戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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準備を終えたボクと装者達はヘリへと乗り込み、東京番外地、カ・ディンギル址地へと向かっていた。

 

ボクはダートリーダーの状態を確認しながら言った。

 

「みんな、さっきのアッシュボルトの言う通り、ボクとシアンだけでアビスへと向かう」

 

「分かってます…ガンヴォルトさんとシアンちゃんだけで向かわないとアッシュボルトって人…また爆弾を使うつもりなんですから…もうこれ以上犠牲を出さない為にも…その人が本当にアシモフっていう人なのか確かめなきゃいけないんですよね」

 

「アッシュボルトがアシモフとかいう野郎だろうがやる事は変わらないんだろ?あんたとシアンがアッシュボルトを止めるなら私等はあいつ等とやり合わなきゃならないんだ」

 

「そうだな…敵の有利な状況にガンヴォルトは自ら飛び込んでいくのなら、あの子達は私達が何とかしないといけない。それにあの子達と共に居るマリアも、そしてガンヴォルトに連絡してきた人物も」

 

「だな…ここで終わらせるんだ。もう誰も悲しませない為にも、奴らが何を企んでるかなんて捕まえてから考えよう。分かんない事よりも今やるべき事を私達はやるだけだもんな」

 

四人もそれぞれ、やるべき事を口にしてもうすぐ始まる戦闘に気持ちを切り替えていく。

 

「そうだね…あの子達はみんなに任せるから、私達はアッシュボルトとの戦闘に集中しよう」

 

シアンもボクにそう声を掛けて、その言葉に頷く。

 

だが、それでもアッシュボルトの正体の事をどうしても考え込んでしまう。アッシュボルトは本当にアシモフなのか。それならば何故この場所にいるのか。聞きたい事が山程ある。

 

そんな事を窓の外を見て考え込んでいると街並みがなくなり、荒野となったカ・ディンギル址地へと入った。だが、その瞬間に窓の外、地上で何が高速で移動しているのが見える。暗い荒野でも仄暗く光る、線のようなもの。それは地上からこちらを捕捉するようにカ・ディンギルの方から移動してくる。そしてその何かはこちらへと向けて跳躍する様に飛び上がる。ボクはそれを見た瞬間に叫ぶ。

 

「退避を優先して、装者全員聖詠を歌ってシンフォギアを纏ってくれ!」

 

叫びながら、ヘリの扉をスライドさせるとボクはそのまま飛び出し、高速で近づいてくる何かに向かっていく。

 

「なっ!?」

 

突然の行動に装者全員が、驚くが、すぐに聖詠を唱え、ボクの後に続くようにヘリから飛び出した。

 

「シアン!頼む!」

 

「任せて!」

 

シアンが歌を歌い、ボクの第七波動(セブンス)蒼き雷霆(アームドブルー)を強化してくれる。その瞬間、ボクは体勢を整えて迫りくる何かに向けて足を振り落ろし、ブーツで何かを捉えると、そのまま地面へと向けて叩き落とす。

 

そして自由落下に従い、ボクは地面へと降り立つと先に落ちて土煙が上がる場所に向けてダートリーダーを構える。

 

「ガンヴォルト!何を叩き落とした!?」

 

一番先に降りた奏がボクへと近づいて聞く。そしてそれに続いて降り立つ三人もボクの側へと近づいてそれぞれの武器を構える。

 

「ネフィリムだ。まさか、またこんな物を持ち出してくるなんて」

 

そういうと同時に土煙から飛び出してくるネフィリムが装者にも目もくれず、ボクに向けて飛び掛かる。

 

「この!」

 

「ぶっ飛ばす!」

 

ボクより先に動いた翼と奏が、剣と槍でネフィリムを斬り飛ばす。

 

「まさか、あいつ等こいつまで連れてきやがったのか!?」

 

「という事はまさか!?」

 

クリスはネフィリムを見て二人、もしくは三人は更なる脅威であるネフィリムまでいる事に悪態を吐き、そして響はネフィリムがいる事を見てその他の存在の姿を探す。

 

「早かったですね、二課の装者のみなさん。それにガンヴォルト」

 

手を叩きながら、土煙が止んだ場所から現れたウェルの姿を確認する。

 

「野郎!」

 

クリスはウェルの手に持つソロモンの杖を見て忌々しそうにウェルを睨む。だが、ウェルはそんなクリスの睨みを無視して再び襲い掛かろうとするネフィリムに言った。

 

「ネフィリム。好物が目の前に現れて興奮するのは分かりますが、堪えてください。あれはアッシュの獲物ですよ。またアッシュの雷撃を喰らいたくはないでしょう?」

 

