戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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数日が経ち、フィーネを名乗るテロリストの集団の動きが全くない為に二課はフィーネの動向を探るべく、奮闘していた。

 

だが依然としてフィーネというテロリストの集団の行方は知れず、ボクは焦っていた。

 

「ガンヴォルト君、焦る事はありません。他国にも交渉がない以上、何かしら準備に手間取っている可能性があります」

 

「…そうだといいんだけど…どうしてアッシュボルトが動かないのかどうしても気になっているんだ。奴の狙いがなんなのか…何故今になって動き出したのか…それに何故彼女達がフィーネを名乗るのかも。仮にフィーネが本当にあの少女達の中にいるのなら…」

 

かつて相対した敵であったのだが、世界を一つにするという野望を打ち砕き、心を入れ替えたはずのフィーネが本当にこんな事をするのだろうか?あの時の言葉は本当は嘘であったのだろうか?

 

フィーネが言っていた人間の本質は変わらないというようにフィーネはあの時は本心でそんな事を言っていなかったのか。

 

ならば何故、紫電との最後にボクに力を貸してくれたのか?

 

「やっぱり分からない…」

 

「GV!」

 

シアンが通信機越しにボクの名を呼ぶ。

 

「GV、さっきから考えてばっかりでぼーとして、目的の場所に着いたみたいだよ」

 

そう言われてボクは思考をやめて、目の前に立ち塞がるビルを見上げる。

 

ここはとあるヤクザの事務所である。

 

だが、僅かながら感じる血の匂いにボクと慎次は警戒をする。

 

「慎次…何かやばい気がするよ。弦十郎に連絡を!ボクは中を確認する!」

 

「分かりました!気を付けて下さい!」

 

そう言ってダートリーダーを取り出してビルの中へと入り込む。ビル内には人影はあるものの、既に事切れた男達ばかりで、頭には撃ち抜かれたように弾痕があったり、ナイフのような鋭利な刃物で切り裂かれたようにパックリと喉が割れていた。

 

駆け寄って、息のある者がいないか探すが、誰も生きている者はいない。

 

「抗争があったにしても手際が良過ぎる…それに誰もが武器を持っているのに取り出す前に全員殺して…」

 

「GV、これってアッシュボルトみたいに姿を消さないと出来ない事なんじゃ…」

 

シアンもビルの内部の惨劇にボクが予想していた犯人の名前を言う。

 

「シアンの言う通り。間違いない…アッシュボルトの仕業だ。まだ死体も新しい…奴がまだここに!」

 

ボクはここにアッシュボルトがいると断定して本部へと連絡を入れる。

 

「弦十郎!慎次!通信に割り込みでごめん!ここにアッシュボルトがいる可能性がある!ボクは奴を探す!」

 

『なんだと!?』

 

『それは本当ですか!?ガンヴォルト君!?』

 

「まだ確定じゃない!だけど、内部の人間を誰にも気付かれずにこんな風に出来るのは姿を見せない武装をした者しかいない!それを可能とするのは!」

 

『我々の持ち得ない技術を持つ者のみ!つまりはそこが当たりという事か!』

 

弦十郎も察して通信機越しに叫ぶ。

 

「こっちの対処はボクがする!慎次!もしここでボクとアッシュボルトが戦闘になれば周囲にも影響が出る!避難誘導を頼んだよ!」

 

ボクはそう言ってそのままビルの階段まで移動してを駆け上がっていく。

 

「GV!何か嫌な感じがするよ!」

 

シアンも階段を駆け上がる際に何かを感じ取ったのかボクに伝えてくる。

 

「やっぱりここにアッシュボルトが!」

 

急ぎ階段を駆け上がり、目的の階へと到着して廊下へと出る。

 

そのフロアは一言で表せば地獄絵図としか言いようがない程の悲惨な光景が広がっていた。

 

何か侵入者を感づいたのだろう。向かって行ったと思われるヤクザ達の死体が足の踏み場がない程倒れており、血が床を、壁を、天井を元の色が分からない程に赤く染め上げている。

 

「酷い…」

 

シアンもあまりの光景に口に両手を当てて、目を背けた。誰の息遣いも聞こえない。静寂が満ちた廊下を急ぎ進み目的地であった事務所らしき所を蹴り破る。反撃を警戒して一旦隠れ、ダートリーダーの銃身を鏡のように利用して内部に危険がないかを確認して突入する。

