雑用係と神造兵器   作:サンダーボルト

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ネットが使えなくてスマホで書いてました。

細かい所が違ってるかもしれませんが、お気になさらず。


君も変わったね、分かるとも!

今日もいい天気だ、飯が美味い。

 

蜆の味噌汁に口を付け、間髪入れずに白米をかき込む。俺のトレーにあるのは、納豆、生卵、味付け海苔に明太子。ご飯のお供でどれだけおかわりできるかチャレンジしている。

 

 

「ほう、お前にもそのような茶目っ気があったとはな」

 

 

お茶のおかわりを注ぎに来た、黒いビキニにメイド服を着たアルトリア・オルタ。通称メイドオルタは面白いものを見た、とばかりに口角を上げた。

 

 

「別に良いじゃないですか。誰に迷惑かける訳でもないですし」

 

「お前にしては随分と棘がある言い方だな。大方、いつも一緒にいる奴がいないからだろうが」

 

「…………」

 

 

メイドオルタに指摘され、反論する事も無くお茶を飲む。この場には俺一人しかいない。XXは昨日セイバー退治をやらせたお蔭で熱が入り、早朝から見回りに飛び出していった。エルキドゥはといえば、バルコニーで日光を浴びていたのだが、

 

 

『あっ、あそこにギルがいる!ちょっと行ってくるね!』

 

 

そう言って飛んで行った。部屋のバルコニーがカタパルトみたいになってるんだが。

 

メイドオルタに言われた事は、まあ間違ってはいない。昨夜あんなことがあったというのに、当人ほっぽり出してアレだからな。切り替えが早い奴だ。いくら相手が王様だとしても、少しは嫉妬する。

 

 

「ふむ。となれば、お前はこれから時間がある、という訳だな」

 

「……何を企んでるんです?」

 

 

向かいの席に座るメイドオルタ。この人も厄介ごとを持ち込む気なんだろうか。

 

 

「そう睨むな。どこぞの愉快犯のような事は考えていない」

 

「どうだか…」

 

「単刀直入に言うぞ。私と食べ歩きしろ」

 

 

何故かドヤ顔でスパッと要件を言ってくるメイドオルタ。……食べ歩き?

 

 

「あの、それ、俺いります?」

 

「厳密に言えばお前でなくとも構わないのだがな。普段であれば堂々と店を回るんだが、生憎今の私はメイドさんだ。となれば、ご主人様が必要になる。メイドとご主人はセットだ。切っては切れない関係にある。故に私は一人で歩き回る事ができない」

 

「な、成程…」

 

 

正直これっぽっちも理解できないが、ビキニメイドにそもそも常識などないだろう。それにあの目力で堂々と言われれば、俺でなくとも相槌を打つに決まっている。

 

 

「しかし候補を探そうにも、ここにいるのは既に日程を組んでいる者ばかり。私の予定に付き合ってくれそうな奴はいないだろう」

 

 

それはそうだ。フェスにしろ観光にしろ、事前に現地で何をするかは決めているだろう。

 

 

「と、いう訳だ。どうせやることがないのなら私に付き合え。お前にも少なからず得はある」

 

「得って…何です?」

 

「現地の美味い店の情報が手に入る。碌に準備しないままここに来たんだろう?私は事前に評判の良い店の情報を集めてきたからな。数は少ないが日本食を扱っている店もある。全部が当たりかは分からんが、良い店は見つかるだろう」

 

 

一理ある。現地のパンフレットはあらかた読んだが、それだけで美味い店かは判断し辛い。本場のジャンクフードが食べられるなら、彼女の情報の精度も大きく上がるはずだ。

 

 

「一緒に行くのは構いませんが、二人分以上の金は出しませんよ。お代わり分は貴女の自腹ですからね」

 

チッ。ああ分かっている。当然だとも。私は三歩歩けば腹を鳴らすあの騎士王とは違う」

 

「舌打ち聞こえたんですが」

 

「では決まりだな。私はまだ給仕の仕事がある。準備を済ませてここで待っていろ」

 

 

