神山思いつき集   作:神山

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こんなのクーフーリンじゃないやい!っていう方は回れ右。私の中のイメージの彼が動いています。


女神転生3

辺りに広がる激しい剣戟と魔法による衝撃。それらはこのアキュラ像広場の中心で行われている決闘から広がっていた。

 

「なんだよあれ……」

 

「新人の出来る動きじゃねぇぞ……!」

 

中心で行われる攻防の嵐は、ベテランのサムライでさえ舌を巻くものだ。

 

片や幻魔クー・フーリン。クランの猛犬と呼ばれたその身から繰り出される鮮やかな攻撃は見るものを魅了する。しかし優雅な動きとは裏腹に込められた力はまさしく英雄。ここにいるサムライの多くはその一撃で戦闘不能に陥れられるはずだ。

 

片やサムライの新人となるカジュアリティーズの青年。一般的には喧嘩以外で特に武術も習うこともないはずの階級の者。元カジュアリティーズのサムライはこれから鍛錬を積むことが普通だ。しかし、彼はどうか。並み居るサムライを凌駕する程の腕前ではないか。かの英雄に一歩も劣らず、押しているときもある。

 

「おい、あいつは何者だ?」

 

「は、はっ!えーと、キチジョージ村出身のカジュアリティーズです。名はフリン。詳しいことはなんとも……」

 

「そうか……下がって良し」

 

「はっ!」

 

未だ続く攻防を鋭い目で眺めているホープは、拭いきれない違和感を感じていた。

 

本来戦闘を行うことのない一般人がここまでの戦闘力を有している。さらに動きは歴戦の強者のものだ。あの悪魔ともどこか慣れ親しんだ雰囲気がある。それは自分のように長く仲魔と過ごした者が出せるものだ。今からサムライになろうという者が出す空気ではない。

 

おそらく我流であろうが、見事と言える。確実に敵の急所を掴んでおり、その身体能力の高さを存分に発揮した他の者では決してできない動きだ。そして悪魔に引くことなく飛び込める胆力。

 

(まさか……悪魔を知っていた?)

 

ありえない、とも言い切れない。長年悪魔と戦い民の安全を守ってきた自分達サムライだが、時折ミカド国内で悪魔が発生することがある。ごくまれだが、発見され次第サムライが鎮圧するため被害は少ない。知った者も大抵は殺されている。だが、もし生き延びていたとすれば?昔から彼らと戦っていたとすれば?

 

もしそうだとすればある程度理解が出来る。

 

(わからんな。まぁ、この戦いが終わり次第問い詰めればいい)

 

他のサムライへの発破にもなる。そうホープは考え、いざという時に動けるように構え直した。そうなることはないと確信めいたものをしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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お互いの激しい攻防の末に繰り出された鋭い槍の一撃をいなし、返す刀で斬り倒す。しかしそれは身を逸らすことで避けられ、代わりに蹴りの反撃を受けてしまう。それを自ら後ろに跳ぶことで軽減し、互いに距離を取った。刀と槍。リーチの面で考えれば明らかにクーフーリンの優勢である。さらに彼は魔法も使えるために近距離戦でなければフリンに勝ち目はなかった。

 

だが、クーフーリンは一切気を抜くことはない。距離があっても今のフリンならば一足でもって接近が可能だ。しかも今まで足りていなかった実戦経験を自分との戦いの中で急速に形にしていっている。高スペックの身体をどう動かせばいいか、どう行けば相手を倒せるか。その試行錯誤がこの戦いでは行われている。

 

確かにこれもこの戦いの目的の一つではあった。主の体と能力を馴染ませるための一戦。しかしここまで能力が高いことはクーフーリンも誤算だった。明らかに人間としての枠組みを超えている。イメージと肉体の齟齬が無くなった時に主はどれほどまでに強くなるのか。それを考えただけで、自分の中にいる猛犬が唸りを上げる。抑えたはずの心が、純粋に闘争を楽しもうと出てきてしまう。

 

「主、いや我が好敵手よ。あなたはやはり素晴らしい。これほどまでに成長なされていたとは、仲魔として光栄に思います」

 

「お前のおかげだ。ここまで形にすることが出来た」

 

「私はあくまで手助けをしただけ。それを形にできるかどうかはあなた次第でした」

 

