雑用係と神造兵器   作:サンダーボルト

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ヒロインだね、分かるとも!

夜になる少し前、散歩でもしようとワイキキストリートに繰り出した俺とエルキドゥ。

 

夕食前だというのにアイスをねだった間食兵器に三段アイスを買ってやった所で事件は沖田。いや、起きた。

 

突如、空が光ったかと思えば、青い流星が目の前に落ちてきた。周辺がざわめく中、流星の正体が土煙の中から現れる。

 

それは近未来的な輝きを放つ人型のロボットだった。ロボットは片言で何か喋った後、手から光の剣を発生させた。

 

恐らくあれが話にあったフォーリナーなのだろう。いくら何でも目の前で暴れようとしているのを放置するわけにはいかない。

 

 

「あれを止めるぞエルキドゥ!………エルキドゥ?」

 

 

エルキドゥからの返事が無い。俺を庇うように前に出ていたエルキドゥが、もしや何らかのダメージを負ったのか心配になった俺はエルキドゥの前へ回り込む。

 

 

…………。

 

 

ダメージといえばダメージを食らっていた。手にしていた三段アイスがエルキドゥの体にべっとりくっついている。

 

 

「………アイス………僕のアイス………」

 

 

アカン。

 

虚ろになった瞳がフォーリナーを見据える。邪魔にならないように俺は距離をとった。フォーリナーの方もエルキドゥに気付き、戦闘態勢になる。

 

 

『違法サーヴァント発見。速ヤカニ破壊シマグボァッ!?!?』

 

 

エルキドゥ、まさかの徒手空拳。一気に距離を詰めてからのアッパーカットでフォーリナーを粉砕した。綺麗な弧を描いて吹っ飛んだフォーリナー。地面に落ちたところにエルキドゥが飛んでいき、馬乗りになって猛然と殴り続けた。

 

 

『ガッ、グフッ、チョッ…ハメ技は卑怯…ヤ、ヤメ…アフンッ!?』

 

 

エルキドゥが素手で装甲を引っぺがしていくうちに、あれがただのロボットではないのに気付いた。所々に剥き出た肌は間違いなく人間のものであり、何より素顔が露になった瞬間、猛烈な既視感に襲われた。

 

金色の長髪に帽子を被り、アホ毛がぴょこんと飛び出た頭。カルデアに何人かいるあの人の特徴に合致する。

 

顔の下半分を鷲掴んで持ち上げ、トドメを刺そうとしているエルキドゥに待ったをかけた。

 

 

「ちょっと待った」

 

「……何だい、ケン?僕は速やかにこれを始末して、お散歩デートに戻りたいんだけど?」

 

「んーーーっ!んーーーーーっ!!」

 

 

口を押えられ、声も上げられないフォーリナーが助けを求めるように俺を見る。

 

―――目と目が合った瞬間、俺はこのフォーリナーに同族意識が芽生えた。

 

 

「放してやってくれ。彼女は恐らく敵じゃない」

 

「君を疑う訳ではないけれど、根拠を聞かせてほしいな」

 

「目を見てみろ。これは周回疲れの目だ。自分で何度も見てるから自信あるぞ。もっと具体的に言えば、気の遠くなるほど周回してるのに、目当ての物にお目にかかれない感じの目だ」

 

「証拠として不十分極まりないけど、他ならない君だからこそ信じられるよ。やだ、僕の恋人病みすぎ…!?ってやつだね、分かるとも」

 

 

半ば呆れられたが、俺の証言は証拠として認められたようだ。解放されたフォーリナーが俺を信じられないものを見るような目で見てくる。

 

 

「初めてですよ、いきなり自分の境遇について的確に言い当てられたのは…」

 

「滅多にある事じゃないですがね…。襲ったサーヴァントのマスターが言うのもおかしな話ですが、大丈夫?」

 

「ええ、お陰様で。私の方も貴方の目を見れば分かります。仕事に文句は無いですが、ここの所働き過ぎていて嫌気がさしていますね?」

 

「……俺達、似た者同士?」

 

「フフッ、そのようです♪」

 

 

ヒロインXXと名乗った彼女はまごう事無き社畜であった。俺と同じく同族意識が芽生えた彼女は色々と情報をくれた。この特異点で邪神の反応をキャッチして銀河警察から派遣された事。来たは良いが原因が分からず、延々と一週間がループしている空間に居続けている事。彼女が拠点としているキラウエア火山に行ってみれば、簡易テントと空になったカップ麺の袋がヒロインXXの境遇をこれでもかと表していた。

 

