神山思いつき集   作:神山

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最近パソコンの調子が悪い……ネットに非常に繋がりにくくなりました。おかげで動画もかくかくで見れない。

驚くことにふと見たらランキング11位でした。これもみなさんのおかげです。ありがとうございます!今後もよろしくお願いします。


AMON3

アキラがアモンとして覚醒したその日、バベル内は騒然としていた。局長である桐壷帝三と秘書はあちらこちらに出向いて指示を出していた。

 

「医療班はサイコメトラーやプレコグを運び出して!」

 

「残ったプレコグは発信源の調査を!早く!」

 

世界中のエスパーが感じ取ったアモンの覚醒。それは感情に敏感なサイコメトラーや現象を予知するプレコグに多大な影響を与えていた。

 

凶悪なまでの力やアモンの殺気、アキラの絶望、狂気が新たな存在の介入によって四散し、世界中に広がったのだ。アキラだけならこのような事は無かった。彼の意識が塗り替えられ、消えるだけで済んだだろう。しかし、そこにはデーモン族最強の勇者アモンの魂もあったのだ。その力の大きさは言うまでもない。

 

「状況は!?」

 

「蕾見管理官!?冬眠してらしたのでは!?」

 

「んなこと言ってる場合じゃないでしょ!飛び起きちゃったわよ!」

 

テレポートして局長である桐壷を怒鳴り散らしたのは蕾見不二子管理官。バベルの創始者の一人であり、局長を越える権力の持ち主だ。また、彼女の超能力は兵部に匹敵、あるいは凌駕するほどのもの。そして大戦時の生まれであるにも関わらず超能力を駆使することで最盛期の美貌を保っている人物である。

 

「あぁ、もう!お化粧も簡単に済ませただけなんだから、わからないなら戻るわよ!」

 

「ま、待ってクダサイ!もう少し!もう少しですから!」

 

「お、お化粧道具ならここにありますから!」

 

ごたごたと慌てる桐壷らにイラついたのと化粧を満足にできていないことから速攻で一度戻ろうとする不二子をなんとか止め、化粧しながらでもいいからと話を進めることにした。現状の説明とおそらく超強力なエスパーが誕生したという予測、今は発信源を特定していること。

 

これらを告げているうちにプレコグからの映像が送信される。もはや予知ではないが、発信源を探るためにほんの少し先の映像を取り出すことで現場を判断するのだ。そして画面に映し出されたのは壊れ果てた倉庫や敷地、そしてその奥で砂埃に隠れている悪魔のようなシルエットだった。

 

「こ、これは一体……」

 

「なんなのあれは……」

 

絶句するバベル局員たち。しかし不二子はある程度終わった化粧を止めて真剣な顔で桐壷へ話しかけた。

 

「桐壷くん。場所の特定は出来た?」

 

「え、えぇ。しかしこれは」

 

「ぐだぐだ言ってないでさっさと準備する!私が先に行くから後で付いてきなさい!」

 

「は、はい!」

 

局員から特定された場所を聞きだし、テレポートとサイコキネシスを駆使し一気に向かう不二子。彼女の勘が確信していた。早く自分が向かわなければ大変なことになると。

 

あの時見えたシルエットが発信源だとするならば確実に変異型なのは言うまでもない。そして今までにない覚醒を遂げ、莫大な力を持っている可能性もある。それが暴走したのだとしたら……被害は想像を絶するほどのものになるだろう。

 

「とーちゃく!って、あれま。完全におじゃんになってるわね……」

 

倉庫に到達するも現場は予知画面よりも酷くなっていた。辺りはひび割れ、コンクリートが殆ど抉れている。さらに他の建物も軒並み被害を受け、爆撃でも受けたかのようになっていた。

 

「……ん?あれは?」

 

辺りの捜索をしている不二子の視界に、黒いものがちらりと入る。超能力を使って確認すると、綺麗に抉れている倉庫の中に一つだけ生命反応があった。

 

