戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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二課の本部から急いで来たのだが、ボクが到着した時には既にもう酷い状況にあった。

 

倒れた奏と慎次の姿。離れたアシモフが響へと銃弾を放ち、なんとかそれを阻止する事が出来たが、響自身がシンフォギアを纏うまで追い込まれたという事。そして、アシモフの背後にいる弦十郎。

 

「何故貴様が生きている?あの時確実にトドメを刺した筈だ。強欲なる簒奪者(グリードスナッチャー)で胸に穴を開け、心臓の鼓動は、呼吸は完全に停止させた。電子の謡精(サイバーディーヴァ)も奪い、歌の奇跡など起きようのないのに?どんな魔法(マジック)を使った?」

 

「だからそんな事はどうでも良いって言っているだろ、アシモフ!」

 

憎悪の表情を向けるアシモフに向けてボクは叫んだ。

 

「シアンを返してもらう!そして此処で貴方を止める!」

 

「黙れ!ああ、本当に忌々しい!貴様が…貴様という存在が!紛い者の癖に!」

 

アシモフが叫び、手に持つ何かを起動させた。

 

「ガンヴォルト!アシモフの持つそれがネフィリムの心臓!そしてその心臓に埋め込まれたギアペンダントにシアン君が!」

 

弦十郎の一言にボクは直ぐに動き始めた。目の前にシアンがいる。そしてそれを取り戻す事が今なら。

 

だが、ボクが素早く接近しようとすると同時にアシモフの持つネフィリムの心臓が赤く輝き、そこから爆炎が放たれる。

 

「ッ!?」

 

ネフィリムが第七波動(セブンス)を使うのは既に知っている。だが、それはネフィリムがあの姿での事であり、そして今はまるでネフィリムの心臓がアシモフの思うままに操る事が出来るなんてあり得ない。

 

だが、考えている暇なんてない。目の前に迫る爆炎へボクは雷撃を放ち、爆発させる。

 

「ガンヴォルト!」

 

弦十郎が見えなくなったボクに向けて名前を叫ぶ。爆風を受けながら、ボクは更にアシモフへと憎悪を募らせる。何故なら、ボクへと向けて放った爆炎はボクの背後で倒れる奏、そして苦しむ響をも巻き込む様に放たれているからだ。

 

爆炎(エクスプロージョン)の能力はまだ本調子までないか…」

 

「アシモフ!」

 

ボクは爆炎から飛び出してアシモフへと接近し、拳に雷撃を纏わせて振るう。

 

だが、懸念していた事、ボクの雷撃はアシモフの電磁結界(カゲロウ)を突破する事が出来ず、アシモフの身体をすり抜ける。

 

「無駄だ。今の貴様の雷撃では私の電磁結界(カゲロウ)を突破する事は不可能」

 

だが、それでもボクは自身の出せる最大限の雷撃を纏い、アシモフへと攻撃を続ける。

 

アシモフもただ何もせず攻撃を受ける筈もなく、ボクを突き放す様に、そして確実に殺す様に拳を、そしてネフィリムの心臓から放たれる今迄戦ってきた能力者達の第七波動(セブンス)で攻撃をする。

 

放たれる貫通する光線、爆炎、そして石化の光線、飛び出す黒い粒子。躱し、雷撃鱗で蹴散らし、アシモフがボクを殺そうとする様に、ボクもアシモフを殺す為に攻撃が激化していく。

 

もちろん、それだけではない。今背後にいる響、そして奏、弦十郎の近くにいる倒れた慎次の容態を考えて早期決着をしなければならない。

 

明らかに不利である状況。攻撃が通らない、負傷を抱える人物がいる中、焦りを見せる。だが、アシモフもボクに対し持つ謎の憎悪でそんな事にも気付いていない。

 

「今度こそ殺す!貴様という存在を!心臓を抉り、その首を落とし、例え歌の奇跡が起ころうと復活が出来ない様に惨たらしく殺してやる!」

 

「もう死にかける訳にはいかない!もう二度と!それにシアンを貴方の巫山戯事の為利用させない為にも今此処で止める!」

 

「ほざくな!紛い者!」

 

