戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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ボクは空港でのテロリストの戦闘後、朔也とあおいと合流して被害状況を確認した。被害は死者は出なかったものの、捕縛時に近くにいた何人かの隊員達が大きくはないが負傷したと言う事を聞いた。死者が出なかった事は幸いだが、テロリストが何の目的で保護対象を誘拐したかは未だ不明だ。それについて話している間に既に日付は変わっていて、ライブ当日になっていた。とにかく一旦ボク達は休む事にして、休憩後に話す事になった。

 

数時間の仮眠を取り、ボクが倒したテロリスト達の特徴などを伝えたりして昼頃、あおいと朔也と合流する。

 

「今回の件は一応司令の方には伝えたけど、会って報告するのは心苦しいな」

 

朔也が溜息を付きながらそう漏らす。

 

「まさか護衛に付いていた人がテロリストなんて誰も思わないわよ」

 

「自分の仲間の中にテロリストがいるかもしれないという思惑で全員が疑心暗鬼になって誰も彼も信用出来ないようにする。テロリストもそんな魂胆を狙ってるのかもしれない。だからと言って身辺調査を今頃したところでさらに溝が出来て相手の思うツボになる。向こうもそれが狙いなら手出しが難しい」

 

ボクの言葉に朔也とあおいが頷く。今頃、疑いを掛けて疑心暗鬼になったところを攻められるなら相手にとって好都合だろう。敵の虚言に騙されて撃たれるなんて事になる可能性だってある。

 

「この事は余り身内には知られない方が良い。とにかく、ボク達はいち早く戻って弦十郎に報告をしよう。ヘリの準備はもう一課に頼んでる」

 

ボクはそう言って朔也とあおいと共に空港屋上のヘリポートへと向かう。待機しているヘリに乗り込むとヘリは飛び立った。

 

下の空港ゲートに視線を向けると沢山の記者団が押し寄せており、一課や航空警備隊が対応に追われていた。

 

「全く、こっちだって真剣にやってるのに有る事無い事書いて、いい迷惑だ」

 

憎たらしそうに朔也が呟いた。振り向くと朔也の手には新聞かあり、新聞の一面には

 

-自衛隊、テロリストの侵入を許してしまう。捕虜になっていた少女をなぜ救えなかったのか-

 

と見出しに書かれていた。

 

その見出しを見てボクは奥歯を噛み締める。あの場にいて雪音クリスを救えなかった事、過去の奏の件と重なる。

 

「ガンヴォルト、あなたのせいじゃないわよ。今回の件もあなたは自分の危険も顧みずに戦ったんだから。誰も今回の事であなたを責めたりはしない」

 

ボクの心情を察したのかあおいが励ましてくれる。それでもボクは雪音クリスを救えなかった事に歯痒く感じている。

 

そこからはボク達は黙って到着するまで会話らしき会話もなく目的地である二課までヘリの中で待機していた。

 

しかし、その沈黙を破ったのはヘリのパイロットであった。

 

「ライブ会場にノイズが出現したそうです!現在被害状況は不明!シンフォギア装者がノイズとの戦闘を行なっているそうです!」

 

「ライブ会場に進路を変更!ノイズタイプの確認も頼む!」

 

ボクはパイロットに情報を求めた。パイロットは一課に確認を取り返答する。

 

「確認されているのは飛行型、巨大型、人型、四足歩行型です!」

 

「分かった!ボクをライブ会場上空で降ろしてくれ!」

 

「分かりました!」

 

パイロットは進路をライブ会場へと変更させる。そのうちにヘリの中にあるボクの戦闘服へと素早く着替える。腕や脚の装備やダートリーダーの状態を確認をしながら朔也とあおい、そしてパイロットに向けて言う。

 

「付近に近付くと多分飛行型ノイズが襲ってくる可能性が高い。ボクを降ろした後は直ぐにその場から離れてくれ」

 

「分かっている。けどあんたは大丈夫なのか?」

 

パイロットが不安そうに聞いてくる。

 

「ボクの事は気にしなくていい。こういう事は慣れてる。それよりもボクが飛び出した後、全員が安全圏まで逃げ切れるように操縦をお願い」

 

ダートリーダーの確認を終え、避雷針(ダート)の入ったマガジンを装填する。そしてヘリの搭乗口を開けて状況を確認する。まだ距離が離れているためライブ会場の内部状況は分からないが、爆発などで建物の一部が破壊されていたり、逃げ惑う人々が見える。そして、ライブ会場の中心から発生する竜巻。奏のガングニールによるものだろう。

 

「急いでくれ!」

 

「分かりました!」

 

さらにスピードを上げるヘリ。それによって周辺にいる飛行型ノイズがこちらに気付き、ドリルのような形状に変わり襲い掛かろうとする。

 

