神山思いつき集   作:神山

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女神転生4

翌日。昨日早くに休んだおかげでいつもよりも早く起きたフリンは朝食を済ませ、実地訓練のための準備を始めていた。

 

とても動きやすく軽い鎧をその身に着け、サムライの上着を羽織る。そしてクーフーリンと同じように白い額当てつけた。鎧はガントレットを付けるために左腕は改良されているので問題なく装備できる。腰には昨日のうちに置かれていた刀を凪ぎ、念のために用意していた包帯などを後ろ腰のポーチにつめれば完成だ。

 

「おーい、起きてるかー?」

 

満足げに自分の恰好を確認していると、どんどんと力強く扉を叩きながら声が聞こえてきた。

 

フリンは返事をして扉を開ける。するとそこにはつんつん頭の黒髪の青年が立っていた。支給された上着の前を開け、腹部にはさらしを巻くだけで何も着ていない。正直寒くないのかと聞きたくなる恰好ではあるが、腰にある刀と上着が彼がサムライであることを証明していた。

 

「よぉ!起きてたか!お前、俺と同じく昨日サムライになった新人だろ?それに聞いたぜ。同じカジュアリティーズ出身だってな。だから、挨拶しようと思ってよ」

 

ドアを開けた瞬間に一気にまくしたてる青年にフリンは目を白黒させるが、これが彼だったと思いだした。

 

「俺の名はワルター。よろしくな!」

 

「あぁ、俺はフリン。こちらこそよろしく」

 

互いに握手し、笑顔で自己紹介する。するとワルターはフリンの顔をじっと見た後、何かを思い出すように眉を顰め、疑問を口に出した。

 

「なぁ、俺達って……前にあったことあるか?」

 

おそらくあの奇妙な夢の事を言っているのだろうと思ったフリンだが、ここで何を言っても彼は信じないだろうと判断し、会ったことはないと曖昧な言い方に留めた。

 

「だよな?あれは夢だったんだ。気のせい気のせい……悪い、何でも無いんだ」

 

すぱっと話を切り替え、笑みを浮かべたワルターにフリンは別にいいと手を振って返す。そしてふと彼は空を見て思い出したようにしゃべりだした。

 

「お前も実地訓練に行くんだろう?一緒に行かないか?」

 

「あぁ。同行させてもらうよ」

 

「よし!ならさっさとナラク入り口前まで行くとするか!」

 

準備は完了していたので扉の鍵を閉めた後、ワルターに続く形で先に進む。彼は訓練の内容や昨日の儀式についてなど様々な事を話してきた。元々自分から話題を振るのが得意ではないフリンはそれに頷き返したりして話を広げていった。

 

フリンにとってワルターのこういうところはとてもありがたい。何も言わずとも積極的に何かをしようとすることが出来るし、こんな不良のような見てくれで案外仲間思いなところも好感が持てる。

 

と、そうこうしているうちに到着したアキュラ像の広場にはすでに三人のサムライが集まっていた。一人を除いてどれも記憶にある通りの姿で、こうして集まっていることがとても懐かしく、かけがえのない物だと思えてくる。

 

「ん?なんだぁ?君たちも新人のサムライか?」

 

その一人であるリーゼント頭の新人サムライがこちらを見下したように話しかけてきた。本当にフリンは彼が誰なのか思い出せない。もしかして自分が変わっているように他にも何か影響が出ているのだろうか。

 

このフリンの不安をよそに、言い方が気に食わなかったのか、ワルターはそれに突っかかるように口をへの字に曲げて返す。

 

「ここにいるってことはお前だって新人だろうが。誰だか知らないけど」

 

「ふんっ!良く聞きたまえ!この私はラグジュアリーズのナバールだ!ラグジュアリーズの、ナバール!よく覚えておきたまえ!」

 

「うっせぇなこいつ」

 

何がそんなに彼を威張らせているのか定かではないが、ほとんど記憶から消えかけていた彼の名前にようやくフリンは思い出した。ナバール、そういえばいたなそんなの。

 

