「おい球磨川!さっきのは一体何だよ!?」
ん?さっきの?何のことかな?僕にはさっぱりだ。
『おいおい一夏ちゃん』『何があったか知らないけど落ち着きなよ』『さっきのって一体何のことだい?』
「とぼけるな!クラスの皆を体調不良にしたり、千冬姉に螺子を投げたりした事だよ!」
おいおい、そんなことでわざわざ声を荒げないでくれよ。こっちだって暇じゃないんだから、いちいち一夏ちゃんの言いがかりに付き合ってらんないぜ。
『皆が体調不良になったのは皆が体調管理を怠ったからだろ?』『それとも君は』『僕がクラスメイトを体調不良にした証拠でもあるというのかい?』
「うっ……でも!千冬姉に螺子を投げたのは本当だろうが!」
『あれはただの手品だよ』『出席簿に空いた穴はきちんと塞がっていたじゃないか』『僕には織斑先生を傷つけるつもりなんてこれっぽっちも無かったよ』
「てめえふざけ……」
「ちょっと、よろしくて?」
俺と一夏ちゃんの会話に急に割り込んできた礼儀知らずは、金髪縦ロールのメインヒロインだった。
セシリア・オルコット
イギリスの代表候補製。しかも貴族。最初は主人公のことを嫌っていたくせに、一度負けそうになっただけでベタ惚れするチョロイン。自己紹介の時に自分の自慢ばっかりしていた。貴族であることと代表候補生であること、入試一位であることを特に強調していた。
『えっと』『確かセシリア・オルコットさんだよね?』『自慢ばかりの派手な自己紹介が印象に残ったから覚えてるよ』『それで?』『明らかに取り込み中なのに割って入って来てまでよろしくしたい理由は何なのかな?』
「まあ!なんですの、そのお返事。わたくしに話しかけられるだけでも光栄なのですから、それ相応の態度というものがあるのではないかしら?」
明らかにこちらを見下した態度。己の優位性を疑わない絶対の自信。それは
教師を除けばこいつはこのクラスの誰よりも
「誰なんだよあんた?今は俺と球磨川が話してんだから邪魔すんな!」
「はあ、あなたよくそんな方とお話し出来ますわね。球磨川さん、わたくしはあなたとはよろしくしたくありません。ですが、おぞましいからという理由だけで関わるのをやめれば貴族としての沽券にかかわります。下々との対話もまた貴族の義務。わたくしはそれを投げ出すようなことは致しません」
一夏ちゃんの言うことも無視して、セシリア・オルコットはこちらに一方的に関わってくる。でも、それはこちらには都合がいい。俺は、お前みたいな
『どんな理由にせよ』『君みたいな有名人が僕に関わってくれたのは光栄だよ』『イギリスの国家代表候補生にして入試一位の実績を持つ』『セシリア・オルコットさん』
「よくご存じですのね」
『自己紹介で君が自慢げに語ったことじゃないか』
実際大体の人が
~回想~
「わたくしはイギリス出身の貴族、セシリア・オルコット。イギリスノの代表候補生ですわ。そして入試一位の実力者でもあります。」
「まあ、このわたくしのことを知らないという人はまずいないでしょうけれど、形だけでも紹介しておきましょう」
「みなさん、このわたくしと同じクラスであることの幸せを噛みしめるといいですわ。おーっほっほ」
(((うざい)))
それがクラス全員の総意だった。
~回想終了~
『実際すごいと思うよ』『世界最強の前で代表候補生であることを自慢するなんて』『僕には恥ずかしくてできないぜ』
「え?……はっ!」
今気づいたのかよ。周り見てみろよ。何人か笑ってるぜ。
「オルコットさん、気づいてなかったの?」
「シーッ、黙っててあげなよ。ってもう遅いか」
「世界最強の前で国家代表候補であることの自慢……プッ」
「千冬様、内心笑ってたりしてたのかな?」
世界最強である織斑先生からすればクラス代表候補生であることを自慢するこいつはさぞかし滑稽に映っただろう。
いや~、気づいたうえで世界最強ほどじゃなくても、候補生だって十分すごいんだって開き直っていたんならともかく、そうじゃないのなら悪いことしたかもな~。あ!オルコットさんめっちゃ顔赤くなってる。かっわい~。
「よ、よくも恥をかかせてくれましたわね!」
