その日の夜、弦十郎の連絡でフィーネと名乗るテロリストのアジトを特定したと入り、ボクは含めた装者全員で港近くにある廃病院へと赴いていた。
帰ってきた奏とクリスの様子が何処となくよそよそしい態度が少し気になったが、現地へと入るとその態度はなくなり、今は普通に接している。
「こっちは特定した廃病院に到着したよ。周囲に幾つか新しくつけられたカメラもあったけど死角を通って目的地付近までたどり着いた。これから潜入しようと思う」
『了解した。だが気を付けろ。カメラに気付かれず通過したからといっても彼方にも装者、そしてアッシュボルトという強力な戦力がいる。戦う事は免れない』
「分かってるよ、旦那。でも、ここであいつ等をとっ捕まえれば問題ないんだろ?」
「奏さんの言う通り!ここで終わらせれば元通りになるんですから!」
弦十郎の言葉に奏はそう言って響はそれに同意する。
「これ以上奴等を野放しにしていられるかよ。ソロモンの杖をこれ以上好き勝手させられるか」
「雪音、気負いすぎるな。必ずここで全てを終わらせよう」
「翼の言う通りよ。GVがいれば無事に終わらせる事が出来るわ」
クリスがソロモンの杖でこれ以上好き勝手にやられるのを良く思わず、今にも一人で吶喊しそうな勢いであるが、翼とシアンが嗜める。
『翼の言う様に気負いすぎるなよ、クリス君。必ず今夜で奴等を一網打尽にする。と言いたいところだが、そこは奴等の根城であり、カメラの他にもかなりの数の罠が張り巡らされている可能性が高い。ガンヴォルトと慎次が手に入れた帳簿にもかなりの数の武装を購入している記録がある。かなり危険な任務となるが、全員無事に帰ってこい』
「言われなくてもそのつもりだぜ、旦那」
「はい!これ以上被害を出すわけにもいきませんもんね!」
「ああ。もうこの事件もここで終わらせて見せる」
「当たり前だ」
それぞれが返事をして我先に潜入しようとするのだが、ボクは危険を察知して四人を引き止める。
「逸る気持ちは分かるけど勝手に動かないで。まだ完全に侵入出来たわけじゃない。それに弦十郎が言った様にまだ罠がある可能性もある。アッシュボルトの事だからまた爆弾とかの危険な仕掛けている可能性もあるんだから。ここは慎重になって」
そう言って四人を注意する。アッシュボルトは以前より強力な爆弾を使用して周りの被害など考えずに行う者であり、シンフォギアを纏っていない四人が巻き込まれればひとたまりもない。
「GV、どうするの?」
シアンの言葉を機に一斉にこちらへと視線が向けられる。現場に赴いているボクに判断を委ねてくる。
「ボクが先行して道を探す。みんなはボクの後をついて来て」
その言葉に全員が頷く。ボクはそれを見て弦十郎へと潜入する事を伝える。
『了解した。必ず全員無事に帰って来い。今夜でこれまでの脅威を完全に断ち切るぞ!』
弦十郎の言葉にボク等は頷いて廃病院までの道へと潜入を開始する。予想通り、ここに来るまでのカメラとは全く異なる殺傷能力の高いクレイモアや自動機銃など数々の罠が仕掛けていられており、確実に侵入者を殺そうとする物ばかりである。それ以外にも幾つかのカメラと同様に侵入者を検知する罠も張り巡らされていた。だが、罠にはいち早く気付くことが出来、素早く解除していくが、敵にいつ見つかるか冷や冷やとしている。
そして特にバレた様子もなく廃病院の前にたどり着く事が出来たが、今までの外とは違い、彼方のホームであり、いくら構造を知っていたとしても建設当時とは違い、内部を改装して更なる罠を張り巡らせている可能性もある。
「…寒気がするほど静かだな。あんたが罠をしっかりと解除していたからあっちはこっちの存在に全く気付いていないのか?」
「そうであって欲しいけど、既に気付いていて泳がされている可能性もある…」
クリスの言葉にボクが答える。クリスの言う通り、解除していたおかげで気付かれていない可能性もあるが、既に何処かでアッシュボルトはこちらの潜入に気がついている可能性もある。
「何にせよ、もう敵陣の中だ。ここからは何が待ち受けていようと戦闘は避けられないだろう」