「君たちが最後のご到着だ。身なりやその雰囲気から見て、どうせカジュアリティーズの人間だろう。どうにもカジュアリティーズの人間は呑気者が多いらしいね。先が思いやられるよ……ヨナタン君もそう思うだろう?」

 

どのような人間かを判断もせず、カジュアリティーズと言うだけで差別する。典型的な嫌味なラグジュアリーズがそこにいた。ワルターはもとより、フリンも機嫌が悪くなった。ようやく思い出した記憶ではどれも無様な姿しかさらしていないナバールの存在は、フリンの中で嫌いな人間ランキングの上位に割り込むことになった。

 

「……ナバール殿、その辺にしておこう。僕らは同じ新人同士ではないか」

 

「私達ラグジュアリーズ出身の三人が品性を疑われてしまいましてよ?」

 

「なぬぅ!ちょ、ちょっとイザボー君!失敬じゃないか!?」

 

ヨナタンと呼ばれたパーマのかかった黒髪の青年は、苦笑しながらナバールをたしなめた。立ち姿からして高貴な空気を醸し出し、その清潔な見た目は自分はラグジュアリーズですと物語っていた。

 

そして同じくナバールを止めながらも微妙に貶した女性の名はイザボー。茶髪の髪をボブカットにし、涼しい顔でその場に立っていた。彼女もまた、その見た目からしてラグジュアリーズであることがすぐにわかる。

 

「へぇ、ラグジュアリーズだけどアンタとは気が合いそうだ」

 

「どうかしら……」

 

ナバールに言った一言で気をよくしたワルターがイザボーに声をかけるも、鼻で笑われて終わってしまう。不覚にもフリンはそれに笑いそうになったものの、能力フル動員でなんとか耐えた。ワルターの不機嫌顔がまた面白い。

 

「ところで貴方……まだお名前を伺ってませんでしたわね。私はイザボー。貴方は?」

 

「俺はフリン。新人同士、頑張っていこう。よろしく頼む」

 

「えぇ、こちらこそよろしくお願いしますわ」

 

「俺のと全然対応が違ぇ……」

 

ワルターが何やら呟いていることを気にも留めず、二人は笑顔で握手を交わした。イザボーはようやくマシな人間が増えたことに喜び、フリンは彼女との再会に喜んでいた。と、ここでフリンの名を聞いたヨナタンが反応し、フリンをじっと見つめる。

 

「えっ、フリン?その名前は夢の……」

 

それに気づいたフリンがどうしたと声をかけると、ヨナタンは数度首を振って謝る。そんなはずはない。あれはしょせん夢なのだからと。

 

「いや失敬。僕はヨナタンだ。新人同士がんばろう」

 

「あぁ。改めて、フリンだ。よろしく」

 

ヨナタンとも握手を交わし、ワルターも遅れて自己紹介をした。そうして全員の自己紹介が終わると見計らったかのようにホープが現れ、全員を整列させる。厳しい顔で全員を見渡す途中、フリンを見て小さく笑った。良く似合っていると。

 

「全員そろっているな」

 

「お、お頭だ……」

 

だが顔を元の厳しいものに戻し、新人を見渡す。それに反応したのはナバールで、ビクビクしながら列に並んでいた。

 

「貴様等五人が今年のガントレットの儀の合格者だ」

 

「五人……国中から集まってたった五人かよ」

 

「何を言うか!五人なんて多すぎる年なんだぞ!?」

 

ホープの言葉に純粋に驚いた様子を見せたワルターに過剰に反応するナバール。だが彼のいう事は間違っていない。近年ではまったく合格者がいなかったのだし、出た年も五人よりも少ないことが多い。

 

だが、今はそれを大声で言う時ではなかった。

 

「私語は慎め、ナバール」

 

「なッ、なんで私だけ……」

 

案の定怒られたナバールはワルターをキッと睨むと、すごすごと列で小さくなった。

 

それを確認したホープは改めて説明を開始した。

 

