雑用係と神造兵器   作:サンダーボルト

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ルルハワだね、分かるとも!

「お疲れ様。着いたよケン、ここがルルハワさ!」

 

「………………」

 

 

空港前に着陸した俺とエルキドゥ。早速はしゃぐエルキドゥだが、俺は腰が抜けてしまってその場で座り込んでしまった。真夏の日差しで熱されたアスファルトが尻を焼いて熱い。

 

 

「大丈夫かい?ホテルまでおんぶでもしようか?」

 

「……いや、それには及ばん」

 

 

おんぶにだっこでは情けなさ過ぎるので、足に力を入れて立ち上がる。ニコニコ笑っているエルキドゥと手を繋いで歩こうとして、誰かに声をかけられた。

 

 

「おんや~?これはこれはお二人さん、ここで会うとは奇遇ですな」

 

「ティーチじゃないか。君もバカンスかい?」

 

「ぐふふ、もちのロンでござるよ。まあ拙者の場合はフェスの方が本命でござるが。しかし防人氏がこのようなイベントに興味があるとは、意外ですな」

 

「俺はむしろ休養目当てなんで…。フェスはまあ、時間があれば回りますよ。それにしても船長、Tシャツ似合ってますね…」

 

「自慢ではないですが、フェスに参加して長いですからな。もうすっかり順応しておりますよ拙者」

 

「ケン、とりあえず行かないかい?」

 

「そうだな…。じゃあ俺達、ホテルに行くんで…」

 

「デュフフフ…真っ昼間から二人きりでホテルとは、お盛んですなあ!」

 

「…………」

 

「あ、冗談、冗談ですぞ。だからエルキドゥ氏をけしかけようか本気で悩むのはやめて下され」

 

「笑えないからそれ…」

 

「それは失礼。それはそうと、お二人は完全に休暇なのですな。先程マスター達も来ておりましたが、どうやら仕事も兼ねていたようですぞ」

 

「そうなんだ。でも僕達は何も聞いていないし、立香達だけで何とかなる案件なんじゃないかな」

 

「でしょうなあ。それでは拙者はこの辺で。アーロハー!」

 

「うん、アーロハー♪」

 

 

やたら庶民的だった船長と別れ、俺達はホテルへと向かう。しかし、立香ちゃん達は仕事で来てるのか…。休暇も兼ねているようだったし、大した事ではないと思うけど。

 

 

「あ、見てよケン、立香達がいたよ。おーい、アロハー!」

 

 

エルキドゥが立香ちゃん一行を見つけて声をかけた。立香ちゃんにマシュ、牛若丸にロビンに、一人だけ水着に着替えているジャンヌ・ダルク・オルタ。

 

向こうも俺達に気付いたようだが、ジャンヌ・オルタが猛スピードでこちらに走ってくる。え、何あれ…。

 

 

「――――マネージャー確保ぉぉぉぉっ!!!」

 

「………なんて?」

 

 

俺の両肩をガッチリホールドしたジャンヌ・オルタが叫んだ。随分気合いが入った水着だな、これ。だが水着より、腰に差した刀が気になるんだが…。

 

 

「アロハー!です、エルキドゥさん、防人さん!」

 

「うん。説明よろしく」

 

 

マシュの話によると、サバ☆フェスで売り上げ一位になったサークルに聖杯が贈られるようで、去年の優勝サークルにジャンヌがいた事でジャンヌ・オルタが刺激され、参加することになったようだ。なんかフォーリナー反応とかもあったらしく、一緒に調べるらしい。

 

 

「と、いう訳よ防人!正直猫の手も借りたい状況なの、あんた達も手伝って!」

 

「お断りだ」

 

 

俺がそう言うと、驚いて固まる一行。いや、マシュだけは変わってないが。

 

 

「ケ、ケンさんが雑用を断った…?」

 

「こ、これは天変地異の前触れでは…?」

 

「旦那、まさかあんたもBBに妙な術式を…」

 

「皆さん落ち着いてください!防人さんはお仕事中なら大抵のお願い事は聞いてもらえますが、お休みの時は断られる事が多いんです!オンオフの切り替えができる方なので!」

 

 

マシュの言う通り、急な事とはいえ今はオフで夏休み中だ。ましてや現在の俺は普段よりもやる気が萎えている。

 

仕事のフォーリナー関連なら兎も角として、ジャンヌ・オルタの我儘に付き合う義理は無いのだ。

 

 

「………そう。確かにアンタの言ってる事はもっともな話ね」

 

「分かってくれたか…」

 

 

ジャンヌ・オルタは俺の肩を放し、代わりに自分の腰に差した刀に手をかけた。

 