「…だな。こっからが正念場だ」
「引き締めて行きましょう」
翼、奏、響は気を締め直して、ボクの後へと続き、廃病院内へと突入した。
◇◇◇◇◇◇
「どうしたんだい、アッシュ?」
モニターを見ながら優雅にコーヒーを飲んでいたウェルが同じくモニターを見ていたアッシュボルトが立ち上がった。
「どうやら、奴等が餌にかかったみたいでな」
「まさかもう来たのかい?ボクも監視はしていたけどそれらしきものは全く映らなかったけどなんでアッシュは分かったんだい?」
ウェルが聞くように付近に設置されたカメラ、作動した罠が鳴らすはずの警報すら鳴らなかった。
「装者達は別だが奴がいればこの程度の罠、気付かれずに解除するのなど容易だ。そのためのネフィリムさ。奴にはその為の仕掛けを施しておいたのさ」
アッシュボルトがそう言うとウェルはネフィリムの映るモニターを見る。モニターには先程まで大人しくしていたはずのネフィリムが何かを察知したのか鼻を鳴らして、解き放たれるのを待ち望むように舌をだらしなく垂らして何か嬉しそうに鼻を鳴らしていた。
「まさか、その為のアッシュの持っていた欠片のことかい?確かにアッシュの持っていた
「ああ、あれもそうだが、それだけじゃソナーにすらならない可能性もある。より確実なものとする為に同じ
アッシュボルトはそう言って、自身の武装をチェックしながら、出口へと向かい、歩み出した。
「あの男は私とネフィリムが相手しよう」
「分かったよ、アッシュ。だったら残りの装者はボクが引きつけるとするよ。通常の装者であればソロモンの杖だけじゃ相手不足かもしれないけど、閉鎖空間、そしてアレがある場所であれば、ボクだけでもなんとか出来るかもしれないからね」
そう言ってウェルもコーヒーの入ったカップを置くと、傍に立て掛けていたソロモンの杖を手にとってアッシュボルトと共に出口へと向かう。
「さて、奴等は今日で終わらせる気でいようが、こちらは初めからそのつもりはない。ここで奴等の聖遺物を奪えれば計画の次のステージはなんの障害もなく進める」
「そしてアッシュがあの男を倒して、
ウェルは嬉しそうにそう言うと、アッシュボルトは頷いて武装をしまう。
「出来なくてもチャンスなどいくらでもある。それに、奴が私に勝つ事などないのだからな」
そう言うと同時にモニターの集中する室内をアッシュボルトとウェルは後にする。
そしてモニターに映る檻の格子が勢いよく放たれると同時にネフィリムがよだれを垂らしながら、獣の如く疾走して行った。
◇◇◇◇◇◇
「…夜の病院なんて気味が悪いわね…しかもこう仄暗い明かりしかないっていうのが妙に雰囲気が出て…」
シアンがボクの後に続きながら病院の廊下の雰囲気に怖気付いてそう呟く。
「真っ暗じゃないぶんまだマシだよ。それにゾンビが出るわけでも、暗視モードのスコープが搭載されたマシンがあるわけじゃないから幾分楽に進む事は出来る。ただ、この闇に紛れてある罠がなければだけど」
そう言って僅かに廊下を照らす明かりを頼りに罠を見つけては解除しながらそうシアンに伝える。
「よく分かりますね、ガンヴォルトさん。こんな殆ど見えないのに罠を見つけ出すなんて」
「他の人と比べて僅かな明かりさえあれば暗闇でも動けるようにしごかれていたからね。このくらいはなんとかなるよ」
「ていうかゾンビってあんたの場合、おっさんとかのおもしろ映画とかじゃなくて実体験なんだから笑えねえよ」
クリスの言葉に奏も翼も警戒しながら頷いた。
「大丈夫だよ。その
そう言って警戒しながらも歩みを進めていると何かガスのようなものが噴出された廊下の前で足を止めて全員に身を隠すように指示を出す。
「なんだあの赤いガスは?」
奏が僅かに視認できるガスを見てそう呟く。
「害のあるものかもしれないな。迂回して通るしかなさそうだ」
ボクはガスの正体が何でアレ、危険な道を進もうとはせずに迂回を提案する。
だがその瞬間に壁を破壊する大音量が鳴り響き、警戒した瞬間にボク等の背後の壁が壊されて獣の様な何かが、ボク等へと、いや、ボク目掛けて襲い掛かろうとする。
