戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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あれから後日、秋桜祭の終わった校内の庭園で装者である四人が集まっていた。

 

「ご迷惑おかけしてすみませんでした!何ともないという事で私もこれから復帰します!」

 

集まった四人は響が無事学校への復帰、そして装者としてまた復帰すると宣言を聞いていた。

 

「全く、心配掛けやがって。まあでも無事で良かった」

 

クリスは響が無事復帰した事を快く迎え入れる。だが、奏と翼は複雑な表情をしている。

 

響の状態を知っているからだ。既にこれ以上ガングニールを纏う事が出来ない。纏う事になるとガングニールに響が侵食されていく事実を知っているからこそ、学業に復帰した事は嬉しいのだが、戦う事から遠ざけるのにどの様な言葉を掛ければいいのか分からなくなってしまう。

 

「二人とも…どうかしましたか?」

 

「なんだよ、二人揃って。この馬鹿が復帰したのになんでそんな顔してるんだよ?」

 

事情を知らない響、そしてクリスは二人に対してそう言った。

 

なんて言葉を掛ければいいのか。どう響を戦いから遠ざければ良いのか。悩み苦しむ。二人にも知って置かなければならない。事態が深刻である以上、響にもう戦わせなくてもいいように、シンフォギアを纏わない様に伝えなければならない。だが、それが響にとってどれだけ悲しい事であり、辛い事なのか分かるからこそ、言葉が出ない。

 

「…」

 

「その事なんだけどな…」

 

年長者である奏が勇気を振り絞って響の身体が今どうなっているかを話し始めた。

 

今の響の身体の事を。響が今どんな状態であるかを。そして、これ以上ガングニールを纏えば響がどうなるか分からないという事を。

 

「嘘だろ!?」

 

「…」

 

驚くクリスに対して、知っていたかのように暗い表情をする響。

 

「…なんとなくですけど…分かっていました…あの時腕と足が食べられたのに、まるで何事もなかったようになっていましたし、私が起きてから二課のみなさんがその事を相談していたのを聞いてしまいましたから…でも、それでもやらないとダメなんです…これ以上悲しい思いをする人がいなくなるように…私もあの子達を…マリアさんを…シアンちゃんを助けたいんです!」

 

響は知っていた。自分がどんな状況になっているのかを。そしてそれでも尚、戦う意思が折れていないという意思をはっきりとさせて。

 

「ッ!?」

 

翼も奏もその事を知っているのに未だ戦おうとする意思に驚き、そして怒りが込み上げてくる。

 

「だったら、なんで復帰しようとするんだよ!響はもうシンフォギアを纏っちゃダメなんだぞ!これ以上纏えば響がどうなるか分かったもんじゃないのに!」

 

「ッ!分かっているのか立花!これ以上シンフォギアを纏えない!纏えばどうなるか分からないのだぞ!」

 

奏も翼もそれでも戦おうとする響を叱責する。だが、それでも響は意思を曲げない。

 

「私は…私はそれでも何とかしたいんです!」

 

「だから!響は戦っちゃダメなんだよ!」

 

奏も響へと叫ぶ。響のために。これ以上響がガングニールに蝕まれないように。

 

だが、それでも響は首を横には振らない。

 

「シンフォギアを纏えないのにどうやって戦うと言うの!」

 

「シンフォギアはまだ纏えます!私の歌でまだ何かを助ける事が出来ます!だから!」

 

響が一歩も引かず、翼へと反論する。自身を犠牲にしてでも何かを救おうとする姿勢は尊敬は出来る。だが、それ以上に自身を顧みずに戦おうとするその事が許せなかった。かつての翼のように。自身の命を賭そうとするその意思が翼の逆鱗に触れた。

 

「えっ?」

 

「おい翼!?」

 

「いきなり何してんだよ!」

 

響は突然の事に目を白黒させ、そして翼の行動に奏とクリスは驚く。

 

翼は響の頬をぶったのだ。

 

「貴方はかつての私のような過ちを犯して欲しくない!それなのに…それなのに!何故分かってくれないの!」

 

クリスと奏は再び響へと手をあげようとする翼の間に入り、それを止めた。

 

