戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

140 / 246
あけましておめでとうございます。
完結に向けて今年も頑張ります。


48GVOLT

亜空孔(ワームホール)を開けて機内へと帰還したアシモフは壁に寄りかかる。

 

「予想は的中したが、してやられた…無能力者も奴も本当に忌々しい」

 

アシモフは自身の身体に付けられた拳の跡とスパークカリバーの切り傷を見ながらそう呟く。

 

「だが、これで私のこの世界の計画(プラン)は完全に達成される。だが、ここまでコケにされた分の返礼が必要だ」

 

自身を追い込もうと盲信し、自身を本物と疑わない奴に。

 

「アッシュ!無事なのかい!?」

 

自身の雷撃が再び纏える様になると同時に傷を癒していく中、ウェルが室内に入り込んで来た。

 

「一応、無事と言っておこう。この程度の傷は何の支障にもならん。直ぐに癒える」

 

「それは良かった…それよりもアッシュ、彼方への打撃は?」

 

「残念だが、邪魔が入った所為で一人も始末出来なかった」

 

そうアシモフが言うと、ウェルは表情を歪めた。

 

「やっぱりあの男のせいなのかい?でもアッシュには電磁結界(カゲロウ)があるし、あの男だけじゃどんなに攻撃しようとしても無傷でいられる筈じゃないのかい?」

 

「あの無能力者の所為でもあるが、奴が再び私の目の前に現れた」

 

その言葉にウェルはアシモフがそう呼ぶ人物が一人しか思い浮かばず、表情を更に歪める驚きの声を上げる。

 

「まさかガンヴォルトが!?奴はアッシュが殺した筈じゃ!?」

 

「ああ、殺したさ。これが残した残滓か何かで生き返ったのだろう」

 

そう言ってアシモフはネフィリムの心臓から電子の謡精(サイバーディーヴァ)を捕らえるギアペンダントを掲げる。

 

「全く、何処までも私に反抗してくれるものだ。貴様も力のみ有する偽物の癖にな」

 

呆れながら、そして僅かに怒りを込めながらギアペンダントを眺める。

 

「だが、力は本物と遜色の無いものだ。ネフィリムが時間が経った様にこちらもそれなりに掛かるのだろう。まあ、それよりも良いものを見せて貰った」

 

「怒りながら笑うなんて器用にするね…ってそれよりもガンヴォルトはどうするんだい!?アッシュの電磁結界(カゲロウ)を突破する奴!今後の計画に支障が!?」

 

「その心配はあまり無い。奴だけでは私の電磁結界(カゲロウ)を攻略するのは不可能であるからな。奴の力、蒼き雷霆(アームドブルー)は私のものに劣り、電子の謡精(サイバーディーヴァ)による底上げ(パワーアップ)によるものだ。奴の雷撃は私には効かん」

 

アシモフはウェルへとそう説明する。

 

「なら問題ないけど、それよりも良いものってなんだい?」

 

計画(プラン)がより確実なものとなり、保険(バックアップ)が運が良ければ二つ手に入る」

 

「正規適合者の雪音クリスと風鳴翼の事かい?」

 

「ああ。奴らも電子の謡精(サイバーディーヴァ)の残滓を宿し、これに共鳴して能力では無いが電磁結界(カゲロウ)を超えた」

 

「それの何処が良い事なんだよ、アッシュ!寧ろ、電磁結界(カゲロウ)を超える為の切り札になっているじゃないか!?」

 

ウェルは不安要素であるその事を慌てる。

 

「二人が電磁結界(カゲロウ)を越えようとも私には敵わん」

 

「だけどアッシュ。それならば立花響でも良いんじゃなかったのかい?立花響も同様に電子の謡精(サイバーディーヴァ)を宿している事は先の戦闘で分かったじゃないか?」

 

「奴を使うなどナンセンスだ。立花響も電子の謡精(サイバーディーヴァ)を有していようと、あんな暴走と言う危険なものを孕んだ奴、保険(バックアップ)にしようとも思わない。それよりも警戒すべきは奴の上官、そしてもう一人いたあの男だ」