ちなみにキラウエア火山に行く事を彼女は嫌がったのだが、敗者に選択権は無いとばかりにエルキドゥが引きずっていった。

 

 

「なんというか、貧相だねぇ」

 

 

これには流石のエルキドゥも思うところがあったのか、少し同情しているようだ。ただ思うところをそのまま口に出すのが悪い所でもあるので、エルキドゥの素直な感想にヒロインXXは打ちのめされた。

 

 

「う……うわーん!だから見られたくなかったのに!」

 

 

泣きべそをかくヒロインXXを見て、流石に気の毒だと思った俺は、カルデアの協力者にならないか誘ってみる事にした。

 

 

「どうやら目的は同じみたいですし、カルデアと協力体制を築く気はありませんか?俺達は休み中ですが、同僚が仕事で来ていますので、どうです?」

 

「……衣食住の確保をお願いしたいのですが」

 

「承知しました。話を通しておきましょう」

 

 

マシュに連絡を取ってヒロインXXの協力を得られる旨を伝えたが、一つ問題が出てきた。

 

 

「不味いぞ、泊める部屋が無い」

 

「立香達の部屋は駄目なのかい?」

 

「大人数で同人誌を描いてるから、かなりカツカツらしいぞ…。他の空いてる部屋も無いそうだ」

 

「今からだと、他所のホテルも駄目だろうね…」

 

 

エルキドゥとアイコンタクトを取る。やれやれ、と言いたげに首を振って苦笑した。

 

 

「僕達の部屋も同じスイートだし、一緒で良いなら泊めてあげようか?」

 

「おお、夢にまで見たスイートルーム!!……でも良いんですか?」

 

「まあ、一人増えても問題ないだろう。俺とエルキドゥは一緒のベッドを使えばいいし」

 

「そうだね、いつもと同じだ」

 

「……ふぅむ、息を吐くように自然に惚気られましたね、私。でも全然全く気にしません!なぜなら私は大人のお姉さんですから!」

 

 

ヒロインXXを仲間にした俺達は部屋へと戻り就寝することにした。

 

 

「では二人とも、先に休んでいてください!私は夜間のパトロールに行ってきますので!ルルハワの平和を乱すセイバーとフォーリナーを成敗してきます!」

 

「あんたがそのフォーリナーだったけどな…」

 

「ついでに邪悪なイシュタルも殺してきてくれないかい?あの害悪神には皆、迷惑してるんだ」

 

「すみません、アーチャーは管轄外なので。それでは行ってきます!おやすみなさい!」

 

 

バルコニーから飛び出していったヒロインXX。イシュタルをターゲットに入れられなかったので舌打ちしたエルキドゥだが、すぐに機嫌を直して俺のベッドに潜り込む。

 

 

「んふふ、ケンの匂いだぁ…」

 

「止めてくれ、恥ずかしい…」

 

「二人で出かけるのも良いけど、もう何人か増えても良いものだね♪」

 

「現金な奴…」

 

 

エルキドゥを抱き枕代わりにして横になる。寝具兵器が静かな寝息を立てたのを聞いた後、俺もゆっくり眠りに落ちていった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます!もう朝ですよ、お二人とも!!」

 

 

元気な声と共に被っていたシーツを引きはがされ、朝の陽ざしに照らされ目を開く。微睡みの中、水着姿のヒロインXXが仁王立ちでこちらに笑いかけてきた。

 

 

「お腹が空きました!朝はビュッフェだそうですよ!時間は有限なんですから早く行きましょう!もしかしたら、暴食のセイバー共に荒らされるかもしれません!ほらハリー!ハリー!」

 

「……朝から元気ですね…」

 

「んぅ……眠い…」

 

 

半分寝ているエルキドゥを抱き起こして身支度を整えた後、ロビーに降りて朝食にする。料理を取りに行った二人の代わりにテーブルを確保。眼前に見える広い海が、室内だというのに解放感を感じさせる。

 

 

「すっげ……こんな贅沢、滅多に味わえるもんじゃねえ…」

 

「今は料理を味わおうよ、ケン。はい、取ってきたよ」

 

「お…美味そうだな。ありがとう」

 

 

エルキドゥがトレーを二つ持って戻ってきた。俺用の和食メニューに自分用の洋食メニューが盛られている。

 

 

「見てくださいケン君!カレーもありましたよ!しかも盛り放題だそうで、調子に乗って特盛にしてきました!ケン君のご飯にもかけてあげましょうか?」

 

「ケンく…いや、好きに呼んでくれて構わないですけど…。あと、和食で固めてるんでカレーは遠慮しておきます」

 

「えー」

 

