DECADE×IS/世界の破壊者は何を見る――?   作:ちーたら

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少しばかり、セシリアのキャラがぶれている気がしなくもない。

……これも全部、乾巧ってやつのせいなんだ!


RIDE2:クラス代表

「えっと、士、でいいか?」

 最初の休み時間。教室から二人の教師が出て行ってから、前の席に座っている少年が声を掛けてきた。

「……なんだ」

「とりあえず自己紹介をしようと思ってな。俺は織斑一夏。よろしく」

 そう言って手を差し出してくる少年こと織斑一夏。顔立ちはそれなりに整っており、どこか意思の強そうな瞳をしている。『世界』の旅の中で出会った人間ならば剣立カズマあたりにそっくりだ。

「……門矢士だ」

 そう言って、士は手を取って握手をする。その様子を遠巻きに見ていた女子数名が恍惚とした声を上げた気がしたが無視をする。

「いやぁ、ずっと男は俺一人だって聞いてたから安心したぜ。士はどこでどうやってISを動かしたんだ?」

「ああ、ちょっと色々とあってな」

 一夏の至極真っ当な問いに士は言葉を濁して誤魔化した。

 士に与えられる役割は、その立ち場などに不可解な点が多い。『アギトの世界』ではそれが最も顕著で、『世界』でのやるべき事の根幹に関わるヒントと呼べる芦川ショウイチ宛ての郵便物を最初から持っていた。おそらく自分がIS学園に入学するための通知もそれに似た事例なのだろうと考えて入るのだが、如何せんこの『世界』で自分が何をすべきなのかは依然と見えてこない。IS学園に来る途中で別れた夏海とユウスケが今頃色々と調べてくれているはずではあるが、とりあえずISに最も近く接することができるのはこの学園だろう。

「ふーん、そうか。まあ俺もなんで自分がISを動かせるのかさっぱり分からないんだよなぁ。ほら、さっきの織斑千冬って俺の姉貴なんだけどさ」

 それから一夏は色々と話し始める。諸事情により両親がいないこと、姉が第一回IS世界格闘大会『モンド・グロッソ』の栄えある優勝者であること、しかし滅多に家に帰ってこないから何を職にしているかわからなかったのにここで教師をしていたことをついさっき知ったこと。

 随分と口が軽いように思えるが、おそらく周りが女ばかりの空間で唯一の同性の仲間を見つけたことですこし緩くなっているのだろう、と士は一人結論付ける。

「ちょっといいか」

 と、そこで一人の少女が話に割り込んできた……否、というよりは一夏になにやら用事があった、と言う方が適切か。

「おう箒。久しぶりだな。小学校四年以来だから六年ぶりか?」

 箒、と呼ばれた少女は一応美少女であるがすごく不機嫌そうな顔をしていた。眉間に皺をよせて腕を組んで、変な威圧感を持っている。

「あ、士。こいつは篠ノ之箒。俺の幼馴染だ」

「そうか、よろしく」

「あ、ああ……」

 間を入れずに他者紹介を終える一夏に、少し挙動がおかしい箒はなにか言いたそうにしていた。

「で、なにか織斑に話があるんじゃないのか?」

「……っ」

 不躾に遠慮も無く士が訊くと箒はびくっと肩をすくませた。

「え、そうなのか?」

「六年ぶりなんだろ?なら積もる話もあるってもんだ。俺にお構いなく、さっき貰った参考書でも読んでいる」

 うまい具合に箒をけしかけて、一夏との話を断絶させた。途中、ここでは気まずいのか箒は一夏を連れて場所を変えるために教室を出て行った。

 ふぅと一つ溜息をついて、参考書に目を通す。

 はっきり言って、何が書いてあるかはさっぱりである。専門用語を説明するために専門用語を使っている時点でそれはもう察するべきだ。まあ士自身、原理はわからないが結果的に起こる事を理解している物をいくつも使った経験があるので、そこは実戦でなんとかなるだろう。

「ちょっとよろしくて?」

 と、そこで士の思考を邪魔する者が現れた。

 参考書に落としていた目を上げると、そこにいたのは金髪の美女である。

「何か用か?」

 ぶっきらぼうに返答すると、その美女は驚いたように、そしてどこか芝居掛かった口調で声を上げた。

「まあ、なんですのそのお返事。わたくしに声を掛けられたこと自体光栄な話なのですからそれ相応の態度というものがあるのではなくて?」

 どこまでも仰々しい態度の美女に対して士はすくっと立ち上がるとトイカメラのフィルムを巻いてファインダーを覗きこんでその姿をレンズに切り取った。

 かしゃり、という小さな音がした後、士は言う。

「そもそも俺はお前が誰かも知らない。そんな人間に態度云々は言われたくないな」

「まぁ、知らない?このイギリス代表候補生にして入試主席のこのセシリア・オルコットを?」

「ああ、知らん」

 そう言って士はもう一度ファインダーを覗きこんでシャッターを切る。

「そもそも俺は今日ここに来ることが決まった。お前のような人間がいることを知る機会なんて無い。それにお前は、そんなに名前が知られている人間なのか?」

「なんですって?どういうことですの?」

「そのままの意味だ。祖国ならまだわからなくもないが、たかが代表候補止まりでそこまで名前が知られているとは俺には思えないな」

 この『世界』の住人ではない士だからこそ、ISという存在への先入観が無い言葉である……というか、代表候補生の意味など、字面でなんとなくわかっただけで士にはどんな役割があるかなどさっぱりわからない。

