戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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弦十郎達が警察と協力をして爆弾の全てを解除し終えた事を聞いた四人はガンヴォルトとシアンの無事、そして被害がない事にホッとする。そして、その事で召集がかかり、四人は本部へと足を運んでいた。

 

「良かった…」

 

「ああ。しかし、あいつら何を考えてやがるんだ?アッシュボルトに協力しているにも関わらず、爆弾の場所を教えて助けようとするなんて…」

 

「それはガンヴォルトに聞くしかあるまい。あの時、あの子達以外のアッシュボルトの協力者に連絡をとっていたのはガンヴォルトだけなんだから」

 

「本当に切歌ちゃんも調ちゃんもマリアさんもなんでアッシュボルトって人に協力しなきゃならないんでしょうか?何かあるにしろ、二人の思っている事とは違う様に動かれているのに…」

 

「あいつらの組織、F.I.S.とアッシュボルトの目的は同じでもその仮定が違うとしか言いようがない。というか、あいつらは何がしたいんだ?」

 

四人は自分なりにその事を考えながら、本部の廊下を歩き、司令室へと入る。

 

「来てくれたか。さっき報告した様に、ガンヴォルトとシアン君に言われた爆弾は全て解除した。これで当面の危機は去った」

 

四人が入って来た事を確認した弦十郎が迎え入れながらそう話す。

 

「旦那、それでガンヴォルトは何処に?」

 

「今のところはシアン君と共に解除した爆弾を処理する為に警察と共に行動している。なんとか解除したのはいいが、念のためだ」

 

「そうですか…それで司令、私達をここに召集した理由は?」

 

「まず、依然として謎であった敵装者、マリア・カデンツァヴナ・イヴのガングニールの事について。そしてウェル博士との会話の際にあったガンヴォルトの事についてだ」

 

弦十郎が以前から調べていたガングニールの事が分かった為、その話を。だが、四人はガンヴォルトがウェル博士に会った事は知っているが、何故その事を話に出すか理解出来なかった。

 

そして弦十郎は初めにガングニールの件について話す。あおいと朔夜に解析させた結果、奏と響のガングニールと解析結果が一致しており、敵の所有するガングニールが本物であると告げる。

 

「以前組織とは別のフィーネ本人と協力していたアッシュボルトがF.I.S.と協力して櫻井理論を解析してシンフォギアを形成したと考えて間違いない」

 

「ガングニールももしかしたら、二年前のライブ会場の件で回収しきれていなかった奏さんのガングニールの欠片を使用している可能性もあるから、ありえない事じゃないわね」

 

朔夜とあおいがそう言って敵のガングニールも本物であり、櫻井理論の異端技術を使用されたガングニールであると告げられる。

 

奏は二年前のあの事故が影響している事を悔み、響も自身と同じガングニールが事件を引き起こしている事に胸を痛める。

 

「奏のせいじゃない。奏はあの時よくやってくれた。響君も気を病まないでくれ」

 

弦十郎は二人の心情を察してそう言った。そして話を続ける。

 

「以前からアッシュボルトが了子君…フィーネと協力関係があるため、この様な事が起こったが起きたものは仕方ない。何とか対策を立てる。それともう一つ。米国政府にも動きが見られた事を斯波田事務次官より報告を受けた」

 

斯波田事務次官曰く、米国政府も何故が米国所属のF.I.S.を追っている事。

 

「同所属のはずのF.I.S.を追う理由はどうやらF.I.S.の持つ異端技術の制御に関する事だと思われます。どうやらF.I.S.は米国所属であるものの、聖遺物という物を本国の米国に情報開示をしないまま、独占していたからだと思われます。そしてテロリスト、アッシュボルトにより動かされている事が分かり、自国の組織が陰でこのようなテロリスト、アッシュボルトと協力してこんな事態になっているんだから、それも分かる」

 

「だけど、それを陰でこそこそと動くのが納得がいかないわ。こういう時には協力してでも止めるのが一番なのに…」

 