 

アシモフはそう言うと共に忌々しそうに拳を握る。

 

「私をどうやって拘束したか分からない力。第七波動(セブンス)でも聖遺物でもない違う力だがあれは厄介だ。そして以前から戦闘しているあの男だ。第七波動(セブンス)も持たず、聖遺物も持たぬのにネフィリムを圧倒する高い膂力(パワー)に私の蒼き雷霆(アームドブルー)による身体強化に迫る程の速度(スピード)。あの者達がいる状態で奴と戦えば苦戦を強いられるだろう。奴を殺す事を最前に持って行った事、それに奴が弱体化して確実に殺せると慢心した、それが今回の結果だ。全く、無能力者で厄介な奴は何処にでもいるのか。だが、次はそうはいかん」

 

アシモフは苦々しく呟く様に言った。

 

「ああ、本当に厄介だよ。ガンヴォルト以外にもあんなのがいるなんて本当に悪夢でしかない」

 

ウェルも弦十郎と慎次の規格外と思える戦闘力を目の当たりにしている為にそう答える事しか出来ない。

 

「いずれにせよ。私達が計画を実行していれば奴等とも見えるであろう。次は必ず殺してやるさ」

 

そう言うとアシモフは立ち上がり、ネフィリムの心臓をウェルへと渡す。

 

「必要な物は全て手中にある。直ぐに計画(プラン)を進める。フロンティアを起動する為にこちらも準備を進めよう」

 

そう言って室内にウェルを置いて出て行くと、アシモフはナスターシャのいる部屋へと向かい、ノックをして入る。ベットに横たわるナスターシャ。そしてその傍らにはマリア、そして切歌と調。

 

「アッシュボルト…」

 

「全員いる様で手間が省けた。Dr.ナスターシャ。ネフィリムの心臓は回収した。フロンティアを見つけ出し、このまま進めるぞ」

 

有無を言わさず計画を進める事を伝えるアシモフ。

 

「…」

 

だがナスターシャはアシモフの言葉に答えを出さない。

 

「どうした?世界を救う為の計画(プラン)が進むのに何を悩む必要がある?」

 

「世界を救う…それは本当の事なのですか?アッシュボルト…いえ、アシモフ」

 

「本当の事だよ、Dr.ナスターシャ。それよりも私の本当の名を何処で知った?いや、既に彼方も奴が私の名を広めている所為でこちらにも耳に入ってもおかしくはないか」

 

そう納得した様な呟くアシモフ。だが、ナスターシャが言う前にマリアがアシモフに向けて言い放つ。

 

「そんな事はどうでもいい!貴方は!貴方は私の妹を口にして何をしようとしているのよ!あの子をどうして貴方が知っているの!」

 

「…セレナ・カデンツァヴナ・イヴの事か…何処でそれを知ったか知らんが…ああ、あの時口走った時に聞かれたか…全く私も何処まで口が軽くなってしまったのだか…」

 

マリアの言葉に自身が失態を犯した事を呆れて言う。その行動にマリアはアシモフに怒りを募らせて怒鳴った。

 

「答えなさい!アシモフ!」

 

「セレナ・カデンツァヴナ・イヴをどうするか?世界を救う為に必要とだけ言っておこうか」

 

その瞬間にマリアは怒りを露わにし、ガングニールを見に纏う。切歌も調もイガリマ、シュルシャガナを身に纏う。

 

「答えになってない!」

 

装者三人がアシモフに向けて武器を構える。マリア達が突撃しなかったのもナスターシャに被害があると考えていたから。それを理解しているからこそ、アシモフは動く事はしなかった。

 

「敵対するか?この私に?」

 

そしてアシモフから発せられる殺気。その殺気の圧に押し潰されそうになる四人。

 

「…返答次第よ、答えなさい!アシモフ!」

 

強がるマリア。アシモフは少し間を開けて言い放った。

 