そう叫ぶアシモフとボクの攻防は更に激化していく。爆炎が付近を吹き飛ばし、光線が地面に穴を穿ち、そして石化の光線が付近に残る草木を石化させ、黒い粒子が辺りを削り取る。そしてボクとアシモフの雷撃が、その辺りの瓦礫を、石化した草木を破壊していく。

 

だが、互いの攻撃は致命傷を与えられない。

 

アシモフには電磁結界(カゲロウ)。そしてボクはかつての同様の手段で第七波動(セブンス)能力を操る少年との戦闘経験から攻撃パターンから、アシモフの行動を予想して躱し、受け流していく。

 

それでも油断は出来ない。アシモフには二度もボクを殺しかけた強欲なる簒奪者(グリードスナッチャー)を持っている可能性がある。

 

第七波動(セブンス)能力者であるボクを確実に殺す為の最悪の弾丸。シアンがいない。アシモフの言う通り、もうシアンの歌の奇跡はあの時の様に起こらない。それはボク自身も分かっている。

 

本当に今度こそ死ぬかもしれない。だがそれでも、助けるべき人達がいるのに、倒すべき敵、アシモフが目の前にいるのに止まる事なんて出来ない。

 

だが、息を持つかせぬ攻防にボクは一瞬だけ隙が生まれてしまった。アシモフがボクの拳を防ぐ様に拳の前にネフィリムの心臓を、シアンを閉じ込めていると思われるギアペンダントを翳したからだ。

 

「ッ!?」

 

その瞬間、ボクの腹部へと強烈な雷撃を纏わせた蹴りが叩き込まれる。

 

「ガフッ!?」

 

その一撃にボクは吹き飛ばされる。地面を滑る様に転がる。

 

「今度こそ終焉(デッドエンド)だ!」

 

直ぐ様立ち上がるが、既にアシモフの手には最悪の銃弾の入る銃。そして既に引き金を引かれ、打ち出された凶弾。まだ躱せる。

 

だが、不意に視界に入る響の姿。射線にはボクを含めて響も入っており、ボクが躱せば強欲なる簒奪者(グリードスナッチャー)は苦しそうにする響を襲うだろう。そんな事させてはならない。

 

だが、そうする事によってボクは第七波動(セブンス)をしばらく使えなくなる。そうなればアシモフを止める事は出来なくなってしまう。

 

本当にどうしようもならない状況。迫り来る凶弾。絶体絶命。

 

しかし、その凶弾はボクにも響にも当たる事はなく、ある人物によって弾き飛ばされた。

 

「ふんっ!」

 

迫り来る強欲なる簒奪者(グリードスナッチャー)とボクの間に素早く割り込んだ弦十郎が自分の拳を叩きつけ弾く。

 

だが、ボクの胸に穴を開けた程の威力の銃弾を拳で弾いた結果、拳が砕け、血が噴き出す。

 

「ッ!?弦十郎!」

 

「もう二度と、ガンヴォルトをあんな目に合わせてたまるかよ!あの子達がお前のせいでどれだけ苦しんだか、悲しんだか!」

 

弦十郎は砕けた拳を無理矢理握ってアシモフに向けて叫ぶ。

 

「あぁ、本当に目障りだ。耳障りだ。無能力者如きが何をほざく…本当に不愉快だ!無能力者という存在も!紛い物の存在も!」

 

アシモフは更に怒りを見せ、それと同時にボクの最大をも超える雷撃を迸らせる。

 

ボクは素早く弦十郎と並び立つ。

 

「ごめん、弦十郎。ボクが隙を見せたせいで」

 

「今はそんなこと気にしている場合じゃない。それよりもガンヴォルト、お前の雷撃でアシモフの電磁結界(カゲロウ)を突破する事は出来るか?」

 

「シアンのサポートが無いとボク自身の雷撃だけじゃ出力が足りない…」

 

弦十郎もボクもアシモフの一挙一動に警戒しながら悟られない様に話す。

 

「ガンヴォルトの雷撃が奴に届かないのならどうすれば…」

 

「方法ならあるよ」

 

ボクは弦十郎へと伝えようとする。だがその前に目の前に穴が開くと共にアシモフの姿が現れて、雷撃を放つ。

 

