神山思いつき集   作:神山

13 / 20
遅くなりました。今回ちょっと迷ってましたので、なんか違うと思われるかもしれません。

その時はどうぞ容赦なく感想ください。何かしつこくなったかも?


女神転生10

イサカルと別れてしばしの時が経った。あれからフリンは精力的に任務をこなし、サムライやラグジュアリーズの中でもそこそこ名を知られるようになっていった。貴公子のような風貌と物静かな言動、放たれるカリスマと色気はラグジュアリーズの子女たちに瞬く間に広がっていった。前回の歌の件もあり、元カジュアリティーズということがあるにしてもそれを感じさせない教養をフリンは持っていたのだ。

 

これに飛びつかない彼女達ではなく、彼女達の持つ伝手をフル動員した結果、護衛という名の連れまわしが行われるようになってしまった。出資者である彼等に最初は強く言えず、一応はれっきとした任務であるからして断るわけにもいかなかったのだ。結構な大家だったのも運が無かったといえよう。

 

これには頭を痛めたホープや愚痴を聞いていたラグジュアリーズ組の手回しのおかげで事なきを得たものの、ホープにお小言をもらってしまった。一時的な物とはいえ、これではサムライとしての業務に支障をきたしかねなかった。

 

ちなみにこれはあの場で歌っていたヨナタンやワルターにも向いており、各々好みによって客層が別れていた。ワイルドなラグジュアリーズにない魅力を欲するならワルター、紳士的な王子様を求めるならヨナタンといった具合だ。一種のファンクラブのようなものである。

 

「いやー、しっかし参ったな。まさかラグジュアリーズの女から色目使われる日が来るなんてよ」

 

「にやにやしながら言っても説得力が無いぞワルター。貴婦人方のお相手をするのもまた紳士の務めだ。フリンの人気には負けるがね」

 

「すかしたこと言っちゃってまぁ。お前だって似たようなもんじゃねぇか、このむっつりヨナタンめ」

 

「し、失敬な!ぼ、僕のどこがむっつりスケベだって言うのだ!」

 

「そーゆーとこだっつの」

 

この一時的なラグジュアリーズの流行も手回しのおかげでひと段落し、一行はいつものようにKの酒場に集まっていた。例の如くイザボーはいないが、新人三人衆で集まることはもはや日常と化していた。気の置けない仲とはこのようなことを指すのだろう。ここ最近はフリンにとってとても甘美な時間となっていた。

 

「イザボーのやつも大概だよな。あの鉄仮面もたまには付き合えっての」

 

「女性には女性の付き合いというものもある。それに自由時間の使い方は各々の自由さ。あまり言ってはいけないよ」

 

酒場のカウンターでここ最近の事を話していた三人は、ふとイザボーの話へと移った。彼女は基本的にこの手の集まりには参加しない。余程やりたいことがあるのか、最近では特に足早に帰宅していくのだ。これにはフリンも首を傾げざるをえなかった。

 

「だが、些か気になるところも多い」

 

「だよなぁ?なんか浮かれた様子で帰っていくし、妙に隈が出来てる時もあるしよ」

 

「ふむ、確かに。最近の彼女はどうもおかしい」

 

男でも出来たか?とからかうように言うワルターだが、フリンはどこかそれは違うと感じていた。恋愛のような甘酸っぱい物ではなく、何かしら自分の流行を追い求めているような……自分の第三の魂も似たような状態になっていたのを思い出したのだ。要は何かにどハマりしたときの行動である。

 

フリンの場合はゲームであり、朝方までやってから落ちるように寝る毎日を送っていたために隈と生活習慣が大変なことになって両親にしこたま怒られたのだ。それ以来いくらか気を付けたものの、一度始めてしまうと区切りがつかない。今のイザボーの状態はそれにとてもよくあてはまっている。

 

そうしてしばらく話し合った三人は、ワルターの提案で様子を見に行くことになった。ワルターは男、ヨナタンは女友達、フリンは趣味に爆走中と意見は分かれたが、どうにも気になった三人は彼女を見つけるべく散開して行動を開始した。こういう時に無駄に行動が速いのは年頃の青年にはよくあることだろう。