「結局、自国の組織の存在が公になる事、それにアッシュボルトに操られているにしろ、自国の不始末を最後まで隠し通し、F.I.S.の持つ異端技術をどうにかして手に入れたいという考えだろう」

 

朔夜とあおいの言葉に弦十郎がそう言った。

 

「それともう一つの本題、ガンヴォルトとウェル博士の会話についてだ。藤尭、友里、ガンヴォルトがこちらに通信を繋げてからの録音データの再生をしてくれ」

 

弦十郎の言葉に二人が音声データを再生させた。

 

『これが再生されているのなら聞いているだろう。貴様と私、同じ蒼き雷霆(アームドブルー)能力者、そして消して交わらない私達の目的、ならばやる事は決まっているだろう』

 

流れ始める音声データ。それは四人も聞いた事のある変声機により変化させられた声。そして喋り方からアッシュボルトという事が理解出来る。

 

 

『貴様の息の根を止めて、電子の謡精(サイバーディーヴァ)を頂く。私はそれさえできれば貴様などに用はない。貴様は私を止める。だったらやる事は分かるであろう?』

 

ガンヴォルトを殺すという意志を隠さず、そしてシアンを奪う事を告げるアッシュボルト。何故アッシュボルトはシアンを狙い、ガンヴォルトをここまで殺そうとするのか。かつてのガンヴォルトと同じ組織に所属したと思われるアッシュボルトとガンヴォルトにどんな関係があったのか。シアンを何故そんなにも欲しがるのであろうか。その場にいる誰も理解出来なかった。そして、まだ音声データは残っているために続く。

 

『答えは聞かずとも分かっていたよ。場所は既に決まっている。貴様の正体を知ったあの深淵(アビス)で待つ。そこで貴様と相見えよう。電子の謡精(サイバーディーヴァ)と共に二人で来るんだ。出なければ何の関わりのない者が多く死ぬと思え』

 

そして音声データが終了した。その事でウェルがあの場に現れた理由。アッシュボルトからの言伝をガンヴォルトへと伝えるため、戦うため、そしてその条件を飲まなければ爆弾で大勢の命を奪う事を知る。

 

「師匠、ガンヴォルトさんがウェル博士に会ってアッシュボルトって人からの言伝でどんな事を聞いたか分かったけど、何でガンヴォルトさんの事についてなんですか?」

 

響が先程聞いたアッシュボルトの録音データについてどこがおかしかったのか聞いた。

 

「それは俺達よりもアッシュボルトと何度か対峙している響君達の方が理解しているはずだ。アッシュボルトが何故ガンヴォルトを敵視しているのか、何故敵はガンヴォルトを知るはずなのに名前を呼ばないのか」 

 

「アッシュボルトが私達の前に初めて姿を現した時に言っていた事、そしてさっきも言っていた事。ガンヴォルトが本当に何者かという事ですか?」

 

翼はガンヴォルトの事を知っているかのような蒼き雷霆(アームドブルー)は本物かと言うメッセージ、そして初めてアッシュボルトが姿を現した時放った言葉を知っており、それに加えて先程の言葉からそう言った。

 

「ガンヴォルト自身も、シアン君自身も何なのか分かってはいないみたいようだが、アッシュボルトはガンヴォルト、そしてシアン君の何かを知っている」

 

「確かにアッシュボルトはガンヴォルトの事を知っているのに名前を呼ばないけどそれが何だっていうんだよ?」

 

「まさか!あいつが私達を裏切っているなんて言うつもりなのか!?」

 

奏の言葉にクリスがそう叫ぶ。

 

「俺達もそんな事思っていないよ。だけど、その謎さえ解ければガンヴォルトと情報を共有してアッシュボルトの目的を知る糸口になるかもしれないと思っているんだ。それにあいつの過去を知っているからこそ、嘘はつこうとガンヴォルトがそんな事するなんて俺達は誰も思っていない」

 

