雑用係と神造兵器   作:サンダーボルト

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でんででででん、でんでんでん♪

でんででででんでん♪

でんででででん、でんでんでん♪

でっ、でっ、でん♪


お疲れだね、分かるとも!

カルデアのサーヴァントに用意されている自室。茶室を模して作られた中で卓袱台を囲み、お茶で一服している織田信長一行。

 

彼女らはカルデア内で発生した特異点に巻き込まれた被害者であり、特異点を作る切っ掛けになった原因でもあった。

 

 

「ふい~…一時はどうなる事かと思ったが、無事戻れて良かった良かった。新たなクラスも手にいれたし、ノッブ新時代の幕開けじゃな!」

 

「はぁ~?今回はノッブ主役だったんですから、次は水着解禁沖田さんの大活躍イベに決まってるでしょう!」

 

「お前、毎年毎年そんな事言っとるから、沖田に水着が来ないのはネタ、みたいな扱いにされて実装されんのじゃないかのう…?」

 

「嘘でしょう!?吐血といい水着といい、沖田さんに何か恨みでもあるんですか!?」

 

「実装?ネタ?貴女方は時々何の話をしているのやら分かりませんね…」

 

 

特異点で新たに仲間になった軍神、長尾景虎。彼女もまた、新クラスの信長と共にカルデアへやってきたのである。

 

 

「景虎さん、カルデアにはもう慣れましたか?」

 

「ええ、まあ。マスターからは現代の色んな情報を貰っていますし、防人さんも私に気を遣ってくれていますので、快適に過ごせていますよ」

 

「そいつは重畳じゃな。……しかし、今思えば防人の奴には、ちと悪い事をしてしまったかのう…」

 

 

信長が憂うのには理由がある。こういった特異点ではアイテムを集める事で種火や素材と交換できる時があるのだが、今回は特異点を安定させ、ケンがレイシフトできる状態になるまでに時間がかかってしまい、物資の調達にかなり無理があるスケジュールになってしまったのだ。

 

 

『ごめーんケンさん!柴田さん倒すのに時間かけすぎちゃった!』

 

『う~ん、この特異点が消滅するまでの時間はかなり短いね。前回の特異点での蓄えもあるし、今回は無理しなくても大丈夫だけど、どうする?』

 

『行ってきます』

 

『うん、迷いの無い返答ありがとう!』

 

 

金のリンゴを大量に持ち込み、カルデア家の交換部屋と戦場を行き交う雑用係の姿があったという。

 

 

「…恩恵に与った私が言うのも何ですが、誰か彼を止めたりしないんですか?傍目に見ても体力の限界や睡眠時間を削っての無茶苦茶な周回でしたよ?私は交換所にいましたし、一部の周回にも付いていきましたので指揮に問題はないのは分かりましたが。死んだような目というか、死んでないのがおかしいというか…」

 

「あー…防人さんの事情を知ってる我々からすれば、止めにくいといいますか…」

 

「ぶっちゃけアイツが活躍できるのって周回だけじゃし。あれやらせないと、自分に存在価値無いって己を追い詰めるからのう。そんで疲労でダウンしておれば、元も子もない話じゃが」

 

「難儀ですね…」

 

 

ここで、沖田総司がある事に気付く。

 

 

「……でも、防人さんがあんなになったのって、ほぼノッブのせいじゃないですか?前のイベントからそう時間も経ってないうちから、あんなトラブル引き起こして」

 

「おいそりゃ無いじゃろ!あの箱に刀突き立てたの忘れておらんよな!?いやまあ、最初に銃ぶっぱなしたの儂じゃけど!」

 

「オール信長とか言って、もろ特異点堪能してましたし。その信長達も今のノッブに纏まったわけですから、大体ノッブの責任ですね」

 

「大体ノッブの責任っておかしくね!?それを言うなら、儂がいなかったら特異点の修復もできんかったじゃろ!?」

 

「そもそも、無茶なスケジュールになったのって柴田さんのせいで、あの人ノッブの家臣ですよね?柴田さんがカルデアに来てたらまた話は違いますが、そうじゃないなら上司のノッブが責任取らないとですよね?」

 

「ぐぅ…」

 

 

珍しく言いくるめられる信長。彼女も少なからず責任を感じているため、言い返す事が出来ないでいた。それに総司の言うこともあながち間違っていない。

 

 

「……いかん。このままだと儂、ドゥ先輩にしばかれる。あの方プッツンするとマジで容赦無くなるから…」

 

「ノッブはクラス相性的に逆らえませんからねぇ」

 

「いや、今の儂はアヴェンジャーじゃから。それでも勝てる気せんけど」

 

「それでどうするんですか信長?腹を斬るなら介錯しますが」

 

「するか!……仕方ない、ちと話をつけに行くとするか。普段の軍備増強の褒美も兼ねて、な。丁度よいイベントもある事じゃし」

 

「イベント?……ああ、ですね!」

 

「???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あ~……」

 

 

ぬぁ~疲れた~…。特異点が消えてしまう前に全てのリソースを根こそぎ回収したは良いのだが、周回疲れで体が怠い…。今日の周回でスパさんにも、『反逆は一日にしてならず。時を待つがいい(要約:最近疲れているようだから休め)』と気遣われたし。

 

 

「お邪魔するよ~…うわ、ものの見事にダウンしてるねぇ」

 

 

ベッドで唸っているとエルキドゥが部屋に入ってきた。いつもなら何かしら構ってやるところだが、今はそんな気分ではない。

 

 

「何か用事かエルキドゥ…。俺は見ての通りだから、ほっといてほしいんだが…」

 

「大丈夫?おっぱい揉む?」

 

「無いだろうが…」

 

「……」

 

 