 

「……何のつもりでしょうか」

 

「アンタ達には悪いけど、こっちも四の五の言ってられないのよ。使えるものは何だって使うわ。断る気なら、力ずくでも連れていくわよ」

 

「ちょ、オルタ!?」

 

 

臨戦態勢のジャンヌ・オルタに驚きの声を上げる立香ちゃん。どうやら本気らしい。

 

 

「防人の旦那…バカンスを楽しみにしてるのは痛い程分かるんですが、そこを曲げちゃくれません?俺も豚になるかどうかの瀬戸際なもんで…」

 

「大丈夫だロビン。豚になっても俺達は友達だから」

 

「何のフォローにもなってねーですよ…!」

 

「主殿、オルタ殿のやり方は野蛮極まりないですが、今の我々には人手が必要なのも事実。首を獲らぬ程度で戦いましょう!」

 

「先輩…」

 

「うう~…!!」

 

 

苦悶の声を上げながらも、此方に向き直る立香ちゃん。

 

 

「こうなったらヤケクソだぁ!ケンさんごめん!いざ尋常に勝負!」

 

「……エルキドゥ」

 

「ほいほ~い」

 

 

ふわりと前に躍り出たエルキドゥ。戦う以外に選択肢は無いようだ。ジャンヌ・オルタと牛若丸が前に出て刀を抜いた。マシュも盾を構え、ロビンは後方で射撃の準備を終わらせている。

 

 

「四対一…ね。卑怯だって罵ってくれても構わないわよ」

 

「言わないさ」

 

 

エルキドゥの頭に手を置き、撫でるついでに魔力を直接流し込む。

 

 

「――俺のエルキドゥは一人でも強い」

 

「――さて、どこを切り落とそうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うわあああぁあああぁああぁあーーーーーーっ!!?」

 

「ぎゃーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!」

 

 

エルキドゥの鎖に足を絡めとられ、振り回される牛若丸とジャンヌ・オルタ。勢いそのままに地面へと叩きつけるが、マシュによる防御力強化のおかげで倒れてはいないようだ。

 

 

「がはあっ…!!う、うう…強い!いや分かってはいましたが強すぎる!!」

 

「げほっ、げほっ…!!な、何よあのデタラメ兵器!?いくら何でもおかしいでしょう!?」

 

「ひいぃ…!やっぱり勝てないぃぃ…!」

 

 

早くも戦意喪失しかけている立香ちゃん。駄目だなあ、マスターならサーヴァントを信じてやらないと。

 

前衛二人が崩れたところで、エルキドゥがマシュとロビンに狙いを付けた。光の槍の弾幕が二人を襲う。

 

 

「あはははは!滅多撃ちだねぇ、分かるとも!!」

 

「おわああああああ!!!殺しに来てる!!あれ絶対殺す気でしょ!!?」

 

「死にます!!先輩!!私達味方に殺されます先輩ぃぃぃ!!!」

 

「マシューーーーっ!!ターゲット集中と無敵付与!ロビンは宝具撃ってぇ!!」

 

 

泣き叫びながらも指示を出せるのは流石だ。エルキドゥの攻撃がマシュに集中し、ロビンが反撃に移ろうとする。

 

でもなあ、エルキドゥはそれくらいで負けないんだよなあ。

 

 

(ディンギル)

 

「「「ファッ!?」」」

 

 

エルキドゥが地面に手を当てて黄金色の波紋が広がり、大型の設置式クロスボウが三基生み出された。絶大な攻撃範囲を誇るそれに、ターゲット集中効果は意味を成さない。

 

たった二人に攻撃するには過剰な量の、魔力により製造された砲弾が一斉に発射された。

 

 

「うわあああああああーーーーーーっっっ!!??」

 

「いやぁぁぁぁぁーーーーーーーーーっっ!!!?」

 

「マシューーー!?ロビーーーン!?」

 

 

断末魔の叫びを上げて脱落する二人。無敵は今、宝具を撃つロビンにかけておくべきだったね。

 

 

「牛若丸ーーーーーーーー!!!」

 

「はああああああああーーー!!」

 

 

立香ちゃんが名前を呼べば、体勢を立て直した牛若丸が跳んできた。エルキドゥへの道を作るように浮かんだ小舟の上を渡っていき、再び刀を抜いた。

 

 

壇ノ浦・八艘跳(だんのうら・はっそうとび)!!」

 

 

数多の強敵を切り捨ててきた対人宝具がエルキドゥへ迫る。しかし、お察しの通りエルキドゥは人間ではないわけで…。

 

 

「インパルス殺法!」

 