『おいおい』『恥をかいたのは君の自己紹介が原因だろ?』『僕は悪くない』
「あなたよくもぬけぬけとそんな……」
キーンコーンカーンコーン
「っ……!またあとで来ますわ!逃げないことね!よくって!?」
「球磨川、俺との話だってまだ終わってないからな!忘れるなよ!」
『僕は逃げも隠れもしないよ』『それとオルコットさん』『立ち振る舞いには気を付けたほうがいい』『そんな負け犬の遠吠えのようなセリフは君みたいな
「……忠告、ありがたく受け取っておきますわ」
「本当に忘れてたら承知しないからな」
本当、振る舞いには気を付けてもらいたいよ。
……君には、螺子伏せがいのある
そして三時間目、クラス代表を決める時間がやってきた。
「今からクラス代表を決める。自薦他薦は問わない。誰か推薦したい人物はいるか?」
「はいっ。織斑君を推薦します」
「私もそれが良いと思います!」
「お、俺!?」
おいおい一夏ちゃん、何を驚いているんだよ?この世に二人しかいない男性、興味本位で指名されてもおかしくないじゃないか。当然僕も……
球磨川雪 0票
うん知ってた。……泣いていいかな?同じ男性操縦者なのにこの扱い。
「待ってください!納得がいきませんわ!」
おお!セシリアさん。そうだよね、同じ男性操縦者なのにこの扱いの違いは納得いかないよね。差別は良くないよ。
「男がクラス代表なんて恥さらしもいいところですわ!わたくしにそのような屈辱の一年間を味わえとおっしゃるのですか!?」
はあ?その程度が屈辱だなんて、ずいぶん沸点が低いな貴族様は。
「実力から言えばわたくしがクラス代表になるのは必然。それを物珍しさを理由に極東の猿にされては困ります。わたくしはISの技術を学びに来たのであって、サーカスに来たわけではありません」
おお!大半が日本人のこのクラスで日本人を堂々と猿呼ばわり。クラスメイト全員君を睨みつけてるけど、気づいてない?
「クラス代表は実力のトップがなるべき、そしてそれはわたくしですわ。大体、文化が後進的なこの国で暮らすこと自体私にとっては耐えがたい苦痛で……」
「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。世界一まずい料理何年覇者だよ」
おいおい、俺が挑発する前にもうやらかしちゃったのかい一夏ちゃん。
「もう許しません。決闘ですわ!」
「いいぜ。四の五の言うより分かりやすい」
『あ!』『僕自薦するからその決闘参加するね』
危ない危ない。原作介入のチャンスを逃すとこだったぜ。
「……いいだろう。オルコット、織斑、球磨川の三名でクラス代表決定戦を行う」
「「二人まとめてぶちのめしてやる(さしあげますわ)」」
『怖い怖い』
二人ともすっかり殺気立っちゃって。何をそんなに苛立っているんだ?代表決定戦なんてくだらないイベント、気楽にやればいいのにさ~。俺はなんとなくエントリーしたけど、もちろんテキトーにやるよ。
「二人とも、言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い、いえ、奴隷にしますわよ」
「侮るなよ。真剣勝負に手を抜くほど腐っちゃいない」
『僕は勝負においてわざと負けたこのなんて一生に一度もないさ』『僕の全ての勝負は真剣に戦って全て敗北した』
「……一人は真面目に戦う気があるのかすら疑わしいとは、嘆かわしいことですわ」
事実を言っただけなのにこの反応。一応やる気はあるんだけどな。真剣勝負に手を抜く気がないのはこっちも同じなのに。
勝負で手を抜いたことは無い。何時だって俺が有利な条件で戦ったことは無い。できるだけ対等に戦おうとした。勝つための努力だってしたことがある。勝ちたいという想いはこの世界の誰よりも強い。
なのに、勝てない。
それが、
『安心しなよ』『僕の誇りにかけて全力で戦うことを誓うから』
「ていっても男が女に純粋に力比べするわけにもいかないだろ。ハンデはどのくらいつける?」
一夏ちゃん、それ本気で言ってるの?すごいな。
見ろよ、クラス全員嘲笑の笑みを浮かべてるぜ。