「そうよ。クリスちゃんの気持ちは分かるけど、ガンヴォルトが裏切りという行為を嫌っているのはクリスちゃんも知っているでしょう?」

 

ガンヴォルトが裏切る事を嫌っている事はこの場の全員が知っている。過去に恩師に裏切られて、大切な人を殺された。だからこそ、それはあり得ないと朔夜もあおいもクリスに向けて言う。

 

クリスも二人の言葉の意味を理解して悪いと謝る。

 

「クリス君の思う事は分かるが、あいつが裏切るなんて何があろうとないだろう。話を戻すが、アッシュボルトがガンヴォルトと過去に同じ組織に所属していた事だけは分かっているが、それ以外はかつてフィーネと協力していた事、過去に他国の聖遺物研究機関を狙っていた事、そして現在はシアン君を、電子の謡精(サイバーディーヴァ)を狙っている事しか分からない。だからこそ、アッシュボルトの目的を知ればF.I.S.のやろうとしている事を少しでも知る事が出来る可能性があるんだ」

 

弦十郎は四人に向けて、そしてこの場にいる全員に向けて告げた。

 

「何としてでも、奴等の目的を知り、一早く起こそうとする事を止める!いつまでも奴らの後手に我々が回るわけにはいかない!」

 

弦十郎がそう宣言すると、この場にいる全員が、アッシュボルトの事を、そしてF.I.S.の関係者を調べ始めた。

 

「それに、ガンヴォルトはいずれにせよ、アッシュボルトと対峙をする。少しでも何か分かればあいつの助けになるからな」

 

弦十郎の言葉に四人だけではなく、この場にいる全員の表情に翳りを見せる。

 

ウェルの持っていた音声データが本当であれば、四人と共に敵装者である切歌と調とも決着をつけると約束がある。だからこそ知らなければならない。敵の目的を。

 

◇◇◇◇◇◇

 

「貴方達もあの場にいたのですね」

 

かつてフィーネと装者、そしてガンヴォルトが戦った場所、そして紫電により使われて、ガンヴォルトが破壊したカ・ディンギルの跡地にウェルと切歌、調が邂逅する。

 

ウェルとアッシュボルトはこちらの意図しない動きをしてまるでやっている事は分からないが、切歌と調は先程の事でウェルへと問い詰めている。

 

「ふざけた事抜かすんじゃないデス!何であの場に爆弾なんて仕掛けていたんデスか!」

 

「私達の目的は人類の救済の筈!それなのに何故あんな事を!」

 

切歌と調はウェルへと向けて叫ぶ。

 

「確かに、我々の目的はいずれ滅びゆく人類をノアの方舟であるフロンティアを使い、可能な限り命を救う事。ですが、それでも救えない命がある事は貴方達も理解しているでしょう?」

 

「だからってあの場であんな事をする必要なんてない!」

 

「私達の目的は一緒でも、お前達はそんな惨い事を何で平然とやれるデス!」

 

ガンヴォルトが何とかしている可能性もあるが、それでどうにもならない場合、数多くの命が失われると考えた二人がそう言った。

 

「救えない命に何の価値があるんですか?それならば楽しいひと時で一生を終えた方が幸せでしょう?いずれ来る終末をただ黙って迎えるより、知らずに幸福な内に死ねる。それがどれ程幸福なのか貴方達子供には分かりませんか?」

 

「この外道!」

 

「お前達は本当に同じ人間なんデスか!?」

 

調も切歌もその事が理解出来ないとばかりに、ウェルに向けて噛みつく。

 

「Dr.ウェルの言う通り、救えない命を今救ったところで何の意味があると言うんだ?お嬢さん(レディ)達はそれが最前だとでも言うのか?それは飛んだ偽善だ。知らないうちに命を失った(ロスト)した方が幸福な事もあるだろう?」

 

突然虚空に響く、変声された声。そちらに視線を向けるとバチバチと静電気のように弾ける電気が見えるとともに迷彩で姿を消していたアッシュボルトが現れた。

 