「――――はあ!?」

 

 

上半身と下半身がどこぞの分離ロボットよろしく別れ、牛若丸の刃はすっぽり空いたど真ん中を素通りした。

 

 

人よ、神を繋ぎ止めよう(エヌマ・エリシュ)(ライト版)!」

 

「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

無防備になった牛若丸の背後から、上半身だけで宝具を撃つエルキドゥ。大分威力は落ちているものの、サーヴァント一人をダウンさせるには十分だった。派手に墜落し、目を回している牛若丸がそれを物語っている。

 

 

「……さて、これで終わりかな?」

 

「…くっ…」

 

 

無事に合体したエルキドゥの手から鎖が伸び、ジャンヌ・オルタを大の字に縛り上げて拘束して手繰り寄せた。

 

 

「……あんた達、今回の裏ボスとかじゃないわよね…?」

 

「ありそうな展開だね」

 

「そんな訳ないだろう…」

 

「ははっ、それもそうだね。じゃあさようなら」

 

 

エルキドゥの右手が光の剣となり、ジャンヌ・オルタを貫いた。

 

 

「かふっ…!」

 

「さて、終わったよケン。行こう?」

 

「ああ…。じゃあ立香ちゃん、俺達は行くから。お仕事頑張ってね」

 

「………はい……お邪魔してすいませんでした……」

 

 

俺達は今度こそホテルへ向かう。サバ☆フェスの影響からか、街中にはサーヴァントの他にも人がおり、中々賑やかだ。はぐれてしまわないよう、エルキドゥの体を近くに寄せてしっかりと手を握る。

 

 

「ふふ、今日は積極的だね」

 

「阿保か。お前、これまで何度迷子になったと思ってる?こうしてないと興味あるものに片っ端から突っ込んでいって、いつの間にかいなくなってるだろうが」

 

「~~~♪」

 

「こっち向けこの野郎」

 

 

そっぽを向いて口笛を吹く迷子兵器。茶化したって誤魔化されんぞ。こういう賑やかな場所に連れていくと、高確率でどっか行くのがこいつなんだ。

 

こうして監視しながら歩く事数十分。目的のホテルへと到着した俺達はチェックインを済ませる。

 

 

「いらっしゃい。君達も来たんだね。モードレッド、案内を頼むよ」

 

「おう。部屋に案内すっから、ついてきな」

 

 

支配人のジキル博士にホテルマン(?)のモードレッドが俺達を出迎えてくれた。モードレッドはいつもの鎧姿でもなければ、こんがり焼けてもいない、きっちりした服装だった。

 

 

「こいつが部屋の鍵だ、無くさないようにな。それとルームサービスは人手不足で休業中だ。メシは下で喰いな。あと、ここはカルデアじゃねえから、他の部屋に忍び込んだりするなよな」

 

「カルデアなら忍び込んで良いみたいな言い方止めてください…」

 

「あー…うん。そうだな、悪い」

 

 

モードレッドに案内された部屋は、最上階のスイートルームだった。ここって一番高い部屋なんじゃ…?

 

 

「見てよケン!すっごい広いね!ノッブもいい仕事してくれたね!」

 

「あんまりはしゃぐなよ、みっともない」

 

「ホテルで作業してる奴もいるし、ほどほどにしておきな。ここでのバトルは厳禁だ」

 

「だとさ」

 

「ちぇー」

 

 

大人しくベッドに腰掛けるエルキドゥ。

 

 

「じゃ、後は好きにしな。何か用があったらオレかあのモヤシに聞きに来い」

 

「あ、ちょっと待って」

 

「…?」

 

 

戻ろうとするモードレッドを呼び止め、財布から今回の資金であるギル$札を何枚か取り出してモードレッドのポケットに入れてやる。

 

 

「俺達からのちょっとした心付けだ。しばらくお世話になるよ」

 

「さ、サンキュー。その、なんだ…ゆっくりしていけよ…」

 

 

ぶっきらぼうに言うと、モードレッドは早足でこの場を後にした。分かるぞ、その人の好意に慣れない感じ。

 

 

「ケン、今のは何だい?ワイロ?」

 

「チップっていってな、こういう仕事をしてもらった時に渡す感謝の証みたいなもんだ」

 

「へえ~…」

 

 

今では廃止してる所も多いらしいが、細かい事は教えなくてもいいだろう。

 

バルコニーに出てみると、綺麗なオーシャンビューが視界一面に広がった。人理焼却されてから……いや、その前から一度も見た事のない景色だ。

 

 

「……こんなの見れるなんて、来てよかったって感じするよ」

 

「ふふ、何言ってるのさ。まだ来たばっかりじゃないか」

 