 

『おい!見つけたぞ!あいつ屋上で何かしてやがる!行くぜっ!』

 

Kの酒場を起点に探し回っていたフリンは少ししてワルターからあった通信によって屋上に駆け上がることになる。フリンが到着した時にはすでにヨナタンもおり、何やら口論していたが結局はどうなっているか確認することに落ち着いた。

 

「イザボーはあそこだ。こっそり近づいて驚かせてやろうぜ?」

 

「そんなことしたら、叱られるぞ……」

 

「鉄仮面みたいにすまし顔のあいつが、頬を赤らめたところを見てやるんだよ」

 

にやにやしながらヨナタンに言うワルター。ヨナタンも口では止めているが、目が泳いでいるので彼自身気になっているのだろう。フリンもそこで何か言おうと口を開きかけたが、ワルターの後ろで目を細めている影を見て口をつぐんだ。

 

「誰が『鉄仮面』ですって?」

 

「「うぉっ!?」」

 

呆れて物も言えないと言った風のイザボーに驚く二人。イザボーはそれにさらに目を細めた。

 

「覗きならならばもっと声を潜めてくれなくて?読書に集中できないわ」

 

「読書?もしかしてお前も『純文学』か?」

 

「何よそれ?私が読んでいたのは『漫画』よ」

 

イザボーは持っていた『漫画』をフリン達に見せた。それは第三の魂の記憶にうっすらと残っている物の一つであった。残りの魂でも彼女はこれにハマっていたと思い出す。かつての世界では女性の間で流行していた少女漫画だったはず。

 

第三の母親が大好きで再放送アニメをほぼ強制的に見せられていたフリンはストーリーも大体覚えている。おそらくイザボーとは語り合うことが出来るだろう。だが前までは理解できなかったものがこうして理解できていると、なんだか可笑しく感じるフリンであった。

 

「こんなの初めて見た……絵と文字で物語が語られている」

 

「私が今読んでいるのは、フランスという架空の国のお話。男装の女戦士が、凛々しくも健気に活躍するお話なの!でも女戦士がね、ある時素敵な殿方と恋をして……あぁ!それでね!それでね!」

 

純粋な感想を述べているヨナタンを差し置いて、どこか懐かしげにそれを見ていたフリンに熱烈に語り始めるイザボー。それは本当に楽しそうで、普段表情を変えない彼女はとても活き活きとしていた。フリンが一歩退くくらいに。

 

「おい、イザボーが『恋』ときたもんだ。明日ミカド湖の水が干からびなきゃいいが」

 

「……」

 

「……わ、悪かったよ。そんなに怒んなよ。お前も乙女だもんな。恋くらい……」

 

ワルターがからかうも、急に真顔になったイザボーに向かって急いで謝った。それくらいに急な変化だったため、フリンもいつものことだとワルターを放っておくことにした。また余計な事を言ったワルターが悪い。

 

だが、イザボーはそんなワルターを無視してゆっくりと、信じられないような顔をしてフリンの背の遠くの空を指差した。

 

「違う、そうじゃなくて……あれは?」

 

――――遠くの空が赤く燃えている。フリンは全てを思い出し、固まった。

 

「あれは、燃えているぞ!どこかの村が燃えている!」

 

「……キチジョージ村方面ではなくて?」

 

「お、おい!キチジョージっていったら、フリンの!」

 

「……みんな、急ごう!」

 

ヨナタンに腕を引っ張られて我に返ったフリンは三人と一緒に広場へと駆け下りた。

 

何故気づけなかった。何故忘れていた。そして何故、親友は――――。

 

そんな自責の念に駆られながら、冷静な部分が記憶の忘却を訴える。18年という年月はかつての記憶を摩耗させ、今のサムライとしての明るい日々が辛い記憶を閉じ込めた。わかりきっていた未来。しかし、今の人生の楽しさがそれを無意識のうちに抑え込んだのだ。それほどまでに甘美だったのだ。

 

『マスター、大丈夫?』

 

「バロウズ……俺は、何をしていたんだろうな」

 

『……』

 

