戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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(弦十郎は未来に頼んだのか…確かに響を説得するなら未来が一番の親友だし…)

 

ボクは響の警護の為に、二人を陰ながら見守るのにスーツや戦闘服など目立つ格好などは出来ない為に、変装して響と未来の警護を行う。とは言っても、二人には悪いと思っているが、今は会うのは心配をさらにかけてしまう為に、二人の行動を見れ、そして自分の存在が気付かれないような距離を保ち続けている。

 

自分でも分かっている。これは駄目だという事ぐらい。装者も、そして響、未来も会わない事でかなりの心配をかけていると思う。

 

だが、緊急事態にならないのであれば会う事は出来ない。更に心配をかけるのは目に見えている。

 

だからこそ、陰ながらこうして警備で留めている。

 

だが、こうやって警備をする中で何かおかしい事に気付く。

 

何の変哲もないはずの日常の中に潜む異物。この東京スカイタワーで響と未来を警護をする中、違和感を覚えていた。

 

(…さっきから何人か…動きは無いけど、一般人じゃない人が何人かいる…)

 

今このフロアに何人か普通の人であればしない様な視線の動かし方、まるで何か警戒している様な素振り。そして、動きがまるで一般人ではあまりしない様な常に懐へと直ぐに手を入れられる様な姿。

 

(…何か嫌な予感がする…)

 

あまりにも不自然。電話をかける様に装い、響と未来の姿を視認出来、怪しまれない様に電話をする振りをしながら無線で連絡を入れる。

 

「もしもし、今大丈夫かい?」

 

『ガンヴォルトか?』

 

「まだ来ないのかい?結構待ってるんだけど…遅れそう?」

 

『何を言っているんだ?』

 

脈絡のない話に弦十郎は疑問符を浮かべる。無理もない。不審に思われない様に移動したものの怪しまれたのか、近くにもボクを監視する様に来た男がいる為に表立って応援を呼ぶ訳にはいかないからだ。

 

「東京スカイタワーだよ。ボクもあまり待ってられないんだけど。他の人も早く来てくれる様言ってくれないか?」

 

『…誰か怪しい人物が居るんだな?分かった。応援をそちらに向かわせる。装者はどうする?奏か翼、クリス君の誰かを送るか?』

 

弦十郎は直ぐに意図に気付いた様で応援を送る様に手配する。

 

「そうしてくれ。でも女の子は大丈夫だよ。今日は男だけで遊ぼう」

 

『分かった、装者は待機させておく。ノイズじゃないにしろ、F.I.S.、アシモフじゃないにしろ、何かあれば直ぐに装者を出動させる。何かあれば直ぐに連絡してくれ』

 

「分かった、早く来てよ」

 

そう言って無線を閉じ、電話を切る振りをする。

 

その瞬間に先程ボクを監視していたと思われる男が声を掛けてきた。

 

「すみません、トイレに連れて行ってもらいたいんですが」

 

「トイレならこの奥のエレベーター前にあるから真っ直ぐ行けば着きますよ」

 

一般人の振りをしてそう答えるが、男は連れて行ってくれと何故かしつこく頼んで来る。

 

そしてボクがずっと拒み続けると痺れを切らしたのか、他に見えない様に銃を懐から取り出して突き付けてくる。

 

「いいからついてこい」

 

この男の他の周りにいた仲間らしき男達も数名集まってきて囲んでくる。

 

集まっても警戒を怠らない所、銃を持つ所一般人じゃない事は明らか。この国に隠れて銃を所持し、一課や二課、斯波田事務次官の所属する組織の人間ではない。そしてこの男が持つ銃はこの国が支給する銃のカタログに載っていないもの。そうなると考えは一つ。

 

アシモフやF.I.S.の協力者。もしくはこの気に乗じて動く別組織の敵。

 

だが、人の目がある以上、下手に動く事は出来ない。下手に動けば、このフロアにいる人々が被害に遭う。

 

しかも、この男達のせいで警護対象である響と未来の姿も隠れて見えなくなってしまった。

 

