雑用係と神造兵器   作:サンダーボルト

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キングゥは救われてほしいと思うけど、救いの無い展開もちょっとだけ見たいというのはキングゥ好きならあると思います。

嫌いなわけじゃないのよ?勘違いしないでよね!


事件だね、分かるとも!

強い日差しが照りつける中、俺とエルキドゥはホノルル空港に訪れていた。

 

といっても、特に目的があるわけでもない。ただフラッと歩いていて、お土産でも見ていくか、といったノリで寄っただけだ。

 

そこそこの人混みでごった返す中、何やら不穏な空気を感じ取った。目を向けると、ある一か所に人が集まってざわめいている。

 

 

「おい、これヤバくないか?」「救急車呼んだほうがいいんじゃ…」「い、生きてるのか?」「この日差しにやられたか?」「美少女prpr」

 

 

只事ではない雰囲気を感じ、人混みを押し除けて渦中の場所へと進む。

 

 

「すいません、何かあったんですか?」

 

「なんか、人が倒れてるらしくて…」

 

「えっ!?」

 

 

エルキドゥに引っ張ってもらい、空から人が倒れている現場へ降り立つ。

 

倒れていたのは若い女性。外傷は見当たらないが、頭の方に血溜まりができている。恐らくは吐血したのだろう。

 

うつ伏せに倒れている彼女は羽織を着ており、背中には誠の一文字が刻まれている。

 

…………。

 

 

「あ、これ大丈夫です。いつもの事なので気にしないで下さい。お騒がせしました」

 

「なんだ、いつもの事なのか」「あーびっくりした」「心配させんなよな〜」「美少女prpr」

 

 

周りを囲っていた人達が離れていく。大事にならなくてよかった。

 

 

「……じゃ、俺達も行くか」

 

「うん」

 

 

そう言って一歩足を踏み出したが、次の一歩がとてつもなく重い。足元を見れば、血塗れの両手が俺の足をガッチリ掴んでいた。

 

 

「待ってください。おかしいですよね?知人が倒れているのにスルーは酷いと思います!大体いつもの事だから大丈夫って何ですか!?いつも大丈夫じゃないんですよ私はぁ!!」

 

「自分の体質を理解してるなら、1人で出歩かないで下さいよ。ここはカルデアじゃないんですよ?いくら英霊だからって油断しすぎです」

 

「……あの、その、1人でいるのは止むに止まれぬ事情があるからでして…」

 

「………じゃあ俺達はこれで」

 

「待ってぇ!見捨てないでぇ!沖田さん本当に困ってるんです!!お願いですから助けてください!!」

 

 

また厄介事の匂いがしたので早々に立ち去ろうとしたのだが、あまりにも必死な様子に戸惑ってしまう。

 

 

「ケン、混み合った事情がありそうだし、そこのカフェでパフェを食べるついでに話を聞いてあげようよ」

 

「お前ただ食いたいだけだろうが…」

 

 

話を聞く気のある奴の提案じゃないんだが…。

 

ともあれ、夏の日差しの中で立ち話も辛いので、俺達はカフェの中で沖田さんの話を聞くことにした。

 

アイスコーヒーをちびちびすする沖田さんは、申し訳なさそうな視線を俺達に送ってくる。

 

 

「すいません…コーヒーご馳走になっちゃって…」

 

「それくらいいいですよ。それよりも落ち着いたなら話を聞かせてもらいたいんですがね…」

 

「甘くて美味しいね、ここのパフェ!」

 

「エルキドゥ、空気読んで?」

 

 

どこまでもマイペースなエルキドゥに苦笑した後、沖田さんは話し始めた。

 

 

「ええと、実は今回サークル"新撰組"として参加していたんですよ、私達」

 

「へえ、私……達?」

 

「はい。私と土方さんの2人で来ました。……来たんですけど」

 

 

まさか、異国の地で迷子にでもなったんだろうか.…?

