ニヤリと不気味に笑うネフィリム。その不気味な笑いに奏と翼はたじろく。クリスの攻撃を簡単に返して、気絶させる
怒りよりも奏と翼は恐怖に蝕まれる。
フィーネや紫電との戦闘ではこんな事を感じた事はなかった。ガンヴォルトがいるいないとは関係ない。今この場でネフィリムが見せるこの場を支配する恐怖。
自身が殺されるかもしれない恐怖。目の前のネフィリムを本当に倒せるのかという疑問。何とか気持ちを持ち直そうと奏も翼も武器を強く握り、気持ちを保とうとするのだが、握る手は震え、武器にまで伝播してかちゃかちゃと音を鳴らす。
それを見たネフィリムはさらに不気味な笑みを漏らして、その口から溢れ出る涎を垂らす。
「ああ…」
二人はその動作で完全に戦意が一気に削がれるのを感じる。
倒れるクリス。腕と足を喪失して呻く響。そして五体満足であり、更に未だ立つ奏と翼を狙おうとするネフィリム。
既に決着がついている様な状態。
そしてネフィリムは再び身体を発光させると共に奏と翼へと一瞬で移動していく。気付かない内に剣を折られて突進を喰らう翼。
翼はそのまま吹き飛ばされてしまう。
「がぁぁ!?」
「翼!」
奏はそう叫ぶのだが、ネフィリムが翼を吹き飛ばすと同時に不気味な笑みを浮かべて、今度は奏へと狙いを定めて、身体を発光させる。
奏は射線から抜け出そうと動こうとする。だが、軋む身体。そして恐怖によりうまく身動きが取れず、その場で尻餅をついてしまう。
「あぁ…」
恐怖で動けない奏へと嘲笑うかの如く、ネフィリムはそのまま一瞬で姿を消す。
奏は目を瞑る。ドガッという何かが衝突した音が響く。だが、痛みも何も感じない。どうして?
奏はゆっくりと目を開けると、そこには見慣れた赤いシャツを来た弦十郎がネフィリムを受け止めており、ネフィリムの頭を握り、抑え込んでいた。
「よくも…」
「だ、旦那!?」
奏は弦十郎の姿を見て安堵する。ガンヴォルトとは違うが何処か安心するその背中。
そして弦十郎の怒りの篭めた言葉を吐き出す。
「よくもやってくれな!」
そしてそのままネフィリムを足で蹴り上げると共に殴り飛ばして吹き飛ばした。
「奏…翼…クリス君…響君…」
倒れる装者達の名前を呼び、弦十郎は四人の今の姿を見て怒りを込め叫ぶ。
「ウェル博士!俺はお前を許しはしない!大切な子供達を!未来ある子供達にこんな事をして、人があるべき道を違えたお前だけは!」
そう叫ぶ弦十郎は拳を構えて立ち上がろうとするネフィリムへと拳を叩き込んだ。
「ガァ!?」
ネフィリムは何が起こったのか分からずに再び吹き飛ばされてウェルの元へと転がり込んだ。
「馬鹿な!?シンフォギアを纏わない人間に!
