神山思いつき集   作:神山

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更新遅れまして申し訳ない。

ダクソ2やらソルサクデルタやら出るから買わないとなー。


女神転生9

結界の悪魔・アルラウネとの交渉も終了し、解放されたフリン達は結界突入寸前だったホープ達サムライ衆と合流した。彼らはフリン達の無事の帰還を喜ぶと共に、先輩のサムライとナバールを強く睨んだ。追手沙汰が下るとはいえ、ガントレット没収の上牢獄行きは確実だろう。

 

だがここでナバールが壊れてしまう。安全圏に到達したことによる気の緩みと今までの鬱憤、先程まで死にかけていた恐怖が一気に出たのだろう。喚きだしたかと思えば過去の記憶に縋り、呆けた顔で両親の名を呼び出した。誰から見ても、再起不能である。

 

ナバール達主犯格をホープ達が連れて行き、新人達に休みを言い渡すとすぐに去っていった。ワルターはおかしくなったナバールに悪態をつき、殴れなかったことを愚痴りだす。ヨナタンはそれを聞きながら、ラグジュアリーズはこんなやつばかりじゃないと悲しそうに話していた。その日はすぐに解散となり、各自それぞれの休息を取ることになる。

 

そうして次の日からはまたサムライとしての活動の日々だ。ナラクの悪魔を撃退しながら自分達のレベルアップを行い、その傍らでKの酒場の依頼を受けてこなしていく。時には湖の龍退治をしたり、時にはクーフーリンと同じくガントレットの守護者の悪魔・アレスと戦ったり、またある時には迷子を捜したりとフリンは精力的にサムライの任務をこなしていった。

 

彼女達の強化も忘れておらず、アルラウネも完全に力を取り戻した。パーティも軒並みレベルアップを見せ、フリンの戦力は新人では一位、他のサムライにおいても追随を許さない成長っぷりであった。しかし、所持悪魔が基本女性型であることから極度の女好きであると広く認知されているのは言うまでもない。間違いではないのだが、フリンとしてはそれで一部のお堅い女性サムライから冷たい目で見られるのが辛かった。

 

それに触発された同期である三人のサムライ達も様々な活躍を見せ、今年の新人は一味違うと先輩たちに見せつけることになる。ホープもこの出来には満足しており、サムライの上位者を彼らが担うことになるのは近いと確信した。

 

そして今日。日頃の任務やチャレンジクエストも粗方片づけ、完全に非番になった日。他の新人達も休暇を与えられ、どうしようかと悩んでいるといつものようにワルターとヨナタンがやってくる。朝食をミカド湖で共に過ごそうということだった。ヨナタンの知り合いのパン屋へと行くことになったのだが、フリンのベッドからあくびをするリャナンシーがシーツ一枚で這い出てきたことで状況が一変する。

 

「ふぁっ……あら、どこかに行くの?」

 

「あぁ。朝食を取りに行ってくる。まだ眠いだろう?寝ていて大丈夫だぞ」

 

「そう……行ってらっしゃい、あなた。んっ」

 

行ってらっしゃいのキス。二人からすればなんてことはないいつもの日常の風景であるのだが、ヨナタン達からすればたまったものではない。現にワルターは口をあんぐりと開け、ヨナタンはフリンを指差しながらわなわなと震えていた。

 

「な、な、なんて破廉恥な!時と場所を考えたまえ!」

 

「いやー、進んでいるとはわかっていたけど、見せつけてくれるねぇ」

 

顔を真っ赤にしているヨナタンと何故か感慨深く頷くワルターにフリンは一度首を傾げるも、確かに二人の前ですることではなかったかもしれないと謝罪した。もちろん彼女との大切なスキンシップの一環であることを説明してからだが。

 

リャナンシーがここまで懐いているのにも理由がある。彼女は元々アイルランドの妖精であり、惚れた男性の愛を求め、それを受け止めた男性に詩の才能と美しい歌声を与えるとされている。その代償にその男性の精気、もしくは血を求めるのだ。有名な音楽家や詩人が早死にするのはこのためとされている。

 

だが、フリンには底なしの精気と生命力がある。普通は自分のせいで早死にしてしまう愛しい男。しかしそれがないのだ。自分の代償以上の精気を十分に自分に与えつつ、口惜しいが他の女悪魔に与えても尚健在どころかまだまだいける。自分の与える才能以上の物を持っていながらも自分を必要とし、愛してくれているのだ。愛ゆえに男に憑りつき早死にさせてしまう彼女にとって、フリンはこれ以上ないくらい愛しい男なのである。

