戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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11VOLT

さらに年月も経ち、翼と奏は近況のノイズ対応、ガンヴォルトは遠方での対応と別れてノイズの出現の対策を行っていた。

 

ガンヴォルトは基本的に二課に報告のみという形でしか来なくなり、行動はほとんど一課と行っていた。

 

たまには顔を見せて欲しいと翼が連絡とかしている事もあるが、あちらもまだ学生の身。ほとんど予定も合う事もなく、ガンヴォルトとは顔を合わせる事もない。

 

奏と翼、そしてガンヴォルト。ノイズを倒す戦士である彼女達には、休息などはない。何処かで誰かが助けを求めているのであれば戦える者が呑気にしている場合などないのだから。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「奏、翼!ノイズが出現した!直ぐに現場に向かってくれ!」

 

弦十郎からの通信が入り、奏と翼は直ぐに現場へと走る。近場であるために直ぐに到着した。

 

目の前に広がる地獄絵図。人々を襲い炭化させゆくノイズ達。奏は逃げ惑う人達が自分の過去と重なり怒りと復讐のため、歌を歌う。

 

「Croitzal ronzell Gungnir zizzl」

 

奏が光に包まれる。そして光が消えると共に橙色の鎧。シンフォギアを纏った姿で現れた。そして腕に付いているギアを重ねると槍へと変わる。その槍を手にした奏は一目散にノイズ目掛けて駆け出し、貫く。

 

「Imyuteus amenohabakiri tron」

 

そんな奏に続き、翼も聖詠を歌う。青きシンフォギアを纏った翼もノイズを取り出した剣で斬り伏せる。

 

「はぁ!」

 

奏が振るう一振りの槍は目の前に広がるノイズの大群を薙ぎ払い、翼の剣から放たれる斬撃は数多のノイズを炭へと変える。

 

しかし、ノイズ達もただ黙って切られるはずもなく身体を弾丸の様に変えて突撃したり、さらには他のノイズと融合し、巨大な一つのノイズになって彼女達を飲み込もうと大きな口を作り出し襲い掛かる。

 

だが、彼女達はそんな襲い来るノイズの巨体を貫き、弾丸のように襲い来るノイズを斬り裂いて炭へと変える。

 

これがシンフォギアを纏った彼女等の力であり。並みのノイズでは今の彼女達には敵う事がない。しかも、そんな彼女達はどんな時も油断をしないため隙などは存在しないにも等しかった。

 

「奏!」

 

「分かってる!」

 

奏と翼はビルよりも高く飛び技を繰り出した。

 

奏は周囲のノイズを一掃するため槍を投擲すると同時に無数の槍が分身するように出現し、雨のように降り注ぐ、STARDUST∞FOTON。翼も同じく空中に無数の剣を出現させ落下させる、千ノ落涙。二つの無数の槍と剣がノイズの身体を突き穿ち、瞬く間に周囲に存在していたノイズを炭化させて行った。

 

そして最後に残るのは巨大な芋虫のようなノイズと巨人のようなノイズ。

 

「翼!これで終わりにするぞ!」

 

「言われなくても!」

 

着地した二人はその二体に接近する。

 

「これで終わりだ!」

 

二人は大型のノイズ二体に向けて、奏は槍の穂先を回転させ巨大な竜巻を発生させ相手に打つける、LAST∞METEOR。翼も負けじと持っている剣を巨大化させエネルギー波を放つ蒼ノ一閃。

 

二体の巨大ノイズは片や身体を粉々に打ち砕かれ炭化し、もう一方はエネルギー波により身体を真っ二つに切り裂かれ、炭化していった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

ノイズの脅威が過ぎ去り、二人は一課と共に瓦礫の除去や人命救助の手伝いをしていた。

 

まだビルの中に取り残されていた者、怪我を負い動けなくなった者、瓦礫に埋もれてしまい身動きが取れなくなった者を探し、生きている者を探しては安全で治療の行える一課の簡易テントへと連れて行く。

 

奏と翼はシンフォギア装者という立場であるためにその力を使って瓦礫の除去を行い、身動きの取れない者の救助を行なっていた。

 

「大丈夫か?」

 

瓦礫の下に埋もれていた一課の隊員に向けて声を掛ける。隊員は外傷はあまり見当たらないが足があらぬ方向に曲がっていて立てない様子であった。

 

近くにいた隊員がそれを見て彼に肩を貸して立ち上がらせる。

 

「ありがとう。二人とも。二課に助けられたのはこれで二度目なんだ」

 

「えっ?」

 

急な礼を言われた奏は戸惑ってしまう。

 

「瓦礫に埋まっていても君達の歌が聞こえていたんだ。だから僕は諦めずにいる事が出来た。だからありがとう。それと、今回は遠くにいると聞いている彼にもお礼を言ってくれないか?彼がいなければ僕は生きていなかったんだ。目の前でノイズに殺されそうになった時、彼が助けてくれたから」

 

そう言うと隊員に連れられて彼は簡易テントのある方へ歩き始めた。

 

「…」

 

「奏?」

 