「…まあ良い、いずれは知る事になるのだからな。目的に必要になるのだよ。だから甦らせる」

 

「ッ!?」

 

その言葉に全員が有り得ないとばかりの表情を浮かべる。

 

「有り得ない、そう思うだろうが可能なのだよ。電子の謡精(サイバーディーヴァ)があればな。私が何の為に電子の謡精(サイバーディーヴァ)に執着していたと思っている。あれにはその力がある。それに考えても見ろ。世界を救ったとして、フロンティアにより生き残ったとしても、まだノイズという脅威がある。それを救う人材を増やそうというだけだ。貴様等三人ではいくらフロンティアの規模だろうが厳しい可能性もあるだろう?」

 

「セレナを…セレナを本当に生き返らせる事が出来るの?」

 

マリアはアシモフの言葉に動揺しながらもそう言った。

 

「可能だ。電子の謡精(サイバーディーヴァ)にはそれを可能にする力がある。奴がまた息を吹き返した様に人を再誕させる力がな」

 

アシモフの言葉に四人は絶句する。そしてガンヴォルトが未だ生存している事を伝える。

 

「どうするのだ?私とここで敵対し、このまま殺されるか?それとも、協力して目的を達成させるか?」

 

アシモフの問いを四人は暫く放心したままであった。

 

「私も気が長い方ではない。早く答えを聞こうか?」

 

「…分かりました…貴方の言う通りにしましょう」

 

そしてナスターシャが代表してそう答える。その答えに満足した様に殺気を収める。

 

「懸命な判断だ。体調が悪かろうがしっかりとこなしてもらうぞ」

 

そう言ってアシモフはナスターシャ達を残して、部屋を出て行く。

 

そして自らの装備を収納している部屋へと戻る。

 

「…そろそろ始末すべきか…」

 

戻ると共にそう呟く。電子の謡精(サイバーディーヴァ)に人を復活させる事は可能。だが、それは蒼き雷霆(アームドブルー)を持ち、電子の謡精(サイバーディーヴァ)の寵愛を受けし者だけとアシモフは考えていた。あの場でアシモフが言った事は嘘で有り、そんな事は有り得ない事であった。

 

そしてセレナの件もだ。セレナは死んではいない。

 

六年前、アシモフは見ていないが、セレナはネフィリムに喰われて死亡した。そうなっているが、実は違う。

 

現在、セレナはネフィリムに取り込まれてまだ生きているという事。

 

何故アシモフがそれを知っているのかは過去にアシモフが研究所へと潜入した事が起因している。

 

その当時のウェルと共に潜入してネフィリムを回収ではなく解析を行なった。実験が失敗して凍結された事も有り、封印処理はされようが、蒼き雷霆(アームドブルー)の前では何の意味を成さない。

 

だからこそ、解析してネフィリムに、いやネフィリムの中にある何かに気付いたのだ。

 

ネフィリムの中に存在する感じた、セレナという存在を。そしてセレナには可能性が秘められているという事を。

 

正規適合者、ネフィリム、宝剣の欠片。

 

全部が自身の目的を遂行する為の鍵になる。

 

そこからはただひたすら目的の為に長い時間を掛けて準備した。七年の歳月をかけて。

 

「…いや、まだだ。まだ何か使い道がある可能性もある…限りある駒をここで消して失敗しては目も当てられん。それに…餌をぶら下げた。その餌で邪魔する者を呼び寄せるのに存分に尽くせ」

 

そう言うと共に、自身の目的が着々と完遂に近付いていく事に笑みを浮かべた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

ナスターシャ、マリア、そして切歌と調。

 

アシモフが部屋から出て行った後、ナスターシャ以外はアシモフの言った言葉により放心状態にあった。

 

死んだ人間を甦らせる。そんな事が可能なのだろうか。いや、アシモフは奴が、ガンヴォルトが生き返ったと匂わせる様な事を言っていた。

 

「本当に…本当にセレナが…」

 

