戦姫絶唱シンフォギアAB   作:株式会社の平社員

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アシモフがボクに向けて告げた言葉。

 

ボクを何故アシモフがGV(ガンヴォルト)と呼ばないのか。何故紛い者と言うのか。全てが分かる。だが、心の中は激しい警鐘を鳴らしている。

 

絶望を教えよう。アシモフが何か言おうとしているが聞いてはならない。そう感じる。

 

だが、今のボクはアシモフによりボロボロにされ、抵抗すら出来ない。

 

「貴様は奴ではない…本物ではないんだよ、紛い者」

 

アシモフがボクへと向けて告げた。

 

意味が分からない。ボクが本物ではない?ならばこの力はなんだ?この記憶はなんだ?頭の中に浮かんだ事を口に出そうとするが、ボロボロの身体では声が出ない。

 

「何が言いたいとでも言いたそうだな。だが、私からしたら貴様が何を言っているとずっと感じていたよ。何を根拠に貴様は本物のガンヴォルトを語る?姿か?記憶か?それとも蒼き雷霆(アームドブルー)か?電子の謡精(サイバーディーヴァ)か?」

 

何が言いたいとばかりに睨む。

 

「例え、その全てが揃おうが貴様が本物になり得ない。絶対になり得ないんだよ」

 

何を言っている。全く訳の分からない言葉を並べるアシモフ。

 

「何故私がそこまでそう言い切るか?確かに、私も貴様を初めて見た時は驚い(サプライズ)てしかたなかった。何故奴がここに居るとな?訳が分からなかったよ。不思議(ファンタジー)でならなかった。だから、貴様を調べさせてもらったよ。かつてフィーネにより操られた天羽奏と貴様が戦闘(バトル)を行ったアビスを。そしてその中に残された貴様の血痕(ステイン)から貴様の正体を知った。貴様があの時、完全(コンプリート)に殺す事をしなかった事により生き延びていたあの時の死に損ないだと言う事を」

 

いつまでも勿体ぶるアシモフ。

 

そしてようやくアシモフはボクの正体を口にした。

 

「貴様は皇神(スメラギ)が続けていたプロジェクト・ガンヴォルトの被験体であり、ガンヴォルトのDNAを使い、生まれたデザイナーチャイルドだという事を。そして貴様はその特異性(バリアント)により生かされていた実験体(モルモット)だと言う事を」

 

「ッ!?」

 

ボクがデザイナーチャイルド。アシモフはそう告げた。

 

「自分は本物…デザイナーチャイルドだと信じられないだろう。クローニング技術が皇神(スメラギ)が保有しているのは奴の記憶を持つお前なら分かるだろう。そして、その技術を応用し、人も同様に作ることが出来る。そしてその技術を使い作られ、そしてその中でその特異性(バリアント)を持った為に生かされていた。それが貴様だ」

 

確かに、アシモフ自身が告げた皇神(スメラギ)の技術力があれば可能だという事は知っている。実際にボクも皇神(スメラギ)を衰退させる為にその様な施設へと任務(ミッション)に赴いていた事もあるから。

 

だが、それだけで何故ボクがデザイナーチャイルドと言い切れるのか?それに特異(バリアント)性とは何なのか?

 

「貴様の持つ特異性。それは何体も貴様同様に皇神(スメラギ)により作られたデザイナーチャイルドがいた。だが、蒼き雷霆(アームドブルー)に適合したガンヴォルトの遺伝子を使用したデザイナーチャイルドだろうが、蒼き雷霆(アームドブルー)という特別な第七波動(セブンス)に…適合出来ると言う可能性は限りなく低い。そんな中、唯一限りなく低い可能性から貴様が生まれた。それが貴様であり、デザイナーチャイルドでありながら蒼き雷霆(アームドブルー)の能力因子を宿した中で死なず生き残った貴様だけが」

 

違う。ボクはデザイナーチャイルドではない。

 

「違うとでも言いたげだな?だが、それが真実だ。貴様はデザイナーチャイルドであり、姿を模し、蒼き雷霆(アームドブルー)の因子を宿した紛い者だ。何故言い切れるか?それは奴のDNAを私が記憶し、貴様のDNAを確認したからだ。言っただろう。貴様の血痕(ステイン)から調べたと」

 

そう言った。だが、それを証明する証拠がない。それに何兆ものあるDNAを記憶できるなど信じられない。

 

「嘘だ…」

 

ボクは擦れながらも声に出す。

 

「嘘などではない。何度も言うがそれが真実(リアル)だ。貴様は奴のDNAから作られたデザイナーチャイルド。そして誕生以前に蒼き雷霆(アームドブルー)の能力因子を投与され、予想外の結果によって生まれた。そして、それが違う意味のGVを持つと言った理由だ」