先程のお礼。それと彼、ノイズを倒したと言うならガンヴォルトの事であろう。彼もまた、誰かを救っていた事に奏の中の彼の印象が僅かに揺らいでいた。

 

「奏!」

 

考え込んでぼーっとしていた奏が翼の呼ぶ大きな声に反応してビクッと震えた。

 

「ぼーっとしてどうしたの?奏?まさか、何処か痛めてるの?」

 

心配そうに顔を伺う翼。

 

「大丈夫だよ。翼は心配症だな。ただ急にお礼を言われたから戸惑ってただけだよ」

 

心配そうな顔をする翼の頭に手を置いて撫でる。

 

「何するの奏!ちょっと恥ずかしいって」

 

そう言いつつも翼はその手を払おうとはせずに俯くのみであった。それに奏は先程の考えを拭うようにぐしゃぐしゃになるくらい翼の頭を撫でる。

 

「奏やめてよ!」

 

流石に翼もそれには耐えられずに彼女の手から逃れるように身体を捻った。

 

「相変わらず翼はからかい甲斐があるな」

 

「もう…奏の意地悪」

 

拗ねるように頬を膨らませる彼女を見て笑う。そんな事をしている内に隊員が生存者全ての救助を完了した事を告げる。

 

「奏。私達も二課の人が来るまで待機してよ」

 

そう言った翼はシンフォギアを解いて簡易テントの方へ奏の手を引く。奏もシンフォギアは解いてその手の引かれ、簡易テントへ向かう。

 

簡易テントに近付くと一人の女性と隊員達が言い争っている現場に出くわした。

 

「なんであの子を助けてくれなかったんですか!」

 

奏はその言葉がかつてガンヴォルトに向けた自身の言葉と重なった。

 

「貴方達が避難誘導をしっかりしてくれればあの子は他の人達に押し倒されずに助かったかもしれないのに!貴方達がもっと早く来てればあの子がノイズに殺される事もなかった!貴方達が守れなかったせいで!」

 

「落ち着いて下さい!」

 

隊員達の言葉を全く聞かず、噛み付くが如く泣き叫びまくる。

 

「貴方達があの子の代わりに死ねばよかったのよ!貴方達が死ねばあの子が助かったのかもしれない!何のための災害対策の部隊よ!娘を返してよ!人殺し!」

 

奏はその言葉を叫ぶ女性と過去の自分が重なって写ってしまう。奏がガンヴォルトに対して言っていた言葉。救うべき人を救う事が出来なかった隊員がガンヴォルト、糾弾する彼女がどうしても自分の姿と重なってしまう。

 

その様子を見ると足が竦み、その場で蹲ってしまう。自分がもっと早く来ていれば、あの人の娘を助けられたかもしれない、自分がもっと早くノイズを倒していれば…、そのような考えに苛まれる。

 

「奏!奏!しっかりして!」

 

奏の様子を心配して翼が奏を呼ぶ。

 

「私が…私がもう少し早く到着していれば…ノイズを殺してれば…」

 

「奏!すみません!誰か奏を!」

 

翼の声で気付いた隊員が奏を見て直ぐに異常に気付き、奏を担いで医療用のテントの中に連れて行く。

 

中は個室のような空間のため先程の場所が見えず、防音設備もしっかりとしているのか外の音も余り聞こえない。ここまで連れてきた隊員は治療を行える者を連れてくると言って直ぐに出て行った。

 

「…奏」

 

「…私達は、人を助けるために、私のような人を作らないためにノイズと戦っているんだよな…」

 

元気のない奏の声はまるで泣きそうな子供のように震えていた。

 

「…そうだよ。私達は人々を守るために、防人として剣と槍を振ってるの」

 

「…私達がもっと早く、もっと近くにいればあの人の娘を救えたんじゃないのか…」

 

震える声は後悔の念を含んでいた。

 

「…そうなのかもしれない」

 

翼も今回の事に関しては奏を励まそうにも自分も同じような気持ちになり、上手く言葉が見当たらなかった。

 

「私達がやった事は…本当に守るべき人達をちゃんと守れているのかな…」

 

奏の問いに翼は答える事が出来なかった。

 

「…あいつも私が責めた時こんな気持ちだったのかな…」

 

余りガンヴォルトの話を口に出さない奏から出た言葉。その言葉には後悔ともどうとも言えない感情が混じっていた。

 

「奏、翼!無事か!?」

 

医療用のテントの入り口から慌てた形相で弦十郎が入ってくる。弦十郎は二人の様子を見ると顔を歪める。

 

「…さっき入る前にお前達が運び込まれた事と、どういった理由で運び込まれたのかは聞いた」

 

弦十郎は二人に近付くと抱き寄せる。

 

「大丈夫だ。お前達のせいじゃない」

 

弦十郎は二人をあやすように声を掛けるが二人の表情は晴れる事はなかった。

 

「…弦十郎の旦那…私達がもっと早く来ていればあの人の娘は死ななかったのか…あの人が悲しむ事はなかったのかな…」

 

先程同様に震えた声で奏が言う。

 

「…」

 

弦十郎は何も答える事が出来なかった。奏と翼に対してそのような事を言ってしまえば、二人が更なる無茶をして倒れてしまう事を恐れたからだ。

 