改めて思う。この主は今までの中でも最高の部類に入る男だと。本音を言えばこのまま闘争を楽しみたい。いつまでも終わることのない闘争を。しかし、周りの状況がそれを許さない。あの雑魚共はこれから主の上司になる人間たち。これ以上は迷惑をかけてしまう。そして、自分に残された時間は残り少ない。

 

「本当に、本当に不本意ですが……次の一撃で決めましょう」

 

クーフーリンの気迫を感じとり、フリンは何も言わずに集中力を高める。

 

少し騒がしくなっていた周りも静かになり、固唾を飲んでその光景を見ていた。言葉は聞こえていなくとも、雰囲気でわかる。次で決まると。

 

そしてお互いの緊張感が極限にまで高まったその時、二人は一斉に動き出した。

 

「妖花烈風!」

 

「ハァアアアアッ!」

 

槍に風を纏わせ放たれた全力の一撃を気合と共に真正面から受け止め、削れていく木刀やその身を顧みることなく突き進むフリン。交差自体は一瞬でありながらも、二人にとってはとても長く感じられた。そして二人にとって長い拮抗の最中、フリンの相棒はその身を削りながらも主に勝利をもたらすため、自らその身を砕いた。それによってほんの少しだけ生まれた衝撃は、同じくほんの少しだけ槍を逸らした。しかし、それだけで十分だった。

 

「「……」」

 

武器を振りぬいた状態で交差する二人。そして数秒の後に倒れたのは、クーフーリンであった。

 

その体にはフリンの相棒による最後の一撃の痕が残っていた。

 

「……お見事。流石は我が主にして好敵手」

 

「ありがとう。でも、こいつに助けられた」

 

「ふふっ、武器に愛されることもまたその人の力量の一つ。その木刀も本望だったでしょう」

 

根元から砕け散り、柄を残すのみになった木刀をフリンは見つめる。この世に生まれて鍛錬を始めだしたときに作った愛刀が無くなるのは寂しい事だが、同時にとても誇らしかった。

 

と、そこでクーフーリンが少しずつ消えていくのを見つけてしまう。ようやく見つけた仲魔が自分の一撃で消えてしまうことに焦りを見せるフリンだったが、クーフーリンは笑顔でそれを止めた。

 

「長年ガントレットにいたせいで、これ以上身を保てなくなったようです。おそらく次に会うであろう私には今までの記憶が無いでしょう。これは他の悪魔にも言えることです。記憶が残るのは一体だけ。覚えておいてください」

 

「うん……うん……」

 

共に戦ってきた仲魔が消える。しかもクーフーリンはどちらの世でも仲魔にしていた悪魔だ。人型ということもあり、クエストで知り合ってから共に研鑽を積んできた。彼が消えるのは、つらい。

 

「泣かないでください。あなたは今まで通り堂々としていれば良いのです……これから、どうするおつもりで?」

 

「……どちらでもない道を行く。困難だろうけど、俺は俺の信じた道を行くよ」

 

「ふふふ、それでこそ我が主。一番困難な道を行かれるか……」

 

涙を拭い、覚悟を決めた目で見てくる主に満足そうに笑うクーフーリン。もはや上半身を残すのみとなった。

 

「もはや時間もないか……主よ、私は消える。しかし私の意志は常にあなたと共にあり、あなたを守るでしょう。これは混沌の世であなたを守りきれなかった私のせめてもの償い。受け取ってくださいますか?」

 

「あぁ!もちろんだ!だから……だから行かないでくれ」

 

拭ったはずの涙が止まらない。彼の顔すらもわからなくなるほどに歪んだ視界では辛うじて彼が微笑んでいることしかわからない。堂々としていろと彼は言う。だが、この悲しみはどうしようもなかった。

 

「一介の悪魔のためにここまで泣いてくださる人間は見たことがないですよ……まったく、良いサマナーに出会えた」

 

身体を構成するマグネタイトが砕け散り、光となって辺りに散らばる。フリンは止まらない涙を見せないように顔を俯け、蹲った。

 

そんなフリンを見たホープは少しため息を吐いた後、固まっていたサムライ達に指示を出す。ようやく時が動いたように処理を始めるサムライ達を横目にホープは蹲っているフリンの肩に手を置いた。

 

「お前が何者かは聞かん。あの悪魔との関係も、お前を見ればよくわかった。お前の気持ちもわからないでもない。だが、良く見てみろ」

 

「っ……?」

 

ホープの言葉に溢れる涙をそのままにして前を向くフリン。すると、砕け散ったはずの光が徐々に集まり、形を成していく。ぐねぐねと形状を変えながらも、しっかりとした重量感を持ってそれはフリンの目の前に現れた。

