潜水艦の本部、装者達をそれぞれ待機させた弦十郎達はアシモフの居場所の捜索を行なっていた。
だが、七年もの間隠れ続けて殆どの情報のなかった相手の捜索は難航を極めていた。
だがそれでも懸命に捜索を行う。
これ以上アシモフの好きにさせない為だ。もうアシモフに何も奪わせない。全てを取り戻す為に。救い出す為に。
シアン、未来、それにアシモフにより無理矢理戦いに身を当じらせられるF.I.S.の三人とその人質の為に。
「…アシモフ…何処に消えた…お前だけは」
弦十郎もオペレーターに混じり、どんな些細な手掛かりだろうと懸命に捜索を続ける。
そんな中、朔也とあおいが、衛星を経由して上空から捜索をする中、一つの不審な点を発見した。
「…これは…さっきまで何も映ってなかったよな?」
「ええ…突然現れた様に見えた。それにこの高度…通常の飛行機であれば、こんな低空で飛ばないはず…」
それは一隻の飛行物体。現代ならば飛行機であればもっと上空を飛んでいるのに対して、余りにも高度が低い。更には突然現れた所。
全てが怪しい。そして更に画像を鮮明させる事により、その飛行物体、いや、輸送機を見て、見つけたと叫んだ。
「司令!アシモフの搭乗していると思われる輸送機を発見しました!」
「なんだと!?」
直ぐ様あおいが司令室のメインモニターに接続し、輸送機を映し出した。
その輸送機に初めて見る。だが、初めて見る事になろうとも、その輸送機は既に知っていた。
かつてガンヴォルトが入手した帳簿。その中に書かれていた購入された輸送機の
だが、それだけの理由では弱い。しかし、此方は日本を常に影から守り続けていた組織、機動二課。情報収集は既に済ませてある。
アシモフが、アッシュボルトと名乗っていた際に購入した以外の作成された機体の位置は全て把握している。
だからこそ、今現れた機体がアシモフが使っている機体だと確信した。
「アシモフの奴は何処に向かっている!?」
弦十郎は直ぐにアシモフの行き先を探る為に朔也とあおいに問いかける。
直ぐ様座標とアシモフが乗っていると思われる輸送機の進路からアシモフが何処に向かうのか割り出す二人。
そしてアシモフを乗っていると思われる輸送機は真っ直ぐに米国政府が軍事演習を行なっている海域に向かっている事を突き止めた。
「アシモフの目的は昨日から米国政府が日本海域で行なっている軍事演習場に向かっています!」
「先日のスカイタワーで米国政府が絡んでいた事は情報で掴んでいるが、何のつもりだ?」
かつてのスカイタワーの件、ガンヴォルトがアシモフと戦闘の前に捕らえた男達が我が国の政府に隠れ、何かをしようとしていた米国政府の人間と既に掴んでいる。
だが、既に政府同士のやり取りである為に機動二課は手出しが出来ず、国防省の斯波田事務次官に任せている。
アシモフの事線にでも触れたのか、米国政府自体をアシモフが狙うなど何かあるのか?いや、そもそも何故今になって姿を現した?罠か?そもそもあれにアシモフが乗っているのか?