ボクと弦十郎は素早く躱す。だがアシモフが更にネフィリムの心臓を起動させ、爆炎を弦十郎へ、光線をボクへと放つ。

 

「くっ!」

 

ボクは光線を紙一重に躱し、弦十郎も地面を踏み抜いてアスファルトをひっくり返して防ぐ。

 

だがその踏み抜いたアスファルトにより視界を防がった弦十郎の背後に再び穴が開き、背後からアシモフが現れる。

 

弦十郎は直ぐにそれに気付き、後ろ回し蹴りを繰り出すが、アシモフの電磁結界(カゲロウ)が発動して当たらない。

 

そこから始まる弦十郎とアシモフの近接戦闘。だが、明らかに負傷し、攻撃の当たらない弦十郎の不利な状況は目に見えている。体制を立て直し、直ぐに弦十郎の助けとなる為に接近する。

 

だが加勢した所でアシモフの電磁結界(カゲロウ)がある以上、対して戦況に変わりはない。

 

ボクと弦十郎の拳はアシモフの身体をすり抜け全く攻撃は当たらない。逆にアシモフはボクと弦十郎への攻撃は隙を突いて出してくる。ボクはアシモフの攻撃を受け止め、弦十郎は躱す。

 

雷撃に耐性のあるボクはアシモフの攻撃を受ける事が出来るが、弦十郎はアシモフの攻撃を一撃でも喰らえばそれが命取りになる。

 

「貴様達は確実に殺す!」

 

「黙れ!もう誰も殺させない!」

 

「殺されてたまるかよ!俺達が今ここで貴様を止める!」

 

攻防が激しくなるにつれ、アシモフの雷撃が強くなっていく。荒々しく、そして一撃で何者をも屠る雷撃。

 

ボクは自身の雷撃で弦十郎を守る為に放つ。だが、ボクの雷撃の威力が低いせいもあってジリ貧にされる。

 

「死ね!紛い者!そして紛い者を守ろうとする無能力者である貴様も!」

 

ボクの雷撃が打ち負け、弦十郎、そしてボクに向けて放たれる。ボクは耐えられるかもしれない。だが弦十郎はこの雷撃を喰らえば死ぬかもしれない。弦十郎ならもしかしたら耐えられるかもしれないが、それでもかなりの負傷を負い、動けない所をアシモフに殺される。

 

そうなってはならない。弦十郎を殺されてはならない。だからボクは自身へと向けて避雷針(ダート)を撃ち抜く。

 

「くっ!」

 

僅かに鋭い痛みが走ると共にボクの身体に蒼い紋様が刻まれる。その瞬間に弦十郎とボクへと向けて放たれた雷撃が、方向を変えてボクへと全てが向かい、それを全て受ける。

 

「ガァァ!」

 

「ガンヴォルト!」

 

アシモフの放つ雷撃がボクの身体を覆う。許容量を超える雷撃が全身を駆け巡り、身体の内から焼かれる様な激痛に襲われる。

 

「まさか、自分から死に急ぐとはな!ならば貴様からだ!」

 

そう言うアシモフはネフィリムの心臓を起動させると弦十郎を何処かに飛ばそうとする。弦十郎も一瞬でその事を理解して穴から一気に離れるが、そのせいでボクとも離れ、完全に孤立した所にアシモフは強欲なる簒奪者(グリードスナッチャー)の装填された銃をボクに向けて構える。

 

「ッ!ガンヴォルト!」

 

弦十郎がボクの名を叫ぶ。だが、離れた事により、弦十郎はアシモフの行動を阻害する事も、ボクを助ける事も叶わない。

 

だがアシモフが引き金を引く前に銃声が響く。

 

アシモフはただの銃声にも気にも留めなかったが、アシモフは自身の異常に気付き、叫んだ。

 

「無能力者風情が何をした!」

 

「司令だけじゃない…僕だって貴方にこれ以上ガンヴォルト君を苦しめる様な事を止めるんだ!」

 

アシモフの背後には未だ雷撃に侵されながら立ち上がり、銃を構えた慎次が立っていた。

 

慎次の撃った弾丸はアシモフには当たっていない。だが、アシモフの影に着弾しており、慎次が使う忍術の影縫いがアシモフを身体の自由を奪っていた。

 