そこに今回の原因がいると確信した不二子は即座にテレポートを行い、彼の背後に回る。もちろんすぐさま攻撃が出来る体勢だ。しかし、予想に反してそこにいたのは少年だった。だが警戒は怠らない。彼が向いている先には血だまりと多くの肉塊が転がっているのだから。

 

「ねぇ僕?これ、もしかしてあなたが――――っ!」

 

「……」

 

振り向いた少年、アキラを見て不二子は絶句した。この年の少年がするような目ではないと。

 

紛争地帯や貧民区の少年とはまた別の、絶望の果ての狂気すら生ぬるい闇のような目。彼にへばり付く少し乾いた血のせいもあってか、本当に悪魔かなにかと錯覚してしまいそうなほどだ。しかし不二子には一度似たような目を見たことがあった。

 

そう、あれは兵部京介。あの日の弟分と同じ――――。

 

(いえ、違うわ。もうわたくしはあの時とは違う)

 

「これは、あなたがやったの?」

 

気持ちをある程度切り替え、再びアキラに問う。アキラはそれに頷くと、前に向き直って黒く煤けた床を見続けていた。それは細長く煤けており、大きさは170cm位だろうか。綺麗に煤けていた。それだけでわかる。これはかつて彼の両親だったものだと。

 

そしておそらく自分で火葬したのだろう。戦時中でもない今の平和な世の中の子供がするべき、そしてさせるべき行為ではない。不二子は胸がいっぱいになり、思わずアキラを抱きしめた。

 

「……血が付くよ?」

 

「そんなこと良いの。お姉さんがこうしたいんだから……私は蕾見不二子。あなたは?」

 

「不動アキラ」

 

「そう、良い名前ね……お話、聞かせてくれる?」

 

アキラが頷き、ぽつりぽつりと話し始める。それは今の平和な日本では本来あってはならないことであった。拉致監禁され、組織同士の抗争に巻き込まれた上両親を殺される。しかもそれが普段付き合いのあったはずのご近所さんによるものであったとなれば、彼の精神状態はいかほどのものだっただろうか。兵部が組織したパンドラのせいもあり、不二子はいたたまれない気持ちになった。

 

「でも、よくそんなに詳しくわかったわね?」

 

「兵部少佐が来て全部教えてくれた。それに謝ってくれたよ。当たり前だけど」

 

「(あのバカ……)そうね。その兵部って人、すぐに帰ったの?」

 

「いや。組織に誘ってきたけどていちょーに断った。ここが壊れているのはそのせい。八つ当たりしたあと殺しても良かったけど逃がしてあげた」

 

「……偉いわ。よく我慢したわね」

 

不二子は一度兵部の馬鹿さに天を仰ぐも、アキラの言葉にすぐに我に返りぎゅっとアキラをより強く抱きしめる。この子は今何と言った?殺しても良かったと本気で言ったのだ。6歳の子供がこの日本で。

 

実際、ここのテロリスト達は彼が暴走して殺したと言っていた。しかし自分の意志でもあると。このままでは、彼が壊れてしまう。そう不二子は直感した。一応サイコメトリーで確認しようとしたが、弾かれてしまった。辛うじて見えるのは表層心理のごく一部。改めて彼の力の強大さを感じた。

 

「ねぇ、アキラ君。お姉さんと一緒に来るつもり、ない?」

 

「?」

 

「お姉さんね、これでもすっごく偉い人なの。あなたみたいな人を纏めたり保護したりするところのトップなのよ?だから、ね?」

 

それから不二子はバベルについての説明を始めた。アキラのような超能力者が多く在籍している国家機関であり、今後によってはそこで働くこともできる。来てくれればより保護もしやすくなるということを。

 

しかしアキラはそれを首を振って拒否した。自分は純粋な超能力者ではないからと。不二子に迷惑がかかると。そんなことはないとアキラを止める不二子を離し立ち上がると、アキラは不二子の目の前でメタモルフォーゼを始めた。

 