 

初めて対峙した際にアシモフが残した違う意味のGV。その意味もアシモフが告げた。

 

「続けられたプロジェクト・ガンヴォルトのその中の実験体(モルモット)唯一の生存個体であり、DNAが変異した事により生き長らえた遺伝子変異体(ジーン・バリアント)。それが貴様のGVだ。ガンヴォルトと自分を信じたいだろうが、ガンヴォルトとは私が本物の奴に付けたコードネームだ。貴様の様な紛い者が語る名などではない」

 

アシモフが告げたボクの正体。それはボクがデザイナーチャイルド、つまりクローンであり、そしてその実験の唯一の生き残りである遺伝子変異体(ジーンバリアント)

 

あまりにも突拍子のない事。事実なのかも分からない事にボクはアシモフを睨み、言った。

 

「デマカセを…言うな…」

 

「デマカセではない。とは言っても今の貴様は何も知らずいつまでも否定し続けるだろう。それで話を戻そう。私は貴様を殺し損ねた。あれは貴様の持つ記憶とは別の意味だ。奴が…本物のガンヴォルトが紫電を倒し、電子の謡精(サイバーディーヴァ)と共に葬った事とはな」

 

ボクとシアンを葬った時以外。それ以外など存在しない筈。ボクはあの時アシモフの強欲なる簒奪者(グリードスナッチャー)によって死にかけた記憶以外は。

 

「プロジェクト・ガンヴォルトの実験場を爆破させて破壊した。その爆破で貴様は死ぬ。それ故に私が貴様に手を下さなかった。ポッドの中で生命維持により生かされた貴様をな。本当に後悔していたよ。あの時の貴様が生きていて、再び私の前に現れた時は。私の|怠慢《が起こした事でこうして何度も奴を模倣する貴様と対峙させられたのだからな」

 

その様な事を言おうがボクにはそんな記憶など存在しない。そしてボクはクローンなどではなく、本物のガンヴォルトだ。真似なんかじゃない。紛い者なんかではないと、アシモフを睨み訴える。それに、シアンはどうなる?アシモフの言葉が本当だとしてもシアンの説明が付かない。

 

電子の謡精(サイバーディーヴァ)は私にも分からん。何故貴様に本物の記憶を宿した電子の謡精(サイバーディーヴァ)がいるのかはな。だが、貴様同様に最後の記憶があの時である以上、紛い者。力は本物のだろうが、本物ではないのだよ」

 

それの何処が証拠になる。何を根拠にそう言える。ボクはアシモフを睨みつける。

 

「根拠がないとでも言いたそうだな?ならば、貴様はこの世界に来た時、何を身に纏っていた?私が作り上げたフェザーで拵えた今と同じ様な戦闘服か?それにダートリーダーは?私が第七波動(セブンス)の研究をして拵えた特殊な霊石を使い、作られた装備は?全部貴様は持ち合わせていなかっただろう?貴様が纏っていた者は何の変哲も無い医療服」

 

「ッ!?」

 

ボクがこの世界に来た時の服装をピタリと言い当てるアシモフ。何故それを。アシモフもあの場に居たのか?だが、その言葉により、アシモフの妄言が現実味を帯びてくる。ボクが紛い者…本物ではない。本物のガンヴォルトの遺伝子により作られたデザイナーチャイルド。そしてボクと共にいたシアンも同様

 

「その場にいなくてもわかるんだよ、紛い者。何度も言っているだろう。貴様は私が殺し損ねたと。だからこそ、言っているんだ。貴様が紛い者であると。それに本物である筈ない最たる理由が、本物は生きて、この私と戦ったからだ」

 

「ッ!?」

 

「アメノウキハシへと続く、軌道エレベーターの中、本物の奴…本物のGVと本物の電子の謡精(サイバーディーヴァ)は死にかける事で融合を果たし、奴は再び私の前に現れた。無能力者と言う能力者を無碍に扱う者達、そして私に刃向かう存在の抹殺(デリート)。能力者と無能力者は何れ分かり合えるとありもしない未来を思い描くGV。私と奴は相容れぬ思想、故に戦った。私はその時、奴を追い詰めたものの、本物のGVと本物の電子の謡精(サイバーディーヴァ)の力に敗れた。だが、能力者と無能力者は絶対に合間見えない。私は何れ訪れる逃れられない戦いに奴が巻き込まれる事を告げ、奴へと能力者の未来を託した」

 

それはかつて、アシモフがボクに告げたその意味。その言葉の真意を知る。全てが信じがたい。だが、アシモフの言葉に現実味が帯びる。ボクの中で何かが少しずつ崩れていくのを感じる。

 

しかし、疑問も浮かぶ。アシモフの言葉が全て本当ならば何故アシモフがここに居る?

