時よりノンフィクション。
「ごめん。僕、他に好きな子が出来た。だから、別れて欲しい。」
「えっ……?」
ここで終わった私たちの関係は、まるで漫画の世界の様で、
そんなこと、絶対ありえないと思っていたことが起こってしまった。
今でもふと思い出してしまう。
だって、君とは色んな思い出があったから。
そこで、私自身が終わった。
毎日君が全てだった。
新しい環境で、新しく、何かがはじまり出す今、みんなは進んで行く最中、私だけそこで蹲っている。世界が暗闇に包まれ、悲しみしか感じられない。笑顔を繕うのも苦しかった。
「雨だ…」
何故か1人、誰もいない道端を歩いていた。
霧雨がふり、眼鏡があっという間に濡れて、冷たい頬へと滴り落ちる。
「どうして、ここに居るんだろう。」
よく分からず、そのまま歩き続けた。
と、思った瞬間後ろから、足音が聞こえて、聞き馴染んだ、大好きだった声が響いた。
ような気がした。
どうやら私は、いつの間にか、というより初めから君に洗脳されていたらしくて。
これほどまでに、一人の人を愛したことがなかったが為に、ここまで堕落してしまっている。
今日は帰りたくなかった。
どうにも感傷的すぎて、自分が、君が、全てが、嫌いで鬱陶しかったから。
一人、電車へと乗り込む。
時刻は午後1時なはずなのに、雨雲のせいで暗かった。
電車をでて、少し都会な此処を歩き出す。
何故か、涙は出なかった。
落ち込んでいた。悲しかった。衝撃だった。ショックだった。
自分のどこがダメだったかと、何度も己に問いた。
自己嫌悪に苛まれながら、自分を嫌いになりながら、涙を流すことは無かった。
不思議だった。
そういえば最近、よく話す人が出来た。
その人と話すと、今まであった辛いことが忘れられた。
それぐらい優しい人で、時には意地悪で、男らしくて。
そんな人に出会ったことが無かった。
いや。感傷的な時期で、自分をフった人がそういう人じゃなかったから錯覚しているのかもしれないけれど、とてもかっこよかった。
霧雨も、とうとう服に染み込んできて濡れ始めた。
水滴がつきまくった眼鏡は、畳んでポケットに入れた。
視界はボヤけている。
でも、今の私にはそれぐらいが丁度良かった。
通りすがりの人々に、この哀れな姿を見られても、その人々の顔を伺えずに、気にせず彷徨えるから。
どうにも、あの優しい彼に会いたかった。
フったあの人が、頭から離れなくて、忘れさせて欲しかった。
優しさに触れたかった。
その時、誰かが私の名前を呼んだ。
確かに、ハッキリと。
「蘭!!!」
「ッッ!?」
「何してんだよ。こんな所で。」
「いや、そんな気分だったんだ。ごめんね」
「謝るな。めちゃくちゃ濡れてるじゃないかッッ」
そこにいたのは、彼だった。
こういう時に、いつもそばにいてくれる。
優しいな。
こんな他愛ない会話をしているだけで、とても嬉しかった。
優しさに触れた今、一瞬、暗い世界に一筋の光がさした。
自然に笑顔が零れ、冷たかった頬が赤らんだ。
きっと、私はこの人を好きになる。
と、思った瞬間、世界は開けた。
読んで頂き、ありがとございました。