「XXも戻ってきたし、食べようか」

 

 

いただきます、と手を合わせてから各々が朝食にありつく。波の音をBGMにするなんとも贅沢な時間。出てくる料理の味も絶品であり、正に至れり尽くせりといった感じだ。

 

 

「ウインナー、ベーコン、スクランブルエッグ、シーザーサラダ……どれもこれも美味しいよ!」

 

「この卵焼き、出汁がきいてて凄く美味い…。焼き魚も塩味の効かせ方が絶妙だ」

 

「お肉も野菜もとても柔らかく煮込まれていますね。料理人のこだわりを感じます!おかわり行ってきます!」

 

 

料理を口に運ぶ手が止まらない。あっという間に皿を空にして、第二陣へ取り掛かる。

 

 

「おお、生姜焼きにから揚げまである!これはご飯が止まらんぞ!」

 

「なんだか今日はテンションが高いね、ケン」

 

「そうか?そりゃあ旅行だからな。ほれ、お前もどんどん食え」

 

「ふふ、ありがとう」

 

 

てんこ盛りにしたご飯を食べ進めていき、自分でも驚く量を平らげてしまった。これがルルハワの魔力というやつか…。

 

 

「デザートも沢山ありますね。杏仁豆腐にゼリーにプリン……もう全部いっちゃいましょうか!」

 

「賛成!」

 

「あ、メロンあるじゃん。俺はこっちにするかな」

 

「ケン!僕の分も!」

 

「はいはい」

 

 

甘味も思う存分味わって満足した俺達は、一度部屋で休んでから海に行く事にした。着いてから、俺とエルキドゥが水着を買っていない事に気が付いたのだが…。

 

 

「海だー!うわーい!!」

 

「うおわあぁぁぁぁ!?」

 

 

テンションアゲアゲのエルキドゥに担ぎ込まれ、服のまま海にダイブした。まあ、こうなったら細かい事は良いだろうという事で、海遊びを満喫する俺達。

 

 

「ケン君ケン君!ビーチボール借りてきました!いきますよそれぇ!」

 

「え、ちょ、いきなり!?」

 

「あははっ、ケン頑張れー♪」

 

 

 

「僕、あれやってみたいなぁ。浅瀬で捕まえてごらーんって追いかけっこするやつ。ね、やろうよケン♡」

 

「それは遊びじゃないし、そんなんどっから覚えてきた!」

 

「ケンの貸してくれた漫画」

 

「俺の部屋にそんな漫画無いから!」

 

「バレたか…」

 

「ちょっとちょっと、二人の世界にならないでもらえますか?お仕置きです!フォーリナー!」

 

「冷たっ!?」

 

「あはは、やったな~。お返しだよ、それぇぇぇぇぇ!!」

 

「ちょっ、水をかけるというより波を叩きつけてる感じなんですがほわぁぁぁぁ!?」

 

 

 

「あそこの浮きまで泳ぎで競争しましょう!最下位はトロピカルジュース奢りということで!」

 

「いいよ、やろうか」

 

「えっ、サーヴァント相手に体力勝負しろと…?」

 

「では行きますよ!よーい、ドン!」

 

「僕のウルク式水泳術を見せてあげるよ!」

 

「……ず、ずるいぞ…」

 

 

 

未だ遊び足りず、体力も有り余っている二人はまだ海ではしゃいでいる。俺は一旦休憩するために砂浜にシートを敷いてビーチパラソルを刺し、拠点を設営した。

 

遠くに見えるエルキドゥとXXを見守りながら、買ってきたミネラルウォーターに口を付ける。汗をかいて水分を欲している体に染み渡る感じが心地いい。

 

 

「よう旦那ぁ、隣ちょっくら失礼するぜぇ」

 

「…くまさん」

 

「うん、間違ってないけど、オリオンな」

 

 

小さなクマのぬいぐるみのような英霊、オリオン。ハワイアンな装飾を施された彼が隣へちょこんと座る。

 

 

「いやあ、良いねぇルルハワ。どこを見ても水着のおにゃのこで溢れてますぜ」

 

「目の保養になりますねぇ」

 

「なんだ、旦那はイケる口か?てっきり嫁さんにシバかれるから興味無いフリでもするかと思ったんだが…」

 

「魅力的なものは魅力的だからしょうがない。エルキドゥもそれはそれで面白くなさそうな顔をする時もあるけど、その分後で構ってやればいいし」

 

「理解のある嫁さんで羨ましいよ。ウチなんか毎度毎度、口に出すのも嫌になるような目に遭わされるんだからよ…」

 

「アンタはアンタで問題あると思う」

 