 

ダートリーダーを構え、アッシュボルトからの反撃に備えるものの彼方からの反撃はない。雷撃鱗を部屋全体に展開してもなんの反応もない。

 

警戒しながらも内部の様子を見る。先程の廊下同様に中では戦闘があったようで壁には弾痕と血痕が残されてかなりの数の死体が見受けられる。

 

「クソ!アッシュボルトは何処に!?」

 

「GV!一人だけ息のある人がいる!」

 

シアンの言葉にボクは一度アッシュボルトの捜索をやめて唯一の生き残りである人物を探す。

 

シアンの言う通り、窓側に備え付けられた高級そうな椅子の上に誰かが苦しそうにしている男がいた。

 

「しっかりしてくれ!何があったんだ!?」

 

ボクはその男の傷の具合を確認しながら何故このような事になっているのか問いただす。

 

「ゼェゼェ…」

 

だが男は何も喋らない。

 

「何があったのか教えてくれ!ここにバイザーをつけた大男が来なかったか!?」

 

詳しい情報を得ようと手当てを行いながらアッシュボルトの情報を聞き出そうとする。だが男は何も喋ろうとはしない。

 

しかし、苦しみながらも近くの金庫のような場所を指差して事切れてしまう。

 

「クソ!間に合わなかった!」

 

ボクは唯一の生き残りさえ救えなかった事と何もアッシュボルトに関する情報を聞き出せなかった事に歯痒い思いに駆られる。

 

「GV…」

 

ボクは先程まで生きていた人物の目を閉じさせて指で差した金庫へと向かい、開けてその中にある幾つかの資料に手を伸ばす。

 

それは数々の商品を誰かに売り渡す際に記帳する帳簿であり、その中をめくっていくと中にタケフツ・アッシュボルトという文字を見つける。

 

「タケフツ・アッシュボルト…これが奴の本名…それに医療品以外にも食料、それに武装までこんなに…」

 

「戦争でも起こす気なの、アッシュボルトって人は…」

 

シアンも帳簿を覗き、数々の購入履歴を見てそう呟く。

 

「いや、購入している武装は四ヶ月前になっている。これは多分フィーネと戦闘の際に使われたテロリスト達の武装だよ。最近のだと、輸送機に医療品関係が多い」

 

最近になって購入された物は多分、フィーネというテロ組織と合流した後の物だと考えるが、ボクだけじゃ何も分からない。だが、これだけの大きな調達を行うには何処かに情報があるはず。二課でさらに追えば何か分かるかもしれない。

 

ボクはその帳簿を懐にしまい、二課に調査してもらう事にする。とにかくここには後はアッシュボルトを捜索しなければならない為にダートリーダーを握り、再び警戒しようとした。

 

その時、先程事切れた男の後ろにある大きな窓の向こう、このビルから少し離れたビルの屋上に追い求めていた男の姿を確認する。

 

「アッシュボルト!」

 

「あんな所に!」

 

シアンもボクもアッシュボルトを見つけてその場所へと向かおうとした瞬間に、アッシュボルトはボク等に向けて銃のように手を構えて撃つような真似をすると同時に室内が爆炎によって赤く染まった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「ガンヴォルト君!」

 

突如爆発が起きたビルに向けて慎次は中にいるはずのガンヴォルトの名を叫ぶ。

 

ビルは目的の事務所らしき場所、そして主要の柱を破壊でもされたのか、ビルは倒壊し始めている。

 

「ガンヴォルト君!」

 

流石のガンヴォルトでもこんな事が急に起きては対応出来るかは分からない。直ぐに救出しに向かおうと思うが、崩れゆくビルの中に飛び込めば自分の命すら危うくなる。

 

だが、そんな心配をかき消すように一筋の蒼い雷がビルの内側から放たれる。そこからガンヴォルトが飛び出して慎次の前に降り立つ。

 

「慎次!アッシュボルトを見つけた!ボクとシアンは奴を追う!慎次は二課に連絡を!」

 

