である。

 

その成長を見守る中で、彼は自身の仲魔達にも協力を願った。妖樹や神樹といった植物系の悪魔達の協力の元、植物たちはそれは美しく育っていった。ここにはアルラウネの姿もあり、伝承の通りにフリンに対して様々な事をささやいてくれた。より多くを求めることも出来たのだが、フリンが求めたのは植物の上手な育て方だけだった。そんな彼だからこそアルラウネも快く協力し、共に過ごした。

 

今生のフリンも植物を育てている。第二の魂の影響がないとは言えないが、彼もまた植物を愛しているのだ。程度は軽くなれどそれは変わらない。ゆえに、過去に共に過ごしたアルラウネの姿を思い出した。

 

だがこの目の前にいるアルラウネはどうだろう。長年食料を得られなかったのか、肌はかさつき、薔薇は少し枯れている。茨も潤いが無く、かつて美しかった赤髪も見る影はない。それがどうにも、フリンには耐えられなかったのである。同じ記憶を持つアルラウネではない。別の存在であれど、最初に見た個体であるからかその気持ちが沸き立つのをフリンは抑えられなかった。

 

「お互い時間が無いから単刀直入に言おう。俺について来い」

 

「……へぇ、何を言うかと思えば。仲魔になれってこと?」

 

「そうだ。お前が欲しい」

 

時折会話を邪魔しにくる雑魚悪魔を振り向きもせずに斬り倒しながらアルラウネの目を見続けるフリンを見て、彼女は興味を持った。改めて見てもわかる他の人間とは完全に違う圧倒的な力。かつての力を取り戻せていない弱体化した自分でもわかる程の高純度(LOW)の魂。しかし同時に闘争を好む濁りきった(CHAOS)の魂でもある。そしてこの両極端な二つを持ちながらも純粋で矛盾した人間らしい一意専心(NEUTRAL)の魂。今現在ではこれが一番大きい。

 

この人間は何処へでも行ける。何にでもなれる。救世主にも、覇王にも、そして英雄にも。本来このような場所にはいない上位悪魔である彼女だからこそ、それがわかった。だからこそ興味をそそられる。この人間は何処へ行くのかと。

 

それにカリスマ溢れるイケメンにプロポーズまがいの事を言われるというのは、中々悪くない。大地の香り漂う植物愛に溢れる人間であるのも好ましい。彼女程になれば臭いでわかる。

 

「そこまでバシッと言われると嬉しいし、あなた自身も魅力的なんだけど……」

 

「ん?あぁ、まずは栄養補給からか?ほら」

 

タダでは付いていく気はないために何をもらおうか、それか搾り取ってやろうか悩んでいると、フリンは何を勘違いしたのか右腕の籠手を外しておもむろに右掌を剣で斬った。そして吹き出すフリンの血を見て、嗅いで、アルラウネは目を見開いた。

 

「―――――――ッ!!?」

 

その血から目が離せず、息が荒くなる。身体が火照り、それ以外が考えられなくなってフリンを捕獲し根こそぎ奪おうと茨を四方八方から高速で向かわせる。しかしフリンはそれにため息をつき、剣を構えた。

 

「少し迂闊だったか……ほら、落ち着け」

 

「うっ、あぁっ!」

 

右手一本で支えられた剣を右へ左へはたまた上下へ。その場からほとんど動くことなく四方から来る茨を捌いて斬り刻むフリン。その見事な剣舞は一分と掛からずに終わりを見せるが、それでも十分にフリンの強さを見せつけていた。痛みによって少しばかり冷静になったアルラウネは実力の差を改めて思い知らされる。少なくとも今の自分では彼に手傷一つ負わせられない。

 

だがそれでも彼の血からは目が離せなかった。周りにいる他の悪魔もそれに気づいて暴走気味に突貫するも難無くフリンに撃滅される。これほどまでに悪魔達が群がるのは何故か。それはフリンの中の魂の存在のせいである。