「おい、落ち着けよ!手をあげるなんて何考えてやがる!」

 

「翼!いくら何でもそれはダメだろ!」

 

奏とクリスは何とか翼から響を離す。だが、それでも響へと怒りが収まらないのか響に向けて怒鳴る。

 

「貴方はどうしてそうやって後の事を考えないの!私だってあの時のせいでどれだけ後悔したか知っているのか!私はあの時、ガンヴォルトを!みんなを悲しませてしまったように、貴方は小日向を悲しませようとしているのだぞ!そんな事、私は絶対に許せない!同じように小日向を悲しませようとするな!」

 

響はそう言われて自分のしようとしている事がかつての翼が絶唱を使いクリスを止めようとした時の事を思い出す。

 

あの時も翼が絶唱を使い、ボロボロになって死ぬかもしれない状況になった事で、ガンヴォルトがとても辛そうにしていた事を。そして同じような悲しみを自身の親友の未来にも背負わせてしまうかもしれない事を考えてしまった。

 

「貴方だって分かっているなら!纏えないと分かっているのなら、何故悲しい結果の方へと向かおうとするの!貴方の行動は尊敬する!でも、その行動の結果どれだけ悲しむ人がいるかくらい理解しなさい!この場にいる私も奏も雪音も!ガンヴォルトも二課のみんなも!貴方に無事でいて欲しいからそう言っているのよ!それなのに貴方は!」

 

翼にそう言われて何も言えなくなる。自身の行動は本当に間違っていない。だが、その結果は本当に正しいかを。もし事が収まり、フィーネを、アシモフを倒し、シアンを取り戻す事が出来たとしても、そこに自分がいなかった時の事を。

 

翼もまだ何か言おうとしているが、それ以上言わせないと奏とクリスが響から遠ざけていく。

 

「響、悪いけど一旦話はここまでだ!だけど、翼のやった事は間違っているが、響を心配しての事なんだ!だからしっかりと考えてくれ!」

 

「あーもう暴れんじゃねぇよ!とにかく落ち着けよ!」

 

そう言ってクリスと奏は未だ響へと何かを言いながらその場を去って行った。

 

残された響はただ、翼にぶたれた頬に残る痛みと心にグサリと刺さった言葉にただ自分はどうすればいいのか考える事しか出来なかった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

カ・ディンギルの址地。そこでは一課、そして二課の技術班が忙しなく何か残っている物、アシモフ含めたフィーネに繋がる痕跡を探していた。

 

だが、その中。目に見えない何かが動いているのに誰も気付かない。

 

(全く、こんな事になろうとはな…)

 

忙しなく動く作業員を躱して目的の物を探していく。

 

災難(アクシデント)は起こるものだが、計画(プラン)に影響がある事だけは本当に困ったものだ…)

 

そしてネフィリムが倒された場所に着いたのだが、あまりに多い作業員達にその場が全く見えない。

 

(殺すか?いや、この場に装者を呼ばれてネフィリムを回収出来ないのが困る。これを見るにネフィリムの心臓を回収はされていないだろう、回収していたとしても、既にここにある本部も盗聴してある)

 

予想外であった響の聖遺物に宿る電子の謡精(サイバーディーヴァ)。本物ではなく、恐らくこちらが奪った電子の謡精(サイバーディーヴァ)の残された残滓の力であろう。奪おうにも聖遺物の中に残る物はどう取り除けるか分からない為に、危険を冒してやる必要もないと考える。それに、持っているのが響だけとは限らない。奏、翼、そしてクリスも持っているとなると流石に厄介だ。そしてガンヴォルトとは別に厄介な存在と認識した弦十郎。あの男も来ると考えると少しばかり、苦戦を強いられるだろう。

 

(ようやく揃った所であるが、また回収とは…つくづく私には運がない様だ…だが、奴という私の最大の障害であり、私自身の作ったいなくなった事で動きやすくはなったな)

 

ようやく、ネフィリムのいなくなった場所まで潜入出来たアシモフは誰からも気付かれる事なく、その場を観察する。その場は爆心地となっていたのか、クレーターが出来ており、その中心は何か守る様に一部だけ残った場所がある。

 

(やはり、何らかの拍子でセレナ・カデンツァヴナ・イヴが目を覚ましたのか…そうなるとネフィリムの身体を一瞬だけだが指導権を奪い、動かして立花響を守ったとでもいうのか?)