メイドオルタは席を立った。やれやれ、午前中から食べ歩きとは。ご飯のお代わりしなければ良かったな。ま、食べるのは騎士王様だし、俺はコーヒーでも頼んでお茶を濁すか。コーヒーだけど。

 

こうしてルルハワの美味い店を探しに出かけた俺とメイドオルタ。見慣れぬ土地だというのに、迷いなく進んでいく豪胆さには少し憧れる。

 

 

「あの、メイドさん」

 

「なんだご主人様」

 

「…着替えないんですか?」

 

 

あの格好で、という言葉が付きますが。なんでビキニメイド姿のままで歩いてるんですかね…。

 

 

「何を言うかと思えば。メイドならばメイド服を着ているのが当然の事。それに私はこの服がお気に入りだ。だから着ている。脱ぐ理由がない」

 

「そうですか…」

 

 

そういえばこの人、しょっちゅう服を着替えていたな。どうにもお堅い印象を持っていたが、女の子らしくファッションに興味もあったようだ。センスには触れない。触れても何も良い事は無いからな。

 

 

「着いたぞご主人様。ここはチーズバーガーが人気なんだ」

 

「そうなんですか」

 

 

最初の店でいきなりチーズバーガー10個を注文したメイドオルタ。俺はコーヒーを頼んで、メイドオルタの食事が終わるのを待つ。

 

 

「(もっきゅもっきゅもっきゅもっきゅ)……うむ、良い肉を使っているな。とろとろのチーズとケチャップが絡み合い、肉の味を何倍にも引き上げている。この値段で量も多い。……だというのにご主人様、何故お前はコーヒーしか頼んでいないんだ」

 

「チーズバーガーは初日に食べたので…」

 

「馬鹿者。店によって味は違うものだろうが。そんな事で愛しいアイツを喜ばせられると思っているのか」

 

「大抵の物は喜んで食べるから大丈夫ですよ」

 

「慢心はあの金ぴかの専売特許だ愚か者。いいから同じものを頼め」

 

 

有無を言わさずチーズバーガーを注文された。自分の分から分けてはくれないんですね。分かってました。

 

この後もメイドオルタは、見ているだけで満腹になりそうな食事を色んな店で行っていた。

 

 

「大きな熱々のハンバーグステーキだ。ここではパンではなくライスをお供にして食べるぞ、ご主人様」

 

「見ろ、山盛りのスパゲッティだぞ。具沢山で色んな味が楽しめそうだな、ご主人様」

 

「ここはSUSI屋だ。寿司じゃない、SUSIだ。間違えるなよ」

 

 

体のどこにあの量が入るのだろうか…。

 

店を回ること十数軒、ようやく食べ歩きも落ち着いてゆったりしている。メイドオルタは向かいでパフェを食べている。まだ食うのか…。

 

………思い返してみれば、エルキドゥ以外の英霊と二人きりで行動する事なんて無かったな。孔明先生にも言われたが、ここの空気に当てられて自分らしくない行動をしている。

 

 

「どうしたご主人様。難しい顔をして」

 

「いや…なんと言いますか、ルルハワに来てから普段では考えられないような行動をしてばっかりだな、と思いまして」

 

「自分の変化に戸惑っているのか?」

 

「そうですね…」

 

 

俺がそう答えると、メイドオルタはパフェを口に運ぶのを止めてこちらを見つめてきた。

 

ジッと見つめ返すと、メイドオルタはニヒルに笑みを浮かべた。

 

 

「そう深刻になるな。お前の変化は寧ろ好ましいものだ」

 

「……そうですか?」

 

「そうだ。戦場には目に見えない流れというものがあってな、それを味方に付けられるか否かで勝敗が決まる。今のお前はその流れに上手く乗れている状態だな」

 

 

メイドオルタの話を聞いて、心の中のモヤモヤが無くなった。俺はエルキドゥ以外の誰かにも、普段と違う自分を肯定して欲しかったのかもしれない。

 

 

「ありがとうございます、メイドさん」

 

「どういたしましてだ、ご主人様」

 

 

メイドオルタと別れホテルに戻ると、ベッドの上でエルキドゥが体育座りをしていた。何やってんだコイツは?

