シアンが歌う謡精の歌がボクの
「アッシュボルト!貴方を此処で捕まえる!」
「捕まえるか…全くそんな甘い判断しか出来ない貴様に私がどう出来るかなんて思えんな」
「これ以上、貴方の思惑通りにさせるわけにはいかないんだ!それに貴方には聞かなければならない事がある!貴方の
「貴様には関係ない事だ」
アッシュボルトはそういうと同時にナイフと銃を取り出して接近する。
ボクも
ぶつかり合う腕と腕。その腕から放たれる雷撃が周囲へと拡散して蒼く照らし出す。照らされる雷撃により互いにもう一方に持つダートリーダーと銃を至近距離で発砲する。
腕を突き放して紙一重で銃弾を躱す。アッシュボルトも同様に
「GV!あれが襲って来る!」
シアンの言葉に背後の獣に視線だけを向ける。獣は大きな口を開けてボクを喰らおうと襲いかかって来るが、ボクはシアンの歌により強化された肉体で獣を蹴り飛ばし、雷撃鱗を展開する。
同時に貫通しそうな銃弾を辛うじて防ぐ。
「やっぱり雷撃鱗を貫通する弾…」
「同じ雷撃能力者がいると分かっているのならば戦える様に考えるのは当たり前の事だろう?最も
そう言ってアッシュボルトは今度はこちらへと何発も銃弾を放って来るが、雷撃鱗でその銃撃を何とか耐える。
だが、その瞬間今度は雷撃麟を背後から獣が襲いかかり雷撃鱗を喰らいながらボクへと迫り来る。
しかもアッシュボルトが銃を捨てて新たにサブマシンガンを取り出すとボクに向けて連射する。しかも弾も同じ様に雷撃鱗を貫こうとして来るが完全にこちらに到達する前に軌道がズレて壁や床へと埋め込まれて行く。しかし、それでも連写する幾つかの弾丸はボクのコートなどに掠る。
「GV!流石にこの攻撃は耐えられそうにないよ!」
「分かってる!」
このままではジリ貧になる。だったら片方だけでも何処かに押さえつけていなければならない。そして先に行った装者達にも手の届かない場所に縛り付ける。
だが、そんな場所は此処には見当たらない。頭を回転させて何か方法を考える。
「何をしようとしているか知らぬが貴様に好き勝手させるはずないだろう」
サブマシンガンを連射しながらいつの間にかボクの雷撃鱗の近くへと移動していたアッシュボルトはそのまま雷撃鱗の届かぬギリギリの所でどこから取り出したのかライフルを構えている。
「GV!?」
今までは威力の低いサブマシンガンやハンドガンであったのだが、ライフルとなると別であり、高い威力と貫通力がある。以前のライブ会場であれば距離による威力の減衰で何とか防ぐ事が出来たが、この至近距離となるとその威力を雷撃鱗で完全に防ぎ切る方は不可能に近い。
「
そういうと同時に引き金が引かれる。
ボクは素早く銃口から身体を逸らし、そして雷撃鱗を解除する。それと同時に放たれた銃弾はボクのコートを貫いた。コートを穿つその一撃は直撃すれば確実に何処かの部位が欠損、悪ければ死んでいたであろう。コートを伝う衝撃がそれを知らせてくれる。
だが、何とか躱すことができた。それに雷撃鱗を解除することで雷撃鱗を喰らい、ボクへと接近していた獣がそのままボクの方へと迫り、コートを貫通したライフルの弾をその巨体にめり込んだ。
「ガァ!?」
そしてライフルの弾に直撃した獣はそのまま吹き飛んでいく。だが、あの一撃を喰らっても身体が貫かれる事なく、吹き飛ぶあたり、生物などでなく、聖遺物であると思わせる。
そしてボクは素早く身体をアッシュボルトへと向けて
「煌くは雷纏いし聖剣、蒼雷の暴虐よ、敵を貫け!」
アッシュボルトも躱されたと放たれたライフルの第二射を放とうとしたが、
「瞬くは雷纏いし聖剣、無慈悲なる蒼雷よ、敵を穿て!」
そして互いの腕に集まる雷が巨大な剣の形を為して行く。
「「迸れ!
