雑用係と神造兵器   作:サンダーボルト

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エルキドゥ「弓のギルが来た時の話だよ!」


盟友だね、分かるとも!

「……懐かしい気配がする」

 

 

そう言って俺を自室から連れ出したエルキドゥ。いつも絶えず笑っているやつだが、期待に満ちた今の表情は見たことがない。

 

…きっと、ずっと待っていた盟友がカルデアに来たのだろう。

 

召喚室から溢れ出す金色の光。それはかの英雄王の降臨を意味していた。

 

 

「ふはははは!この我を呼び出すとは、貴様の運はこれで尽きたな雑種!まあそれは良い。ここには我が盟友も一足先に来ているであろう。さあ迅速に呼びに…む?」

 

 

目にしたもの全てが畏縮してしまう程の威光。それに臆する事無く、エルキドゥは一直線に向かって行く。

 

 

「ギルゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッ!!!!!」

 

「ゴハァッ!!??」

 

 

まったく勢いを殺さずに英雄王の胸に飛び込んだエルキドゥ。平たく言えばタックルである。

 

 

「会いたかったよギル!!よく来たねギル!!こうして…こうしてまた君と話せるなんて夢みたいだ…!!うう……うわあああああん!!!」

 

「…ゲホッ……う…うむ…息災なようで何よりだ我が盟友よ。というか貴様、泣いて…」

 

 

現界したばかりで碌に霊基の強化もしていないはずなのに、強化しまくったエルキドゥの全力体当たりを受けてなお、普通に喋る事ができるのは流石としか言いようがない。

 

 

「ようこそおいで下さいました英雄王。とりあえずお納めください」

 

 

台車に積んだ大量の種火と素材を献上する。英雄王は自分に気安く話しかけた俺に対して目つきが鋭くなったが、すぐにエルキドゥが俺の隣に立って、俺の頭を抱き締めるように腕を回す。

 

 

「あっ、紹介するね。僕の親友兼彼氏兼マスター兼運命共同体のケンだよ!仲良くしてね!」

 

「待て」

 

「見て、凄いでしょ!ケンと一緒にギルのために集めてきたんだよ!何でか相手にギルがいたけど、流石ギルだね!良い素材をいっぱい落としてくれたよ!ギルを沢山ぶっ殺してこれだけ集めたんだ!凄いでしょ!?」

 

「待てと言っているだろう友よ」

 

「ささっ、食べて食べて!早く強さを取り戻して一緒に素材集めに行こうよ!うわあ、楽しみだなあ!ギルと一緒に戦うなんて何世紀ぶりだろう!相手は弱くて物足りないけど、まあ最初だし軽めにしようね!」

 

「………………そうだな」

 

 

王様を相手にして雑用に誘う事が出来るのは、友達だけの特権だと俺は思った。言いたいことは山ほどあるだろうに、それでもエルキドゥに合わせてあげているあたり、王様もエルキドゥの事大好きなんだろうなぁ。

 

ちなみに王様を呼んだ立香ちゃん達は完全に蚊帳の外でした。ごめんなさい。

 

 

 

 

――――――――周回中――――――――

 

 

 

 

「それでね、ケンは僕に負けてほしくないんだって!誰にも何にも負けないくらい強くあって欲しいんだって!そこまで想われているなら張り切るしかないよね!あ、ケンに関する事だったらギルにだって譲るつもりは無いからね。覚えておいてね!」

 

「うむ。そもそも盗ろうなどとは思っておらぬから安心するがよい」

 

「なら良かった!やっぱりギルは僕の盟友だ。あ、ケンの事雑種って呼んじゃ駄目だからね。ケンはただでさえ自虐癖があるんだから!慰めるの大変なんだから!」

 

「ふははは、貴様をここまで様変わりさせた相手が雑種であるわけなかろう。まあ、雑用係が適任であろうな」

 

「むぅー、本当はそれも嫌なんだけど…ギルだから許すんだからね。ごめんねケン。ギルは昔からこういう奴なんだ。ギルに雑用係って言われても許してあげてね。そうだ!これ見てよギル!この間の休みにケンと日帰りで日本にレイシフトしてきたんだ!ギロッポンって場所らしいよ。大きな鉄の塔が沢山建てられててびっくりしたよ。でもウルクのほうが凄いけどね!」

 

「当然よな。この我が治めた国こそが至高!分かっておるではないか」

 

