DECADE×IS/世界の破壊者は何を見る――?   作:ちーたら

6 / 7
 映像に無いライダーを描写するのは難しい(確信)


RIDE6:VSイカロス

 殆どのエネルギーを失ったミステリアス・レイディに身を包んで地面に伏していた楯無は、銀色のオーロラの奥から現れた人型――『イカロス』と呼ばれていた――を見た時、それが身に纏う気味の悪いうすら寒さに身震いした。

 深紅と漆黒の二色で彩られた五体。自分の知る唯一の仮面ライダー、ディケイドのものよりも巨大で物々しいベルト。背中の肩甲骨辺りからだろうか、生えている一対の翼は途中から折れており、それはまるで天界から追放された天使のようでさえある。

 イカロス。その名はギリシャ神話で出てくる蝋の翼で空を飛び、太陽に近すぎたために墜落死した少年の名……であったか。一対の折れた翼は墜落した後二度と大空へと羽ばたくことができなかった少年に対する暗示か、もしくはその名を自らに刻んだ皮肉か。少なくともその名に違和感を感じさせないという印象を楯無は抱いた。

「イカロスか。知らないライダーだな」

 先ほどまで戦っていた相手……ディケイド、門矢士はその薄気味悪い怪物染みた人型に対して物怖じする様子は無かった。

 いつのまにか変身を解除していた士――否、それが彼の意思と関係あるのかと言うのならばそれは関係の無いことかもしれない。それが自身の放った苦し紛れの一撃、熱き情熱(クリア・パッション)……本来ならば密閉空間で使うべき技であるが、が効力を示したのだとしたら彼女が士に一矢報いたことになるのだろうが――は、しかしその一撃によるダメージを見せず(単に内面に押し殺していて表情に出していないだけかもしれないが)、士はイカロスに対峙する。

「宇宙、と言ったな。ならばそのライダーはフォーゼに関係しているライダーか」

「フォーゼ? ああ、随分と憎たらしい名前だね」

 意外や意外、見た目からは想像のつかないほどに若い男……まだ十つ前後ほどの幼い少年のような声で喋るイカロス。その仮面の下でニヤリと笑っているのが声色から簡単に想像ができる。

「憎たらしい、だと?」

「ああ。仮面ライダーフォーゼ、そしてメテオ。この二人にオレたち(・・)は苦しめられた記憶がある(・・・・・)

「随分と引っ掛かる言い方をするんだな。まるでお前が何人もいるみたいだぞ」

「さあ、どうだかね」

 肩を竦めてとぼけてみせるイカロス。その折れた両翼が変質し、鋼鉄のような鈍い煌きを持って硬質化する。

「ほら、変身しなよ仮面ライダーディケイド。オレは君を斃すためにここにきたんだからさ」

 挑発気味に、そしてからかうようにイカロスは笑う。まるで自分が勝利するのが当たり前と言わんばかりに、確信して。

「……」

 その言葉に士は無言でディケイドライバーを装着した。ディケイドライバーのカード挿入部を開き、エンジン音と共にライドブッカーからライダーカードを取り出す。

 変身、と小さく呟いてカードを挿入すると、パーツを内側へと押しこんで挿入部を閉じる。

《KAMEN RIDE.DECADE》

 ディケイドライバーから人工音声が流れると同時、虚空に現れた九種類のエンブレムを伴った虚像が士と重なり、同時に宙に跳び出した七枚のプレートが全身に装備を施した士の顔にゲームカセットのように装填される。

 再び士はディケイドに変身した。

「そうそう、そうこなくっちゃね」

 イカロスはけらけら笑うように一歩踏み出した。それと同時に、その背中から伸びる刃のような鋭さを持った両翼の片方、右側をディケイドに振るう。

 叩きつける勢いで放たれたその攻撃、ディケイドは腰のライドブッカーをソードモードに変形させて叩き落とす。突進する物体を正面から止めるのではなく、別方向から力を加えて進行方向を逸らす要領と同じだ。

「あはっ♪」

 対し、イカロスは右翼の体勢を立て直すことなどせずに、叩き落とされた方向にディケイドの攻撃による衝撃を利用しながらくるりと体をひねらせて、左翼の刃を無造作に振るった。