「む、むむ……わかりましたわ。ならばわたくしが……」

 そこでチャイムが鳴り、教室に生徒たちが戻ってくる。

「もう時間だ。席に戻った方がいいんじゃないか?」

「む、むむ……」

 納得した様子を見せず、悔しそうな顔をして席に戻って行くセシリア。それと入れ替わるように戻ってきた一夏が不思議そうな顔をして席に着く。

 やがて生徒がみな着席をすると、教卓の前に織斑千冬が現れる。

「さて、授業を始める前に再来週のクラス対抗戦に出るクラス代表を決めたいと思う。まあ簡単に言えば通常の学校におけるクラス委員に相当する役割だ。生徒の会議への出席や今後行なわれる行事の取締役なども兼ねる。が、一番の目的は諸君の向上心を上げるためでもある。自薦する者は挙手をしろ。他薦も問わん」

 直後、教室から一人の女生徒の声が上がった。

「はいっ!私は織斑くんを推薦します!」

 直後、ひっくり返る勢いで一夏が振り返った。

「お、俺!?」

「私もそれに賛成します!」

 直後にぽつぽつと巻き起こる援護射撃。おそらくは男性IS操縦者ということでいい格好の的になっているのだろう。

 ということはつまり、

「なら私は門矢くんを推薦します」

 と、士を代表の候補に上げる声を上げる者もいるわけで。

 そこからは多くの女生徒が一夏か士の二択を上げて行く合戦になっていく。

「お、おい、士いいのか?俺たちまともにISのことなんて……」

「別にいいんじゃないか?要するにクラスの顔になるのを決めようとしてるだけだろ。人気者は辛いな」

 この状況に対する皮肉か、それとも己に対する圧倒的な自信か。士に慌てる様子は一切ない。

 その妙な器の広さに一夏が呆気にとられていると、また一人の女生徒の声が上がった。だが、一夏と士への否定的な声で。

「そんな選出許されませんわ!」

 その声の主を見れば、先ほど士に声を掛けてきたセシリア嬢が立ちあがっていた。

「みなさんはクラスの代表をまるで人気投票のように決めることを当たり前だと思っていらっしゃるのですか?そもそもクラス代表とはそのクラスの看板を背負い立つ者。それを珍獣のように持て囃し決めるなどとは、そんなこと間違っていますわ!」

 ばん!と机を叩いて演説をするセシリア嬢。その一理ある言葉に先ほどまでお祭り騒ぎをしていた女生徒たちは考えるように表情を変えていく。

 どうやら彼女はただ高慢なだけの人間ではないようだ。実力ありきの聡い人間だからこそ、彼女は自分のことを知っていなかったことに不服に思い動揺したのだろう。

 まあそれでも、IS事情に首を突っ込まないタイプの人間も世の中にはいるだろうに、そういう士を人間であると考えずにいるというのはどこか間の抜けた話ではあるが。

「オルコットの言う通りだ」

 静まり返った教室で、千冬が言葉を繋いだ。

「クラス代表はあくまでこのクラス、一年一組の代表だ。つまりはこのクラスで最も顔を知られる生徒になる。それはクラス代表にしても恥ずかしくないという人間でなければならない」

 そう言うと千冬はこう言った。

「故にオルコット。私としてはお前が最もこの場ではクラス代表に相応しいとも思う。が、他の生徒が出した案、織斑と門矢が相応しくない人間だとも決めることもまだ早計だ。幸い、クラス代表の選出期限まで時間がある。端的に言おう……お前が見極めろ」

 クラス中にざわめきが走る。

「お前はイギリスの代表候補生という立場もある。事実、IS学園のクラス代表が代表候補生を兼ねる例はあまり多くない。クラス代表と代表候補生、その両立ははっきり言って負担になりかねん。無論、問題無くこなした者もいるが、私としては勧めはしない。だから期限までの一週間、お前は織斑と門矢、二人を観察してどちらかが相応しいと思った場合クラス代表として選べ。もしお前が納得しないのならば、その時は自分でクラス代表をするといい」

「わかりましたわ。ならば織斑先生、期限最終日にIS競技場の使用許可を頂けますか?」

「……どういうことだ?」

「無論、お二人のISの操縦技術を見るためです。それも実戦形式、決闘ですわ」

 再び、クラスにどよめきが走る。

「IS学園はISの学び舎でクラス代表とはクラスの生徒全員の代表者。その代表者がIS格闘にて弱いなどとは考えられませんわ」

「だが、元々代表候補生であるお前とは二人は経験が違うが?」

「もちろん勝たなければ認めないとは言いませんわ。ただ、お二人の所謂素質というものを見て決める必要もあるかと」

「なるほど、オルコットなりの考え方か。わかった、許可を取っておこう」

「ち、千冬姉、そもそも俺たちはクラス代表になりたいとは言ってないんだけど……」

 おそるおそる手を上げて発言する一夏。しかしその言葉を千冬は撥ね退ける。

「自他推薦は問わないと言ったはずだ。たしかに織斑と門矢は男だからという理由で推薦はされたが、しかし推薦されたことに変わりは無い。それと千冬姉ではなく織斑先生、だ」

 ばしん、と軽く出席簿で頭を叩かれる一夏。

「そんな……士、お前も何か言ってくれよ」

「別に、俺もそれで構わないが?」

「え?」

「珍しいという理由で決められるよりはマシだろう。それにどうしてもやりたくないならオルコットにそう言えばいい」

「そ、そりゃそうだけどさ……」

「納得したか織斑。そういうわけだ。この決め方に異議がある者はいるか?」

 最後に千冬がクラスの生徒たちに意見を求める、が反対意見を出す者は一人もいない。

「ならばこれから授業を始める」

 ISの基礎に関する授業がはじまった。

 

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