 

「貴様はそれならば私が何故生きている?そう思っているだろう?私も信じられなかったさ。私は本物のGVにより、殺された筈。なのに私は生きていて、この世界にいるのかを?私でも理解出来なかった。他国の何処か分からない場所に何故私はいるのだと。何故生きているんだと…生きていた事は喜ばしい事だが、私にとってはこの世界は地獄(ヘル)そのものだった。無能力者と言う能力者にとっての害になる存在しかいないこの世界。虫唾が走る。絶望したよ。生きているのに、何故こんな地獄を味わわなければならないのかと」

 

アシモフが憎たらしそうに語った。

 

「だが、装備も、GVが倒した七宝剣の第七波動(セブンス)能力者達の宝剣の残骸を有していた。だからこそこんな地獄(ヘル)だろうと希望を持てた。実現させるための技術も、実現させるピースが存在する事が唯一の救いだった」

 

何が原因でアシモフがこの世界に着いたのか分かりはしなかった。だが、アシモフの目的が何なのか分かった。

 

アシモフもボク同様に何故かこの世界に流れ着いた。

 

そうなれば行き着く答えは一つしかない。

 

「この世界の無能力者全てを抹殺(デリート)し、元の世界に帰る。私の目的はそれだけだ」

 

そう。アシモフもボク同様に世界へ帰ると言う目的。だが、アシモフの目的にはこの世界の破滅させる事も含まれていた。

 

第七波動(セブンス)を宿したネフィリム、そして電子の謡精(サイバーディーヴァ)。それに必要な適合者。既に算段は付いている。だが、このまま帰るわけには行かない。やらなければならない事がまだある。保険(バックアップ)も用意しなければならない。そして貴様を確実に殺す(デリート)。そしてこの世界の無能力者の消滅(ヴァニッシュ)。それを行おうとまだ必要なものがある。新たな拠点となる地を手に入れる。元の世界の作り上げたフェザーは本物のGVの所為でどうなっているか分からないからな」

 

この世界を壊そうとするアシモフ。そして既に帰る算段を既に整えたアシモフ。そうはさせない。だが、ボロボロの身体。そしてアシモフの言葉に現実味が帯びた事で、迷いが、疑心がボクの行動を、蒼き雷霆(アームドブルー)の能力を阻害する。

 

本当にボクはガンヴォルトなのか。アシモフの言っている事が正しいのか。

 

「貴様の蒼き雷霆(アームドブルー)の力が弱まっているのを感じる。生まれた迷いが。疑心が。貴様の第七波動(セブンス)弱体化(デバフ)させているのが、貴様の表情を見て伝わってくるぞ」

 

アシモフはボクを見下ろしながらそう言った。

 

「だが、それで良い。今の貴様が何を隠そうとしていようが、ボロボロの身体、そして弱体化(デバフ)した蒼き雷霆(アームドブルー)では何も出来ないだろう」

 

そう言ったアシモフは手に持った銃を戻し、そして何度もボクを追い詰めてきた銃弾、強欲なる簒奪者(グリードスナッチャー)が装填された銃を取り出した。

 

「ようやく私の残した汚点を消せる。本当に不快だった。だが、もう終わりだ。サヨナラだ(アスタラビスタ)

 

そう言ってボクに向けてアシモフが再び凶弾を胸へと放たれた。弱まっていた蒼き雷霆(アームドブルー)が完全に消えていく感じがする。それと共に打ち込まれた弾丸の衝撃がボクの身体を襲いかかる。

 

「ダメ押しだ」

 

アシモフはそう言ってボクへと向けてネフィリムの心臓を巻いた腕を翳すと亜空孔(ワームホール)が開き、その穴へと落下する。

 

「海の藻屑となれ、紛い者」

 

そして水に落ちる感覚。そしてすぐに自分の身体が完全に水に浸かる感覚。

 

そしてアシモフは亜空孔(ワームホール)を閉じた。

 

アシモフだけが残るエレベーターシャフト。

 

「私の残した汚点も漸く無くなった。始めよう。最後に必要な(ピース)。フロンティアを起動させよう」

 

そう言ってアシモフは銃をしまい、何かスイッチを取り出すと再び爆発を起こした。

 

「待っていろよ、GV」

 

アシモフはそう言い残してエレベーターシャフトの壁に亜空孔(ワームホール)で穴を開けるとその中へと消えていった。

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