 

「こ、こほん……僕も少し取り乱しすぎたよ。そうだね、スキンシップなのだから仕方がない。父上と母上もそれ位しているのだし」

 

「女好きの異名は伊達じゃないってことかね。俺には真似できねえよ」

 

「……失敬な。俺は須らく彼女達を愛している」

 

「あぁん!私もよあなた!」

 

「へーへー、わかっておりますよー」

 

ジト目でフリンを見るワルターを尻目にいちゃつき始めるフリン達。このままでは埒が明かないと、ワルターはそそくさと外に出た。それに続くようにヨナタンも顔を赤くしたまま外へ出る。フリンはリャナンシーを一度抱きしめてからようやく外に出た。

 

それからなんという事もなくぶらぶらと城下町を歩くフリン達。朝方ということもあって普通の道は人もまばらではあるが、市場の方は朝市を行っており、活気づいていた。その途中で飲み物を買うことをフリンが提案し、果実の絞り汁から出来たジュースを購入。かつてのようにミカド湖の水で腹を下すことは避けられた。

 

そうして到着したヨナタン行きつけのパン屋。店主の親父は気の良い人で、フリン達もヨナタンの友であるのだからとサービスしてくれた。それから少し話していると、店主がお近づきの印ということで本を一冊懐から取り出した。フリンはそれに眉をひそめる。

 

「純文学というジャンルの本さ。人生に思い悩む主人公の物語なんだ」

 

そう言うと店主は空を仰ぎ見ながらしみじみと言った風に語り始める。

 

「純文学に触れて、俺は理解したよ……自分がいかに無知に生きてきたかをさ。人間は悩むから成長していくんだよな」

 

「僕も読書をしますが、『純文学』など聞いたこともない。その本はどこで手に入れられたのです?」

 

「知り合いに連れられてサバトに参加してね。そこで黒きサムライに貰ったのさ」

 

「サバト?黒きサムライ?」

 

店主とヨナタンの会話は続く。後ろのワルターは辟易とした風にあくびをしており、どうみても退屈している。だがフリンはそんな彼と対照的に真剣な顔で店主の話を聞いていた。もしかすると、止められるかもしれないと。

 

「俺はサバトに参加して、本を読んでわかったんだ……ラグジュアリーズは結局、自分の都合しか考えていない。この国は平等なんて謳っているけど、俺らカジュアリティーズは騙されていたと……」

 

「あの……力説の所悪いがオヤジさんよ、早くパンをくれないか?」

 

「……もう少しいいだろうが、な?純文学の素晴らしさについて語り合おう」

 

いい加減焦れてきたのか、ワルターはどうでもよさげな顔をしてパンを見つめている。それからも始まる店主の本紹介。太宰治の人間失格、森鴎外の舞姫……どれもフリンの第三の魂が聞いたことのあるタイトルだった。かつての自分であればわからない事であったが、これは確実に東京の文化である。今ならばわかる。新たな文化だと思っていたことは、かつての先人たちの文化であり、遅れているのは自分達であると。

 

しかしワルターにとってはどうでもいいことであり、早く朝食を済ませたいだけである。ゆえに彼はそそくさとパンを取っていき、ヨナタンもそれにつられてお代を置きフリンの腕を引っ張ってそろそろ行こうと訴えてくる。ほぼ無理やり動かされつつも、フリンは去り際に口を開いた。

 

「店主、あなたは物語に魅せられて一時的に感情が高ぶっているだけだ。本を読んで悩むのも大いに結構。しかし、もっと良く考えることだ。憎しみや嫉妬を抱くのは、その後でもいい」

 

「あ、あぁ……わかったよ」

 

短い時間に口下手なフリンが言えたのはそこまでだった。それでも一応彼の脳裏の隅にでも今の言葉が残されたのなら、それでいい。自分は神ではないのだ。未来を知っているからとはいえ、全てを思い通りにはできない。多少の修正が可能なだけだ。それでも破格な事であり、それ以上は望む方が不幸になる。あとは彼がどうするか、見守っていくだけだ。

 

「ったく、ジュンブンガクなんてどうでもいいからパンを早く渡せっての。おかげでちょっと冷めちまった」

 

「しかし、本当に聞いたことが無い題名ばかりだった。黒きサムライにサバト……それが読書の集会だとするならば、是非とも一度参加してみたいね」

 