瞬間、出現した巨大な剣がぶつかり合う。
狭い廊下を再び蒼き雷撃が周囲を照らし、ぶつかり合った剣が互いの雷撃を侵食し合い、床を壁を天井を破壊してその衝撃の威力を物語る。そして弾かれる様にボクのスパークカリバーとアッシュボルトのスパークカリバーは混じり合って膨大なエネルギーの雷撃となり、弾ける様に吹き飛んだ。
ボクとアッシュボルトはその威力で互いに吹き飛ばされる。ボクは先程飛ばされた獣の巨体がクッションになるが、アッシュボルトはそのまま壁へと激突する。
だが、アッシュボルトは壁にぶつかる瞬間に身体がぶれた。
「GV!大丈夫!?」
「大丈夫だ!」
素早くライフルの銃口から逃れる様に素早く痛む身体を動かして移動しようとしたが、それを止める様に何かに身体を掴まれた。
「まさか!?」
掴む存在など一つしかおらず、先程ライフルの弾を受けて吹き飛ばされ、更に先ほどのスパークカリバーの
雷撃の爆発で更に吹き飛ばされてボクのクッションとなった獣。
「よくやったぞ、ネフィリム」
「GV!」
それと同時に凶弾がボクへと向けて発砲された。
◇◇◇◇◇◇
「シアンに言われて進んでいるけど…本当に大丈夫かよ、あいつ…」
「ガンヴォルトなら何とかしてくれる筈だ。私達はとにかく敵の装者達の方に急がないと」
クリスが心配そうにそう言う。あの獣の様な何かの正体も分からず、対峙しているガンヴォルト。翼も心配だろうが、それでも目的を達成するためそう言った。
「シアンも居るし、ガンヴォルトがあんな奴にやられるわけないだろ。ガンヴォルトなんて紫電とかいう巨大な敵とかにも勝てたんだから今回もなんとかしてくれる」
「奏さんのいう通りだよ!ガンヴォルトさんなら絶対あんなの倒してすぐに追いついてくれるよ!」
奏も響もガンヴォルトを信じて先へと進んでいく。そしてあの獣の様な何かによりガンヴォルトが抜けた事、そしてあの獣の様な何かが出て来て襲って来たという事は既に敵に潜入がバレた事を意味している。
今まではガンヴォルトが罠を解除して進んでいたが、解除出来る者も居なくなり、敵に潜入がバレた以上、シンフォギアを纏わず進むのは危険が伴うため、全員の意見が一致してシンフォギアを纏った。
罠がどこにあるか分からないために、シンフォギアの防御に身を任せた正面突破で突き進んでいく。
「!?」
そして進んでいくごとに現れ始めたノイズ。正面、そして背後に挟む形で現れて、逃げ口を塞ぐ。
「やっぱり操られた様に大量に現れやがった!此処にソロモンの杖が!」
先行していた奏を抜き去り、クリスが前に出てノイズ達を倒して行く。
「クリス!前に出過ぎだ!少しは落ち着け!」
ノイズと対峙しながら槍で対処する奏がクリスを嗜めるが、クリスは静止を聞かずに先へと進んでいく。
「雪音!逸る気は分かるが、冷静になれ!敵の罠かもしれないんだぞ!」
翼も嗜めるのだが、それでもクリスは聞かずに更に奥へと進んでいく。
「クリスちゃん!奏さんと翼さんの言う通り落ち着いてよ!?クリスちゃんの気持ちは分かるけど、ガンヴォルトさんがいない今私達が落ち着いて対処しないとあの人達の思う壺だよ!?」
響が何とか追いついてクリスを抱きとめて止めた。
「分かってるよ!でもこれ以上ノイズを操って誰かを傷つけていくのを黙っていられるか!」
「それでもだよ!その為に私達が止めるんだから!此処で焦って失敗したら元も子もないよ!」
響は突き進もうとするクリスを言いくるめて何とか一人で突っ走ろうとするのを阻止する。
「全く、世話が焼ける」
「ああ、その気持ちは十分分かってるけど、しっかりしてもらわねぇと」
ノイズを斬り伏せながら奏も翼も胸を撫で下ろす。そして四人は再び、ノイズを倒して行くのだが、進んでいくうちにノイズが強くなっているのか今まで斬り伏せられていたノイズが炭になる事がなくなり、倒せなくなって行く。
「はぁ、はぁ…何で急にノイズ達が…」
「強くなっているのか?」
「違う!シンフォギアの出力が下がっているんだ!」
クリスは何故こうなっているのか分からず、翼もノイズの急激に強化されたのか疑問を持つが、唯一この中でLiNKERを使い、シンフォギアの出力低下を体感している奏がそう叫んだ。
「はぁ、はぁ…何で急にそんな事が…」
響も何とかノイズを倒してそう言うが何故こんな事になっているのか分からない。
「でもこの感じ…あの時感じた事のある急な怠さなんて…まさか!?」
響だけがかつて一度だけ感じた事のある感覚。数ヶ月前に未来の捜索の時に感じたあの時の感覚。その感覚と全くそっくりであった。
「一旦引きましょう!何か嫌な予感がします!」
響はそう叫んでノイズを退けつつも全員に一旦引く事を伝える。
「何か知っているのか、立花!?」
「何かまでは分かりませんけど、この感じ!前に一回だけ感じた事があります!これ以上戦い続けるとシンフォギアが解ける可能性が!」
