戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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ついに百話に到達しました。
裏では色々アッシュボルト達が動く中、ガンヴォルト達には暫しの休息を楽しんでもらっていきましょう。


14GVOLT

海岸近くの廃病院。

 

「全く、なんなんデスか!アッシュボルトの奴!自身が能力者っていう事を隠していた事はどうでも良いデスがマリアを撃つなんて考えられないデス!あのガンヴォルトとか言う男がマリアを突き飛ばさずに盾にされていたらどんな事になるかも分からないんデスか!それに今度は息を潜めろなんて本当に何様のつもりデス!?」

 

シャワー室で切歌が叫ぶ。あれから一週間ほどの時間が経つのだがアッシュボルトは定期的に病院の施設から抜け出しては何をしているか分からない状況に切歌は怒りを募らせていた。

 

埃かぶっているこんな場所にずっと居続けているせいでストレスが溜まり、切歌は叫ばずにはいられなかった。

 

だが、切歌と共にシャワーを浴びる調は切歌の言葉には反応は見せずに何かずっと考えているようであった。

 

(あいつら…自分が正しいなんて思っているのがむかつく…何も知らないくせに自分達の事を正義の味方とでも思っているなんて!あんな偽善者達は何も分かっていないくせに!)

 

そしてその事を思い出して調は壁に殴ろうとするが、切歌が調の自傷しようとするのを止める。

 

「止めるデスよ!?調!そんなことしたら手を痛めちゃうデスよ!」

 

調の行動を止めた切歌が何故そのような行動をしたのか調へと問いただす。そして切歌は調が二課に対する不満を伝える。

 

「…大丈夫デスよ、調。あいつらが邪魔しようと私達は私達の為す事をするだけデス。あいつ等は何も分かっていないからこそ私達がやらないといけないんデス。例え世界に認められなくても…」

 

切歌は調を落ち着かせる為に抱き寄せる。調も落ち着いたのか切歌の抱擁に自身も切歌を抱き寄せる。

 

そんな中、シャワー室にマリアが入って来る。

 

「二人共、シャワー室で抱き合ってないで体をしっかりと洗いなさい。ただでさえここの環境は埃っぽいんだから」

 

マリアは二人にそう言うが理由を知らないマリアにはだが一向に離れようとしない二人に話を聞いて、言った。

 

「調、切歌の言う通りよ。奴等は自分達で何をしでかしたのか何も理解していない。今世界が陥っている危機にも気付けないの。私達が間違っていると自分達に言い聞かせて自ら破滅へと向かっている事にも気付けないあいつ等に私達の本当の目的を理解される必要もないわ」

 

そう言ってマリアは自身もシャワーを浴びる。

 

「でもマリア…私達は本当に出来るのかな?」

 

調はマリアに言った。

 

「大丈夫よ。私達なら必ず成し遂げられる」

 

「そうデスよ、調!マリアの言う通り、あんな奴等に私達の邪魔なんてさせないデス!」

 

「でも…装者とは別の戦力になっているガンヴォルトとかいうあの男…あいつの力の底が分からない…あの男…私達と戦っている時、本気じゃなかった…」

 

その言葉にマリアも切歌も黙り込んでしまう。アッシュボルトとの戦闘の際に見せていた自身達の戦闘には使っていない強力な雷撃。そしてアッシュボルトとの戦闘を行いながらも、敵である装者達へのサポート。

 

あの様な力を持ちつつも自分達には手を抜いていた事に憤りを覚えるが、それ以上に自分達に向けてあの様な雷撃を使っていたらと考えると震えてしまう。

 

アッシュボルトという存在がなければ自分達は本当にあの場から逃げ切れていたのだろうか?

 

「…大丈夫デスよ、調!あんな奴がいようと関係ないデス!むしろ私達に本気を出せないならそこに隙があるはずデス!ね、マリア!」

 

「そうね。ガンヴォルトとかいう男が私達を捕まえようとする以上、殺すなんて事は出来ない。私達はその隙をつけばいけるはずよ」

 

「…そうだね…私達がやろうとしている事はあんな奴等に止められるはずないよね…」

 

調もようやく先程まで考え込んだ表情が和らいでいく。だが、マリアには一つ気掛かりな事があった。

 

何故あの時、本気で捕まえようとしていたのに本気を出さなかったのか、殺す気でないのなら好都合なのだが、アッシュボルトとの戦闘で使っていた程の威力を使わなかったのか。

 

