返信したかったのですが、お気に入りユーザー以外で返信できなかったのでこの場を借りてお礼を伝えます。
ありがとうございます。
マリアはセレナの名を口にしたアッシュボルトが何故その名を知っているのか。
セレナに何をしようとしているのか理解出来なかった。何故いなくなってしまったセレナを、そしてネフィリムに何をさせようとしているのか。
分からない。アッシュボルトもウェルも自分達と協力をしながら人類の救済を行うために行動している。だが、アッシュボルトはその行動を起こした先に更に何か起こそうとしていると考えた。
だが、アッシュボルトが何をしようとしているかは分からない。
それと共にアッシュボルトへと不信感を募らせて行く。人の道を外した行動。命を弄ぶように殺し、それをなんとも思わないアッシュボルトとウェルの異常性。本当にあの男達と協力していれば計画は成功するのであろうか。
ましてや前に自身をもガンヴォルトと共にライフルで撃ち、剰え、大切な家族の切歌と調にも手を上げたあの男を。
それに何か隠し、セレナを何かに利用しようとしているかもしれないという事も。
「…本当に私達は正しい事が出来ているの…本当にこれが最善の道だっていうの…セレナ…私は…私達は本当に正しい事をしているの…」
マリアは悩む。だが誰もその言葉に答えてくれる者はいない。
それにナスターシャもアッシュボルトとウェルの行動は目に余るものばかりで警戒はしている。だが、それでも、資金、そして技術などの事となると何もないこちらはただ向こうの言いなりになるしかないと頭を悩ませる。
マリア達にも資金が、そして聖遺物に対し、そして
だが持たない力を願ってもなんの意味もなく、アッシュボルトとウェルに結局は協力してしまい、今に至っている。
「…本当にこれが正しい行いなの…」
マリアは膝を抱えて悩む。
そんな中、切歌と調から連絡が入る。
「マリア!大変デス!マムが!」
「マリア!早く来て!」
その言葉に一旦悩みを決してマリアは操縦席へと戻る。
急いで駆けつけた操縦室の真ん中ではぐったりとして車椅子に座り込むナスターシャ、寄り添う切歌と調。そしてナスターシャの口元を見て表情を歪ませる。
口元から僅かに見える血。
ナスターシャの患う病が悪化してきた事を意味していた。
「切歌、調!Dr.を呼んできて!まだあの部屋にいるわ!」
「でもマリア!もうあいつになんか!あんな外道には任せられないデス!」
「そうだよ!マリア!あんな外道にマムをもう任せられないよ!マリアなら処置できるでしょ!?」
「私が出来るのは応急処置までよ!お願い切歌!調!マムの命に関わる事なの!例え外道でもあの人以外にマムを助ける為なの!」
切歌と調はマリアの必死な言葉に少しだけ間を開けるが、すぐに頷いてウェルの元へと走っていく。
マリアもウェルが来るまでの応急処置を施そうとする。次から次へと目まぐるしく起きる事柄に、マリアは悩む暇など与えないというように起きていくのであった。
◇◇◇◇◇◇
「ん…」
響はピッ、ピッ、と聞いた事のある電子音を聞きながら目を覚ました。
身体を起こし、辺りを見渡すと病室であり、よく分からない機材などから伸びるコードが響の体の至る所に繋がっている。
「なんで私は眠って…」
寝起きの頭で上手く考える事が出来なかったので頭を掻こうとした瞬間、全てを思い出し、腕を見る。
ネフィリムと戦っていた。自身の腕を喰われ、そのまま戦闘不能になった。そしてそこからアッシュボルト、いや、アシモフと言うガンヴォルトの因縁の相手が現れて告げられたガンヴォルトを殺したと言う言葉。そこからが記憶がない。
だが、喰われたはずの腕はなんともなく傷一つない。
「なんで…」
まだ夢の中にいるのか。現実なのか分からなくなってしまう。勿論、夢ならば良かったのだが、病室に寝かされている事がそうじゃない事を分からせてくれる。
一体あの後何があったのか分からない。とにかく誰かにどうなったかを確認する為に備え付けられたナースコールを押す。