 

「こ、これは……」

 

「魔晶変化、というものだ。サムライと心を通わせ、互いに強い信頼関係を築いた悪魔が残すとされている。我々の中でもそれを成すのはほんの一握りにすぎない……これほどの物を残すという意味、お前にならばわかるであろう?」

 

「う、うぅぅぅ……っ」

 

フリンが抱きしめ、ホープが暖かく見つめるのは、クーフーリンの残した魔晶たる彼自身の鎧であった。サイズはフリンに合わされており、フリンが動きやすいように様々な改良が加えられている。この鎧はこれからの戦いにおいて、彼の最後の言葉通りフリンを守っていくことだろう。

 

周りのサムライ達もそんなフリンを暖かく見守り、命令をこなす。先程の戦闘や悪魔との関係は気になるものの、とやかく言う人間はこの場にはいない。ホープの人選によるものでもあるが、何も追及しない者しかいないことはフリンにとって運が良かったといえるだろう。

 

サムライ達は自分たちの新たな後輩が悪魔のためにも涙を流せる心優しい青年であることをうれしく思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「ここがお前が今日から住まう場所だ。覚えておくように」

 

「はい」

 

泣きはらしたゆえに腫れぼったい目をそのままに、フリンはホープに連れられてサムライの寄宿舎に来ていた。その胸にはクーフーリンの鎧と愛刀の残骸が抱かれており、どうやっても離そうとしない姿を見てホープは微笑ましく思った。

 

「先程も言ったが、詳しいことは聞かぬし今回のことは内々に処理する。ゆえに他言無用を貫くこと。よいな?」

 

「はい。ご配慮いただき、ありがとうございます」

 

「うむ」

 

嵐のような攻防を見せていた先程とは打って変わって礼儀正しいフリンを見て、ホープは満足げに頷いた。あの涙から心優しい青年であることはサムライ衆全員に認識されたことだが、実際に話してみないとわからないこともある。彼は本当に当たりであるとホープは感じた。

 

「あぁ、その防具を身に着けるのは構わぬが、上には支給されたサムライの上着を着ておくように。それと明日の明朝には実地訓練を行うからな。今日の所はゆっくりと休め」

 

「はい……お頭、しつこいようですが本当にありがとうございました」

 

「ふっ、礼は良い。こちらも他の連中の良い発破になった故、今回の事は御咎めなしとする。それに、いいものを見させてもらったからな……では、また明日の明朝に会おう」

 

そう言って去っていくホープを見送ったフリンは、鎧を側に置いてベッドに寝転んだ。

 

ガントレットはまだ処理中と表示されており、AIであるバロウズは出てこない。なので彼女がクーフーリンと同じく記憶を引き継いでいるのかを確認することはできそうになかった。明日になればわかることだが、それでもすぐに知りたいと願うのは人として仕方のない事だろう。

 

「……俺は、やるぞ」

 

天井に向かって手を伸ばし、ぐっと握り込む。クーフーリンの意志とこの思いを胸に、改めて覚悟を決める。自分は何があっても前へと進むのだと。かつての失敗を胸に秘め、自分の選択に責任を持つ。

 

「ふぁ……」

 

だが、まずは体を休める事が先決である。何をするにしても無理はいけないのだ。連日の移動と今回の戦い、そして泣き腫らしたことによる体力の減少もあって、フリンはすぐに意識を落とした。




ガントレットの守護者の設定は、今までのシリーズにもデビルサマナーにもあったものです。本当に悪魔がその時の主人を好んでいて、最後の頼みであったりサマナーの意志を守ろうとしていたりと理由は様々ですが、あるのです。今回は閣下パワーによって引継ぎされた力と記憶を持つクーフーリンさんが守護者でした。ちなみにレベルは99ですが、長年の守護者生活のせいで劣化しております。しかも目的はフリンの強化だったし、彼も現状の全力を出し切れたことで満足したでしょう。

魔晶化した鎧は、もともとゲーム内にある物を強化したものになります。電撃弱点が耐性になり、防御面でも多少強化されています。物理・銃:弱耐性、電撃耐性、衝撃反射ってところですか。これもフリンを想う意志のなせる業。

今後はフリンがこれを装備して戦っていくことになります。あと足りないのは武器ですが、これはおいおい自分でマッカ稼いで買ってもらいましょう。

仲魔募集中。
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