「何の話からねぇけど、馬鹿にしたら良い情報だ!だったら一気にノイズを片付ける!」
クリスはそう叫んでこの一帯を吹き飛ばそうと強力な武装を出そうとする。
「やめろ!クリス!今の出力の状態でそんな大掛かりな事をすれば自分の身体を壊す事になるぞ!?」
奏がそう叫ぶが、それでもクリスは全員が倒れたら元も子もないと叫んで自身の今出せる高威力の武装を出現させて、一帯を吹き飛ばした。
三人は何とか無事であったが、周囲のノイズは全て吹き飛んでおり、クリスの元へ駆け寄る。
「馬鹿!あんたが無事じゃなきゃガンヴォルトが心配するだろうが!」
奏が膝をつき肩で息をしていたクリスへと駆け寄ると叱りながらも立たせる。
「全くだ!この馬鹿者!」
「へっ…このぐらいだったら余裕だっての」
翼も肩を貸して立たせるがクリスは大丈夫だと言う様に、そう言うが纏うシンフォギアは所々ボロボロになっており、軽口を叩けるほどではないだろう。
「クリスちゃん!それでもだよ!何とかなったかもしれないけど、こんなになっちゃって!」
響もクリスを叱る。その言葉に心配をかけすぎたとクリスもごめんと謝った。だが、クリスのおかげで周囲にノイズの存在がなくなり、壁を砕いて、新たな道を切り開いていた。
だが、砕かれた壁の奥から足音と拍手が響く。
「まさか、あの状態で此処までやるなんて驚きましたよ。これが装者の底力というものですか?いやはや、其方の装者はやはり舐めない方が良いと言うものですね」
暗闇の中からこちらへと響く声。そしてようやく姿が見えると四人は驚きのあまり何も言えなくなった。
「おや?まさか僕がこちらに現れた事にそれほど驚きますか?二課の皆さん?」
「な、何で貴方が…」
「その口ぶり…まさかテメェ、最初からそっち側だったっていうのかよ!」
響はその姿に驚き、クリスは現れた存在が持つソロモンの杖を見て、今までのノイズがその手で自分達に仕掛けていたのか目の前の存在であると確信してそう叫んだ。
「まさかテメェは初めからそのつもりだっていう事かよ!ウェル博士!」
そして現れた存在、ウェルに向けて奏が叫んだ。
「まさか!?この男が!?」
資料でしか見た事のない翼はその事実に驚き、ウェルへと敵意の視線を向ける。
「もともとボクはアッシュの味方だよ」
「つまり、テメェはあの時からノイズを従えて列車や基地を襲ったって言うのか!?ソロモンの杖を手に入れる為に!」
「そういう事だよ。でもソロモンの杖を手に入れたのはあの時じゃないよ。君達が輸送任務に入る前にアッシュが先に手に入れていたよ。あの任務はただアッシュがソロモンの杖の試運転に仕組んだただの演出さ。全く、アッシュも人が悪いよ。あの時僕は無事な事は分かっていたけど冷や冷やしたよ」
その口ぶりから初めからウェルがアッシュボルトと繋がっていた事を理解する。
「テメェ!」
クリスがそんなウェルを睨みつけるが、ウェルはどこ吹く風という風に楽しげな笑みを浮かべている。
「自身の敵である自分を知らないとはいえ、守ろうとする姿を見ててとても面白いものでした」
ククッと笑うウェルに翼はクリスを奏に任せて剣を構え、響も拳を構える。
「この外道が!私達を初めから裏切っていてどこまでも私達を愚弄して!」
「此処で止めさせて貰います!これ以上誰も傷つけない為にも!ソロモンの杖と貴方を止めさせて貰います!」
そう叫ぶと同時にウェルがソロモンの杖を使用して再びノイズを出現させた。
「止める!?この僕をかい!?今の君達に本当にそんな事が出来ると思っているのかい!」
一触即発の空気。クリスも自分の足に鞭を打って奏から離れて武装を出現させる。奏もクリスは休んでいる様に言うが足でまといになるつもりはないと言って奏に武器を構える様に言った。
「さぁ!此処で君達にもリタイアしてもらおうかぁぁぁ!?」
叫ぶと同時に地面が大きく揺れて装者が膝をつく。ウェルは見事な尻餅をついて目を白黒させる。
「何なんだよ一体!?」
クリスが急な揺れに対して悪態をつく。
それと同時に響く破壊音。それと同時にライフルの様な銃声が響き、それがどんどんと大きくなってくる。そして、ノイズがいる場所の壁が破壊されるとともに、何か巨体が入り込んできた。
その巨体はノイズの上へ乗りかかる様に押しつぶして現れる。
「な、何でネフィリムが壁を突き抜けて!?」
ネフィリム。この巨体はその様に言うらしい。だが、その巨体の上に横たわる存在を見て装者は叫び声を上げた。
「ガンヴォルトさん!?」
そう、その巨体の上に寝転がるのはこの巨体を相手にしていたガンヴォルトの姿であったからだ。そして、そのネフィリムが開けた穴からゆっくりと誰かが現れる。
「すまないな、Dr.ウェル。この男を始末する上にこの様な事態になってしまったよ。だが、お陰でこの男を始末する事が出来た」
そこに現れたのはライフルを構えから肩に担ぎ上げる、最も警戒すべき敵であるアッシュボルトの姿であった。