しばらくするとクリス、奏、翼、未来、そして弦十郎と慎次、あおいに朔也が直ぐに駆けつけてくれた。
「響!」
未来が真っ先に響の元へ向かって響の無事を喜んでくれた。
「ごめん、未来…心配かけて」
響は未来を抱きしめて謝る。未来も無事で良かったと言ってくれるが、その表情はまだ翳りが見える。他のメンバーも同様に安堵を浮かべているのだが、やはり、どこかまだ心配事があるように翳りを見せている。
「響君、
弦十郎が代表して響に言う。だが、響は
そしてその人物は響も気になっている人物であり、響はすぐに弦十郎へと言う。
「師匠!ご迷惑をお掛けしてすみません!だけどその前にガンヴォルトさんは!?シアンちゃんは!?私が気を失う前に何があったんですか!?」
「…」
その言葉を聞いて弦十郎は口を閉ざしてしまう。
それは響の予想した、いや、アシモフが言った事が本当なのかもしれないという不安を駆り立てる。
「まさか…!?」
「…シアン君はアシモフによって奪われてしまった…そしてガンヴォルトはまだ集中治療室で生死の境を彷徨っている」
弦十郎から伝えられた事。それは響にとって辛いものであった。
「そんな…」
響も大切な友人が奪われ、そして恩人でもあるガンヴォルトが今大変な状況になっていると聞いて絶句する。
「嘘ですよね…ガンヴォルトさんが負けたなんて…シアンちゃんが奪われたなんて…」
響の言葉に誰もが口を閉ざしてしまう。負けるところなんて考える事の出来なかったはずのガンヴォルトが、今現在も集中治療室で生死の境を彷徨っている事が信じられなかった。そして大切な友人もアシモフにより奪われた事を認めたくなかった。
だが、それが本当であるかのように全員が何も言わない。
「…本当なんだ…響君…ガンヴォルトが今の状況になっているのに現れないシアン君。それはアシモフが言った事が本当であり、シアン君を奪われた事になる…」
弦十郎が意を決して響へと現状を伝える。
そしてその他の事も響へと伝える。あちらには被害はなく、こちらはガンヴォルトを再起不能へと追い込まれ、シアンを奪われた。そして未だに敵にはソロモンの杖、そして
「そんな…」
「本当の事だ…」
弦十郎は静かにそして重く言った。
ここにいないガンヴォルト、そしてシアン。
それがその証拠である。
「ガンヴォルトさんが…シアンちゃんが…」
響は眠っていた間の事を聞いて絶望していく。綺麗な歌声の友人を奪われた悲しみ、恩人が未だに生死の境を彷徨っており、目を覚さない可能性があるという事が響の心を蝕んでいく。
響以外もそうであり、クリスも奏も翼も未来も、そして他の全員もそれぞれが悲しみに涙したい。だが、それでもまだ終わらぬ絶望に立ち止まれない。
場に重苦しい空気が漂う室内。だが、それを打ち破るように警報がけたたましく鳴り響く。
再び敵がまた現れたのかと身構えそうになる全員。
だが、その警報は敵が現れたなどではなく、システムに不備がある時に鳴る警報である事にオペレーターのあおい、朔也、そして弦十郎と慎次が気付く。
「機材にトラブルがあったみたいだ…とにかく、しばらくは全員休んでくれ。昨日から一睡もしていないだろう」
弦十郎がそう言って部屋から出ようとした瞬間に鉢合うように何名かの医療班が弦十郎を見て叫んだ。
「司令!大変です!ガンヴォルトさんのいる集中治療室が!?」
医療班の言葉にこの場の全員が一気に駆け出した。響も履物など履かずに全員に付いて行くように少しだるい身体を動かして後を追う。
辿り着いた病室の扉。そこは響がいた病室とは違い、もっと厳重に、そして重苦しい扉により閉ざされた場所。ガンヴォルトが眠っている病室であった。
その扉の前には何人もの医療班、そして技術班が扉の前で何かをしていた。
「ここで何があった!?ガンヴォルトはどうなっているんだ!?」
弦十郎が作業をする技術班に声を掛ける。