 がぎん!! と、金属同士がぶつかるような音がして、ディケイドの体に衝撃が走る。よろめくように後退したのは他でも無い、今の一撃がディケイドへダメージを与えたのだ。

 その後退に、イカロスはさらに距離を詰める。両手の拳を握り、一撃二撃とディケイドの体に打ち込んだ。

 その衝撃を利用してディケイドは後ろに転がってイカロスから距離をとると、ライダーカードをディケイドライバーに挿入する。

《KAMEN RIDE.RYUKI》

 音声と共に響いたのは鏡を砕くような破壊音。ディケイドの黒とマゼンタを基調とした姿は、どこか拘束具のようでさえある重々しい西洋兜の奥から紅蓮の複眼を覗かせる左腕に龍の頭部を模した鋼鉄の籠手『ドラグバイザー』を装着した騎士を彷彿とさせる紅蓮の四肢を持つライダーへと変化する。

 名を、龍騎。とある世界にて、たった一つの権利を賭けて戦う『仮面ライダー』たちの一人である。

《ATTACK RIDE.STRIKE VENT》

 ディケイド龍騎はディケイドライバーに一枚のカードを挿入すると同時、その右手首から先に赤い金属光沢の東洋の龍の頭部を模した武器、ドラグクローが出現した。

「はぁ!」

 ディケイド龍騎は掛け声と同時、ドラグクローをパンチを打つ要領で前方に突き出す。その動きに呼応してドラグクローの口の部分から炎塊が打ち出された。

 その瞬間、イカロスの周囲に変化が訪れる。

 風だ。

 大気が移動を始め、イカロスの体に無数の烈風が吹き荒れるように纏われる。そしてドラグクローからの炎塊がイカロスに襲いかかる寸前、突如吹いた烈風が炎塊を引き裂いた。

「なるほど、風を操る……それがお前の力か」

「おっと正解。よくわかったねぇ。それじゃあ、ネタバレもしちゃったしそろそろ終わりにしようか」

 にやける声色で手で拍手なんかしながらディケイド龍騎を褒めるようにからかうイカロス。

 その直後に、ディケイド龍騎に突風が襲いかかった。

 前方からの衝撃波とさえ錯覚しそうな圧力に、ディケイド龍機は反射的に身を屈めて、そして屈めた瞬間にイカロス竜巻を纏った拳がディケイド龍騎のアーマー部分に炸裂する。

 後ろに倒れ込むディケイド龍騎。それに追い打ちをかけようとイカロスは地面を蹴る。

 空中に飛翔するイカロス。折れた両翼はいつの間にか折りたたまれており、それはつまり超人的な脚力でのみ空を舞った事を差す。そして、錐もみながらその体に無数の竜巻を接続し、スクリュー状に回転をしながら左足を前に出した。

「イカロス・ライダーキック!」

 体勢を崩したディケイド龍騎に向けた必殺の一撃。風を纏った狂風の猛威。

 それは完全に無防備なディケイド龍騎を沈めるための一撃として――

《ATTACK RIDE.ADVENT》

 ――直後、その攻撃に割り込む影がアリーナの巨大モニターから出現した。

 それは先ほどのドラグクローと瓜二つの頭部を持つ、紅蓮色の東洋龍だった。しかしながらその体は、生物とは思えないような金属に似た光沢を持っており、また空想的な物語の中に出てくる東洋龍同様に翼も無いのに空を自由に飛んでいた。

 名をドラグレッターという、鏡の向こう側の世界『ミラーワールド』の住民にして仮面ライダー龍騎の契約モンスターである。

「グァァァァァァ!!」

 ドラグレッターは一度吼えるとイカロスとディケイド龍騎の間に割って入り、しかしイカロスに立ち向かわずに、ディケイド龍騎に突進するかのように突っ込んだ。

 ドラグレッターによる突進の直後にイカロスの必殺技、イカロス・ライダーキックが先ほどまでディケイド龍騎がいた場所に巨大なクレーターを誕生させた。

「なに……っ!?」

 攻撃の直後、驚いたような声を上げて振り返るイカロス……だが、もう遅い。既にディケイド龍機は次の行動を完遂していた。

《FINAL ATTACK RIDE.RYU.RYU.RYU.RYUKI》

 振り返った時には既にディケイド龍騎は空中にいた。まるで先ほどのイカロスとの対比かのように空中で体を捩じって回転し、その周りをドラグレッターが喜ぶかのように渦のように飛んで。