「これが俺だ。アモンと呼んでいる」

 

「アモン……」

 

不二子が覚えている限り、アモンとは悪魔で最も強靭な存在の名前だったはず。確かにその強固な肉体と発せられるオーラはアモンという名前にしっかりと合っていた。そしておそらく彼は自身に匹敵するほどの力を持つこともわかった。

 

「俺はもはや人間ではない。しかも人殺しだ。あんたの所に行けば、多大な迷惑をかけてしまう」

 

「それは違うわ。あなたは人間よ。人を殺したのだって正当な理由があってのこと。他の人がとやかく言うのなら私が黙らせてやるわ。それにバベルにはあなたと同じ境遇の者もいる。あなたと同じ変異型が」

 

「俺と同じ……」

 

「そう。それに、子供は大人に迷惑かけてなんぼでしょ?」

 

微笑み、立ち上がってアモンとなったアキラを改めて抱きしめる。その体はとても熱く、力に溢れている。しかしその心には大きな苦悩と懐疑心が生まれていた。無理もない。隣人によって親が殺されたのだから。しかもその隣人を自分の手で殺している。その心を不二子が拭ってやれることはない。せいぜい和らげて協力する事ぐらいだ。これは自分で何とかしないといけない問題なのだ。

 

だから元に戻って抱き返してきたアキラを守り、こうして抱きしめることこそ、自分の役割であると不二子は思った。

 

「管理官!遅れました!」

 

「おっそい桐壷くん!何やってんの!」

 

「ゴメンナサイっ!」

 

直立して謝る桐壷に怒鳴る不二子。実際の所最大速度で来たのになんとも理不尽であった。

 

「ところで、彼が?」

 

「えぇ。それじゃアキラ君、行こうか?」

 

「うん、姉さん」

 

「はぁうっ!」

 

アキラの上目使いと姉さんの一言でハートを射抜かれた不二子は倒れそうになるも、何とか踏ん張った。というのも、今現在アキラは人間に戻ったために腰元までのサイズになっており、不二子の顔を見て返事をしようと思えば必然的に上目使いになるのだ。さらに先程までのシリアスタイムが終わったことで余裕が出来た不二子は改めてアキラを見直してしまった。

 

黒くつややかな髪に鋭い目、適度に引き締まった身体。付着している血がこの年にして整った容姿を際立たせ、エロティックに魅せている。将来有望なのは言うまでも無かった。黒く歪んだ目はそのままだが、自分を案じる彼の中の優しさを知った今ならチャームポイントの一つにも見えてくる。しかも姉さんとか、可愛いすぎるでしょ!

 

「あれ、姉さん鼻に血が付いてる……俺のが付いた?」

 

「悪魔的な魅力……え?いやいや、そんなことはないわよ?さぁ行きましょう私のアキラっ」

 

「?」

 

(こ、このババア子供にまで……!)

 

桐壷が唖然とする中、かっさらうようにアキラを車の中に連れて行く不二子。広々とした大型車両の中に入り、不二子と隣り合うように座らされるアキラ。そして向かいには桐壷局長とその秘書が座り、不二子から詳しい内容を聞いていた。

 

「つまり、あのくそテロリスト共が悪くて彼には一切の非はないということですネ?」

 

「そーいうこと。だからこの子うちで預かるわよ」

 

「委細了解しました。歓迎するヨ、アキラくん!」

 

「……どうも」

 

それでいいのか国家機関。そんなことを言われそうだが、ノーマルでありながらエスパーを愛する熱い気持ちを持つ桐壷は、こんな少年にひどい仕打ちをしたテロリストに対し、非常に怒っていた。しかしそれはおくびにも出さず、アキラを笑顔で迎え入れた。こういうところが、不二子が彼を局長に推薦した理由でもある。

 

アキラは一応の挨拶を返すも、どこか上の空だ。それに気づいた不二子はアキラを膝の上に乗せ、聞いてみることにした。アキラは頭の上の胸のせいで重そうに顔をゆがめながらもしっかりと答える。