「みんな逃げろ!」
ボクは素早く雷撃鱗を展開して攻撃を防いだが獣の勢いに押されてそのまま壁を破壊しながらガスの漏れる部屋へと押し込まれてしまう。
「ガンヴォルト!」
全員がボクの名を叫ぶが、ボクは獣の様な何かに押し込まれてそのままそのまま廊下を押し続けられる。
一瞬で雷撃鱗を解除して、雷撃を身体に流し、身体能力を上げるとそのまま飛びかかる獣の様な何かを避けて投げ飛ばして勢いのまま壁にめり込むのを確認する。素早く口と鼻を覆う。入った瞬間に目に何もない為に、刺激物ではないの把握したが、それでも何があるかわからない。
「アレは一体!?」
投げ飛ばした獣の様な何かを見ながら翼がそう叫ぶ。
そしてボクの心配した全員が廊下へと突入しようとしたのを確認したシアンがそれを制する。
「入ってこないで!これが毒か分からない以上!貴方達も入れば何も術がなくなる!すぐに別の場所から目的地に向かいなさい!ここは私とガンヴォルトがなんとかする!」
シアンの言葉に全員が名残惜しそうにするが全てはここで終わらせると言う目的を優先してここでは別の道を進み、この場を後にする。
そして対峙する獣の様な何かは投げ飛ばされた後壁にめり込んだ頭を抜くと再び、ボク目掛けて突撃をしてくる。
ボクは
だがあろうことか、口を大きく開くとその雷撃を飲み込んでいく。
(雷撃を喰らっているのか!?)
「これって…」
そのあり得ない光景に愕然とする。シアンも何か感じたのかそう呟く。そして雷撃が止んだ瞬間にボクを喰らおうとする様にその大きな口を開けたまま、ボクへと駆け出す。
雷撃鱗を展開して防ぐが、今度は雷撃鱗を喰らい、雷撃を受けながら侵食しながらボクの喉元へと噛みつかん勢いで突き進んでくる。
「GV!」
ボクはその瞬間に雷撃鱗を解いて、食いつこうとする口を躱して蹴りを入れるが、腕でそれを受けて大きな口でこちらを喰らおうとする。
ボクはポーチから先程の罠から回収していた手榴弾を素早く取り出すと近づく口へとピンを抜いて放り込む。
手榴弾が口に入ると同時に口を閉じる獣の様な何か。そしてボクは素早く後退すると同時に爆風に備えて、腕を交差して顔をガードして、後ろへと更に飛び退く。
その瞬間に獣の口から爆発が起こり、獣の口が衝撃で開くと同時に爆風がボクの身体を後退させる。
それと同時に雷撃鱗を展開して飛来する金属片などを防ぐ。
そして爆風が収まると同時に大きく息を吐き、爆風により飛び去った得体の知れないガスが無くなった事を感じ大きく息を吸う。
「GV!大丈夫!?」
「問題ないよ。でも、あれはなんなんだ?」
シアンに無事を伝え、雷撃鱗を解いて爆煙を口から上げる獣の様な何かを見据える。
「ダメージはほとんど受けていないのか?」
口にする様に口から煙を上げているのにも関わらず、何が起きたのか分かっていない様に、口を拭う仕草をする。
「動物か何かならこんな事に使うなんて許せる事じゃない…」
そう言うがシアンは違うと言った。
「シアン、あれが何か分かったのかい?」
「詳しくは分からない…でも、GV。あれは生物なんかじゃない…」
「じゃあ機械か何か?でもこの時代でも完全なアンドロイドなんて存在しなかった。それに雷撃を喰らうなんて機械だろうと出来はしない」
獣の様な何かの行動を見ながらボクはシアンへと問う。
「機械じゃないのは分かってる。でもあれが何なのかは見ても分からないよ。だけど、あれが生物でも機械でもないとなると…」
「…聖遺物…アッシュボルトが言っていた…つい最近覚醒させた完全聖遺物か!?」
そう呟くと同時にボクは雷撃鱗を張った。理由は獣の様な何かが飛びかかろうとしたのに急に動きを止めたからだ。そしてあれはボクの背後を見て何か怯えていた。
瞬間に雷撃鱗にぶつかる何か。だがそれはすぐに離れ、何かは雷撃が迸り、姿を現した。
「よく私の気配に気が付いたな。完璧に殺気も消して忍び寄ったつもりなのだが」
「言うつもりなんてない。それにようやく見つけたぞ、アッシュボルト!」
完全に姿を現したアッシュボルトへとダートリーダーを構えてそう叫んだ。