「待って下さい!罠かもしれないのに行くなんて無謀です!それにこの爆発の後にアッシュボルトの姿を見たんですか!?戦闘服も着てない状態でアッシュボルトの相手を出来ると思っているんですか!?相手にはまだ僕達の知らない武装がある可能性もあるのに!」

 

「ここで奴を逃せば、更に被害が拡大する!このまま逃す訳にはいかないんだ!」

 

「分かっています!でも、アッシュボルトの狙いが分からない以上、無闇に追おうとするのはやめて下さい!ガンヴォルト君とシアンさんだけになるのを狙っている可能性があります!だとすれば単独行動は敵の思う壺です!ここは敵の出方を見るべきです!」

 

慎次はなんとかガンヴォルトを説得しようとする。

 

「このまま逃す方が危険だ!それにここでアッシュボルトを捕らえる事が出来れば、残ったフィーネを捕まえる事も出来るかもしれないんだ!」

 

ガンヴォルトは冷静さを失ったように喰いかかる。確かに野放しにする事も危険な事を慎次も承知している。だが、アッシュボルトが何故このタイミングで姿を現したのか分からない上に、ここでガンヴォルトとシアンを単独で行動させてしまう事がアッシュボルトの狙いで有るのならば二人の身に何かあると考えると行動を制したいと考える。

 

『慎次の言う通りだ!ガンヴォルト!追いたい気持ちは分かるが、ここは堪えろ!』

 

弦十郎も通信で二人の会話を聞いていたようでガンヴォルトを制する為に言った。

 

「弦十郎まで!ここで奴を逃すのが最適解だとでもいうのか!?」

 

『今の冷静さを失ったお前がアッシュボルトと戦闘になった所でお前が危険になるから俺等は言っているんだ!』

 

弦十郎の言葉にガンヴォルトは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 

「GV、ここは落ち着こう。二人の言う通り、今のGVは冷静じゃないよ。こんな状態じゃアッシュボルトに勝てるか分からないよ」

 

シアンが慎次達にも聞こえるように通信機に割り込んで声を響かせる。その言葉にガンヴォルトは落ち着くように息を吐いて感情を抑えるように雷撃を押さえ込む。

 

「…ごめん、みんな。今のままじゃ、皆の言う通り、アッシュボルトを捕まえる事すら出来ないかもしれない」

 

ガンヴォルトは冷静さを取り戻し、謝罪する。

 

『落ち着いたか?』

 

弦十郎が通信機越しにガンヴォルトへとそう告げる。

 

「悪かったよ、弦十郎、それに慎次も」

 

ガンヴォルトは落ち着きを取り戻し、そしてアッシュボルトがいたと思われる場所へと視線を移す。だが、アッシュボルトはここまで時間をとっているのに何もしてこない。

 

「落ち着いてくれて何よりです。アッシュボルトからの追撃もありませんし、一旦ここから離れましょう。ここには既に一課を向かわせています。アッシュボルトの行方も捜索しますのでガンヴォルト君もその報告を待ちましょう」

 

「分かったよ。それとこれだけはなんとか持ち帰る事が出来た」

 

そう言ってガンヴォルトが懐から一つの封筒を出した。中身を確認するとそこに書かれていたのはこれまでのアッシュボルトが購入していた物の帳簿であった。

 

「これは…これさえ調査すればアッシュボルトはもちろん、フィーネの居所、目的が何か分かるかもしれません。一度本部へと戻りましょう」

 

そう言って慎次とガンヴォルトはアッシュボルトの追撃を警戒しながら帳簿を持ち帰るのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「…追ってこなかったか…仲間にでも諭されたか?」

 

ビルの屋上で待つアッシュボルトはガンヴォルトが追う事を予想していたが、予想外にも追ってこなかったが為に溜め息を吐く。

 

「追ってくればここで電子の謡精(サイバーディーヴァ)を入手出来ると思ったが、ここではお預けか」

 

何処か残念そうに言うアッシュボルト。だが、それでもアッシュボルトは焦る事もせずに言う。

 

「まあいい、私の撒いた餌に奴は掛かった。まだ機会は幾らでも有る。必ず貴様の持つ電子の謡精(サイバーディーヴァ)を頂くぞ」

 

そう言ってアッシュボルトはビルの屋上からまるで消えるかのように透明になっていき、やがて完全に姿を消した。

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