「何でだよぉ!?男なら誰しも持ってる感情だろ!ほら見てみろよ、夏の風物詩である彼女らの水着姿を!聖女様やマシュの嬢ちゃんは一目見てデカいって分かったが、マリーちゃんや玉藻だって瑞々しいものをお持ちだし!ネロや頼光、スカサハや牛若丸も水着になることで新たな魅力が解放されてるじゃねえか!男の欲望をビンビン刺激してくるあいつらに反応しない男なんかいねえだろう!?」

 

「熱く語ってるねぇ」

 

「ごめんなさい」

 

「どうして謝るのかな?」

 

「マジでごめんなさい許してください」

 

 

ひょっこり戻ってきたエルキドゥに完全降伏して謝るオリオン。俺に良からぬことを吹き込んだから怒って戻ってきたと勘違いしているようだ。頭にクエスチョンマークを浮かべたエルキドゥだったが、すぐに切り替わって俺の飲みかけのミネラルウォーターに口を付けた。水分補給をしに来たらしい。

 

 

「…水着ってそんなに良い物なのかな?」

 

「そりゃあもう!世の男は女が水着になるだけで嬉しいもんでしょう!女の水着姿っていうのは、雄を誘惑するためにあるようなもんだし!」

 

「偏った知識植え付けるの止めてくれません?」

 

「……ふぅん、そっか」

 

 

空になった容器を俺に渡すと、エルキドゥはまた海に戻っていった。

 

 

「……本当に怒ってねえんだな」

 

「だから言ったでしょ?」

 

「かぁー羨ましい!ウチのアルテミスなんかなー、愛は一々重いわ、嫉妬深いわ、処女の癖にスイーツ脳で行動的だわで付き合うこっちも大変なんだからな!」

 

「……でも、そんなところが好きなんだろう?」

 

「あたぼうよ!って何言わせやがる恥ずかしい!」

 

 

与太話に興じるオリオンの後ろに迫る影。オリオンはそれに気付くこと無く…。

 

 

「どぅわぁぁぁぁりぃぃぃぃん♡♡♡」

 

「ぬわーーーーー!?」

 

「私も愛してるよぉー♡ダーリンの浮気性な所もだらしない所もぜーんぶ♡」

 

「わかっ…分かったから力緩めてくれぇ!?」

 

 

アルテミスの猛烈なハグがオリオンを襲う。じゃれあいの最中、俺とオリオンの視線が交わった。

 

 

「(まさか旦那、俺を助けるためにあんな事言ったのか!すまねえ、恩に着るぜ!)」

 

「(災いの種は持って帰って、どうぞ)」

 

 

恐らく互いの意思は疎通していないだろう。オリオンに助け船を出したのは、目の前で災厄を振り撒く真似をされるのは困るだけだ。

 

 

「もう一人のマスター、ダーリンは貰っていくね!」

 

「ご自由に」

 

「アンタ気苦労多そうだし、ゆっくり羽伸ばしておけよなー」

 

「くまべぇ…」

 

「オリオンな!?アンタそんなボケかますキャラだったか!?あ、傍目じゃ分かりにくいだけで相当浮かれてんなコイツ!?」

 

 

嵐のように去っていった彼等。それと入れ替わるように、隣に腰を下ろすサーヴァントが来た。

 

 

「ケン、場所を貸してもらうぞ。息抜きがてらに来たは良いものの、このままでは茹でダコだ」

 

「ああもう、いくら暑いからって有無を言わさず座ったら駄目だよ、先生」

 

「構いませんよ、孔明先生。アレキサンダー君も遠慮しなくていいですよ」

 

 

暑さに耐えかねて日陰へと避難してきたらしい孔明先生とアレキサンダー君。クーラーボックスから程よく冷えている飲み物を取り出し、二人に差し出した。

 

 

「スポーツドリンクでよければどうぞ」

 

「頂こうか」

 

「ありがとう防人さん、貰うね」

 

 

二人は飲み物を受け取ると、中身の半分ほどを一気に飲み干した。余程喉が渇いていたとみえる。

 

 

「……ふぅ。安直な表現だが、生き返ったようだ」

 

「あはは、僕達は実際に生き返ってるようなものだけどね」

 

「今更だがケン、お前もここに来ていたんだな。言ってくれていれば、観光名所の案内くらいはしたんだが…」

 

「俺も急に来ることになったので…」

 

「そうか…」

 

 

一言だけでこちらの事情を大方察した孔明先生は、若干同情の籠った視線を俺に向け、再び飲み物に口を付ける。

 

 