アシモフは慎次が忍者だとは知らない。だからこそ、自身に何が起こったかすらも理解出来ていない。

 

だが、慎次が作ってくれた好機。無駄にする訳にはいかない。痛みを堪え、無理矢理にでも身体を動かすと共に、アシモフへと向けてダートリーダーを構える。

 

ボクの雷撃では足りないだろう。だが、今はアシモフ自身が放つ雷撃を受け自身の身体を蝕む程の雷撃がある。テールプラグをダートリーダーへと接続して今身体に迸る雷撃を全て込める。

 

「ッ!貴様等ぁ!」

 

アシモフは身動きの取れないままボクへと向けて怒りをそして憎しみを込めた表情で叫ぶ。

 

「もうここで終わりだ!アシモフ!」

 

そう叫んだボクはダートリーダーの引き金を引く。それと共にアシモフはダートリーダーから放たれる蒼き雷撃に包まれ、吹き飛ばされた。

 

ボク自身だけでは届かない。だけどアシモフが放つ雷撃をも込めた雷撃。ボクの雷撃とアシモフがボクに向けて放った雷撃を全て込めた雷撃。その出力はシアンによって強化されたものまではいかないかもしれないが、その一撃は電磁結界(カゲロウ)を突破出来ると確信した。

 

「はぁ…はぁ…リヴァイヴヴォルト!」

 

「ガンヴォルト!」

 

「ガンヴォルト君!」

 

弦十郎と慎次が叫ぶ声が聞こえる。だが、そんな事を無視してボクは自身の負傷を治すと直ぐにアシモフが吹き飛ばされた方向へ駆け出す。

 

アシモフの電磁結界(カゲロウ)は超えた筈。それは吹き飛ばされた事が証明している。だが、ダメージを負ったのか?その確証はない。

 

確実にこの場でアシモフを殺す為に駆ける。

 

飛ばされたアシモフは横たわっているが、その身体には雷撃が消え、そしてかなり負傷している事が分かる。

 

「アシモフ!」

 

以前の様にアシモフには電影招雷(シャドウストライク)と言うまだ謎の(スキル)がある。だが、あの姿を見るに雷撃はしばらく使えそうに無い。ならばやるべき事は一つ。ここでアシモフにトドメを刺す。

 

ボクは力を振り絞り、残った力を全て言葉に込める。

 

だが、アシモフもボクが接近している事に気付いて憎しげな表情、そして恨みの篭った視線を向けて叫ぶ。

 

「紛い者が!偽物如きが!」

 

傷付いた身体を無理矢理でも起こしてアシモフはボク同様に言葉を紡ぐ。

 

「天体の如く揺蕩え雷、是に至る総てを打ち払わん!」

 

「瞬くは雷纏し聖剣、無慈悲なる蒼雷よ、敵を穿て!」

 

ボクの周りには公転する三つの雷球が出現し、アシモフの腕から迸る雷撃が、剣の形を象っていく。

 

「迸れ!蒼き雷霆よ(アームドブルー)!」

 

その言葉と共に雷球が、強力な雷撃を放ち、剣が実像を持ち、雷球と剣がぶつかり合う。

 

出力はアシモフの方が上、それを公転する三つの雷球で何とか抑える。

 

「殺す!貴様を必ず!」

 

「死ぬのは貴方だ!アシモフ!」

 

雷球に紛れてアシモフへと向けて避雷針(ダート)を撃ち、スパークカリバーの放電で落とされ、穴が在らぬ方向に飛ばす。それでもなお、ボクは辞めない。ここでアシモフを殺さねばならない。

 

さらに突き抜ける光線がボクの身体を穿つが、それを気にせずにアシモフの振るうスパークカリバーを突破しようと続ける。

 

しかし、それも時間が掛かり、アシモフの身体から再び雷撃が迸る。

 

「ッ!」

 

「残念だったな!もう貴様は私に触れる事すら出来ない!」

 

その瞬間に一気に均衡が崩れ、ボクのライトニングスフィアが斬り伏せられる。

 

「今度こそ貴様の終わり(デッドエンド)だ!」

 

そしてアシモフの言葉と共にボクに向けてスパークカリバーが振り下ろされた。

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