マリアが有り得ないとばかりにそう呟く。

 

「本当に…本当にセレナが生き返るんデスか?」

 

電子の謡精(サイバーディーヴァ)…あれにはそんな力が…」

 

切歌も調も本当か疑問に思っているが、マリアの言葉と同じ様に本当なのかと口にする。

 

「…ガンヴォルトが生き返っている…それが真実であれば、可能になる事になるでしょう…」

 

「じゃあ本当に!?」

 

ナスターシャの言葉でマリアはセレナが生き返ると希望を持つ。

 

だが、

 

「ですが、それが本当であればです」

 

だが、ナスターシャがそれを否定する。

 

「でもマム!アッシュボルトが!アシモフがガンヴォルトを殺したのは聞いたでしょう!?マムもそれを聞いていたはず!それにあの男がそんなヘマなんて起こす様な男とでも!」

 

マリアもセレナが生き返るかも知れないと知り、ガンヴォルトが本当に生き返っており、電子の謡精(サイバーディーヴァ)があればセレナを、大切な妹が生き返ると信じて何処か否定的なナスターシャにそう言う。

 

「ええ、あの男がその様なヘマを起こすとは思わないわ。ですが、ガンヴォルトを本当に殺した所を見ましたか?死んだ事を確認しましたか?」

 

「確認していない…でも、あの男はそんなヘマしないって分かってるでしょ!」

 

「そうデスよ!マム!」

 

「あいつ等もだからこそ!仇を取る為に向かって来ていた!」

 

だが、協力を一番初めに答えたナスターシャはそれでも首を振るう。

 

「ならばどうしてそこまで!セレナが生き返る!またセレナに会えるのにどうして!」

 

「本当にセレナが生き返る保証があるのですか?」

 

「ッ!?」

 

「セレナが生き返る、私ももしそんな事が出来るのなら叶えて欲しいです。そして謝りたい。あの時、あの子をあんな目にした事を。ですが、あの外道が本当にそんな事をしてくれるとも思っているのですか?今まで協力した中でこの様な提案を掲示したのは初めてですが、あの外道がその事を守るとでも?守ったとしても、あの子をあの外道が手駒にして更に無理難題を吹っかけてくる可能性だって有ります。実際のあの男の本当の目的は少ししかはっきりしていません。口では世界を救うと言っていますが、私はもうあの男を信用はしていない」

 

その言葉にマリアはアシモフにより甦ったセレナが酷い目に遭う事を想像してしまう。アシモフは外道で有り、それを守るとは思えないからだ。そして、アシモフの目的が何なのか。未だ不透明なものが多い。

 

「それにそんな形で甦ったとしても私はセレナに顔向け出来ません。もう私達は戻れない所まで来ています。それにこのままあの子が蘇ったとしても、奪われ、あの外道にセレナを利用される事が許せないのです。私は微かな希望で有りますが、それを受け入れるべきなのか答えが出ません。人智の外れた事でセレナを生き返らせるべきなのか」

 

それはナスターシャの本音。セレナを生き返らせるのが正しいのか。セレナをアシモフに利用されていいのか。

 

誰もがその問いに答える事が出来ない。

 

「だからこそ、こちらも動きます。私としても、世界を救うのに、もうこれ以上あの外道達と行動する事は出来ません。裏切りましょう」

 

その言葉に三人が驚く。

 

「裏切るデスか?」

 

「ええ、もう決めました。あの男がセレナを口にした瞬間、私の中でもうあの様な者達とは協力出来ないと」

 

「でも、どうするの?私達だけであの外道をどうにか出来るなんて…」

 

調の言う通り、アシモフと言う男に刃向かってもこちらが不利。そして最悪の場合殺される。

 

「あいつ等に協力を仰ぐの?」

 

マリアも不安そうに聞く。

 

「いいえ、もっと都合の良い者達が居ます。私達の目的を達する為に、餌をちらつかせれば食いつく様な貪欲な者が」

 

ナスターシャは覚悟を決めてそう言った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。