「はぁぁ!!」

 それが頂点まで達した時、ドラグレッターの口から火炎の奔流が右足を突きだした龍騎を押し流した。

 ド――――ッゴゥン!!

 直後に巻き起こる爆煙。それを巻き起こした体がぼやけ、ディケイド龍騎からディケイドへと姿が変化する。

その破壊の一撃に、ディケイドとイカロスの攻防を見ているしかなかった楯無は目を見張った。

(これが……仮面ライダー同士の闘い?)

 はっきり言って、楯無の知るどの闘いよりも恐ろしい物だった。大気を自在に操るイカロスもそうであったが、無数の姿へと変化しあらゆる力を自在に操るディケイドもまた、楯無のIS操縦者という観点から見ればかなりの脅威だ。

(なら、私がここでどうにかしなきゃ)

 楯無は自分に残された力を振り絞るかのように足に力を入れる。生まれたての小鹿でもまだしっかり立てるのではないかと錯覚するほど足が震えているのは、仮面ライダーという存在に対する畏怖からだろうか。

「なんだ、まだやる気なのか?」

 その行動にディケイドは諭すかのように言う。

「悪いが、今のお前では俺に勝つことはできない。さっきは俺もISに対する戦い方はよくわかっていなかったが、お前のおかげで大体わかったからな」

「……だとしても、貴方がこの世界を『破壊』するなら、私はあなたを斃さなければならないのよ」

 蒼流旋を構えてそう言う楯無に、ディケイドはやれやれといった様子で首を横に振った。

「なら一つ教えてやる。かつてある奴が言った言葉だ。創造は破壊からしか生まれない、とな」

 それは、ディケイド……士が『九つの世界』の旅を始めるきっかけとなった言葉の一端。九つの世界に生まれ、そして融合を始めた九つの物語の消滅を止めるために旅立たせた、ある男の言葉。

「たしかに破壊とは止めるべき物と思うかもしれない。だが覚えておけ。俺が破壊するのはお前たちじゃない。この『ISの世界』の、闇である部分だ。それがおそらく、この『世界』での俺の役割だからな」

「……いったい、いったいなんなの、貴方は」

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えておけ」

 仮面ライダー、と楯無が小さく呟く。

 そしてその直後。

「ギィャオォォォオオオオォォォォオオォォォォオォォォ!!」

 爆煙の名残が吹き飛ばされ、この世の全てを恨むかのような、はたまた悲しむかのような叫び声を上げた。

 それは先ほどまで仮面ライダーイカロスを名乗っていた何かだった。

 しかしそれは仮面ライダーイカロスとは全く違った姿へと同時になり果てていた。

「それがお前の正体か。なんだ、怪人とまったく変わらないじゃないか」

「よくも、よくも……ディケイドォォォ!!」

 不気味ながらも仮面ライダーと大差なかったその姿は今や醜悪な怪物となり、目には見えない不可視のエネルギーがその体からは放たれている。

 とある世界のとある少女はそれをこう呼んでいる。

 獣イカロス。

 その眼は得物を狩る血に飢えた肉食獣。その爪は得物を求めて鈍く光る。一対であった翼は無数に増えてはいるものの、翼としての機能は無く折れた枯れ枝がかろうじて皮でつながっているのに等しい。

 腹の底から吼える獣イカロスに、あの飄々とした少年の面影はどこにも残っていない……否、もしかしたら『イカロス』と名乗った何者かの本性はこちらだったのかもしれない。しかしそれを確かめる方法は無く、そしてそれを確かめる必要もなければ確かめようとも思わない。

 だが、獣イカロスの持つ莫大なエネルギー――おそらくコズミック・エナジーと同系統のものだろう――は本物だ。例え血に飢えた野獣だとしても、ディケイドや楯無を屠り殺すには十分である。