ボクは素早く搭乗口から身を乗り出して避雷針(ダート)を撃ち込み、腕から雷撃を出す。今ここで雷撃燐を使ってしまえばヘリの操縦席の機材にも影響を及ぼしてしまう可能性があるからだ。

 

飛行型ノイズは不可避の雷撃により空中で炭の塊と化して落ちて行く。

 

ある程度会場に近付く事は出来たが、ノイズの猛勢が激しくなってきたため、これ以上近付く事が出来ない。

 

「ここでボクは降りる!ボクが降りたら直ぐに離れてくれ!」

 

そう叫ぶとボクは搭乗口から飛び出した。ヘリが遠くに逃げるのを確認しながら飛行型ノイズを掃討していく。

 

雷撃鱗を纏いながら滑空していきライブ会場の中心へと進む。近付くに連れ内部の状況が分かり始めた。

 

内部では翼や奏が戦っているのであろう。ノイズの炭が大量に残っている。ノイズの群れの中で戦う翼は確認出来た。しかし、奏の姿が未だに見えない。

 

「何処にいるんだ」

 

辺りを見回して探すと観客席が崩れ落ちた所で少女を背に槍を掲げる奏を見つけた。

 

そして

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal

Emustolronzen fine el baral zizzl

Gatrandis babel ziggurat edenal

Emustolronzen fine el zizzl」

 

その歌は聞いた事がなかった。しかし、その歌から発せられる歌声にはとてつもない力がある事が分かる。

 

かつて、弦十郎から聞いていたシンフォギア装者の奥義、絶唱。莫大なエネルギーを使い、装者の身を滅ぼしかける命を懸ける歌。だが、その力は霧散して発動する事はなかった。

 

そして倒れる奏を襲い掛かろうとするノイズ。

 

そんな事をさせるわけにはいかない。ボクは雷撃鱗を解除して言葉を紡ぐ。

 

「閃く雷光は反逆の導、轟く雷光は血潮の証、貫く雷撃こそは万物の理」

 

ボクの身体に迸る雷撃が形を変えて鎖となっていく。ボクは直ぐに奏に襲い掛かろうとするノイズの群れから奏を守るように束ねた鎖を放ち、それ以外は翼や少女に当たらないように鎖を操作してノイズ達を貫き、絡め取る。

 

「迸れ!蒼き雷霆よ(アームドブルー)!ヴォルティックチェーン!」

 

鎖に雷撃を流し込み、会場にいる全てのノイズを炭化させた。地面に降り立つと同時に雷撃を纏った鎖が消え、奏の状態を見て苦虫を噛み潰した時のように顔を歪ませた。

 

「ガン…ヴォルト」

 

ボクは直ぐ様奏の近くに向かい、うつ伏せで倒れる彼女を起こそうとする。

 

しかし、彼女の身体に触れた瞬間に理解してしまう。奏の身体からは徐々に体温がなくなっていき、彼女の生体電流の活動が減少していくのを。

 

「しっかりするんだ、奏!」

 

「ガンヴォルト!奏の状況!?」

 

翼もこちらに近付いて奏の様子を見ると手で口を覆う。余りの酷い状態に翼は膝を突いた。

 

「ガンヴォルト…あんたっていつも遅刻するよな」

 

「奏それ以上喋るな!」

 

ボクの言葉を無視して奏は喋りを止めない。

 

「まぁ、今回はいいや。…ガンヴォルト…私の歌…ちゃんと聴いてくれたか…」

 

奏は焦点の合わない目でボクを見る。

 

「ああ、聴いたよ。だけど、ボクが聞きたかったのは君のそんな歌じゃない!だから、本当の君の歌を聴かせて欲しい…」

 

「…よかった…でも、ごめんな。私もうこれ以上歌えそうにないや…。さっき絶唱、失敗したけどさ…さっきから私の身体はちっともいう事を聞いてくれないんだ…」

 

奏は最後の力とばかりにボクの頰に手を伸ばす。

 

「ごめんな、ガンヴォルト…せっかく助けてもらったのに…ずっとありがとうも言えなくて…」

 

「だったら生きる事を諦めるな!君は…君はまだ助かる!だから…」

 

何かを言い終える前に奏の手がボクの頰から滑り落ち地面に落ちた。

 

「奏!死ぬんじゃない!こんな形でありがとうと言われてもボクは笑えない!だから…だから」

 

それ以上言葉が出ない。奏の身体から発せられる生体電流の鼓動がやがてゼロになったかのように活動を停止した。ボクは彼女を生かすために自らの蒼き雷霆(アームドブルー)で彼女の生体電流の再起を試みた。

 

「君をこんなところで死なせはしない!目を開けてくれ!奏!」

 

しかし、他の人の生体電流を上手く活性化させる事が出来ず、滞ってしまう。そして奏の纏うガングニールが朽ちるように崩れ始める。

 

「ボクは…ボクはまた救う事が出来ないのか…」

 

あの時のシアンのように。今度は奏まで…。

 