 

「どうしたのアキラ?何か考え事?」

 

「姉さん。バベルの他にも俺と同じようなやつって、いる?」

 

「えぇ……世界中でね。だから私達だけじゃ保護しきれないの。この日本にもまだまだいるはずよ」

 

不二子はアキラに一般的な変異型について詳しい説明を開始した。アキラのように力もなく、見た目を変えてしまう能力ゆえにノーマルからもエスパーからも蔑まれる。そしてその鬱憤が溜まりに溜まった時、本当の怪物になってしまう者もいる。残念なことにここまで来ると更生の余地なしとして、各国では殺害まで許可されていた。

 

各国での保護体制も万全ではなく、エスパーたちと同様の手順で扱われてしまうためその中でも差別や侮蔑が起きてしまう。その見た目から悪魔と蔑まれ、どちらに着くこともできず、帰る場所のない悲しい人たち。それが変異型だ。

 

「……決めたよ姉さん。俺はこの力で同族を、みんなを救う」

 

変わらず闇色だった瞳が、ほんの少し光を持つ。

 

アキラは覚悟を決めた表情で不二子と桐壷、秘書を見る。そして語るのは両親の遺言。人を愛し、人を守れと。全てではなくとも、守るべきと思った人を守れと。そしてアキラにとっての守るべき人は自分を暖かく見守ってくれるここにいる三人と、同族達だ。そして可能な限り他のエスパーやノーマルも助けるだろう。

 

「人が俺を悪魔(デーモン)と呼ぶのなら、なってやる。ただし、姿形は悪魔(デーモン)でも人の心を忘れぬデビルマンとして……そう、デビルマンだ。俺達の名は、デビルマン」

 

「「「……」」」

 

デビルマン。そう言ってのけたアキラの目には確かな覚悟があり、言葉には覇気があった。纏う風格も王と言うべきものであり、同族のためのみならずすべての人を守ると言ってのけた。その守るべき人に順位はあれど、三人にとっては問題なかった。

 

裏切られた人間に確かな憎悪はあれど、それでも愛し守ろうとしている。これから困難な道のりが待っていることだろう。自分達も可能な限り手を貸すが、それでも心無い誹謗中傷をする人間は必ず出てくる。人間とは弱い生き物だからだ。そんな彼等をも守ると言った。それが彼の優しさであり、強さであることを知った三人は、改めてそんな彼を守らなくてはいけないと心に誓った。少なくとも力を付け、大きくなるまでは。

 

「フフフ、かっこつけちゃって。でも、いいわねそれ。今後彼らをデビルマンと呼ぶことにするわ」

 

「アキラくん!君には感動した!この桐壷帝三、いつでも協力するヨ!政府は私と管理官が黙らすから、なんでも言ってきなさい!お小遣いもね!」

 

「あらあら局長ったら。でも、私も応援するからね?」

 

感涙する桐壷に微笑む女性陣。そんな彼らを嬉しく思ったアキラはほんの少しだけ、本当に少しだけ微笑む……それが間違いだった。

 

「きゃー!アキラが笑ったわ!何この子イケメン!んでもってかーわーいーいー!」

 

「局長!カメラカメラ!管理官!私も抱きしめたい!」

 

「激写!激写!激写!」

 

「……」

 

女性陣の胸に挟まれ、息の荒いおっさんに激写されるアキラ。早くもやっていけるか不安になるのだった。




アキラの話し方が少し違うのは人間形態だからです。体に引っ張られて口調も幼くなっています。しかしアモンにメタモルフォーゼすれば別です。スネークボイスの野性味あふれる喋り方になります。人間形態になってもしばらくは声以外そのままです。

これでようやくバベル合流。朧さんが年齢不詳ですから、今はまだ秘書になってないとしました。2,3年後には入ってくると思いますが、あまりアキラと年を離れさせたくないのも本音です。それにあの人若いし、いいでしょ?
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