 

 

「土方さん、私を置き去りにして女の人口説きに行ったんですよ!それも何人も!お陰で沖田さん、始めはぼっちで観光ですよ!」

 

 

予定とか決めてなかったのかな…。まあ、土方さんの女好きは今に始まった事ではないけど。

 

 

「で、ようやく帰ってきたと思ったら、ここには沢庵が無いのかって不機嫌ですし!」

 

「持ってきてなかったんですか?あの人と行動するなら、沢庵は必須アイテムですよ?」

 

「当然、持ってきてましたよ!でも、あっという間に消費しちゃったんです!それで沢庵なんて売ってないって答えたら、怒って帰っちゃったんです!!」

 

「ええ…」

 

 

何という沢庵好きか。気軽に行って帰れる場所じゃないのに…。

 

 

「え、まさかお金とか全部持っていったんじゃ…?」

 

「あ、いえ。私の荷物とかお金は置いていってくれてました」

 

「じゃあ、どうして無一文だったんです?」

 

「……あれは、あっという間の出来事でした。

ホワンホワンホワンソウジ〜…………」

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

 

 

「まったく、土方さんはまったく!私1人だけ置いていくなんて信じられません!!」

 

 

空港の近くを怒りながら歩いている総司。そんな彼女をつけ狙う影が一つ。

 

 

「コケーッコッコッコッ!!」

 

「……鶏?ああ、野生化したのがいるんでしたっけ…。なんにせよ、今の沖田さんに襲い掛かろうとは命知らずですね…!」

 

 

怒りを鶏にぶつけるため、刀に手をかける総司だったが…。

 

 

「コフッ!?」

 

 

運の悪い事に病弱が発動してしまい、吐血してしまう。

 

 

「こ、こんな時に……あうっ!?」

 

 

隙を見せた総司に襲いかかる鶏。更に…。

 

 

「「「「「クックルー!!」」」」」

 

「ええええええ!?何でこんな沢山!?あっ?!いたっ!いたたっ!!」

 

 

総司は鶏の大群に囲まれ、袋叩きにされてしまった。

 

 

「痛い痛い!!だ、誰か助けて………ほぎゃあああああ!!!!!!??」

 

 

鶏に纏わりつかれた総司に、何者かの宝具が直撃した。

 

 

「あーあ…何で女神の私が周回なんてしなきゃならないのかしら。折角の水着もお預けだし、嫌になっちゃうわ」

 

「愚痴を言うでないわ。儂だって早く終わらせて泳ぎに行きたいんじゃ。防人に休暇を用意した手前、アイツを呼ぶわけにはいかんからのう」

 

 

ギル札を回収するイシュタルに織田信長。総司を襲ったのは、周回中のイシュタルの全体宝具だったのだ。

 

 

「.……あら、この鶏は景気良いわね。見なさいよ、お札がこーんなに手に入ったわよ!」

 

「おお、こんな事もあるもんなんじゃな!.……んん?」

 

 

丸焦げの黒い物体に見覚えがある気がして、目を凝らす信長。

 

 

「……のう、その真っ黒焦げの鶏、見覚えあるんじゃが…」

 

「え?」

 

 

そう言われてイシュタルもジッと観察する。やがて正体に思い当たったのか、2人は冷や汗を流し始めた。

 

 

「……や、やぁーね信長ったら、これは他のよりほんのちょっと大きいだけの鶏よ!」

 

「そ、そうじゃな!まさかどこかの侍も一緒に吹き飛ばしたとか、そんな事あるはず無いよネ!うっかりうっかり、う…うははははー!!」

 

「そうよそうよ、熱さのせいで目の錯覚が起きたんだわ!あ、あはははははは!!」

 

 

大袈裟に笑いながら、早足でその場から離れていく2人。ちなみに総司は気を失っていた為、誰に襲われたのか知らなかった。

 

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「……と、いう訳です…」

 

「「…………」」

 

 

要約すると、旅行中に置いてけぼりを食らい、鶏に襲われた上カツアゲに遭ったという事らしい。

 