「分かった」

 

被害を最小限に抑える為に、ボクはその男達に連れられ、その場を後にする。

 

(響や未来を見失う前にどうにかするしかない…)

 

そう心に誓い、男達と共にトイレへと連れ込まれた。幸い誰もいない事を確認するとボクはそのまま壁の方に突き飛ばされる。

 

「貴様は何者だ?アッシュボルトの仲間、もしくはF.I.S.の協力者か?」

 

銃を構えながら、ボクに向けてそう告げる。その事から彼等はアシモフとの繋がりがない事を知るが、ならば何処の組織なのか。この国も敵は多い。以前のデュランダルの実験の件。ボクを狙う諸外国等を挙げればきりがない。ある程度は斯波田事務次官の手腕により収まっているがそれでも、消えないのが現状だ。

 

だが、そんな事を今模索している場合ではない。直ぐ様、雷撃を流そうとした瞬間、東京スカイタワーが激しい揺れに襲われる。

 

「な、何だ!?」

 

予期せぬ事にボクも男達も動揺するが、直ぐにボクは雷撃を腕に纏い、男達と外で待っていたが揺れで呼び戻そうとした男達を一気に麻痺させる。昏睡した事を確認すると素早く弦十郎へと連絡しようとする。だが、無線も電話もうまく繋がらない。

 

何か妨害するものが出ているのだろう。

 

「とにかく応援が来る前に響と未来、それにタワー内の市民の安全を確保しなきゃ」

 

ダートリーダーをバックから取り出すと、ボクは現状の把握の為に、トイレから急いで出る。

 

外は先程の揺れで人々が逃げ回っていた。直ぐ様、その中に響と未来の姿を探すが、見当たらない。

 

この短時間に何処か行ってしまった。とにかくここの安全を確保する為に付近の係員に機動一課である事を伝えて、避難誘導の指示と先程の揺れは何だったのか確認する。

 

「先程東京スカイタワー中層で爆発が起きたみたいなんです!」

 

テロ、いや、こんな状況でこんな事を起こすのなんてアシモフ以外考えられない。

 

「分かった、ボクが上の人達の避難誘導をしてくる。それと男を数名集めてトイレで倒れている人達を回収してくれ。その人達は警察の方に身柄を預ける様お願い」

 

そう言ってボクはエレベーターへと向かい、その扉を蒼き雷霆(アームドブルー)の力で開けると、側面に備え付けられた梯子を使い、上階へと急ぎ登り始めた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

爆発が起きる数分前-

 

アシモフは米国政府の男が死んだ事を確認するとそのまま手に持ったネフィリムの心臓、そして電子の謡精(サイバーディーヴァ)を宿す神獣鏡(シェンショウジン)のギアペンダントを腕へと縛る。

 

「アシモフ!貴方が何故此処に!?」

 

マリアはナスターシャ、そして切歌と調の前に立ち、アシモフへと叫ぶ。

 

「初めから貴様達の裏切りなど予想していたさ。そして貴様達は私の予想通り動いた。だから私はそれを利用して裏でこそこそ動く邪魔者を消す餌となってもらっただけだ」

 

「ッ!?」

 

ナスターシャとマリアは既に裏切りを悟られており、それを知った上で泳がされていた事に、絶望する。

 

切歌と調も同様だ。

 

「初めから…初めから貴方の掌の上だったという事ですか…」

 

「ああ、貴様達が私とDr.ウェルに協力を仰いで来た時から既にこうなると想定していたさ。貴様達の(テロリスト)に必要な残虐性も、悪に染まる信念の薄さ、そして私に対する隠しも出来てもいない不審感。こんな事態がいずれ来るとな」

 

あくまで私は支援者で有り、有益である限り協力したまでだと。

 

アシモフはそう告げた。

 

「フィーネを旗頭にする遊びに付き合うのもこれまでだ。誰にも宿っていない事など既に知っている。それでも、世界に知らしめる為の活動には役に立ったがな」

 

「ッ!?何故貴方がその事を!?」

 

マリアが、アシモフに対して言う。

 