ウェルがネフィリムへとそう言うと先程までこちらへと飛び掛かろうとしていたネフィリムが大人しくなる。

 

「ウェル博士、ネフィリム…あの子達との果し合いの約束ではなかったのか!」

 

「切歌ちゃんと調ちゃんはどこにいるんですか!?」

 

翼と響が現れたウェルに聞く。

 

「あの子達なら今は簡易基地の方でお留守番をしているところですよ」

 

「テメェもアッシュボルトも約束を違えるつもりか!」

 

ウェルの言葉に奏が叫ぶが、その言葉をウェルは鼻で笑って答えた。

 

「違える?何の事でしょう?」

 

「ふざけないで下さい!アッシュボルトって言った人も切歌ちゃんと調ちゃんの言伝でこの場で決着の話だったのに騙し討ちみたいな事を!」

 

「騙し討ち?何を言い出すかと思えば、そういう事ですか。それは君達が勝手に勘違いしているだけでしょう?あの時アッシュは伝言とだけ言ってましたよね?あれは僕からですよ。貴方達のその聖遺物をネフィリムの餌にする為、こちらへと来て下さいっていうね。アッシュはあの二人の伝言なんて言っていましたか?勘違いをして来たのは貴方達の方でしょう?」

 

「ふざけた事をぬかしやがって!もうこの際、どうでもいい!お前の持つソロモンの杖!そいつをお前達から取り返す!」

 

クリスがそう言ってウェルに銃を構えた瞬間と同時にウェルがソロモンの杖を起動させて、大量のノイズを出現させる。

 

「出来るものなら見せてもらいましょうか!」

 

そう言ってノイズを操り、装者達はノイズを倒す為に迫り来るノイズに各々の武器を振るう。ボクもそれに加勢しようとするが、ノイズはボクへと攻撃も近寄りもせず、ただ道を開けるように装者達へと散っていく。

 

「どういうつもりだ!?」

 

「さっきも言いましたよ、ガンヴォルト。貴方はアッシュの獲物だと。倒すのはボクではなく、アッシュなんだ。僕の英雄譚(サーガ)には君を必要としているが、君を倒すのは僕じゃなくてアッシュだ。それにアッシュに言われているんだよ。君はアビスへと向かわせるってね」

 

罠かと思うが、ウェルは次々と召喚していくノイズ達は全くボクとシアンを襲わずに装者達へと向かっていく。

 

「ガンヴォルトさん、シアンちゃん!此処は私達が止めます!」

 

「だからあんたとシアンは奴の…アッシュボルトの元へ迎え!」

 

響が拳でノイズを炭へと変えて砕き、クリスがそんな響の背後を襲おうとするノイズをサポートして銃で貫いて行く。

 

「立花の言う通り、ここは私達が何とかする!だから行って!ガンヴォルト!」

 

「ガンヴォルト!お前はやるべき事をやるんだ!アッシュボルトを止める!そしてアッシュボルトが何なのか突き止める事を!」

 

翼と奏がノイズを斬り伏せながら叫ぶ。

 

「GV…此処はみんなに任せて私達は行こう…アビスに…アッシュボルトの元に。そして知らなきゃならないよ、正体を」

 

シアンが、ボクに向けてそう言ってボクは悩んだ末に駆け出す。

 

「みんな、絶対に無事でいてくれ!ボクはアッシュボルトを止めに行く!」

 

それで良いと言う風に全員から視線を受け取って、ボクは聳え立つカ・ディンギルへと駆け出す。

 

「さて、ガンヴォルトもアッシュの元へ向かって行きましたし、始めましょうか。ネフィリム、廃病院で出せなかった貴方の力をこの少女達に見せてあげましょうか」

 

通り過ぎるのを見送ったウェルは不穏な言葉を呟きながら、ネフィリムに指示を飛ばし、ノイズと戦闘する四人へと向けて攻撃を仕掛けるのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

ボクは聳え立つカ・ディンギルの亀裂から内部へと侵入して、旧二課本部へと潜入する。そしてかつて通った道を辿り、アビスへと向かう。

 

「GV…アッシュボルトが本当にアシモフさんだったら…」

 

走るボクの後に追従するシアンが不安そうにそう言う。

 

「…」

 

ボクはその問いには答える事はなかった。いや答えるとアッシュボルトが本当にアシモフだと認めてしまうのが怖かったのかもしれない。シアンを殺し、こんな姿にまでした人がボクを殺しかけた人がこの場にいる事はやっぱり信じたくはない。

 

だが、それでもアッシュボルトの口調、そしてあの時に見せた目はどうしてもアシモフだと思わざるを得ない。

 