ウェルもあり得ないとばかりに弦十郎へと向けて叫ぶ。だが、弦十郎はただ静かに、そして怒りを込めてウェルへと告げる。
「いいや、約束は違えていない。アッシュボルトが言ったのはガンヴォルトとシアン君の事であり、この戦いにおいての約束ではない。違えてなどいないさ。もうお前達は…いや、違う。お前はもうその完全聖遺物ネフィリムと同じ獣だ。お前達がこの子達を…いや、未来ある子供達を…それを見守るべき大人達を虐殺しようとするお前達などもう人間ではない!」
そして弦十郎は拳を再び構えて言う。
「お前達は必ずこの場で倒す!この子達を助けるためにお前達を俺がこの手で!」
「ちっ!戯言を!ただの人間がふざけた事を抜かさないで下さいよ!それに忘れていないですか!こちらにはソロモンの杖がある事を!」
そう言ってウェルはソロモンの杖を起動してノイズを大量に呼び寄せると弦十郎に向けて襲い掛からせる。
弦十郎も迫り来るノイズを震脚で地面を揺るがせて地面をめくり上げると共に浮かび上がった岩をそのまま拳で撃ち抜いてノイズではなくウェルへと向けて放つ。
「馬鹿な!?」
ウェルは突然の事に動揺するがすぐにノイズを自身の前に出現させるとノイズを壁にして岩を防ぐ。
「貴方は本当に人間なんですか!?」
「人間だ!だが、貴様達の様な外道とは違う!真っ当な道を歩み続けた俺達が人間だ!貴様達の様な人の命を!未来がある子供達にこの様な事をした貴様達の様な外道とは違う、本当の大人なんだよ!」
そして迫り来るノイズを発勁で吹き飛ばす。だが、ノイズは吹き飛ばされるだけで炭に変わる事はない。
だが、弦十郎の後方から竜巻が、斬撃の様な何かが、通り過ぎると弦十郎の前に現れたノイズが炭となり消えていく。
「旦那!すまねぇ!」
「司令!」
背後から弦十郎の隣に奏と翼が並び立つ。
「奏、翼!」
「ネフィリムにびびっちまった…だけど!もう怖がらない!足手纏いになるわけにはいかない!もう足を止めない!そんな事したら響とクリスを助けられなくなっちまう!」
「ええ!もう怖がらない!怯まない!防人として!傷付いた仲間を救うために!」
弦十郎は響やクリスを救おうとする翼と奏の姿を見て言う。
「ノイズを二人で頼む。気を失ったクリス君と怪我をした響君を守りながら。俺はネフィリムを…ウェル博士と同時に相手する!そしてここを終わらせてガンヴォルトとシアン君のいるアッシュボルトの元に殴り込みに行く!」
その言葉とともに奏と翼が竜巻と斬撃でノイズを薙ぎ倒し、出来た道を弦十郎はネフィリム、そしてウェルの元へと駆け出した。
「はぁ!」
ネフィリムへと向けて拳を叩き込もうとする弦十郎。
「ネフィリム!
ウェルの指示でネフィリムが口を大きく開けて爆炎を吐き出す。
「ふん!」
だが弦十郎は直ぐ様拳をネフィリムから地面へと方向を変えて叩きつけると爆炎を叩きつけた衝撃で受け流す。
「はぁ!」
それと同時に浮かび上がった瓦礫をネフィリムへと蹴り出すと共に跳躍する。ネフィリムはそれにも気付かず、孔を開けて瓦礫をどこか別の場所へと飛ばす。
「ぜぇあ!」
そしてその隙に弦十郎に気付いていないネフィリムは上からの弦十郎の拳を叩きつけられる。
「グァァ!」
「はぁぁ!」
そして弦十郎は叩きつけたネフィリムをそこから自身の拳をネフィリムの身体へと叩き込んでいく。
フィーネが纏っていた完全聖遺物ネフシュタンの鎧をも拳圧だけでヒビを入れるほどの一撃をまともに喰らうネフィリムの身体は弦十郎の連続されて叩き込まれ、ひび割れる様に砕けていき、血を吹き出す。
「ガァァ!」
ネフィリムはその瞬間に自身の身体を発光させて、弦十郎から直ぐ様離れた。
ボロボロとなったネフィリム。その姿を見てウェルは目の前に立つ鬼神の様な姿の弦十郎の姿を見て恐れ慄く。
「なんなんですか…なんなんですか貴方は!ネフィリムを!完全聖遺物をただの人間がここまで追い詰めるなんて!本当に人間なんですか!?」
「何度も言ってやる!俺は人間だ!」
そう言ってボロボロとなったネフィリムへと弦十郎は接近する。ウェルもネフィリムを何とか守ろうとノイズを召喚して弦十郎を狙うが、そうはさせないと翼と奏が、出てきた側からノイズを除去してネフィリムへの道を作り出す。