 

すぐにその場にネフィリムの心臓がないと悟るとその場を後にして考える。

 

セレナの覚醒。必要な事であったが、予想外の時に起きた事に少しばかり誤算だと考えるが、心臓のみとなったネフィリムではセレナでももうどうこう出来る事もないだろうと考える。

 

そして目的のネフィリムの心臓が何処にあるかを考える。アシモフは爆心地からある程度計算をして推測を立てる。ネフィリムは最後に響の前に現れた。多分、あの拳でネフィリムは身体を貫かれた可能性がある。そうなるとその拳は多分ネフィリムの心臓付近を貫いたであろう。

 

そうなるとそこから爆発したとなると響にいた場所へ向かうとは考えにくい。

 

そうなると爆発して向かう先はカ・ディンギル。聳え立つただ立っているだけの塔。アシモフはある程度飛んだ場所を予想してカ・ディンギルへと向かう。

 

カ・ディンギルの周りにも人集りが出来ているが、居るのは殆ど亀裂の近く。それはアビスへと続く道の入り口であり、ガンヴォルトの死体があった場所へと行く場所だけであった。

 

(全く、笑えるものだな。紛い物の死を知りながら必死に私達の痕跡を探す貴様達がな)

 

見えない事を尻目にほくそ笑むアシモフ。そしてアシモフはカ・ディンギルの周辺を捜索する。

 

だが、辺りは何一つ落ちてはおらず、ネフィリムの心臓は見当たらない。

 

(別の場所まで飛んで行ったのか?いや、それはあり得ない。爆心地を見るにそこまで遠くへと飛ぶ事はないはず…)

 

見つからないネフィリムの心臓に少し苛立ちを覚える。だが、何の運命なのか、アシモフの目の前に何かが落ちてくる。

 

それは探し求めていたネフィリムの心臓である。

 

(そうか…ネフィリムの心臓はカ・ディンギルの外壁に突き刺さっていたか…だが、探す手間が省けた。こうも事がうまく進むとはな)

 

周囲に気付かれる事なくアシモフはそれを拾うと拾った心臓はアシモフと同様に迷彩がかった様に消えていく。

 

(これで全て揃った。あとは他の捜索をしているDr.ウェルを回収すれば終わる。セレナ・カデンツァヴナ・イヴの覚醒、そして電子の謡精(サイバーディーヴァ)、ネフィリムの心臓。残るはフロンティアのみ…待ち遠しいな…ようやく全てが整った…この世界に来て七年もの月日が経った…長かったよ、本当に…そして私の本来の目的が叶うまであと一歩だ…だがまだ不安要素は尽きない…)

 

アシモフはその手に握るネフィリムの心臓を見ながら思う。

 

電子の謡精(サイバーディーヴァ)に適合し、最も扱い易いからこそ、私はセレナ・カデンツァヴナ・イヴを選んだが、本当に適合するかどうか…まあいい、出来なければ変わりはまだ二人いる…)

 

そう思うと同時にアシモフはカ・ディンギル址地から去っていく。不穏を抱きながら。

 

◇◇◇◇◇◇

 

マリアは治療されたナスターシャを一人で看病していた。アッシュボルトとウェルはネフィリムの回収、そして切歌と調はウェルの警護で外に出ていた。

 

「…マリア…心配を掛けてしまいましたね」

 

ようやく目を覚ましたナスターシャはマリアへとそう告げる。

 

「マム!良かった…本当に良かった…」

 

マリアは起き上がるナスターシャの無事を喜んで涙を浮かべる。

 

「…マリア…切歌と調は?」

 

「アッシュボルトとウェルに連れられてネフィリムの捜索をしているわ」

 

「そうですか…」

 

マムは何処となく不安そうな表情をする。マリアもナスターシャの気持ちを理解しているからこそ、マリアも表情を暗くする。救いなのが付いているのがアッシュボルトではなくウェルという所。ウェルならば何かあれば二人なら何とか出来るからであるが、それでも外道と一緒にいるのは心配の種であった。