「GV…」

 

「大丈夫、絶対にアッシュボルトはボクが止める。もうこんな悲劇を続けさせない為にも」

 

そう言ってボクはただかつて辿った道を走り抜ける。そして、ようやくたどり着いたアビスへと繋がる扉。そこは既に壊れて開かれているが、這ってでも出て来た時とは違い、とても肌寒く、そしてその深淵が見える場所からは何とも言えない恐ろしい雰囲気を醸し出していた。

 

「此処がアビス…」

 

底の見えない闇の広がる大きな穴。それを初めて見たシアンは震えながらそう言った。

 

「この底にアッシュボルトがいる…」

 

深淵を見下ろしてボクは呟くように言った。

 

「…行こう、シアン。アッシュボルトをここで止めるんだ」

 

「…うん、もうここまで来たらやるしかない」

 

そう言ってシアンは再び歌を歌い、ボクの蒼き雷霆(アームドブルー)を強化する。

 

そしてそのままボクは底の見えない深淵へと飛び降りた。

 

長い暗闇を落下して行く。平衡感覚が狂いそうな暗闇を雷撃で照らして深淵へと向かう。そしてかつてここをよじ登った感覚から底である事を察して雷撃鱗を展開して落下スピードを落として底へと辿り着いた。

 

かつてフィーネと戦闘を行ったこの場は全くと言って良いほど手がついておらず、奏を助けた際の空間。そしてそこ等中に広がる瓦礫が依然として残っていた。

 

だが、かつて違うものが一つだけ。後ろ姿を見ただけで分かる。アッシュボルトの姿。

 

「ようやくお出ましか」

 

「アッシュボルト!」

 

振り向くアッシュボルトへとそう叫ぶ。

 

「貴様と電子の謡精(サイバーディーヴァ)だけだな。Dr.ウェルはうまく、やったようで何よりだ」

 

深淵でアッシュボルトの言葉が響く。

 

「さて、この場で決着をつけようか。だが、その前にここまで約束通り来た報酬(リワード)だ」

 

そう言うと同時にかつて戦った時に破壊したはずの明かりが、一斉に灯り、深淵を照らし出す。

 

それと同時に見えるようになったバイザーを付けたアッシュボルトの姿。

 

見える様になった事により、アッシュボルトはバイザーへと両手を動かし、ヘルメットを脱ぐかのようにバイザーを外した。

 

そしてようやく現れたアッシュボルトの素顔。

 

見るまでは信じたくなかった。そうであって欲しくなかった。だが、ボクのその願いを打ち砕くかのようにアッシュボルトの素顔が顕になった。

 

「…信じたくなかった…違って欲しかった…」

 

「そんな…なんで貴方まで」

 

ボクはただ重くなる口を何とか動かして声を出し、シアンはそうだと感じてはいたようだが、ボク同様に驚きが隠せていない。

 

「違った、信じたくなかった?そうだろうな。だが、貴様にだけは言われたくないな。私も貴様の正体を知ってから本当にあの場で何故止めを刺さなかったのかと後悔しているところだよ。よもや、この世界で再び貴様に出会う事になるとはな」

 

「…何を言っているかさっぱりだ…それに何で貴方がこの場にいるんだ、アシモフ!」

 

ボクはかつての師、そして恩人である人の名前を叫んだ。

 

「貴様にその名で呼ばれる筋合いはない。紛い物風情が。真似事をする貴様にだけはな」

 

アシモフはバイザーを投げ捨てそう怒りを孕ませた視線でボクへと向けて言った。

 

「本当に吐き気がする。その姿、その言動、そして私が育て上げたものを完全に模倣する貴様がな」

 

「だから何の事だと言っているんだ、アシモフ!」

 

「貴様への報酬(リワード)はもう払った。もう言い合うのもこれ以上は私の怒りが抑えきれん」

 

そう言ってアッシュボルトは、いやアシモフは銃とナイフを取り出し、蒼き雷撃を身体に迸らせ、武器を構える。

 

ボクもそれと同時に生体電流をシアンの歌により強化された雷撃を流し、身体に雷撃を迸らせ、ダートリーダーをアシモフへと向けて構えた。

 

「さあ、始めようか。あの時に私が怠慢を起こして始末出来なかった事で起きた事を。七年前の不始末を」

 

その言葉と共に、アシモフの銃弾とボクの避雷針(ダート)が各々へと向けて放たれる。そしてその銃声が開戦の合図の如く、アビスの深淵が白の光から蒼き雷撃で照らし出された。




お待たせしました!
やっぱりお前じゃねえか…
ようやく正体が判明しましたのでこれからは名前を出す事を解禁します!
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