「織斑君本気で言ってる?」
「男が女より強かったのって昔の話だよ?」
「ISが使えるって言っても初心者なんだから、むしろ織斑君がハンデをもらわないと」
『さすが一夏ちゃん』『真剣勝負に手を抜かないと言った矢先に自分にハンデをつけて負けたときの言い訳を作るなんて』『まさに卑怯者のすることだよ』『そこにしびれる憧れるぅうう!』
俺の言葉に、クラスメイトは全員疑問を持った表情を浮かべる。って一夏ちゃん、本人が疑問を浮かべてどうするの。
『常識的に考えて初心者の一夏ちゃんが代表候補生に敵うわけないよ』『だから一夏ちゃんは自分にハンデを付けて負けたときの言い訳を作ろうとしたんだろ?』『勝ち負けの決まった真剣勝負なんてあるわけないからね』『真剣勝負に手を抜かないという言葉にも矛盾しない』『この勝負は始まる前から結果が決まっている』『ならばと一夏ちゃんはいかに仕方なく負けるか考えた』『どうだい僕の名推理』
「そんなわけないだろ!大体、まだ俺が負けるなんて決まってないだろうが!」
『え?』『なら君はハンデのついた勝負が真剣勝負だというのかい?』『それは驚いた』『君の真剣ってその程度だったんだね』
「そ、それは……」
俺の言葉に、クラスメイト達は一夏ちゃんに疑心暗鬼を持ち始めた。
「織斑君そんなこと考えてたんだ」
「熱血って思ったら卑怯なタイプだったんだね」
「イメージ崩れた」
「千冬様の弟なのにこんなことして恥ずかしくないのかしら」
「千冬様の弟とかじゃなくて人としてどうかと思うわよこんなの」
もちろんその空気を何とかしようと一夏ちゃんは口を開いた。
「違う!俺はそんなつもりはない!ただ、言葉を間違えたって言うか……」
そんな言い訳じみた反論が通じるわけもなく……
「口を開かないでこの卑怯者!」
「それでも千冬様の弟なの?」
「こんな奴が同じクラスだなんて一組の恥だよ」
「くッ……」
……言い訳じみた反論に、ちょっと女子に強く反論されただけで口をつぐむ愚行。
はぁ、本当にひどい。最低だよ。
そんな言い訳じみた反論を信じてあげないなんて。
『やめろよ皆!』『本当に一夏ちゃんがそんな卑怯なことをしたと思っているのかい!?』『一夏ちゃんは違うと言っているのに!』『大切なクラスメイトじゃないか』『クラスメイトの言うことは信じてあげようよ!』
瞬間、教室は静寂に包まれた。
この場にいた球磨川を除く全員が理解できなかった。なぜ一夏を責めるような物言いから一転、庇うようなことを言うのか。
「ふざけるな!元々お前があんなこと言ったから俺が疑われたんだろうが!」
『おいおい』『僕は思いついた中で最も可能性が低い推理を披露しただけだよ』『可能性が低いとはいえわずかにでも君が卑怯者だって可能性があるなら放っておけないだろ?』『だから僕が提示した可能性を完膚なきまでに否定してほしくてあんなこと言ったのに』『君はみんなの前で自分の無実を証明できなかった』『だから証明できなかった君と』『一夏ちゃんの言葉を信じなかったクラスメイトが悪い』
「違う!何もかも全部お前が悪い!」
全く、俺がやると善行も悪行に見えるのかね?
『いいかい一夏ちゃん』『僕は親切であんなことを言ったんだ』
つまり何が言いたいのかというと……
『人に親切にすることが悪い事のはずがない』
だから…………
『僕は悪くない』
なら誰が悪いのかというと……
『悪いのは一夏ちゃんとクラスメイトだ』
俺がそう言った瞬間、一斉にこの場にいる全員から視線が向けられる。
その視線には、嫌悪、憎悪、怒り、恐怖、様々な感情が混ざっていたけど、一つとしてプラスの感情はなかった。あるのはマイナスな感情のみ。
その視線を受けて、俺は……
二コリ
……と、過負荷らしく、へらへら笑った。
球磨川に転生して苦労したこと
螺子の調達
『人を螺子伏せられるくらいの螺子ってどこで売ってるのかな?』『そもそも僕の所持金で買えるかな?』『まずい』『螺子が手に入らなかったら僕は球磨川を名乗れない』
『いったいどうすれば……』
Amaz◯nで格安で売ってあった。Amaz◯nパネェ。