不運過ぎる…。

 

流石の沖田さんも、このトラブル三段突きに意気消沈してしまっている。

 

どうするべきか、隣にいるエルキドゥに目をやると、ここは任せてと言わんばかりにウインクを返してきた。

 

 

「それは残念だったね。でも僕達には一切関係ないから、ここで失礼させてもらうよ」

 

「!!……………ふぇ……」

 

「追い討ちかけるなよ…」

 

 

エルキドゥの頭をはたく。沖田さん泣きそうだぞ…。

 

 

「ごめんごめん。放り出したりしないから安心してほしいな。僕達はスイートルームに泊まってるから、よかったら来るかい?」

 

「スイート!!行きます!行かせて下さいお願いします何でもしますから!!」

 

「テンプレ反応ありがとう。……しかし大丈夫かな。もう1人仲間に入れてる人がいるんだけど」

 

「場所を借りている身になりますし、沖田さん大人しくしてますよ〜?」

 

「いやそうじゃなくてですね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見損ないましたよケン君!!私というものがありながら、野良のセイバーを拾ってくるなんて!元いた場所に返してきて下さい!」

 

「日本まで行かなきゃならなくなるんですけど…」

 

 

やはりこうなったか。

 

興奮しているXXから沖田さんを庇うようにエルキドゥが立ち塞がっている。事前に沖田さんを守れと指示していて良かった。

 

 

「また新しい女を連れ込むとはな。お前は意外とプレイボーイだったんだな」

 

「その言い方やめて下さい。というか何故いるんですか、メイドさん」

 

「フ、優秀なメイドはどこからも欲しがられるのでな。特別にお前達の部屋の担当にしてもらったのだ。ベッドメイクが必要ならいつでも呼べ」

 

「どうしてベッドメイク限定なんですか…」

 

 

いつの間にか部屋にいたメイドオルタが、自慢げに言う。そんなやりとりをしている間に、XXの抑えが利かなくなってきた。

 

セイバー殺すべし、と襲い掛かろうとしたXXの両手をエルキドゥが掴んで止める。

 

 

「まあまあ、落ち着いて?」

 

「いかにドゥさんといえども、こればかりは見逃せませんよ!離して下さい!」

 

「まあまあ、落ち着いて?」

 

「庇いだてするならあなた方も斬りますよ!せっかく仲良くなったのだから、私もそんな事したくありません!さあ、速やかにそこのセイバーの身柄を引き渡して下さい!」

 

「まあまあ、落ち着いて?(ミシミシミシミシ)」

 

「……あ、あのすいません。話し合いの場を設けますから、力をちょびっと緩めて頂けませんか…?このままだと私の両手がポッキリ逝って、T-REXの如くプラプラしてしまう事に…」

 

「まあまあ、落ち着いて?(メキメキメキメキ)」

 

「みぎゃあああ折れちゃう折れちゃいますぅぅぅぅぁ!!!?すいませんごめんなさい申し訳ありません!!!自分も居候の分際で偉そうな事言ってすいませんでしたぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「あっ(ボキッ)」

 

「ぎゃあぁぁぁぁ折れたぁぁぁぁぁぁ!!!??」

 

 

勢い余ってXXの両手をエルキドゥがへし折ってしまった…。アイツもアイツでストレスが溜まってたのかなぁ…?

 

 

「うぇぇぇぇぇケンくぅぅぅぅん……!!ドゥさんに骨折させられましたぁぁぁぁ!!」

 

「案外余裕ありますね貴女…」

 

「余裕じゃありません!!痛いですよぉ!!」

 

「はいはい、今治しますから」

 

 

令呪を使ってXXの怪我を治す。本当、彼女がサーヴァントで良かった。

 

 

「これに懲りたら大人しくしていて下さいね?」

 

「うう…了解しました…」

 

「これで安全は確保できましたよ、沖田さん」

 

「はいっ!!沖田さん良い子にしてます!!ですから穏便に過ごしましょう!!!!」

 