それにマリア達に向けて言ったテロリストには似合わない。マリアはどうもその言葉がどうしても気掛かりであった。まるでテロリストというものの本質をどういうものなのか知っているかの様に。確かに、ガンヴォルトはかつてマリアの中に宿っているフィーネと戦闘を行った。だが、フィーネと協力していたのはあちら側にいる雪音クリスという少女のみであり、それだけではどうも納得がいかない部分もある。

 

まるでかつて自身がそうであったような口ぶりの様にも感じる。

 

「本当に貴方は一体何者なの…」

 

その事はアッシュボルトにしか分からない。だがアッシュボルトもこちらにはガンヴォルトに対しての最小限の情報しか渡してこない。

 

あの時の会話からなんらかの因縁があるという事は理解出来るのだが、その事を全くと言っていいほど言わないアッシュボルト。

 

ガンヴォルトとは一体何者なのか。そしてアッシュボルトはガンヴォルトの何を知っているのか。

 

そう考えながら、切歌と調を洗い終え、自身も身体を洗い終えると同時に病院全体が揺れ、警報が鳴り響く。

 

それに反応して三人はすぐさま異常だと感じてシャワー室を出て簡単に身体を拭くとナスターシャのいる元へ向かう。

 

「マム、何があったの!?」

 

モニタールームに目をやるナスターシャへと声を掛ける。

 

「安心しなさい、ネフィリムがお腹を空かせた様で暴れ出しただけです。今アッシュボルトが餌を与えに行っています」

 

そこにはアッシュボルトがネフィリムを最初のように仕置きをして大人しくさせて懐から取り出した聖遺物を渡すところであった。

 

「いやー、ネフィリムには困ったもんですね。アッシュ以外にはまだ少し反抗的な態度を見せますし、ボクの研究も少し手こずりそうですよ」

 

今度はモニタールームへとウェルがボロボロになりながら入って来る。どうやらネフィリムが暴れたところに巻き込まれたらしい。

 

「ウェル博士。ネフィリムの制御はなんとかなりそうですか?」

 

「勿論。今は反抗的ですがアッシュが調教しているおかげで少しはまともになりつつありますよ。それでもまだこんな風に僕では手に負えないところもありますがね」

 

「そうですか…やはり、生きた完全聖遺物の制御はこれほどまでに大変なものだったのですね

…」

 

かつて失敗したように完全聖遺物を完璧に目覚めさせたのにも関わらず、これ程までに制御しづらい事に溜息を吐くナスターシャ。かつてのように暴走して覚醒させた時のように言うことを聞かないネフィリムへモニター越しに見る。

 

だが、それでもアッシュボルトという男のお陰でそれもうまく行っている。

 

「完全聖遺物をいともたやすく…全く出鱈目な男です」

 

「それがアッシュの良いところだよ、ナスターシャ博士。アッシュがいなければここまでうまく事は運べていなかったさ」

 

モニターをうっとりとアッシュボルトの姿を見てからナスターシャの方に視線を移して言った。

 

「ナスターシャ博士もやる事があるのでしょう?ここは僕達に任せて貴方達のやるべき事をしていればいいよ。勿論、それまでにネフィリムに言う事を聞くようにさせておくからさ」

 

「…分かりました。ならば誰かここに置いていきましょう」

 

「いや、その必要はないよ。ここがもし気取られたとしてもアッシュがなんとかしてくれるからさ。それに貴方の周りの警護にはこの子達が必要でしょう?」

 

確かに、アッシュボルトという存在はマリア、切歌、調。三人に比べても遜色ない、いやそれ以上の力を持っている事は理解している。だが、ここが気取られた場合、四人の装者、それにガンヴォルトとの戦闘の際にどれほど有効になるかはこちらでは見当も付かない。

 

「安心して下さいよ。こちらには今モニターに映るネフィリム、そしてソロモンの杖があります。そう簡単には行かせませんよ」

 

それを聞いたナスターシャは考える。そしてアッシュボルトの機嫌を少しでも損ねて仕舞えば、この中の誰かが犠牲になる可能性も考慮して誰も残さないように告げた。

 

「分かりました。私達は少し、ここを開けます。その間、ここの守りは頼みます」

 

「任せてくださいよ」

 

その言葉を聞いたナスターシャは三人へと少しここを離れる事を告げてウェルを除く全員がモニタールームから出た。

 

「さてと、これでアッシュの思い通りになるね…」

 

ウェルはモニターに映るアッシュボルトの部屋へとマイクを繋げると言った。

 

「アッシュ。全員がモニタールームから出たよ。見られたくない物を食べさせるのなら今だよ」

 

『分かった、Dr.ウェル』

 

