神山思いつき集   作:神山

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女神転生2

東のミカド国。現在はグレゴリ暦1492年を迎え、カントーの大地に根付く一大国家だ。アハズヤミカド王による治世が行われており、民達はラグジュアリーズ、カジュアリティーズと分類されていた。

 

法律上は平等とされる彼等だが、実際はそうではない。ラグジュアリーズは貴族と同義であり、カジュアリティーズは労働者の階級だ。これは不変であり、神から授けられた役割だとされてきた。ゆえに、ラグジュアリーズによるカジュアリティーズの差別も多い。というか、ほぼ当たり前となりつつあった。

 

だがそれを覆すことのできる機会が誰しも一度は行われる。

 

ガントレットの儀式だ。これは18となった人間がミカド城に集まり、ガントレットに選ばれてサムライになれるかを診断する儀式だ。近年は選ばれるものがおらず新人がいない状況だが、もしサムライに選ばれたならばその者はラグジュアリーズとして生きていくことが出来るのだ。

 

だが、それと同時に課せられる任務のことを知る者は少ない。

 

「やっと着いたな。それにしても都は広い。どこで儀式をやるのか見当もつかない」

 

辺境にあるキチジョージ村からミカド城までようやくたどり着いたフリン達は、ミカド城の大きさに圧倒されていた。もちろんフリンは懐かしいという気持ちだけであったが、驚いているイサカルを側で見ているのも面白かった。たとえここで別れることになるとしてもだ。

 

すでにミカド湖であの不思議な夢は見た。自分は誰で、どこに進むのか。誰と共に行くのかを聞かれたような内容だった。今思えば、あれこそが最初の未来への鍵だったのかもしれない。

 

「……イサカル、村長から話は聞いている。こっちだ」

 

「お?おお。相変わらず手際が良いな……絶対にサムライになろうぜ」

 

「あぁ」

 

イサカルの言葉に一応の頷きを返し、会場である初代国王アキュラの像が立つ広場に到着する。会場内はすでに若者たちで溢れており、順番にガントレットの儀式に向かっては項垂れて帰っていく。

 

「俺はサムライになれる。俺は絶対にサムライになれる……サムライになって、ラグジュアリーズになるんだ」

 

ブツブツと呟くイサカルだが、今のフリンにはそんなことは聞こえていなかった。ついに壊れることなく使い続け腰に凪いでいる長年の相棒を握りしめ、ようやくだと高揚する自分を抑えていた。

 

ようやく彼女に会える。ようやく仲間達と会える。ようやく仲魔と契約が出来る。そしてようやく、スタート地点に立った。

 

「次の者、前へ!」

 

「……俺の番が来たようだ。じゃあサムライになってくるよ。お前とは、ずっと友達だから」

 

「俺もそう思っているよ。またな、イサカル」

 

「あぁ」

 

少し寂しげなイサカルを見送る。彼がどうなるかを知っているフリンは、罪悪感が胸にこみ上げてくるのを抑えることが出来なかった。彼が今までどれだけサムライに、ラグジュアリーズになりたがっていたか知っているフリンは、彼がこの儀式による絶望を少なくできるよう今まで最善を尽くしてきた。ラグジュアリーズになりたいという気持ちの根本から変えようとしてみたし、他にも多くの手を尽くしてきた。

 

だが、結果は変わらない。親友を止めることはできなかった。先程までの高揚が鳴りを潜め、自分の無力感でいっぱいになった。しかし、自分は前に進まなくてはならない。どのような結果になっても、前へ。

 

「では次の者、前へ……ほう」

 

しばらく後、自分の気持ちにケリをつけたフリンは改めて覚悟の籠った瞳で前へと向いた。

 

それに気づいた監督役のサムライは今までと雰囲気の違う参加者を見て感嘆の声を上げた。まず纏う空気が違う。どれだけの研鑽を積み、覚悟を持ってこの儀式を迎えたのか一目でわかる。さらにこの年にしてこれほどの気迫。なんとも将来有望な若者ではないか。

 

他の若者が彼に気づいて自然と道が開ける。そこを堂々と通っていく彼がサムライの横を通り過ぎようとしたとき、監督役のサムライは戯れに声をかけることにした。

 

「見事なものだ。揺るぎ無い信念とそれに付随する研鑽も積んでいると見える。これは、今年からよろしくと言っておいた方がいいかもな?」

 

「……ありがとうございます。先輩」

 

ほぼ無表情に、しかしわずかに口元をゆるませて言われた言葉に面を喰らったサムライは、その場で思わず大声で笑ってしまった。この若者、すでにサムライになるとわかりきっているような口ぶりで言ってのけたのだ。自分が外れるわけがないと、自分の信念が負けるわけがないと。

 

「わははははっ!ならば行って来い!行って本当のサムライになってこい!」

 

久しぶりに大笑いしたと思いながら、監督役のサムライは手を挙げることで返事をするフリンを見送った。

 

今年は面白い後輩が出来ると確信して。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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東のミカド国初代国王アキュラの像の前に立ち並ぶ顔を隠したサムライ衆、神官、そしてサムライ頭ホープ。広場を進んでいったフリンを待っていたのはどこまでも懐かしい顔ぶればかりだった。

 

「あ……」

 

気落ちし、寂しそうな笑顔を浮かべたイサカルが少し離れた場所で他のサムライに誘導されていく。それを視界の隅に捕え、何か言ってやろうとするもホープの一言で遮られた。

 