「はは、そうだったな」

 

 

海から流れてくる気持ちいい風にエルキドゥの髪がなびく。青と緑のコントラスト…っていうのか?こいつって海とか似合いそうだよな…。

 

じっとエルキドゥを眺めていて、ある事に気付いた。

 

 

「……そうだ、とりあえず買い物行こう」

 

「え~、僕お腹空いたよ。どこかに食べに行かない?」

 

「いや、先に買い物だ。見ろ、俺達の格好」

 

「恰好?」

 

 

自分の体を見下ろすエルキドゥ。着替えもしないで飛んできたので、服装が場違いだ。

 

 

「バカンスならバカンスらしい服にしなきゃな。行くぞエルキドゥ」

 

「うんっ!」

 

 

元気に頷いたエルキドゥの手を取って、近場のショッピングモールへ向かう。

 

 

「どんな服にしようか」

 

「そうだな…ロビンが着てたやつみたいな、アロハシャツとハーフパンツ…で、いいのか?とにかく、あんな感じのラフな服が良いだろ」

 

「りょーかい」

 

 

目当ての服は案外すぐ見つかった。ルルハワでもメジャーな物らしく、分かりやすい場所で売られていたからだ。その中から適当に何着か選び、エルキドゥにも同じものを渡す。

 

 

「僕も同じものを着るのかい?ペアルックってやつだね、分かるとも……でもこれ、男物だよね?」

 

「嫌か?」

 

「いいけど…ケンはいいの?女の子の服だって、僕は喜んで着るけど?」

 

 

小首を傾げたエルキドゥがそう聞いてくる。……まあ、女バージョンでいてくれればデートらしくなるんだろうが…。

 

 

「女の姿してて、もしナンパでもされたら困るからな」

 

「………………そ、そうだね、困っちゃうね」

 

 

買った服に早速着替えた俺とエルキドゥは、腹を満たしにどこかの飲食店に立ち寄ろうと歩きながら吟味することにした。ただ、エルキドゥがさっきからずっと俺の手を握りながらモジモジしている。

 

 

「(えへへ、ケンは僕がナンパされたら困るんだなぁ♪これって、僕がケンの女……女?って主張しているようなものだよね♡うふふえへへへへ…♡)」

 

「(エルキドゥにナンパ仕掛けるような命知らずの犠牲者を少なくするには、男のままでいてもらうのが一番だからな…。絶対勘違いしてるだろうけど、口には出すまい。ナンパされたらムカつくのは本当だし…)」

 

 

歩いていると、道に建てられた大きなハンバーガーの看板が目に入った。…外国で売ってるハンバーガー、少し興味があったんだよな…。

 

 

「エルキドゥ、昼飯はあそこにしないか?」

 

「うんっ、そうしよっか♪」

 

 

ご機嫌なエルキドゥを連れてハンバーガーショップに入り、オーソドックスなセットメニューを頼んだ。席に着いて少し待っていると、俺の頼んだハンバーガーとエルキドゥの分のチーズバーガーのセットが運ばれてきた。

 

 

「……で、でかい…」

 

「ケン、食べきれるかい?」

 

「どうにかするさ…」

 

「頑張ろうね。じゃあ…」

 

「「いただきます」」

 

 

両手で持たなければいけない程大きなバーガーにかぶりつく。ジューシーなパティにレタスとトマトの旨味が口いっぱいに広がり、マスタードの辛みが良いアクセントになっている。付け合わせのポテトフライも塩味がきいていて美味い。何口か食べた後にコーラを流し込む瞬間など最高だ。

 

 

「ケン、チーズバーガー美味しいよ。ちょっとあげるよ」

 

「お、悪いな。こっちのも食うか?」

 

「わーい!」

 

 

お互いのバーガーを少し切り分けて交換する。丸々一個は多すぎるから、こうやって分け合って食べられるのはいいな。

 

味にも量にも大満足した俺達は、一旦ホテルに戻って食休みしながら予定を考える事にした。ベッドに座ってガイドブックを読む俺の膝にエルキドゥが寝転がってくる。

 

 

「ハンバーガー美味しかったね。他にも美味しい物沢山あるのかなぁ?」

 

「んー、そりゃ、あるだろうな」

 

「夜は何食べる?ねえケン、何食べる?」

 

 

食欲旺盛なエルキドゥを満足させるために、とりあえずは近場の美味い店を調べる事にした。

 

俺とエルキドゥのバカンスは、まだ始まったばかりだ。




メカニック先生の次回作にご期待ください。

キングゥは救済するべき?

  • 助けてあげたい
  • 見殺しにする
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