 ……と、そんな時。

 二枚のカードが、ライドブッカーから飛び出した。

「……!」

 そのカードを空中で掴み取り、確認する。

「なるほどな……おい」

 ディケイドは一人納得をして、背後にいた楯無に声をかけ、近づく。

「な、なによ……」

 近づいてくるディケイドの姿に若干たじろぐ楯無。

「お前、もう闘う力は残ってないだろ。なら、ちょっと協力をしろ」

「きょ、協力って……お姉さんにいったいなにをしろと言うのよ」

 虚勢を張りながらも声が震えている楯無――まあ、あれだけの戦闘を見れば当然か――の背後に回り込んで、ディケイドは言う。

「なぁに、簡単なことだ。とりあえずじっとしてろ。ただ――」

 そう言って、ディケイドライバーのカード挿入部を開き、先ほどライドブッカーから飛び出したカードの一枚を挿入して閉じる。

《FINAL FORM RIDE.MYSTERIOUS LA.LA.LA.LADY》

「――ちょっとくすぐったいぞ!」

 ディケイドの指先が楯無の背中を突く。

 瞬間、楯無の体が無数の装甲に包まれた。それはまるで彼女のIS、ミステリアス・レイディをフルスキンタイプのISに改修したかのような姿で、彼女の顔を含む露出していた肌やISスーツなど、全てが装甲で包まれたことを指した。

 全身くまなく装甲に包まれたあと、それが変化する。しかしそれは人間の関節では不可能な変形でもある。

「え、えぇぇぇぇ!?」

 戸惑いの声を上げながら変化したそれはディケイドの身の丈の倍以上ある巨大な槍だった。

「ちょ、ちょっとこれどうことなのよ!?」

 慌てて自分を巨大な槍に変形させた張本人、ディケイドに詰め寄るも、ディケイドはこちらを一瞥だけして、無言で(たてなし)を手にとった。

 そして空いている手でディケイドライバーのカード挿入部を再度開き、二枚のカードのもう一枚を挿入する。

《FINAL ATTACK RIDE.MYSTERIOUS LA.LA.LA.LADY》

 巨大な槍、ミステリアス・レイディソウリュウセンに水渦が纏われ、それを獣イカロスへと向ける。

「ディィケイドォォォ!!」

 獣イカロスが地面を蹴り、突進するかのように襲いかかってくる。

「はぁああああ!!」

 ディケイドはミステリス・レイディソウリュウセンで獣イカロスへと突貫し、第三アリーナで今までの比にならない巨大な爆発が起こった。

 




ライダー情報:仮面ライダー龍騎
【出典】仮面ライダー龍騎
【変身者】城戸真司(本編)/辰巳シンジ(DCD)
 仮面ライダー龍騎の主役ライダー。契約したミラーモンスターは無双龍ドラグレッター。
 仮面ライダー龍騎本編に登場するライダーの中では攻守バランスのとれたアドベントカードを持つが反面、特殊カードを一切持たないバランス重視のライダー。
 ライダー能力の特徴はこれといってなく、龍騎に登場する他のライダー同様に鏡の向こう側の世界『ミラーワールド』に出入りすることができる。ディケイドをはじめとしたオールライダー物ではこの能力を最大限に生かして他のライダーと差別化されることが多い。
 龍騎本編では変身者の城戸真司の性格からライダーバトルを止めるために終始奔走しており、そのため一度も他のライダーを撃破したことがない(劇場版にてリュウガを撃破したが、それはあくまでミラーワールドのもう一人真司である)まま最終回前にて脱落する。
 また、必殺技のドラゴンライダーキックは劇中での敵の撃破率が100%である。
 ちなみにディケイド放送当時に海外でリメイク作品の『ドラゴンナイト』が撮影されたためスーツが綺麗だった、門矢士役の井上正大氏のお気に入りのライダーだった、ただ単にミラーワールドの設定が物語的に便利だった大人の事情など諸説あるが、ディケイドが劇中でカメンライドした回数の最も多いライダーでもある。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。