 

何故かベッドの上で正座している沖田さん。

 

 

「もっとくつろいでくれて良いんですよ」

 

「あ、そうですか。じゃあ…」

 

 

ベッドにぐだ~っと寝転がる沖田さん。リラックスしてくれているようだが。やはりどこかぎこちない。まあ、間借りしてるからしょうがない事なのかもしれないが。

 

 

「防人、昨日の店のハンバーガーが食べたい。買ってきてくれ」

 

「何でアンタがくつろいでんだメイドさん!?」

 

「ケン君ケン君!お姉さんはホットドッグを所望します!」

 

「アンタ達……」

 

 

メイドオルタとXXまでもが、ベッドにもたれかかって食べ物を要求してきた。沖田さんの緊張をほぐす為…じゃないんだろうな。

 

 

「沖田さんは何か食べたい物ある?」

 

「お任せしまぁ〜す♪」

 

「任されましたっと…エルキドゥ、悪いけど付いてきてくれ。この人達が満足する量、1人じゃ運べん」

 

「うん、買い出しデートだね、分かるとも!」

 

「何でもデート付けりゃ良いってもんじゃないぞ…」

 

 

買い出しから戻ってきた後は、ホテルの部屋で5人で食事にした。

 

なんだろう……上手く言えないが、こういう形での食事も良いな。

 

 

「どうかしたの、ケン?なんだか嬉しそうに見えるけど」

 

「そうか?……上手く言葉にできないんだが、今の状況が心地良いというか…」

 

「あ、それなんとなく分かりますよ。旅行先で大人数で騒ぐのって楽しいですよね」

 

「そうなんだよ。なんか、家族みたいで良いなと思ってな…」

 

「家族……」

 

 

俺の言葉に、エルキドゥ以外の三人の視線が集中する。………結構恥ずかしい事言ってたな、俺。

 

 

「家族か、良いね。ケンが働き盛りのお父さんで、僕がお嫁さん。XXとオルタはペットの犬だね」

 

「犬!?私ペットなんですか!?」

 

「おい、せめて私はメイドだろうが。何故ペットなんだ。理由を聞かせろ」

 

「食費がかかるから」

 

「くっ…反論できん」

 

「私、働いているんですけどー!?」

 

「あのー、沖田さんは?沖田さんはどこのポジションですか?」

 

「総司は体が弱くて、絶賛入院中のお隣の子かな」

 

「あれっ、家から追い出されてますけど!?いえ、それ以前に家族ですらない!!」

 

 

エルキドゥのあんまりな言い分に納得がいっていない三人。

 

 

「お前もお前で黙ってないで、私達を養うくらいの気概を見せろ防人」

 

「無理です」

 

「即答されたぁ…。防人さん、実は沖田さん達の事嫌ってますか?」

 

「そんな訳ないでしょう…。そっちこそ、俺達の家族ポジションで良いんですか?」

 

「ふむ、嫌ではありませんね」

 

「防人さん、もっとみんなと絡みましょうよ~。防人さんと話したり遊んだりしたいってサーヴァントはそこそこいるんですよ?」

 

「うむ、お前と周回してるサーヴァントは特に、だな。まあ、そっちの嫁英霊がどう思うかは分からんが」

 

「僕は気にしないよ。ケンが皆に好かれるのは、僕にとっても喜ばしい事だからね」

 

「これが正妻の余裕ってやつですか……ゴクリ」

 

「ケンの事が一番大好きなのは僕だけどね!!分かるとも!!!」

 

「揺るがぬ自信……」

 

「フッ、精々足をすくわれないように気を付けるのだな」

 

「ご忠告どうも…」

 

 

そんな他愛のない話をして、酒もちょっと飲んで。

 

騒がしい俺達の部屋の明かりは、日が変わるまで点いたままだった。




次回。

BBちゃん、死す!(仮)

キングゥは救済するべき?

  • 助けてあげたい
  • 見殺しにする
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