「服も沢山買ってきたんだ。スマホって便利だよね。自分が見ているものとかを写真にして残すことができるんだって!ほら、色んな服を着てみた僕だよ!」

 

「ほほう、中々に似合っているではないか」

 

「でしょー!これなんてケンが選んでくれたんだよ!思わず同じの五着買っちゃった!あとこれ、今の流行でタピオカチャレンジっていうんだって。おっぱいでコップを支えて、手を放してストローで飲むらしいよ。僕もやってみてできたんだけど、普通に飲む方が楽だったよ」

 

「ふっ、愉悦に効率を求めるなど無粋よ。寧ろ、その面倒な過程こそ楽しむ者もいる」

 

「そういうものなのかなぁ。あ、エヌマ・エリシュ」

 

『おのれおのれおのれぇーーーー!!!!』

 

 

兵器だけに止まらないマシンガントーク。ずっと英雄王と喋り続けながらも敵を殲滅していくエルキドゥは頼もしいものだ。いくら弱くなっているとはいえ、片手間で倒される自分を見て、英雄王はどんな気持ちなのだろうか…。

 

 

「ふう。ケンのAPも尽きたし、一旦終わりにしようか」

 

「そうか、では先に戻れエルキドゥ。我はこやつと話があるのでな」

 

「……ギル」

 

 

剣呑な目つきになるエルキドゥ。

 

 

「エルキドゥ、心配いらないから」

 

「……うん」

 

 

不承不承に頷いたエルキドゥに素材を渡して送り出す。この空間にギルガメッシュ王と二人だけになり、思わず体が震えてしまう。

 

 

「ふはは。畏まらずもよい……と言いたいが、この我を前にして無理な話ではあったな。ああもエルキドゥが我に話しかけていたのは、我が意識を向ければ貴様がこうなっていたのを見越しての事であろう。理解しているな?」

 

「……はい、それは勿論。アイツは自由に動いているように見えて人を見ていますから。この間も…」

 

「待て。自慢話はもうよい。もう腹いっぱいだ」

 

「あ、はい」

 

 

多少げんなりとした表情の英雄王。しかし次の瞬間には、凄まじいプレッシャーを放っていた。

 

 

「…エルキドゥは我の唯一の盟友にして、何物にも代えがたい至宝である。故に我の目の届かぬ場所へ移し、我の許可無しに使い魔とした事は到底許される事ではない。よって、貴様には最も重い罰を下す」

 

「………」

 

「一度しか言わぬ。この刑罰を撤回する事も無い。いいか、貴様は生涯、エルキドゥと共に生きろ」

 

「――――――――」

 

 

英雄王はあっさりと言い渡す。

 

 

「フン、ここで我が貴様を死罪に処すとでも思ったか?我らの諍いを避けるためにエルキドゥを先に戻させたか?貴様の考えは全て的外れだ。雑用係如きが王の思考を読もうなどと片腹痛いわ!!」

 

 

 

 

「見たのだろう、エルキドゥの最期を。貴様が見たのはエルキドゥが最も他者に見せるのを嫌う記憶だ」

 

 

 

 

「奴は思っていたのだろう。己の死が我の矜持に瑕を付けたと」

 

 

 

 

「間違ってはいない。我は友との別れで死を恐れ、不老不死を求め、その代償に国を失った」

 

 

 

 

「…だが、奴は自分自身が瑕付いているとは思っていなかった」

 

 

 

 

「皮肉な物よ。神をも縛る鎖を持つあやつが、己自身の心で己を縛り上げているとはな」

 

 

 

 

「……あやつの罪の鎖を壊し、解き放ったのは貴様だ。ならば貴様が責任を取れ、雑用係」

 

 

 

 

「放棄することは許さん。貴様の生を余すことなくエルキドゥに捧げよ」

 

 

 

 

「フン。本来であれば、現界した我が成すべき仕事だ。王の仕事を奪うなど越権行為も甚だしいぞ!!」

 

 

 

 

「……おい、いつまで黙っているつもりだ。貴様に拒否権など無いぞ。速やかに返事を……?」

 

 

 

 

「――――き、気絶しているだと…!?待て!!貴様どこまで聞いていた!?この場で気絶などありえんだろうが!!ええい起きろ雑用係!!これではエルキドゥに誤解を受けるぞ!!起きんかーーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう金ぴか!久しぶりだなぁ、元気であったか?」

 

「…征服王か。いつぞやの聖杯戦争以来だな」

 