「どうした?貴様の番なのだろう?先に進むがいい」

 

サムライ頭ホープ。自分や仲間達も彼の厳しい指導によって鍛えられた。厳しくも常に民を想って行動するその姿に憧れを抱いたものだ。すでに初老の域に達しているにも関わらずその眼光は衰えることを知らない。フリンが頭が上がらない人の一人でもある。

 

「来ましたね、次なる若人よ。貴方はガントレットに選ばれ、サムライになることが出来ますかな?」

 

ホープの言葉に従い、フリンが進むと待っていたのはどこか高圧的で面倒そうにしている神官だった。多くの若者を見てきて、最近では選ばれることも無くなったこの儀式では仕方のない事なのかもしれない。周りのサムライもどこか疲れた様子を見せている。お頭がいるから気張っているだけだ。

 

フリンにはその気持ちが痛いほど良くわかる。お頭のげんこつは凄く痛いのだ。物理耐性の防具を貫通してくるのだからもう笑えない。

 

「さぁ、左腕を差し出すのです」

 

そんな懐かしくも恐ろしい記憶を呼び起こしながら、神官に言われるがままガントレットに手を通す。懐かしくも慣れ親しんだ感触だ。

 

「我らが全能なる神よ。私の眼前に在る若人にサムライたる資質がございますれば、どうぞこの魔法の籠手、ガントレットに光をお与えくださいませ……さぁ、ガントレットに触れるのです」

 

ガントレットがスライドし、現れたパネルには何とか覚えることが出来た数少ない魔法の言語で『認証』と書かれていた。迷うことなくそこに触れると、光と共に『認証完了』の文字が浮かび上がる。

 

周りのサムライや神官が喚きたてる中、フリンは自分の中の高揚をもはや抑えられなかった。自然と笑みが浮かび、ガントレットを撫でる。

 

「……ただいま、バロウズ」

 

すると突然ガントレットが輝きだし、目の前の空間が歪む。バチバチと音をたてながらフリンの眼前、神官との間にそれは降り立った。

 

白銀の鎧にマントをはおり、黒くつややかな長髪を腰のあたりで結っている。そして普通の人間では出せない威圧感でもって辺りを威圧する槍をもった美青年。フリンは、彼の事をよく知っていた。

 

「クー・フーリン……」

 

「お久しぶりでございます。我が主にして友よ」

 

辺りは騒然とし、サムライ達は即座に剣を抜いた。そして神官を逃がし、広場にいる若者たちの誘導も迅速に行っている。しかしフリンは目の前の事で頭がいっぱいでそのことについて行けていない。自分以外にも覚えているといううれしさと疑問がごちゃまぜになってうまく頭が働かない。

 

「覚えて、いるのか?」

 

「もちろん。混沌と秩序、二つの世を統べたあなたの末路までしっかりと。他にもあなたの仲魔で長年連れ添った者達ならば覚えていることでしょう。下の方で待っていますよ」

 

「……っ!」

 

涙が、溢れた。

 

自分だけ次の生を受け、他とは違う生き方をしていると思っていた。その道は孤独であり、誰も本当の自分を知ることはないと。しかし、違ったのだ。自分を覚えている者達がいる。いてくれる。それだけで、十分に心は満たされた。

 

と、そこでようやく周りを見ることが出来たフリンは、おかしな点に気づく。誰も自分達の会話に入ってこないのだ。明らかに知り合いな自分達を警戒していない。

 

「あぁ、そこは私の魔術で誤魔化しています。これから動き始める主にとって、私と話しているというのは不都合になりますからね」

 

「なるほど」

 

ケルトの魔術というのはそこまで出来るのかと感嘆していると、そろそろ術が切れるとクーフーリンがフリンに告げる。そして槍をフリンへと向けた。

 

「私は長年あなたのガントレットを守ってきました。誰にも起動させぬように、あなたが現れるのを信じて待っていた。だから少々運動不足なのですよ。そしてあなたは今まで以上に鍛錬を積んできたご様子……わかりますね?」

 

「……あぁ」

 

ここで、術が切れる。相も変わらず騒然とした空気の中でお互いに構える二人を再認識したホープは、フリンを止めようとして、それを止めた。

 

それどころかサムライ衆に対して手を出させないように指示を出したのだ。それに講義するサムライも抑えつけている。これにはフリンもクーフーンも驚き、心の中で感謝した。

 

「あなたのその木刀……あなたの霊格のせいで神木と化しているようですね。我が主ながら規格外も良い所だ。かつての得物とそう変わらない強度を持っている」

 

「長年使ってきた相棒だ。神木になっていたのは知らなかったが、全幅の信頼を置いている」

 

「そうでしょうね。かつての私達のように、その木刀もあなたに使われることを喜んでいますよ」

 

木刀を構え直し、お互いに話を終える。この長年の愛刀が進化していたのには驚いたものの、フリンが信頼を置いていることには変わりない。むしろ頼もしく思ったくらいだ。

 

これが終わったら磨いてやろうと心に決め、威圧を高めるクーフーリンへと意識を戻す。

 

周りは二人の圧力によって静かになり、サムライに囲まれていることから決闘場を思わせる状態になっていた。

 

「ではいざ尋常に――」

 

「「勝負!!」」

 

 

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