モニター越しで何かアッシュボルトが五つの黒い塊を取り出した。それはなんらかの聖遺物らしき物なのだが、ウェルもなんなのかは理解出来ない。だが、それでもウェルは何も言わない。気になっているものの、その全てが自身を英雄たらしめる過程なのだから。

 

『さあネフィリム。待ち望んでいた餌だ。それもとびっきりの物だ』

 

ネフィリムはアッシュボルトの言う通りにその黒い塊を喰らい尽くす。

 

『後、私以外の敵…いや奴を餌として認知させる意味でこれも必要だろう』

 

そう呟くとアッシュボルトはグローブを外し、自身の手をナイフで切る。手からこぼれ落ちる血をネフィリムの大きな口へと向けた。

 

ネフィリムは初めはアッシュボルトの血を訝しげにするが、逆の手に雷撃を纏わすのを見て恐る恐る口にした。

 

その瞬間にネフィリムはアッシュボルトの血を舐めとる様に手へと大きな口を運ぶ。

 

『私の腕まで喰らうなよ、ネフィリム。喰らいたければ私同様の能力を持つ奴がいる。そいつを喰らうんだ』

 

ネフィリムはアッシュボルトの手から流れ落ちる血を全て舐め終えるとアッシュボルトは手に雷撃を流し、傷を完全に塞ぐ。

 

「アッシュ、それになんの意味があるんだい?」

 

モニタールームからウェルがアッシュボルトに対して問う。

 

『私同様に同じ能力を持つ奴にネフィリムをぶつける。装者という聖遺物を纏う者がいると奴に対してなんの興味を持たない可能性があるためだよ。どうやらネフィリムも蒼き雷霆(アームドブルー)にはご満悦の様だ』

 

全てはガンヴォルトに対してネフィリムをぶつける為。そう語った。

 

その事をウェルも理解したのか、なるほどと言う。そしてアッシュボルトは装者対策も頼むと言ってウェルに以前フィーネに試した物よりも効力の抑えたAnti_LiNKERを仕掛ける様に頼んだ。完全聖遺物のネフィリムまで作用しては困るためだ。そうしてモニタールームからウェルが姿を消す。

 

そしてモニタールームに映るアッシュボルトはネフィリムを再び檻に戻すと呟く様に言った。

 

『さて、後は貴様がかかるのを待つだけだ。電子の謡精(サイバーディーヴァ)さえ手に入れば私の目的はほぼ達成される…後はネフィリム、いやお前の中のピース次第だ。私を失望させてくれるなよ』

 

モニターに映るアッシュボルトの表情は全く読めないが声からして不敵な笑みを浮かべるようにそう呟いた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「はぁー、今日も色々と大変だった…」

 

「そうだね…と言っても、響があそこでガンヴォルトさんを交えた男性って言うからそうなるんでしょ?」

 

「いやー、ガンヴォルトさんも入っているけど、師匠や緒川さんとかも入ってたんだけどね。まさか先生がピンポイントでそこをつくなんて思いも寄らなかったし…」

 

「響も男性の方々って言ったって他の人達からすればガンヴォルトさんが異様に目立つというよりも響が知らない時にとっても印象が強かったからね。仕方ないとは思うんだけど…」

 

響と未来は放課後、教室から出て溜息を吐く。

 

あの授業での会話の後、休み時間や昼休憩の際に沢山のクラスメイト達、それから他クラスの人が押し寄せて今まで少し収まっていた筈のガンヴォルトの事について質問責めを受けた。なんとかのらりくらり躱せたもののかなりの紹介してなどの事を何度も言われて大変であった。

 

念の為に人気が少ない場所を通り学校から出ようとするが不意に声を掛けられた。

 

「おー、響に未来。どうしたんだ?こんな所を通って?」

 

声を掛けてきたのは奏であり、その後ろにはスーツ姿のガンヴォルトがいた。

 

「奏さん!それにガンヴォルトさんも!というよりなんで学校にガンヴォルトさんが!?」

 

「え、えっ!?なんでガンヴォルトさんがここに!?」

 

響も未来も噂の元となる人物が普通に学校内にいる事に驚きを隠せないでいた。

 

「まあ、成り行きでね。奏にバスケットを渡してすぐに帰るつもりだったんだけど、シアンが秋桜祭の出し物の準備を見てどうしても見学したいっていうからね」

 

そう言うとガンヴォルトの隣に光が集まってシアンが現れた。

 

「だってこんなお祭りみたいなの初めてなんだもん。どんなものか気になったんだから少しぐらい見て行ってもいいじゃない」

 