「何があったかも私達も分かりません!先程、ガンヴォルトさんの病室の電源系統が全て落ちた事を医療班から言われて、すぐにでも復旧を進めているところです!」
「何故この場所だけ電源が落ちたんだ!?」
「分かりません!突然、起こったので私達もどうなっているか分からないんです!ですが、早く復旧させないとガンヴォルトさんの生命を維持させている機材が!早く復旧させないとガンヴォルトさんの命が!?」
それを聞いた瞬間に翼と奏、そしてクリスが聖詠を歌うと共に己が武器を構えて扉を破壊しようとした。
「何をしている!そんな事したらガンヴォルトを殺してしまうかもしれないんだぞ!?」
弦十郎は響を除いた装者達の行動に叫ぶ。
「ですが!早くガンヴォルトの病室に入らなければガンヴォルトが!?」
「ぶち破らないとガンヴォルトが!?」
「あいつをこのまま見殺しにしろって言うのかよ!?」
「そんな事分かっている!だが、お前達がぶち破って機材が壊れたりしたら元もこうもないだろ!」
弦十郎は慌てながらも装者達を嗜める。だが、気持ちは分からないでもない。そうでもしないとガンヴォルトの命が消えてしまうかもしれないのだから。だが、そうして助けても今この中にしかない機材を壊されてはどうしようもない。
技術班も復旧させようとしているが未だにどうする事も出来ない状況。どうするか頭をフル回転させる。
どうする…どうすればいい…
この場にいる全員が、何とか助けようと頭を回転させているが、破壊する以外に方法はない。だが、破壊しようものなら破壊した衝撃で中にある機材がどれか一つでも壊れて仕舞えばガンヴォルトの命に関わる。
だからこそ、迂闊に壊す事が出来ない。
焼き切って開ける方法もあるが、それでは時間が掛かり過ぎてしまう。そうなればガンヴォルトが。
どうにかしようにもどうにも出来ないもどかしい状況。
だが、何も出来ない状況のまま時間が刻一刻と過ぎていく。いつまでガンヴォルトが持つか分からない現状。焦りがこの場を蔓延していく。
しかし、そんな状況の中、開かないはずの扉が、蒼き雷撃を纏い始める。
扉の前にいた技術班は突然の事にその場を離れる。
だが、その雷撃を見て誰もが息を呑んだ。
それと共にゆっくりと開かれる扉。
開かれた扉から少し冷たい空気が辺りを支配していく。
だが、その扉の奥から今まで眠っていたはずの人物が再び立ち上がり、ゆっくりと扉から出てくる姿を見て、誰もが息を飲み、そして涙する。
勿論その人物はガンヴォルトであり、先程まで包帯で巻かれた全てが解かれており、再起不能の傷を縫合した後も無くなり、傷がなかったように塞がっている。
「ガンヴォルトさん!」
装者達、そして未来がガンヴォルトへと飛び込んでいく。ガンヴォルトはそれを受け止めようとしたが、あまりの勢いにそのまま押し倒される。
「みんな…心配かけてごめん…」
無事で良かった、また起きてくれて良かったと五人が涙を流す。
それを落ち着かせるように何とか五人へと声を掛けてから落ち着くのを確認するとガンヴォルトは少し思い詰めた表情をしてさらに謝罪をする。
「ごめん…結局…ボクはアッシュボルトを…アシモフを止める事は出来なかった…それに…シアンも」
今度は悔しそうな表情をする。そしてシアンが奪われた事。そして何も出来なかった事を悔いている。
「分かっている。とにかく今はお前が無事で本当に良かった…心臓も停止していたのによく戻ってきてくれた」
弦十郎はそう言ってガンヴォルトの無事を喜ぶ。だが、それでもガンヴォルトは理解しているのだろう。今置かれた現状は、シアンをアシモフに奪われた事とこちらは更に窮地に立たされているという事を。
弦十郎は今日はガンヴォルトに、そして昨日から一睡もしていない装者達に休むように伝える。
まだ終わっていない。そして更なる窮地に立たされているからこそ、休める時に休まなければならない。
いつ襲いくるアシモフという、フィーネという組織に備えなければならないから。
未だ蔓延る脅威へと立ち向かう為に。