エルキドゥは無言で俺の片手を取り、自分の胸へと押し付けた。普段の硬い感触と違い、俺の手の平に柔らかな感触が広がる。

 

 

「おお…ふ…」

 

「ふふっ、どうだい?人間の女性の胸の膨らみを再現してみたんだ。あれって脂肪の塊らしいけど、どうかな?癒される?」

 

 

言われて見てみれば、今のエルキドゥの胸には女らしいささやかな膨らみがあった。

 

 

「あんまり大きいとデメリットが多いらしいから、小さめにしたんだけど――うわっ」

 

 

辛抱たまらずエルキドゥをベッドに押し倒し、胸に顔を埋めて感触を味わう。柔らかい、良い匂い、気持ち良い…。鼻息荒く顔を押し付ける俺を、エルキドゥは拒むことも無く抱きしめてくれた。

 

 

「そんなに刺激的だったかな?」

 

「…無理だろ……反則だろこんなの…」

 

 

ひたすらエルキドゥを味わう。体感時間で十数分経った頃、ふと我に返った。

 

 

「……何してんだ俺。何させてんだ俺」

 

「ん……もう満足かい、ケン?」

 

 

体を起こした俺を見つめる、横たわったエルキドゥ。

 

 

「ごめん…」

 

「なんで謝るのさ。押し倒されたのはビックリしたけど、君と僕の仲だし気にしないでおくれ」

 

「悪かった…」

 

 

脱力してベッドに突っ伏す。エルキドゥは身嗜みを軽く整えた後、笑みを浮かべてこちらを見る。

 

 

「ふふふ、実はそんな疲労困憊のケンに贈り物があるんだ」

 

「…?もう堪能させてもらったが…」

 

「あれは違うんだけど……まあ、オマケにしておくよ」

 

 

エルキドゥはわざとらしく背中に手を隠した後、2枚のチケットを取り出した。

 

 

「じゃ~ん♪いつも頑張っているケンにご褒美だよ!」

 

「……なんだそれ」

 

「ホテルのチケットさ。ケン、サーヴァント・サマー・フェスティバルは知ってるよね?」

 

「ああ…カルデアももうすぐ夏休みだからな…。休暇で行きたいって申請が沢山あったよ。心ゆくまで楽しめるように、会場を特異点ルルハワにしたって報告があったが…」

 

「そのルルハワの最高級ホテルに泊まれるチケットがこれさ!ケン、夏休みは南国へ旅行に行こうよ!」

 

「……………嫌だ」

 

 

いつになくハイテンションのこいつにハッキリNOと突き付ける。楽しそうにチケットを持ったエルキドゥがピシリと固まり、瞳を潤ませて詰め寄ってきた。

 

 

「…な…なんで…?まさか夏休みまで雑用する気じゃないよね…?僕とのバカンスより、優先するものなんかないよね?ねえ!?」

 

「…そうじゃないんだが…場所がなあ……」

 

「…?ケン、ハワイ嫌いだったの…?」

 

「ルルハワって特異点で、サーヴァントが沢山来るんだろ…?これまでの経験則から言って、100%トラブルに巻き込まれるだろ…。折角の夏休みくらい、そういうのとは無縁でいたい…」

 

 

そう言うとエルキドゥは顔を伏せた。少し悪い事をしてしまったが、分かってほしい。今のハワイに行くという事は、面倒ごとに首を突っ込みに行くのと同意だ。

 

 

「……分かった…。それならしょうがないね…」

 

「エルキドゥ…」

 

 

少し悲しそうに笑いながら、顔を上げたエルキドゥ。

 

 

「今からルルハワに行って邪魔なサーヴァント共を消してくるよ。もし僕達が行ってから新しいサーヴァントが来ても速攻で殺そう。そうすれば僕とケンのバカンスを邪魔する奴はいなくなるからね」

 

「ハッハッハッ、さっきのはちょっとした冗談だよエルキドゥ。本場のアメリカンジョークの予行演習さ。俺がお前とのバカンスを断る訳無いだろう?だからそんな物騒な旅行計画はポイしてくださいお願いします」

 

「あ~!ひどいよケン!!僕、本当にショックだったんだからね!ジョーク禁止!ばかばかばか!!」

 

 

胸をポカポカ叩いてくるエルキドゥに内心どっと冷や汗をかきながら、こいつの殺戮を止められたことに安堵する。そうだ、元々こういう奴だったわ。

 

 

「そうと決まったら申請しに行かないとな…。外に出るなら許可が必要だし」

 

「ああ、それも終わってるよ」

 

「…準備万端過ぎないか?」

 

「ノッブが準備してくれたんだよ。この前のトラブルで迷惑かけたから、お詫びだってさ。ほら、お小遣いもこんなに」

 

「寧ろこっちが悪い気が…」

 

「気にしない気にしない。さ、善は急げだ。ケン、早速行こう」

 

「は?早速って…。飛行機のチケットとかいるだろ?」

 

「…?なんで?」

 

 

エルキドゥは俺の言葉に首を傾げながら抱き着いてきた。緑の長髪が俺の体のあらゆる所に絡みつき、ギッチリ締め付けてくる。

 

 

「……おい…まさか…」

 

「飛行機より僕が運んだ方が早いよ?安心して、落としたりなんかしないよ。でもしっかりくっついててね」

 

「…………」

 

 

もうこれは逃げられない。悟った俺は目を瞑り、力強くエルキドゥに抱き着いた。

 

足が地面から離れた浮遊感。徐々に加速していく風切り音。世の人間の誰も見られないような景色を俺は見ているんだろうが、目を開けたら絶叫してしまいそうなので、俺はルルハワに着くまで大人しく抱き着いているしかなかった。

キングゥは救済するべき?

  • 助けてあげたい
  • 見殺しにする
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