 

血とは魂の通貨であり、命の媒介物である。悪魔との交渉で血液を要求されるのはこれが原因だ。特に純粋な処女の血や高位の魂の血はそれだけで価値のある物である。それを踏まえてフリンの血を見てみよう。強大な力を持つ当代の英霊と言える魂が二つ、異世界のこの世には無い形の魂が一つ、そして今代の真っ直ぐな意思を持つ魂が一つ。統合されてはいるが、実質四つの魂があることには変わりない。さらにそのどれもが悪魔にとって誘惑されるに足るものである。空腹の悪魔や下級悪魔がこうなってしまうのも無理はない。

 

「さて、どうすればいいか……わかるな」

 

「はぁ……はぁ……」

 

右手を突出し、確認を取るフリンに逆らう気持ちは、アルラウネにはすでになかった。彼女は荒い息のまま、すぐさま茨を二人の周りに展開し他の悪魔を入ってこられないようにする。外ではいつまでも発生する悪魔の駆除に追われていたワルター達がそれに気づき声を荒げるも、フリンはバロウズを通じて問題ないとメッセージを送った。

 

茨の結界の中。彼女の状態もあって特に強い甘い香りが漂い、一般人ならばこれだけで卒倒しかねないほどのものだが、フリンは顔色一つ変えずに正気を保っている。それどころかアルラウネの方がフリンの血に中てられて光悦とした表情を浮かべていた。ようやくあの血が飲める、と。

 

しゅるしゅると茨を使ってフリンに近づき、彼の掌の下に顔を持ってくる。顔を上気させ、荒い息のまま舌を伸ばす彼女を見て、フリンは浅く笑い、掌にぎゅっと力を込めた。少し乾いてしまった血も刺激によって溢れ、手を伝って彼女の舌に落ちる。ぱたた、と数滴落ちたことがわかった途端、彼女は身悶えた。

 

「ぁっ、あぁあぁぁっ!!」

 

たった数滴。それだけで彼女は全身を襲う快楽を止められなかった。五臓六腑に染み渡り、濃厚でありながらさっぱりとしていてどこまでも自分の好みに合う味。そして全身に駆け巡る異常なまでの生命力と精神力。それらが合わさって自分の体を作り替えていく感覚が駆け巡り、瑞々しい肌に艶やかな髪、美しい茨と薔薇の花が失っていた美しさを取り戻していく。それだけではない、彼女自身の元の強さにも少しばかり近づいていた。

 

気づけば彼女はフリンに跪くようにして右掌に付着した血を残らず舐め取っていた。普通であればありえないはずの光景。上位悪魔が人間に跪き、浅ましくも施された血を舐め取っているなど逆はあれどこの構図は信じられないものである。

 

フリンはアルラウネの涎まみれになっている右手を見て苦笑し、顔を引き締めてぼーっとしながら舐め続けている彼女から手を抜き取る。彼女は名残惜しそうな声を上げたが、フリンはそのまま左手で彼女の頬を撫でる。彼女は一切それを拒もうとはしなかった。

 

「では、改めてもう一度言おう……俺について来い」

 

「は……ぃ……」

 

溢れ出るカリスマをそのままに、アルラウネの目を見つめて命令するフリン。彼女がこれに逆らえるはずもなく、ややぼーっとした頭のまま、本能的に頷いた。




アルラウネさん一本釣り。

ということで最初のボスを血で仲魔にしました。マグネタイトの概念がこの世界には無いので、血液による生命力の供給もあることにしました。他の代用もあり。やや無理やり感があるかもしれませんが、ご容赦を。どうにも変だと思われればご指摘ください。

一文はヘルシングから引用。でもこれメガテンにも通用すると思うんですよね。むしろ通用しないと変な感じがすると私は思います。

あと、アルラウネさんはドルンギフト使えます。血液により少しレベルアップして、20周辺かな?
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