『解けない心 溶かして二度と 離さないあなたの手』

 

突如響き渡る懐かしき歌声。ボクが倒れた時、助けてくれた歌声。今まで聴く事の出来なかったその歌声。

 

「モルフォの歌…モルフォなのか!?」

 

突如響き渡る歌声に辺りを見回す。翼もその歌声に我に返り辺りを見渡している。

 

『ごめんね、GV。私は、今はこの声を届けるのが精一杯なの』

 

「モルフォ…いや、この感じはシアンなのか?」

 

『そうだよ、GV。今の私じゃこのくらいの事しか出来ない…』

 

響き渡るモルフォの声は最後は雑音が入ったように聞こえづらくなった。

 

『…もう時間がないの。この場所にあった歌の力で一時的に目が覚めただけ。だけど、GV。私は何時でもあなたのそばにいる…』

 

「どういう事なんだ、シアン!君は…」

 

その言葉を最後に彼女の歌声は、彼女の声は聞こえなくなる。それと同時に抱える奏の身体から消えてしまった体温が少しずつ上がっていき、生体電流が流れ始めるのを感じる。

 

「ガンヴォルト!さっきの歌はなんなの!?それにさっきの声は!」

 

翼が起こった事が理解出来ず、ボクに問いただしてくる。

 

「ボクにも分からない…だけどシアンの、彼女の歌のおかげで奏が助かった。でも、シアンは何処に…」

 

シアンの声だけで姿もない。それにあの言葉の真意が分からない。だが、あの言葉、彼女の言葉の意味があの時の事だとすると…。

 

ボクは最悪の考えを頭を振るって打ち払う。

 

「とにかく今は奏を安全な場所に。ボクは後ろのあの子を連れて行く」

 

そう言って翼に奏を預けると近くで血を流す少女の方に駆け寄る。

 

彼女も先程の歌の影響なのだろうか、傷口は塞がっており、容体は見た目よりもとても安定している。だが所詮は素人目。何が起こるか分からない。ボクは少女と奏の様子を見ながら一課の到着を待った。

 

◇◇◇◇◇◇

 

あの場に倒れる少女、立花響はツヴァイウィングの片翼である奏の言葉を胸に重い瞼を閉じないように気力で意識を繋いでいた。

 

(生きる事を諦めない)

 

彼女の言葉通り、響は焦点の合わない視界で彼女を見続けた。

 

だが、その彼女すら倒れ、迫り来るノイズに襲われようとしている。そしてそれが終わったら自分が標的になるだろう。

 

(嫌だ、死にたくない!)

 

しかし、そのノイズ達は空中から出現した鎖に貫かれる。そしてその鎖は奏の前に盾のように複数突き刺さり、他にも大量の鎖が空中から降り注ぐとノイズ達を絡めとった。そして次の瞬間、鎖に電気が流れるように雷が伝ってノイズに感電させたかと思うとこの場にいる全てのノイズ達は炭へと変わった。

 

そして鎖が消えると同時に1人の男性が空から現れた。長い髪を三つ編みにし、片手には変わった銃を携えた蒼いコートを着た人物。彼の背中には蒼い雷が迸っていた。

 

そんな彼が倒れている奏を抱え、何が叫んでいる。しかし、聞こえづらい耳には会話が全く入ってこない。

 

奏が事切れた瞬間に歌が聞こえてくる。その歌声はとても優しく、そして生きる活力を与えてくれる。その歌声が消えると共に響は意識を失った。

 

◇◇◇◇◇◇

 

豪邸の中にある研究室、そこで何者かが興味深そうに画面を見つめていた。

 

「彼女達とは違う歌の力…死にかけた人すらを癒す歌の力か…やはり、第七波動(セブンス)とは興味深いものだ」

 

何処で撮られたか分からないがライブ会場の動画が画面に映っている。

 

「そしてこの歌の力が響くと同時に今まで何も反応がなかった天叢雲が呼応し始めた。鍵はやはりこの歌を歌う者か…」

 

そう言って培養液の中にある聖遺物の一つに目を移す。そこでは今まで眠っていたかのように反応していなかったはずの天叢雲が鼓動するように光を明滅させている。

 

「やはり鍵となるのは歌の力…電子の謡精(サイバーディーバ)。ガンヴォルトの言っていた情報は(フェイク)だったか…。第七波動(セブンス)…ガンヴォルトとこの聖遺物の持つ共通するアウフヴァッヘン波形。そしてシアンと呼ばれる少女。全く興味が尽きないわ、第七波動(セブンス)と言うものは」

 

呟くと同時に、天叢雲がまるで反応したかのように大きく瞬いた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

ライブ会場で起きた惨劇は行方不明、死傷者合わせて12874人と言う甚大な被害をもたらした。

 

そしてその惨劇により天羽奏は昏睡状態となり、ツヴァイウィングは活動を休止。

 

その惨劇は多くの人々に大きな傷跡を残した。

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