走りながら、心配してきたバロウズに思わず愚痴をこぼすフリン。バロウズも言葉を出せなかった。しかし、フリンがここでへこたれるような人間でない事も知っている。どんな犠牲を払ってでも進んだあの日々を想えばこそ、彼の芯の強さを知っているからこそ彼女は少し怒ったようにしてフリンを叱咤した。

 

『マスター、あなたはここでへこたれる程度の人間なの?あの時私に言った夢は、こんなところで潰えてしまうの?私の知っているあなたはそんな人間じゃないわ』

 

「……っ!」

 

『防げなかったことは残念だけど、もう起こってしまったことよ。なら、マスターが次にすべきことは何?』

 

「俺は……」

 

前へ進む。自分の信念の元、自分が思うあるべき未来を信じて前へと進む。それは、今までもそうであったし、クーフーリンとも約束したことだったではないか。どうやら腑抜けていたらしい。そう思ったフリンは大きく深呼吸した後、思いっきり頬を叩いた。そのことで三人が何事かと後ろを向くも、フリンは気づかない。

 

そして俯いていた顔を前に上げる。その瞳にはしっかりとした光と覚悟が映っていた。

 

『フフッ、戻ったみたいね』

 

「すまない。俺はもう大丈夫だ。少々腑抜けすぎた」

 

『まったくよ。毎日女の子といちゃいちゃしているんだもの。当たり前だわ』

 

「……自重します」

 

バロウズの小言に気まずそうに顔を逸らしたフリンは、すでにアキュラ像広場に到着したことにようやく気付いた。こちらを気遣ってくれる三人にしっかりとした姿勢で大丈夫だと告げる。それでも心配していたが、フリンの目を見て言うのを止める。すでに覚悟が出来ていることが分かったのだ。

 

「僕らからは何も言うまい。急ごう」

 

「あぁ、ありがとう」

 

代表して言うヨナタンに礼を言うと、広場に集まっているサムライの一人に声をかけられた。

 

「まさか貴様等もキチジョージ村の遠征に?」

 

「やっぱり、キチジョージ村で何かあったんだ」

 

サムライの言葉にワルターが反応する。ワルターは苦々しい表情を浮かべた。そして先輩のサムライは何か考えるようなしぐさをした後、口を開いた。

 

「いいや、この事態に新人を召集するとは聞いていない」

 

「……無礼を承知で進言いたします。僕らも遠征に同行させてくださいッ!キチジョージ村は我が同胞、フリンの故郷なのです」

 

「召集を受けていない者は自室で待機だ。規則である。さっさと戻れ」

 

「規則……」

 

一歩前に踏み出したヨナタンの言葉に、サムライは淡々と返す。まるでこちらの意見を聞こうとしない。こちらを子供のわがままだとでも言っているような感じだ。

 

それを聞いたヨナタンは、わなわなと肩を震わせ、キッとサムライに向くと大声で怒鳴り上げた。

 

「規則のために友の故郷の一大事を、あえて見過ごさねばならぬのですかッ!」

 

怒鳴り上げるヨナタンに思わず固まってしまう三人。サムライもどこか気圧されたように固まってしまうも、横から騒ぎを聞きつけて来たホープによって動き出した。友のためにたとえ先輩であろうと動くことが出来る。これこそがヨナタンの美点である。

 

一通りの説明を受けたホープは以前部下からフリンの故郷を聞いていたことを思い出した。今まではほかの事や彼の仕事ぶりで忘れていたが、説明を聞いて思い出した。サムライはその後すぐにフリン達を部屋に帰そうとするも、ホープはそれを止めた。

 

「いいだろう。この者たちの同行を許可する」

 

「しかし、それでは規則に……」

 

「緊急事態だ。人出は多いほうが良い。それに、サムライが守るべきは規則ではなく……民の想いだ」

 

「……し、失礼申し上げました!」

 

ジロリと睨むように言うホープにサムライは逃げるようにして去っていく。ホープはそれにため息をつきながらフリン達を見た。

 

「すぐにキチジョージ村へ出立する。支度せよ」

 

「ありがとうございますっ!」

 