「最初は帰るように言ってたのは誰だっけ?」

 

「むー!GVの意地悪!」

 

シアンと楽しそうに会話するガンヴォルトだが、未来はシアンの姿も見えず声も聞こえない為に楽しそうに話すガンヴォルトに対して疑問符を浮かべる。

 

「そう言えば、響も未来もどうしてこんな人通りの少ない通りを通ってんだ?正面には最短で行くならここじゃなくて別の道があるんじゃないか?」

 

奏が響と未来にそう言うと休憩時間での出来事を話した。それを聞いた奏はなんとなく納得して、ガンヴォルトの方を見た。

 

「ガンヴォルト、お前ってどんだけタラシなんだよ…」

 

「何の話か分からないけど、何でボクがそう言われるのか納得がいかないんだけど…」

 

途中から話に参加したガンヴォルトは何故そのように言われなきゃいけないのかと少し不満そうにそう言った。

 

「GV…」

 

「ガンヴォルトさん…」

 

奏を筆頭にシアンも響も未来もガンヴォルトに向けて呆れた目を向ける。

 

「本当に訳が分からないんだけど…」

 

ガンヴォルトはそんな四人からの視線を受けて溜息を吐いて答える事しか出来なかった。

 

「それでなんでガンヴォルトさんがここにいるんですか?」

 

未来がようやく本題に移った。

 

「奏に頼まれて、夕飯の代わりにこれを届けにね」

 

そう言ってガンヴォルトが持ったいた大きなバスケットを見せる。その中には沢山のサンドイッチが丁寧にラップで包まれている。どうやら差し入れのようであった。

 

「奏もアーティストで食事制限とかはないんだけど、九時以降の食事はなるべく避けるようにされているからさ。どれくらい遅くならか分からないから一応ね」

 

「そうなんですか。でも、ガンヴォルトさん学校に来たら大変じゃなかったんですか?その…主に生徒に狙われたりで」

 

未来が心配そうにそう聞くが特に何もなかったけどとガンヴォルトは何故そんな事をと言う風に疑問符を浮かべる。

 

「安心しろよ、未来。その為に裏口の方からガンヴォルトをこそっりと入れたんだから」

 

「それなら良いんですけど…」

 

「大丈夫だよ、未来!ここは人通りが少ないし、生徒も殆ど通らないみたいだし!それよりガンヴォルトさん!その美味しそうな物いっぱいあるみたいですし、少し下さい!」

 

「もう響!」

 

「未来、大丈夫だよ。クラスにどのくらいの人数がいるか分からないから沢山作ってきたから。良かったら未来もいる?」

 

ガンヴォルトはバスケットからサンドイッチを取り出すと二人に渡す。

 

「ありがとうございます!」

 

「あ、ありがとうございます、ガンヴォルトさん」

 

「気にしないでいいよ。それじゃあ、ボクと奏はもう少し歩いてから時間を見て帰るから、二人とも気をつけてね」

 

「じゃあね、響、未来。ってこれじゃあ私の姿は未来に見えないし、声も聞こえないわね」

 

そう言ってガンヴォルトの通信機越しに二人に別れを告げる。

 

「あんたが先頭で歩くと目立つだろうが。まあ、そういう事だ。二人共気をつけて帰れよ」

 

そう言ってガンヴォルトとシアン、奏はその場を後にしようとする。だが久々にガンヴォルトに会った未来はまだ話し足りない、そう考えていた。ガンヴォルトとせっかく会えたのにまたしばらく任務で会えなくなるのは寂しい。そう考えた未来は妙案を思いついたように呼びかけた。

 

「あ、あの!」

 

不意に未来が声をかけ三人は足を止める。

 

「ガンヴォルトさん!秋桜祭に来ますよね!?よかったら一緒に周りませんか!?」

 

「なっ!?」

 

未来のその言葉に奏とシアンが驚く。未来も顔を少し赤らめながら恥ずかしそうに言った。だが、これ以上のない話す機会を逃すわけにはいかない。

 

「いいよ、未来。当日はどこで待ち合わせかは連絡してくれれば向かうから」

 

ガンヴォルトは未来の案を承諾し、その言葉に未来は華やかな笑みを浮かべた。

 

「分かりました!楽しみにしています!行こ、響!」

 

未来はそう言って嬉しそうにその場を去っていった。

 

だが、嬉しそうに去っていく未来やどこかこの後の事を考えながら少し不安そうな表情をする響。そして響の予想は的中した様にガンヴォルトは奏とシアンからかなり小言を言われ続けたのであった。

 

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