 

 

「どうしたんだ?王様の所に行ってたんじゃなかったのか?」

 

 

隣に腰掛けて聞いてみる。

 

 

「………ギルが僕の事忘れてた」

 

「……はあ?」

 

「誰かに殴られて記憶喪失になってた。喋り方とか変わってなかったのに、親友の僕の事忘れてるなんて、ありえないよ…」

 

「そうか…」

 

 

割と本気で凹んでいるエルキドゥ。頭を撫ででやると、自分の膝に顔を深く埋めた。

 

 

「そう気を落とすなよ。そのうち思い出してくれるさ」

 

「どうだろうね…。ムカついたから10回殴ってきたよ」

 

「結構殴ったな。ショックで記憶戻ってるんじゃないか?」

 

「さあね…」

 

 

反応が薄い。せっかくのバカンス、こんな気分にさせたままにしておく訳にはいかないな。

 

 

「エルキドゥ、何かやりたい事ないか?普段やらないような事でも、今ならやってやるぞ」

 

「……ほんと?」

 

「ああ」

 

 

顔を上げたエルキドゥは、期待に目を輝かせていた。

 

……機嫌が治ったのはいいが、何をやらされるのか…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エルキドゥ〜!」

 

「あははっ、こっちだよ〜♪」

 

 

美しい海の浅瀬を走る2人。海からの風で髪を踊らせながら、楽しそうに逃げるエルキドゥと、それを追いかけるケン。

 

 

「僕を捕まえてごら〜ん♪」

 

「待て〜、逃がさないぞ〜!」

 

 

キラキラ光る水飛沫が2人の逃避行の軌跡を描く。わざと女の子らしく走っているエルキドゥに、次第にケンが追いついていく。

 

 

「それっ、捕まえた!」

 

「きゃあ♪」

 

 

嬉しそうに声を出すエルキドゥを抱きしめるケン。揺れるようにイチャイチャした2人は、やがて互いに顔を合わせた。

 

 

「ケン……僕の事、ずっと離さないでね」

 

「ああ、勿論だ」

 

 

唇が触れ合いそうな距離で誓いを立てる。見つめ合う2人は、やがて…

 

 

「エルキドゥ…」

 

「うん…」

 

「死ぬほど恥ずかしいんだが!?」

 

 

水面に崩れ落ちたケン。夕暮れの誰もいない海岸ならアリかもしれないが、まだ日の高い時間で人で溢れる海岸では、2人の行動は人目を引く。

 

 

「まあ、とっても楽しそう!私達もやりましょう、ジャンヌ!」

 

「え、ええ…?あれは、女の子同士でやる事じゃないと思うけど…」

 

 

「おや、あれは防人さん。健全にバカンスを楽しんでいるようですね。円卓の皆さんも、あのように平穏に過ごしていれば良いのですが…」

 

 

「ははははははははははは!!!煮詰まって気分転換に外に出てみれば、目の前にあんなネタが転がってくるとはな!」

 

「いやあ、若さとは素晴らしい!我々は今まさに、新たな黒歴史の誕生に居合わせたといった所でしょうなぁ!!」

 

 

「もう、最後はちゅーで締め括るって言ったじゃないか」

 

「真昼間からやれというのか…!?」

 

「……何でもやるって言った癖に」

 

 

そこまでは言ってない。そんなツッコミを入れようとしたが、不貞腐れて口を尖らせたエルキドゥを見て思いとどまる。

 

意を決したケンは、エルキドゥの顔に手を添えて短くキスをする。

 

機嫌が天元突破で上昇したエルキドゥは、ケンに抱きついて海へ押し倒した。

 

周囲から上がる歓声。きゃーきゃーノブノブ御禁制と騒がれるど真ん中でケンは思う。

 

––––流れに乗ったというより、激流に流されているんじゃないか?

 

この光景をビキニメイドがハンバーガーを片手に満足げに眺めている事など、彼は知る由もない。




皆様にご報告があります。

ようやくエルキドゥ引けましたぁ!!

キングゥは救済するべき?

  • 助けてあげたい
  • 見殺しにする

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