「アッシュボルト!」

 

調はアッシュボルトへと憎しみを込めた声で名を呼んだ。

 

「いずれ、お嬢さん(レディ)達が背負う罪を私が代わりに背負おうと言うのにな…。まあ、それも君達のせいで台無しになった事なんて分かり切っている事だかな」

 

既に爆弾を解除しようと動いていた事にも気付かれており、切歌も調も冷や汗が溢れ出す。

 

「何、その事は責めんさ。どうせ、今ある爆弾では何千の命を損失(ロスト)させるほどの火力が足りない」

 

「アッシュ!君もいたのかい!それよりも目的の物は!?」

 

「ああ、今までなるべく使わないようにしていたが、奴があれほど力を持っているのならば話は別だ。弾に限りがある上に手に入れる事の出来ない物で使いたくはなかったが奴を殺す為に使わざるを得ない」

 

そう言ってアッシュボルトは銃を翳す。

 

第七波動(セブンス)能力者である奴には驚き(サプライズ)を用意した」

 

リボルバーのような銃。それには切歌と調には禍々しく映る。

 

何なのか二人は理解出来ない。だが、その銃から出る禍々しい何かが二人にとってもあの男、ガンヴォルトにとって危険である事は察する。

 

それとともに何かが近くに着陸するように砂埃が舞うと同時に移動用、そして住処として使っている、機体が姿を現し、そしてすぐさまマリアが降りてくる。

 

「二人とも無事で良かった!ごめんなさい…こんな事になっているなんて…」

 

二人を危険な場所へ知らずと送っていたマリアが、二人を抱きとめて、そう言った。

 

そしてその後に降りてきたナスターシャはアッシュボルトとウェルの元へ向かった。

 

「何故あんな事をしたのですか!アッシュボルト、ウェル博士!!あの場で二人を危険な目に合わせた挙句、あのような事を!」

 

「Dr.ナスターシャ。貴方も理解している筈だ。大勢なら命を救うとしていても救えない命がある事くらい。それにあのお嬢さん(レディ)達とは違い、貴方はどれ程こちらの有利(アドバンデージ)を消したか分かっているのか?」

 

先程と打って変わって少し苛立ちを見せるアッシュボルトがナスターシャへと言った。

 

「分かっています!ですが、それでも虐殺を私が認めるとでもお思いですか!無垢な命をあんな形で!」

 

「甘いのだよ、君達は。以前、私がいないうちにDr.ウェルの前で表明したのだろう?例え、今が悪魔(デーモン)の所業だろうと、可能な命だけを救い、それ以外を切り捨てると。それなのに貴様等はどうだ?救えない命なのに、あの男と連絡を取り、あまつさえ、以前私が仕掛けた爆弾を解除させる。本当に救う気があるのか?」

 

アッシュボルトの言葉にナスターシャは何も返せない。自ら進んだ道にしろ、アッシュボルトの言葉は正しい。だが、それでも、虐殺は間違っているとナスターシャは言った。

 

「それでも、あんな形で!命を弄ぶように殺す事など間違っています!いずれは私達が選別しなければならないですが、あんな事!」

 

「本当に甘い…貴様らは本当に(テロリスト)に徹する気があるのか?」

 

ナスターシャの言葉にアッシュボルトはため息を吐いてそう言うと、呆れるとともに機内へと向けて歩き出した。

 

「貴様達には本当に(テロリスト)と言うとさものがどう言うものか理解出来ていないようだな」

 

そして機内へと入るアッシュボルトの後を追うようにウェルが歩き出す。

 

「あまり、アッシュを幻滅させないで下さいね。私達と組んでいれば必ず、うまく行きますから。救いたいんでしょう?可能な限り人々を」

 

ウェルもそう言って機内へと入っていった。

 

「…外道共…」

 

ナスターシャは自身の座る車椅子の肘掛けを強く握り、ただあの二人に対して上がる憎しみを堪えるしかなかった。

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