「……やめておいたほうがいい。物語ならば俺が語ろう。リャナンシーの加護があるから詩の語りはできるはずだ。下手に良くわからないことに突っ込むべきじゃない」

 

「そうかい?まぁ、君がそう言うのなら止めておくよ。それよりも君の歌の方に俄然興味が出てきたことだしね」

 

「おっ、歌うのか?歌なら俺だって負けねえぜ?これでも親父と一緒に村の酒場でずっと歌ってたんだ。海の男の歌を教えてやる!」

 

パン屋を去り、ミカド湖に向かっている最中に何故か歌合戦に発展した一行。フリンも自分が発端とはいえ困惑しながらも参加した。リャナンシーの加護のおかげもあって、ワルターの力強い声やヨナタンの気品のある声とはまた違う透き通るような誰もが魅了される美しい歌を披露したフリン。街中を歩きながらだったためか、年齢・階級問わず多数の聴衆を引き連れて大名行列のような状態になってしまった。

 

これには何事かと集まった巡回のサムライも驚きつつも、フリンの歌に聞き惚れた。日頃の仕事疲れを癒すような歌声は静かになった城下町に響き渡り、誰もが彼の歌声に耳を傾けていた。後にフリンはクーフーリンの鎧を着ているからか、純白の貴公子と新たな二つ名を拝命することになる。だが、今目を閉じて歌っているフリンや隣で聞き惚れている二人は現状に全く気づかなかった。

 

「――――……ふぅ。どうだ?」

 

「見事、としか言いようがないよ。繊細で儚くもあるけど、力強さも感じられる。君の透き通るような声は一種の芸術と言っても過言ではあるまい。加護があるとはいえ、ここまでの歌は今まで聞いたことが無い。職業人以上だと僕は思う」

 

「すっげぇぜフリン!詳しいことはよくわかんねぇけど、とにかく感動したぜ俺は!こりゃぁ俺達の完敗だな!」

 

「そうだなワルター。僕も同意見だよ」

 

「ありがとう、二人とも」

 

感動したと素直な感想を述べる二人に気をよくしたフリンは早く行こうと笑顔で告げる。しかし、後ろにいた聴衆はそうもいかなかった。

 

どっと湧く歓声と拍手の嵐。三人にとってはいつの間にやら続いていた行列と歓声に驚かされて固まってしまう。そして続くのはフリン達に対する報酬や握手を求める人の津波だ。フリン達の手元や懐にはこれでもかと金や食料が詰め込まれ、入らないと見るやどこからともなく雑貨店の店主が現れ袋を取り出すとそれに入れ始める。騒動を治めに来たサムライに至ってはその報酬を渡す人々の列整理を始める始末だ。こうして思わず報酬を払ってしまうほどに、フリンの歌は彼らに届いた。

 

「ブラボー!おぉ!ブラボー!」

 

「素晴らしい歌をありがとう。これで生きる希望が出来た」

 

「サムライ殿、ラグジュアリーズのパーティに参加する気はないかね?」

 

「つまらない物ですが、どうぞお納めください」

 

あれよあれよともみくちゃにされ、その波が去るころには三人とも疲れ果てた表情をしていた。もはや最初に買ったパンがどこへ行ったのかもわからない。

 

「……どうする?」

 

「純粋な善意でもらったものだし……持って帰るしかないんじゃないかな?」

 

「だよな……それにしても、歌い手か何かになれるんじゃないかお前」

 

「……その方が儲かる気もしてくるよ」

 

報酬を全て袋に詰め、一旦寄宿舎に戻ることにしたフリン達。距離的にはまだこちらの方が近いのだ。しかし、サムライの男三人が大きな袋を持って行く様は中々シュールであった。戻ってきたフリンを見て、リャナンシーが目を丸くしたのは言うまでもないだろう。

 

後で袋の中身を選別して三人で分けることに決め、改めてミカド湖に向かうフリン達。こうなれば意地でもたどり着いて食ってやると無駄にやる気を見せるワルターに二人は苦笑しつつ、ようやく到着することが出来た。

 

「あ……フリン?」

 

「イサカル?」

 

ミカド湖の湖畔。そこにはイサカルが呆然と立ち尽くしていた。あのサムライを決める儀式から結構な日にちが経っているが、帰るのにも数日かかる者は未だに城下にいることも多い。イサカルもまた、そのうちの一人だろう。ここで帰ってしまえばもう一度城下に来れるかどうかすらわからないのだから。