 

「マリア…アッシュボルト…いえ、アシモフの事についてですが…」

 

「アシモフ?」

 

ナスターシャから聴き慣れない名前を聞き疑問符を浮かべる。

 

「アシモフ…それがアッシュボルトの本名です…そして少しだけですがアシモフの目的が分かりました…」

 

そう言ってナスターシャは何か取り出す。それはレコーダーであり、そのまま音声を再生させた。

 

それはアシモフとガンヴォルトとの会話。

 

「マム!これを何処で!?」

 

「あの外道を完全に信用はしていません。だからこそ、神獣鏡(シェンショウジン)の技術をドローンに組み込んでアビスへと送り込んでいました」

 

アシモフに気付かれる可能性もあったが、それでもナスターシャは決行した。アシモフの本当の目的を知る為に。何故あの様な人の道を外れた行動をするのか知る為に。

 

そして数多くの銃声と雷撃の音。そしてそれが終わると共にガンヴォルトの声が入らなくなり、アシモフの高らかな声が入る。

 

『ははは!これで邪魔者はいなくなった!さあ、ここからだ!ここからようやく私の目的が始まる!』

 

それはガンヴォルトが殺されたという言葉であった。マリアはガンヴォルトは計画の障害と認識していたのだが、アシモフにより殺されたという事を知り、居た堪れなくなる。殺しだけはしたくなかった。それにマリアはガンヴォルトに少しだけ恩がある。ガンヴォルトにアッシュボルトの狙撃から守られた。そして切歌と調から聞いた虐殺を止めた事で少なからずだが、感謝していたから。

 

だが、それでも敵であるからその情を持ってはいけないと分かっている。だからごめんなさいと思うだけでそれ以上は考えない様にした。

 

そしてまだ音声は続き、先日同様の言葉をアシモフはまた発した。

 

『さぁ、これで私の計画に必要なものは全て揃った!あとはネフィリム…いや、セレナ・カデンツァヴナ・イヴ!貴様が電子の謡精(サイバーディーヴァ)に適合すれば整う!ああ、待ち遠しいぞ!GV!また貴様と会い見えるのがな!今度こそ、私に尽くしてもらおう!託した願いを成就していれば構わん!だが、違えているのならば、貴様の意思など消し去り、私の願いのままに傀儡となってもらおう!』

 

最後の言葉などよりも先日に言っていた大切な妹の名前。そしてそれを何かに利用しようとした事を知り、アシモフに怒りが込み上げる。

 

「ッ!?あの外道!」

 

マリアは怒りで拳を強く握る。

 

「…何故セレナの名前をあの男が…アシモフが知るのか分かりません…でも、この言葉から、ネフィリムの中でセレナがまだ生きているという可能性が出ました」

 

「…知っている…私もその事は先日、アッシュボルト…いいえ、アシモフが独り言を呟いていたのを聞いたわ…でも確証が得られなかった…確信が持てなかった…でもこれを聞いてはっきりした…あの外道は私の大切な家族すらも利用しようとしていた事を」

 

マリアは怒りを露わにしてナスターシャへと言った。

 

「私はあの外道とはこれ以上関わらない!大切なセレナを!家族を何かに利用しようとするあの外道には!」

 

ナスターシャへと向けてそう告げた。だが、不安がマリアの中には残る。

 

「でも…いずれ私はフィーネになってしまう…そうなればセレナの事を…忘れてしまう…もうこの手でセレナを抱きしめたりする事が出来なくなってしまう…」

 

それは自身に宿るフィーネの魂。それがいつ目覚めるのか分からない。それにかつてフィーネはあの外道と協力していた。いつフィーネになってしまい、セレナを利用してしまうんではないかという事がマリアにとっては不安なのだ。

 

「マリア…もうあの男達とはこれ以上協力をしません…別の方法を考えて移りましょう…それに…マリア、貴方は…」

 

ナスターシャがマリアへと何か言おうとした瞬間にアラームが鳴り響く。

 

「今度は何!?」

 

それはウェル、そして切歌と調に何か起こった時になる警報。ネフィリムの心臓を回収しに行った三人が戦闘を開始した事を知らせるものであった。

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