「あいつなら、もっと上手くやって全員助ける事が出来たのか…」

 

「…ガンヴォルトでも今回の件はどうする事も出来なかったかもしれない。あの時、奏を助けようとした時と同じように」

 

弦十郎はそう言った。だが、実際のところは分からない。ガンヴォルト自身、未だにノイズの戦闘に対しての限界を、底を見せていないからだ。

 

「あいつの事は憎いけど…あいつは何度もこんな事を見たり聞いたりしてたのか」

 

「…多分な。遠方に行く事の多いガンヴォルトは一課と共に処理作業もしている。お前達よりもはるかにさっきのような状況を経験しているはずだろう」

 

「なら何であいつは潰れないんだよ!残された人達から責められるように言われ続けてるかも知れないのに!」

 

奏は叫ぶ。今にも潰れそうな二人に対してガンヴォルトはこんな状態になったと聞いた事もない。奏の時も怒りはしたが潰れる事すらなく戦い続けている。

 

「ガンヴォルトは、お前達以上に分かっているんだ。ここで自分が止まればそれ以上の負の連鎖が生まれる事をな。ガンヴォルトは翼や奏以上にノイズとの戦闘、救助活動を行なっている。そこでどんな仕打ちを受けようともノイズと戦い続けているんだ。これ以上の被害を出さないためにもな。例え救えなかった命があって、その事を責められようとも」

 

「それは私達だって同じだ!でも…私が言えた事じゃないけど助けた人達にすら責められるのは…」

 

いつにもなく弱気な奏。

 

「…お前達の気持ちは分かる。だが、前にガンヴォルトが言ったように、俺達は全能な神様ではないんだ。出来る事と出来ない事がある」

 

「でも旦那!」

 

「…分かっている。俺達だって出来る事なら全員を救いたい。だが、災害にいくら備えようにも救えない命もある」

 

「なら、どうすればいいんだよ!」

 

奏は泣き叫ぶ。

 

「前にガンヴォルトが言っていた。自分は戦うしかないと。ノイズを倒す事の出来る力があるのだから、自分が折れて仕舞えば被害がより増えるから。例え責められようと自分にはそれしか出来ないと」

 

かつてガンヴォルトが弦十郎にのみ吐露した言葉。それは力でしか何も出来ない自分を皮肉そうに言っていた。

 

「なら私だって!」

 

「ガンヴォルトはお前達と自分は違うと話していた。ノイズを掃討していた時、歌う歌には誰かの支えになる事が出来ると。その歌に救われる人達がいると」

 

その言葉は、何処か昔を思い出すようにガンヴォルトが言っていた。

 

「私達の歌…」

 

翼がその言葉に反応して呟いた。

 

「そうだ。さっき隊員の一人が言っていたんだろ?お前達の歌のおかげで頑張る事が出来たと。だからこそ歌とそのシンフォギアで誰かを支えてやるんだ。お前達はお前達なりの戦いで。その亡くなってしまった人達の願いを背負って」

 

「私達の歌で…」

 

奏と翼が同時に呟いた。未だ二人は暗い表情をしているが先程のように泣いたり、後悔と言った念は少しは拭われていた。

 

「ああ。さっきの事を忘れろとは決して言わない。だが、お前達にはとってそれはとてつもなく重い足枷になる事だってあるかもしれない」

 

弦十郎は抱き寄せるのを止め、二人の目を見る。

 

「だが、潰れそうになってしまったら俺達を頼るんだぞ。二人のサポートは俺等の役目だからな。一人で背負い込もうとするんじゃない」

 

弦十郎は二人に元気を出せというように言う。そして二人から離れ、医療用のテントから出て行く。

 

「気持ちの整理が付いたら出てきてくれ」

 

去り際に弦十郎はそう言って。弦十郎なりの気遣いだろう。

 

「…翼。私達って未熟なんだな…」

 

奏が翼に向けて呟くように言った。

 

「…そうだね…」

 

「弦十郎の旦那もあいつもこんな辛い目に何度も遭いながらも前に進んでるのに私達は立ち止まりそうになって…本当に未熟だ…」

 

奏が見せた表情には未だ迷いが残っているがそこには何処か決心のようなものが見える。

 

「私決めたよ。私は一人じゃどうしようもなくなる。ノイズへの復讐心だけじゃ、私は同じように大切な人を失った人達を救えない」

 

奏は立ち上がり、座る翼と目を合わせる。

 

「だから私は…私の歌が救いになると信じて戦う。だけど私一人じゃ何処まで行けるか分からない。だから翼、私と一緒に来てくれないか?私一人だとまだ真っ直ぐに進めるか分からないからさ」

 

「…奏…。私こそ、自分の歌で救われる人がいるなら奏に協力する。私の方こそ奏に来て欲しい」

 

その言葉で二人は少し、だが先程よりも晴れた表情になる。

 

「決まりだ。これからも一緒に行こう翼」

 

「そうだね。奏となら何処までも頑張れる気がする」

 

二人は手を握る。そしてこの誓いが二人の物語。ツヴァイウイングという彼女達の願いのツバサであった。

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