「私とフィーネはかつて協力関係なのは承知のはずだろう?そして私はフィーネは使えないと判断して奴を追い詰める為にかつての駒を使って追い詰めている。フィーネがかつての私の裏切りを赦すとでも?赦さないだろう。フィーネならば協力しても裏切りなどではなく、私の隙を見て命を狙う。だが、フィーネと呼ばれる貴様は何の行動(アクション)を起こさなかった。そしてあの時の会話だ」

 

アシモフはフィーネがこの中にいない事など初めから知っていた事、そして湖の辺りの会話を聞かれていた事に苦虫を噛み潰す。

 

初めから裏切りなど刷り込まれていた。初めから出し抜く事など出来なかった事に歯痒い思いが込み上げる。

 

「貴様達の裏切りなど初めから想定され破綻していた。それだけの事だ」

 

その言葉と共に今度は外から隠れていたと思われる米国政府の残党がなだれ込む様に銃を構えて突入してくる。

 

「ッ!?F.I.S.!初めからこのつもりだったのか!」

 

突入してきた隊長らしき男が叫ぶ。

 

惨状からアシモフとF.I.S.が裏切っておらず、此方を貶められたと感じたのだろう。

 

マリアも切歌と調も数の暴力の前に恐怖の色が見える。三人がLiNKERを打ち込み、聖詠を歌うよりも早く引き金を引かれるからだ。ナスターシャは全て自身の決断が崩れたが、なんとか三人だけでも生きれる様に策を巡らせていたが、この様な状況で策が思いつかない。

 

一触即発の空気の中、アシモフはこんな状況にも関わらず、笑みを浮かべている。電磁結界(カゲロウ)という無敵とも呼べる(スキル)がある限り、何の支障もない表れであろう。

 

「まだまだ邪魔者はここに残っている」

 

そう言ったアシモフは何かリモコンの様な物を取り出す。

 

「米国政府、貴様らは此処で皆殺しだ」

 

その言葉と共にアシモフはリモコンを押すと同時に周囲が大きく揺れ、外には黒煙が宙へと登る。

 

「開戦の狼煙変わりだ」

 

その言葉と共に米国政府、アシモフの戦いの火蓋が落とされた。

 

◇◇◇◇◇◇

 

東京スカイタワーが見えるビルの中のカフェテリア。

 

そこにウェルは優雅にコーヒーを飲んでいた。その傍らには大きめのトランクケース。そしてその中にはソロモンの杖。

 

アシモフが決めた合図が来るまでただ待っているだけであった。

 

そしてコーヒーを飲み終えると自分で新しいコーヒーを取りに行く。そして新しいコーヒーを取り元の席に戻ると同時に、東京スカイタワーの方から大きな爆発が起き、黒煙を上げるのが見える。それを見てウェルのいるカフェテリアでもその異変でパニックが起こる。

 

「始まった様だね。それじゃあ、アッシュの言う通り、僕も僕で動かさせてもらいましょうか」

 

そう呟く様に言って、ウェルはソロモンの杖を取り出すとカフェテリアに大量のノイズを召喚する。それにより更にパニックが起こるが、直ぐにノイズにより鎮静させられた。

 

そして新たに飛行型ノイズを大量に呼び寄せると直ぐに東京スカイタワーへと向けて解き放った。

 

「これで僕の仕事は終わりましたが、さっきコーヒーを取ってきたのでこれが飲み終わるまで此処でどうなるか見させてもらいましょうか」

 

そう言うとウェルは椅子を東京スカイタワーの方へ向き直して座り、黒煙を上げる東京スカイタワーを見ながらコーヒーを飲むのであった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

さっきの事で帰ろうと思った響と未来であったが、そんな気分にもなれず、ただ無言のまま展望台へと来ていた。

 

少しは気を晴らそうと思ったのだが、綺麗な景色を見ても決してモヤが取れることはなく、ただただ虚のまま見る事しか出来ない。

 

「…」

 

「…」

 

無言のままただ二人で景色を見ていた。だが、こうしていても何も変わらないと二人は感じて帰路に着こうとする。

 