ホープが背を向け馬を追加するように部下に指示を出す。それに頭を下げたフリン達は急ぎ、支度を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

馬を駆り、夜明けに村へ到着したフリン達。そこはまさに、地獄ともいうべき光景だった。

 

「これは……言葉が、見つからない」

 

思わずと言った風に呟いたイザボー。それはここに来た他の新人のサムライ達も同じだった。

 

家が焼かれ、辺り一面に肉片と共に血が広がっており、かつての穏やかな村の風景は見る影もない。氷結系の魔法を使える仲魔に消火作業を始めさせるもまるで追いつく気配はない。三度目の地獄。いつ見てもこの風景は、フリンの心を締め付けた。

 

「ひぃっ!あ、あんたら……悪魔か!?」

 

「村長?」

 

「フ、フリンか?おぉ、神よ!我らを見捨てなんだか!」

 

騒ぎながら走る老人の姿に、フリンは馬から降りて声をかけた。それはまぎれもなくキチジョージ村の村長その人であった。疲れ果て、血が付着しているものの見間違えるはずもない。ホープを呼び、詳しいことを聞く。

 

村長曰く、急に現れた異形の者共が村を焼き払い、人々を襲い始めたそうだ。彼自身どれが伝承の悪魔ではないかと感じ、村人同様逃げ回っていたそうだ。ここ周辺は先程サムライによって駆除されたので、運よくここまで来られたのだろう。

 

「他の者は、森の方へ逃げた者もおりまする。フリン、お前の両親も他の者を助け回った後どうなったかはわからない。お前達には世話になりっぱなしだったと言うに、何もできなんだ。済まぬ、済まぬ……!」

 

「……」

 

涙ながらに縋りつく村長に、フリンは何も言えなかった。

 

フリン一家は、村の有力者の一人であった。何かあれば動いて解決したし、諸々の相談事やラグジュアリーズとのごたごたにも出張ることもある。それ故に厄介ごとも多く、陰口を叩かれることもあった。だがそれでも村のためにと働いていた両親をフリンは誇りに思うし、それを当然の如く受け入れている村人を恨んだこともあった。両親が止めなければ怒鳴りこもうとしたことも少なくない。

 

それでもフリンが行動しなかったのは、両親がこの村を愛していたからだ。この村長はそのことを理解して良くしてくれていた。ゆえに、フリンは一声かけた後ホープの指示で他のサムライに連れて行かれる村長を黙って見ているしかなかった。

 

「これより、キチジョージの森を捜索する。各員隈なく森を捜索し、生存者を救出せよ。私は医療班と共にここに残り、貴様らにガントレットで指示を出す。生存者を発見したら、ここに誘導せよ。なお、けがをした者もここに戻れ。医療班を待機させておく」

 

全体に指示を出し、サムライ達が動き出した後、ホープは新人4人に向き合うとフリンを痛ましげに見ながら話し始めた。覚悟を決めていたとはいえ、フリンは少しばかり動揺が顔に出ていたらしい。

 

「新人の貴様等は……こんな状況だ。フリンをサポートしてやれ」

 

「喜んで協力させていただきますわ。フリン、行きましょう」

 

「あぁ……すまん」

 

「水臭いこと言うんじゃあない。僕達の仲だろう?」

 

「そうだぜ。ぱぱっと片づけて、また酒場で続きやろうや」

 

フリンを励ましながらも進むワルターたち。フリンは彼らの存在に改めて感謝した。思ったよりもこの光景はフリンのトラウマになっているようだった。三つの魂を持つが故の弊害ともいえる。三度目というのは、思ったよりも辛い物だ。だが、フリンは前に進まなければならない。そう決めたのだ。

 

フリンは改めて、気持ちを引き締めることにした。この先のさらなる地獄と向き合うために。




キチジョージの森攻略は次回。

あと、パソコンを更新したせいかわかりませんが、三点リーダが私のパソコンでは表示が変わってしまいました。『……』下に小さく表示されます。以前は中心にもう少し大きくあったのですが、皆さんの画面ではどうでしょうか?もし変わっていれば調べてみます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。