「だったら!」
そう言って護送列車で出現させた巨大なノイズを召喚させると弦十郎へと向けて突撃させる。
「旦那!」
「司令!」
翼も奏も応戦するが斬撃は弾かれ、竜巻を物ともせずに弦十郎へと襲い掛かる。
「おっさん!止まるな!」
その声と共に赤い光が一直線にノイズへとぶつかるとノイズの装甲を貫いて炭へと変わる。
その正体はいつの間にか目を覚まして今まで出現させていたライフルとは別にさらに巨大で、強大な一撃を放ったライフルを構えるクリスの姿が。
その心強さに弦十郎はさらに加速する。
そして崩れていく炭の塊を吹き飛ばしてネフィリムの姿を捉え、弦十郎は拳を構えて突撃する。
「終わりだぁ!」
だがネフィリムはにやりと笑うと同時に孔を出現させるとその中に弦十郎を入れてしまう。
「旦那!」
「叔父様!」
「おっさん!」
三人はその姿を目撃してネフィリムが空中へと顔を向けるのを見て上空を見上げる。
そこにはいくら弦十郎と言えど、その高さから落ちれば命が危うい程の高さに孔から出現し落下してゆく弦十郎の姿が。
そしてダメ押しとばかりにネフィリムは紫の紋様を浮かび上がらせ、口から翼の剣を、クリスの腕を石化させた光線を放つ。
奏、翼、クリスはその光線を何とかしようとネフィリムへと向けて攻撃をするが、竜巻は、斬撃は、銃撃はネフィリムが出現させた孔により全て防がれる。
三人は弦十郎の名をそれぞれの呼び名で叫ぶ。光線が弦十郎まであと僅かというところで弦十郎はネクタイを取り、自身のシャツを自身の落下地点に覆い、その光線を回避する。
そして石化したシャツを盾にしてそのままネフィリムへと向けて石化したシャツが壊れない様に加速していく。
「この程度で俺が止まると思うんじゃないぞ!」
そして弦十郎はそのまま石化したシャツと共にネフィリムへと蹴りを大きな口に向けて叩き込んだ。
◇◇◇◇◇◇
雷撃をアシモフへと叩き込んだ瞬間にボクの雷撃が
「これで終わりだ!アシモフ!」
そう叫ぶと同時にアシモフへと雷撃を更に流し込む。
だがその瞬間にアシモフの身体が蒼く発光すると共に身体がバチッと雷撃を放ち、砕け散った。
「なっ!」
「偽物!?」
急に消えたアシモフの姿を探す。だが、今まで見ていたアシモフはいったい何だったんだと感じるが、そんな事はどうでもいい、一刻も早くアシモフを見つけなくては。
だがその瞬間に、辺りから突如爆発音が連続して響く。
「GV!壁が爆発してる!」
シアンの言葉通り、ボクのいるアビスの底よりもかなり上で爆発が起きており、そこから爆発と共に落石が底へと向けて降り注ごうとしている。
「アシモフ!貴方は初めからボクと戦う気なんてあったのか!」
ボクは叫んで巨大な雷撃鱗を展開させると迫り来る落石を全て雷撃で砕いていく。
そして止むと同時にボクは雷撃鱗を解いて辺りを警戒しようとした瞬間に何か殺気を感じて素早くその場から退避した。
だが、その瞬間に足に何か大きな衝撃が走ると共に何が貫いた。
「ぐっ!?」
それと共に襲いくる
「GV…力が…」
シアンも辛そうにして地面へと降り立ち、身体にノイズの様なものが走り、辛そうにだが何とか姿を維持している。
「
「
その言葉と共にボクの目の前からバチバチと雷撃を迸らせながら、迷彩が消える様に現れるアシモフの姿。
「アシモフ…」
ボクは撃たれた足から血を流しながら、痛みを堪えて立ち上がる。
「まだ立ち上がる力が残っているか…だが、もう終わりだ。貴様に
アシモフはそう言って
「まだだ…まだ終わらせはしない…」
「いいや、終わりだよ。
その言葉と共にボクの胸へと向けて
「ガァ!?」
「GV!」
シアンは吹き飛ばされたボクの元へと這いながらも近付こうとしていたが、ボクの意識が霞んでいくと共に消えていく。
「…シ…アン…」
「ははは!これで邪魔者はいなくなった!さあ、ここからだ!ここからようやく私の目的が始まる!」
最後に届くアシモフの狂った様な笑い声。
そして最後にボクの視界に入ったのは、ボクの身体へとギアペンダントを近付けていく姿であった。
「さぁ、これで私の