その瞬間、轟音と共に東京スカイタワー全体が揺れる。響は揺れを感じた瞬間に、未来にも伏せる様促して床に転倒する事は何とか防いだ。

 

「何が…」

 

響は現状を把握すると展望台のガラスの割れた枠の奥から上空へと登りゆく黒い煙、そして、更に遠くから飛んでくる飛行型ノイズの群れ。

 

「ッ!?」

 

未来もそれを見て声を上げずに驚いた。

 

「Balwisyall…」

 

「駄目!響!」

 

聖詠を歌おうとしたが、未来の声を聞いて止まる。

 

「響!駄目!これ以上歌ったら響がどうなるか分からないんだよ!」

 

未来は響の事を思ってそう言った。

 

「…ごめん」

 

響も未来の気持ちを理解して歌う事を止める。それを見てホッと一息ついた未来だが、響も未来も今の状況が危ない事。そして自分達にも出来る事をしなければと考えて動き始める。

 

二課へと連絡、そしてここからの避難。そして避難誘導をする。

 

響は未来の手を取り立ち上がると弦十郎へと連絡を行おうとする。しかし、電波が何故か入らず連絡する事は叶わない。

 

「…師匠に連絡がつかない…」

 

「…こんな状況になったら弦十郎さんも直ぐに皆を送ってくれるはずだよ…」

 

未来も自身のスマホでクリスや翼に連絡を取ろうとしていたが、繋がらない事を確認してそう言った。

 

ならば行動、それまでに助けられる人達を助けるべく動く事が重要と判断して響と未来は避難を手伝う為に動く。

 

係員の指示に従いつつ、避難出来ていない人が居ないかを確認しながら、動く。

 

そんな中、女性が子供を探している事に気付き、その女性の助けになるべく、共に子供を探す手伝いをする。

 

だが、そんな中ノイズが東京スカイタワーへの攻撃を開始が始まり、女性と逸れてしまう。

 

「あの人無事に逃げられていればいいんだけど…」

 

「私達も早くあの人の子供を見つけて逃げないと…」

 

響と未来も女性の無事を願いながら、まだ残っていると思われる子供を探す。

 

そしてトイレの近くになると子供の泣き声が聞こえて来て、そちらへ向かうと先程の女性から聞いた特徴と一致する少年を発見する。

 

「良かった!未来!居たよ!」

 

「お姉ちゃん達…誰?」

 

「私とこのお姉ちゃんはお母さんに頼まれて君を探していたの。此処は危ないから早く脱出しよ」

 

未来は少年の手を取り、此処から脱出する為に移動を始める。

 

既に外はノイズが周りを飛んでおり、生きている人間を飛びながら探している。響と未来、そして少年は瓦礫などの遮蔽物を使いながら非常口へと向かう。

 

もうすぐで非常口に辿り着くという所で不運な事に子供が小さな瓦礫に足を取られ、転んでしまう。

 

「ッ!?」

 

その瞬間、ノイズに存在を察知され、ノイズは少年目掛けて襲い掛かろうとした。

 

響と未来は少年を何とか立ち上がらせて全速力で非常口へと駆ける。

 

だが、ノイズのスピードの方が何倍にも速く、追い付かれそうになる。

 

万事休す。響は未来と子供を助ける為に、ノイズを食い止めようと、禁止されたシンフォギアを纏おうと聖詠を歌おうとした。

 

「響!駄目!」

 

未来が静止をかける。だが、それでも響は未来と子供を助ける為に聖詠を歌おうとしたその瞬間、近くのエレベーターの扉が勢いよく開いて、そこから何発か針の様なものがノイズに向けて撃ち込まれる。

 

そしてノイズに青い紋様が浮かぶと同時に、雷撃がエレベーターの扉から放たれ、ノイズを炭へと変えた。

 

「これって!?」

 

「大丈夫か!?響!未来!」

 

エレベーターの扉から雷撃が止むと同時に今とても頼もしい存在、ガンヴォルトが現れた。

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