「ケン、ポテチ取ってくれないかい?」
「はいよ」
カルデア内のマイルームにて、寝転がって菓子を貪る英霊が一人。
しがない雑用係の俺の部屋に入り浸るエルキドゥは、何度言っても菓子食った手でゲームのコントローラーを握るのを止めない。
「エルキドゥ、油で汚れるからポテチ食った手でコントローラー触るなって何度も言ってるだろ」
「何を言うんだ、使った後はきちんと拭いているだろう?」
「コントローラーじゃなくて手を拭け、って言ってんの」
「僕もやろうとしたさ、ケン。でも人間の腕は二本しかないんだ。ゲームをする、お菓子を食べる、手を拭く。三つの事を同時にはできないんだよ。僕は人間は好きだけど、この点は不便に感じるね」
「自分のズボラさを人間のカタチのせいにしないでもらえますかね…」
ぐうたら兵器は上機嫌に足をばたつかせ、ポテチを口に運びながらゲームに夢中だ。こっちは仕事があるのでいつまでも構っていられない。
「エルキドゥ、ゲームしてるのはいいが部屋を散らかすなよ?」
「仕事かい?留守は任せておきたまえ」
エルキドゥを部屋に残して仕事に向かう。俺はマスター適正こそあるものの、レイシフト適正が立香ちゃんに比べて低いため、特異点攻略は専ら立香ちゃんに任せっきりだ。
だがその代わり、カルデアゲートによる種火と素材集め、修復された特異点に飛んでの素材回収は俺の仕事となっている。年下の立香ちゃんに人理修復なんて重荷を背負わせるのは心苦しいが、せめて彼女の助けになれればと思う。
――――30分後――――
「ただいま」
「おかえり。いつものことながら早いね」
「孔明先生様々だよ」
宝具ぶっぱを延々繰り返し、レイシフトに必要なエネルギーであるAPが尽きたので戻ってきた。果実を食べて回復することもできるが、普段は自然回復するのを待っている。
勿論、素材回収以外にも仕事は山ほどある。持ってきた書類の束を机に置き、ペンを片手に処理にかかる。
「ケン、2Pやってくれないかい?」
「人が仕事してるのに遊びに誘わないでくれる?」
「強大な敵が現れたんだ。これは僕達の友情を示す絶好の機会だと思ってね」
優しい微笑みでコントローラーを手渡してくるゲーマー兵器。
「…これが終わったら手伝ってやるから、大人しく待ってなさい。自分からやるって言っておいて、終わりませんでしたじゃ済まないからな」
「分かったよ。それじゃあ僕はここで君の横顔を眺めているとしようかな」
ベッドに腰かけたエルキドゥはニコニコしながら、言葉通り終わるまでずっと俺を眺めていた。時折視線を向けると『ん?』と首を傾げて覗きこんでくるのはちょっと可愛いと思った。
――――――――
夜になってようやく終わり、エルキドゥとの協力プレイでゲームを開始する。前面に出て派手な撃ち合いをするエルキドゥに、隙を潰すように闇討ちを仕掛ける俺。ゲームくらいは派手な活躍をしたいものだが、そう上手くはいかないものだ。
「やっぱりケンがいると戦いやすいな。思うがままに動けるよ」
「こっちは付いていくのに精一杯だけどな…」
「ふふ、敵は僕達のコンビネーションで風前の灯火だ!イシュタルだ!さあ行こうケン!あの腹立たしい駄女神にトドメを刺してやろう!」
「俺たちはいったい何と戦っているんだ…」
興奮したエルキドゥは金星の女神を馬鹿にしつつ、敵に必殺技をお見舞いした。画面に表示される”WIN”の称号。エルキドゥはやったーと万歳してこちらに体を預けてきた。
「僕達の勝ちだ。僕とケンは最高のパートナーであることが証明されたね」
「ゲーム一つで大袈裟だよ。それより飯にしよう。続きは飯食ってからな」
「食堂に行くのかい?」
「何か貰って戻ってくるよ。何が良い?」
「んー…ケンに任せる」
サーヴァントは食事を必要としない。兵器のエルキドゥなら尚更……と思っていた時期もあったが、コイツは俺が食べている物を度々ねだるので、そんな考えは捨てた。
二杯のうどんを持って帰ると、エルキドゥはベッドにうつ伏せに寝転がって漫画を読んでいた。子供みたいに足をばたつかせているせいで、着ている一枚の布が捲れあがって際どい場所まで肌が見えそうになっていた。
「エルキドゥ…見えそうになってるぞ」
「ふふっ、当ててるのさ」
「使い方は合ってるが、意味が違うぞ」
「そうなのかい?」
ヒロインみたいなことを言い出すエルキドゥ。サーヴァントは聖杯から現代の知識を学んでいるらしいが、いらん事まで覚えてくるのは止めてほしい。きつねうどんをエルキドゥが取り、俺はたぬきうどんをすする。エミヤという英霊が仲間になってから、食堂の料理の質が上がっているな。大きなお揚げにかじりついているエルキドゥもご満悦のようだ。
「ケン、次はパーティーゲームをやろう。CPUの名前をイシュタルにして尻の毛一本残さずむしり取ってやろうじゃないか」
「陰湿な遊び方は止めなさい」
「ちぇー」
その後はひたすらゲームしていたが、流石に眠気がしてきたので、ゲームを止めてベッドに潜り込んだ。
「ん?ケン、もう寝るのかい?」
「おう…悪いけど電源切っておいてくれ」
「うん、おやすみ」
「おやすみ…」
部屋が暗くなり、睡魔に身を委ねた俺は眠りに落ちていった…。
「………まいったな、急に僕も眠くなってしまった。しかし、今から部屋に戻ろうとしても廊下で眠りに落ちてしまうかもしれない。それはいけない。
だから、ケンのベッドで一緒に寝るのは何もおかしい事じゃないよね、うん。という訳でお邪魔するよ。
…………。
ケンの匂いを感じる。ケンの温もりを感じる。
好きだよケン。一緒にいると、兵器でなく人としている事が出来る。そう思わせてくれる、君が好きだ。
この先に何があっても、僕が君を守るよ。だからずっと一緒だよ」
キングゥは救済するべき?
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助けてあげたい
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見殺しにする