 

ワルターとヨナタンに幼馴染であることを伝え、互いに自己紹介する。しかしイサカルは終始顔を俯かせ、フリンと目を合わそうとはしなかった。

 

「見違えたよ……そりゃそうだよな。お前は、サムライになれたんだもんな」

 

「丁度いい。あんたもメシ一緒にどうだ?」

 

「……悪いが遠慮するよ。いつまでも畑を放っては置けないから」

 

ワルターの提案を断り、フリン達の横を通り過ぎようとするイサカル。その一瞬の交差の時、フリンは彼が邪悪な笑みを浮かべていることに気づいた。フリンは目を見開き、イサカルと背を向けあうそのままの体制で固まった。

 

「それに、面白い手土産も手に入った。早くみんなに知らせたいのでね」

 

「どちらまでお帰りで?」

 

「キチジョージ村さ」

 

「中々に長い道のりだな」

 

「なに、今から休まず歩けば夜更け前にはつけるだろうさ。これでもサムライを目指して鍛錬した身だ。体力には自身がある」

 

普通の会話を楽しむように談笑する三人に対し、フリンは固まったまま一向に動こうとしなかった。いや、動けなかったのだ。手が震え、いくつもの思考が脳内に入り乱れる。未来を知っている自分として、ここで村を救うために彼を斬るべきなのか、と。

 

混沌の自分は問う。またしても友を斬るのかと。今生で奇異な自分を信じてくれたイサカルを悪魔にもなっていないこの場所で斬り殺すつもりなのかと。どうせ斬り殺すならば、悪魔になって正当性が取れた後でもいいじゃないかと。それで村が焼き払われようと、自分や親を頼るだけ頼って何の恩返しもしない連中だ。放っておいてもこちらに損はない。しかもその後キチジョージの森は悪魔が住み着く森になるのだし、鍛錬にもうってつけだ。

 

秩序の自分が説く。彼を殺せと。確かに長く続く人生の中で彼は無二の親友であった。しかし、彼をここで見逃せば村は焼き払われ、無垢の民が犠牲になってしまう。サムライとして、キチジョージ出身の者として、それでいいのか。より多くの命のために、今ここで彼を殺せば全てを守れる。最小限の犠牲で済むのだ。自分の国を悪魔が蔓延る国にしたいのか。

 

「じゃぁ俺、そろそろ行くよ……同郷の者としてお前の活躍、祈っているよ」

 

「――――イサカルッ!」

 

寂しそうに去ろうとするイサカルに向け、フリンはいつもは絶対に出さない大声で彼を呼び止めた。その様子に二人はおろか、イサカルでさえ驚いて立ち止まってしまう。そんな三人を無視し、フリンは震えた声で話始めた。

 

「俺は、お前の事を無二の友だと思っている。これまでも、これからも……だから、頼む。道を誤るな。安易な道に進まないでくれ。悩んで、悩んで、悩みぬいて、それでもそうだと決めたのなら、俺はもう何も言わない。だが、お前がもし間違った道を進むと言うのなら……俺は全力を持ってお前を止めるだろう」

 

フリンは、どちらでもない道を選んだ。最小限の犠牲とすることも、結果を求めて殺すことも。

 

フリンはイサカルを信じたのだ。彼が今までのように悪魔になって村を滅ぼすことがないという可能性に賭けた。それはおそらく限りなく低い数値であろう。しかしフリンはそれを信じたかった。今まで彼に語りかけてきた全てを信じて、自分はこの道を進む。失敗すれば父と母は帰らぬ人となり、村の知人も大半が死に絶える。またもや自分を絶望が襲うのだろう。でも、それでも――――。

 

「俺は、お前を信じる……いきなりすまない。父さんと母さんを頼んだ」

 

「……ちっ」

 

背を向けているフリンからはイサカルの表情は見えない。自分の言葉が届いたのかさえ、フリンにはわからなかった。本当ならば振り返って握手の一つでもするべきなのかもしれない。しかし、ここで振り返ることがフリンには怖かった。ここで結果を知ってしまうことが怖かったのだ。

 

故にフリンは去っていくイサカルを一切見る事は無かった。ただ無力な自分を悔い、しかし未来への希望を胸にただ空を見た。

 

フリンが見た空は青く澄みわたり、若者の出発を祝福しているように見えて――――それがとても、腹立だしかった。




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