「……あれ?ねえ二人とも、あそこを見てみてよ。ほら、何かの催し物が始まるのかな?」

 

 

アレキサンダー君が指差した先には、大勢の男達が何かのステージを準備していた。

 

 

「ふむ…この砂浜でやるイベントなど無いはずだが…」

 

「どこかの英霊が思い付きで始めたんじゃないですかね?」

 

「あり得るな。訪れた者が皆浮かれているこの状況では、そう考える輩が出ても不思議ではない」

 

「僕達も参加してみようか?」

 

「馬鹿を言うな。ゲーム大会でもなければ私は動かん」

 

「ゲーム大会なら出るんだね、先生」

 

 

暫く状況の推移を見定めていた俺達。次第に不穏な空気が漂ってきた。

 

 

「…メイヴ……コンテスト……?」

 

「成程な、あの男衆は女王の取り巻きという訳か」

 

「流石にあれには出られないね」

 

「孔明先生、女装に興味あります?」

 

「無い」

 

「ですよね。俺達はノータッチでいきましょうか」

 

「…………あの、度々すいません旦那方、ちょいとお知恵を拝借したいんですがね…」

 

 

恐る恐る声をかけてきたのはロビンフッド。隣に牛若丸もいた。俺が視線を向けると、二人とも、『ひっ!?』と短い悲鳴をあげて怯えた。

 

 

「……ケン、何をした?」

 

「正当防衛ですよ先生」

 

 

このやり取りだけで、俺と彼等の間に何があったか理解した孔明先生は眉間を押さえた。

 

 

「…?何があったか知らないけれど、話くらい聞いてあげても良いんじゃないかな?」

 

「……そうですね。流星が目の前に落ちてきた時点で、無関係を貫くのは難しそうだ」

 

「お前の幸運はクー・フーリンにすら劣るのかもしれんな」

 

「止めてください」

 

 

冗談だ、と肩を竦める孔明先生。それで話を聞いてみると、あのメイヴコンテストとやらは、フェスで人気を勝ち取って一位になる為のデモンストレーションらしい。

 

 

「あれがあっては、我々が優勝することは難しいのです」

 

「あれに参加こそ出来るんですが、観客から審査員までメイヴのシンパ…結果は目に見えてますぜ…」

 

「民衆を盛り立てて人気を得ている訳だね」

 

「一番になる為に何でもするって気概は嫌いじゃありませんけどね」

 

「さて、我等が軍師は何か策があるのかな?」

 

 

視線が孔明先生に集まる。

 

 

「……ケン、お前ならどうする?」

 

「ここで俺に振りますか…」

 

「単純だが策はある。だがお前の考えも気になったのでな。どうだ?」

 

「……あのコンテストを潰せば良いんじゃないですか?」

 

「…………えっ」

 

「「ヒェッ…」」

 

 

俺の答えに困惑するアレキサンダー君、また怯えるロビンと牛若丸、笑いを噛み殺す孔明先生。

 

 

「くくっ…やはりお前、ルルハワに来て気が大きくなっているな。いやそれだけじゃなく、休暇を邪魔されたというのもあるんだろうが」

 

「そりゃあ、こう次々と問題が起きたら……ねえ?」

 

「分かるぞ、自由奔放なサーヴァントが洒落にならないレベルの問題を起こす事は良くあるからな。私もそれで数えるのも馬鹿らしくなる程駆り出されているからな」

 

「先生は頼りになりますからね」

 

「そう言われて悪い気はしない。殆どが純粋な善意や悪意の無い行動故だが、割り切れない気持ちもあるだろう?」

 

「まあ…」

 

「そしで潰せばいい゙と断言したのは、既に必要な駒が揃っているからだろう?」

 

「…………」

 

 

思わず無言になる。

 

 

「なに、周回以外でお前の力を見られる良い機会だ。ちょっと羽目を外してみてくれまいか?」

 

 

孔明先生に言われて、そんなに嫌がっていない自分に気がついた。たまのバカンス、思うがまま、やりたいままに動くのも良いかもしれない。

 

 

「なにやら人が集まっていますが、どうかしましたかケン君?」

 

「XX、あれを見てみてくれないか?」

 

「あれ?はあ……コンテスト…ですか?水着美女なら目の前にいるじゃないですか。もしや私に出ろと言うんですか?吝かではありませんが…」

 

「あれな……セイバーが人気取りの為にやってるらしいぞ」

 

 

「……………………」

 

 

盛大に燃料を投下してやり、ちょっぴりワクワクしている俺であった。

キングゥは救済するべき?

  • 助けてあげたい
  • 見殺しにする

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