「それではこれより実地訓練を始める。これから貴様等にはナラクへと行ってもらう」

 

「ナラク?ナラクと言えばたしか、悪魔の……」

 

「悪魔ぁ?」

 

ホープの説明に思わず口を出してしまったヨナタンは慌てて口をつぐみ、聞き返したワルターも押し戻した。だがホープはそれに感心したような声を出すだけで、ヨナタンはほっと胸をなでおろした。

 

「ヨナタンと言ったか。貴様中々博識だな。今日はナラクへ入り、悪魔と実戦しながらサムライのイロハを訓練してもらう」

 

「父上が教えてくれなかったサムライの真の任務……それは悪魔退治のことだったか」

 

イザボーがフリンの隣で呟き、思案顔になる。フリンも初めてこれを聞かされた時には大いに戸惑ったものだ。悪魔とは?実戦とは?様々な事を苦悩しながら戦い、非常に疲れたことを覚えている。

 

「わずかではあるが、貴様らに支度金と物資を支給しよう」

 

そう言ってホープから手渡されたのは300マッカと癒しの水5個。当時は何が何やらでそのままナラクへ潜ったが、今なら思える。これだけでどうすればいいのかと。

 

「この広場には武器や道具を扱う商店がある。各自準備を整えた者からナラクに集まれ。では、散開!」

 

ため息をつきたくなるような乏しい支度金と物資をポーチに詰め込み、皆を見る。

 

それぞれどうしようかと思い悩んでいるとありありと顔に出ていた。いきなり悪魔と戦えと言われてしまえばそうなるのも仕方がないし、自分もそうだった。しかし、今の自分はそうではない。ならば先頭をきってみんなを支えるのもまた、自分の役目なのではないか。

 

「さて、これからすぐにナラクへ行くも良し、この乏しい支度金で回復アイテムを買うもよし……どうする?」

 

先頭をきるとはいえ、この場合は話題を出してしまえばそれでいい。全員自分から動けるような人間だし、切っ掛けさえ与えてしまえば彼らは動き始める。

 

「あ、あぁ。余りの事で固まっていたよ。ありがとう。僕は……そうだね。本当に御伽噺の悪魔が出てくると言うのなら、万全を期すべきだ。この支度金を使って、ある程度回復アイテムを買うとするよ」

 

「俺はそのまま行くぜ。何をどうするにせよ行ってみないとわからないしな」

 

相も変わらずの対極っぷり。まぁ彼らがどうするかはわかりきっている事だった。あとは残り二人である。

 

「私もアイテムを買いに行くとするわ。父上からも準備は怠らないように言われてるしね」

 

「わ、私はいい行くぞ!でもやっぱりアイテムも……」

 

少し悩んでアイテムを買いに行くと決めたイザボーと、どっちつかずになっているナバール。大体決まったようなので、自分はそのままナラクへ向かうことを告げる。ヨナタンが一応アイテムがあったほうが良いのではないかと言ってくれたが、やんわりと断った。今の自分ならばナラクは問題ないのだから。

 

「やっぱやってみないとわからないもんな!うっし、じゃあ行くぞフリン!」

 

「おぅ」

 

ワルターと共にナラクへ向かうと門番のサムライとホープが話し合っているのを見つける。二人は早速来たフリン達に大丈夫かどうか確認し、全員揃うまで待つように命令した。死亡率が高いのはこの最初の実地訓練だからと。

 

そしてしばらく後、買い物に行っていた二人とうじうじしていたナバールが到着し、ホープが実地訓練の開始を宣言した。

 

「全員そろったな。これより先は御伽噺の悪魔が出現する場所となる。抜かりないな?」

 

「「「「「はいっ!」」」」」

 

「よし、ではこれよりナラクへと入る。遅れるな!」

 

ホープを筆頭にナラクへと進む新人一行。

 

その顔はフリンを除いてこわばっており、未知への恐怖が混じっていた。




うちのナバールの扱いはこんなものです(笑)
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