「……なぁ金ぴか。こうして再会したんだし、お前の酒庫の中身、ちょっくら馳走してくれんか?」

 

「顔を合わせていきなりそれか。貴様、余程首を斬られたいらしいな」

 

「いやあ、何というかな…。お前さん、騒ぎたくて仕方ないって顔してるぞ?」

 

「……そうか?」

 

「うむ。そう見えるぞ」

 

「……くくく、ふはははははははははは!!!よかろう、ありったけの雑種共に声をかけよ!!今宵は我が宝物庫の鍵を開け、宴を催す!!」

 

「おぉ!?どうした、言っておいてなんだが、えらく大盤振る舞いだな!」

 

「よきにはからえ!!ふははははははーーー!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目が覚めると後頭部に柔らかい感触があり、目の前にはエルキドゥの顔があった。

 

 

「あ、起きたねケン」

 

「……あ、れ?ギルガメッシュ王は…?」

 

「ケン、ギルの圧に当てられて気を失っちゃったんだって。大丈夫?痛いところはない?」

 

「ああ、大丈夫…だと思う」

 

「そっか、良かった」

 

 

柔らかい感触に名残惜しさを感じつつ、体を起こす。どうやらマイルームに運ばれていたようだ。

 

 

「…英雄王はどうしてる?」

 

「今夜はカルデアの皆を集めて宴だってさ。僕達は参加しちゃ駄目って言ってたけど」

 

「……何故に?」

 

「ケンは王の話の途中で気絶したから不敬罪。僕はギルをぶっ殺しまくったから同じく不敬罪だってさ」

 

「謝ったほうがいいかな…」

 

「いいよ、気にしないで」

 

 

ふと、部屋の中で良い匂いがしているのに気づいた。匂いの元は、テーブルに置いてあった豪華な料理だった。一緒にワインも置いてある。

 

 

「エルキドゥ、あれは?」

 

「エミヤが持ってきた。ギルがあんな犬の餌と安酒は宴にいらないってさ。僕達で処分しておけって」

 

「……ギルガメッシュ王って良い人だよね」

 

「どうかな?無能には厳しいけど」

 

 

エルキドゥが俺の胸板に頭をくっつけ、そのまま頬ずりしてきた。

 

 

「それと、僕とケンは明日はお休みだって」

 

「休み?なんで?」

 

「さあ、分かんない。……でもさ」

 

 

ほんのり頬を赤く染めたエルキドゥが上目遣いでこちらを見上げてくる。

 

 

「ふふ、ケ~ン♪明日はお仕事無いんだし、ハメ外しちゃおうよ♪美味しい物いっぱい食べて、お酒もたーくさん飲んでさ、明日は一緒にゆっくりしよ?」

 

「…久々の贅沢な休みの過ごし方だな」

 

「あははっ♪僕、すっごい幸せだよ♪」

 

 

エルキドゥと一緒に座り、ワイングラスで乾杯する。

 

俺達の宴は始まったばかりだ。

 




~気配り王ギルガメッシュ~


「おい贋作者。なんだこの料理は。こんな出来損ないを我の宴に出すなど恥を知れ。即刻処分せよ」

「貴様…」

「そうだな…別室で罰を受けている奴等に持っていけ。くくく…不敬を働いた連中には犬の餌がお似合いよ」

「(なんだただの差し入れか)」

「それとこの安酒も持っていけ。何故だが知らんが我が宝物庫に紛れ込んでいた。このような物を宴に出しては我の品格が落ちる。これも奴等に処分させよ」

「フォーウ(無茶苦茶気遣ってるじゃないか)」

「ああ、それとカルデアの長は貴様であったな。奴等は明日まで罰を受けさせる故、一切仕事をさせるなよ」

「はあ!?なに勝手に決めてるのよ!?」

「……(無言の王の財宝)」

「ヒッ!?分かりました仕事は私がやりますぅぅぅ!!」

「所長レイシフト適性無いのに…」

「それとそこのキャスター。貴様が良かれと思って一服盛ろうとしておる疲労回復薬だがな、千分の一の確率で出る媚薬効果の副作用が大当たりで出る故、入れるなよ?」

「そうですか…残念です」

「お料理美味しいね~マシュ(もぐもぐ)」

「そうですね~先輩!(もぐもぐ)」

キングゥは救済するべき?

  • 助けてあげたい
  • 見殺しにする

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