考えた所で何も思いつかない弦十郎はとにかく、アシモフへの手掛かりが見つかった。ならば、やる事など変わらない。
「アシモフ…何をしようとしているか知らんが、今度こそお前の全てを終わらせてやる」
そう呟くと共に艦内に召集の警報が鳴らす。
それと共に装者達が司令室へと集まった。
「旦那!アシモフが見つかったのか!?」
急な召集の意味を理解している装者達。代表して奏が弦十郎へと言った。
「ああ、どうやらアシモフの方から尻尾を出した様だ」
そう言って弦十郎が装者達にメインモニターを見る様に促す。
そこに映し出された輸送機。それにアシモフが乗っている可能性があると説明する。
「あそこに野郎共が!」
クリスはモニターに映る輸送機を見てそこにソロモンの杖を扱うウェルが乗っている、そしてガンヴォルトを苦しませ続けたアシモフが乗っているのかと睨み付けた。
「まだ可能性の段階だ。あの機体には完全なオートパイロットなどの機能は付いていない。その為F.I.S.、そしてウェル博士、アシモフ。誰かしら乗っているだろう」
「アシモフが乗っていなくとも、あれさえ奪えば、アシモフの手掛かりになる」
「そうすれば、未来やシアンちゃんの足取りも掴めるって事ですね?」
翼と響の言葉に弦十郎が頷く。
「だが、戦闘は避けられないだろう。F.I.S.の三人は誰かを人質に捉えられ、アシモフに戦闘を強要されている可能性が大いにある。それにウェル博士。あの男は完全にアシモフ側だ。装者同士の戦闘でソロモンの杖でノイズを呼び出し、戦闘に参加するだろう。それに、シンフォギアの出力を落とす未だ解析の終わっていないガスもある。だが、最も注意しなければならないのはアシモフの存在だ。そこにアシモフが戦闘に参加となれば劣勢を強いられる」
全ての戦闘に念頭を置かなければならないアシモフの存在。居ても厄介。居なくてもその存在がチラつくだけでも厄介。
それでいて戦闘に参加すれば、
「それに、奏は命を。翼とクリス君はその身をアシモフに狙われといる事を忘れるな」
そう。アシモフは更には狙っているものが多すぎる。それも厄介事の一つである事を装者達へと通達する。
「分かっているさ、旦那。だから、私達全員無事に帰るよ。ガンヴォルトと約束してるからな」
「私達はどんな状況でも、任務を遂行して必ず帰ります」
「ああ。無事に帰らなきゃ意味がない。誰か一人でも欠ければあいつに会わせる顔がない」
既に三人は覚悟を決めている。そこにそれ以上の口出しは野暮だろう。だからこそ、弦十郎は三人に向けて命令を下す。
「全員無事に任務を終わらせて無事に帰ってくる事。確実にここで終わらせるぞ!」
その言葉に三人は頷いた。そして三人は出撃の為に司令室から急いで出て行く。
唯一装者でありながら、戦えない響はそんな三人の背中を見送る事しか出来ない。
分かっている。自分はもう戦える状況でもないのだから。
「みんな…」
だが、もし。もしも危うい状況になるのならば、誰かをアシモフにより何かを奪われるからないなら、弦十郎の命令を無視してでも出撃すること誓いながら。
◇◇◇◇◇◇
海上を飛行中の輸送機。操縦室では米国政府からの勧告がなされていた。
だが、何処の国かも分からぬ輸送機。米国政府はたった一度の退避の勧告を聞かぬなら撃ち落とすと命令してくる。
だが、アシモフはマリアに無視する様に言って更にスピードを上げさせて海域へと侵入する。
そして勧告を無視したとして米国政府は輸送機へと向けて対空砲を放つ。
威嚇射撃などではなく、確実に撃墜する為の攻撃。
だが、アシモフはネフィリムの心臓を起動させて、輸送機に向けて放たれた砲撃を全て
米国政府達も返された事により無線から阿鼻叫喚の声が機内に響き渡る。
マリアはその叫びを聞き、唇を噛み締め、切歌と調はそれを聞きたくない為に耳を塞ぐ。
そして無線越しからアシモフの存在を察した米国政府は救援要請を日本政府と付近の米軍基地へと出していた。
「さて、これで機動二課をこの地に呼び寄せる事が出来る。二課が来るまでの時間。可能な限り
「でも良いのかい?アッシュも話してたけど、海上であれば、アッシュの能力は扱い辛いし」
ウェルはアシモフの計画に賛成の様だが、アシモフの事を心配してそう言った。
「安心しろ。私自ら戦場へと足を運ぶのは機が来た時だ。それまではこの二人とノイズで掃討すればいい」
そう言ってアシモフは切歌と調へと視線を向けた。
「アシモフ!私が行く!だからこの子達は!」
「代案か?それでも良いが、そうすればこの二人は用済みで殺した後に貴様を出すだけだ」
非情な発言にマリアは唇から血が滲む程噛み締める。二人にそうさせない様に発言したが、それが逆に自身の首を絞める事になる事になり、それ以上何も言えなくなる。
「…分かった…」
「…了解デス…」
マリアの気持ちを察した切歌と調はアシモフの言う通りにするしかないとそう答えた。
「ッ!?」
「心配しないで、マリア」
「何れこうなったんです…もうとっくに覚悟は決めているデスよ…」
暗い表情の二人はマリアに向けてそう言った。マリアはさせたくなかった。二人には己が手で人を殺めてほしくなかったはずなのに。
マリアはそんな二人にかける言葉が見つからなかった。
「答えが出ている様ならば急げ。死にたくなければ殺せ。それが貴様達の生きる道なのだからな」
アシモフは非情な言葉を投げかける。二人は不服そうにしながらも従うしか生きる道が無く、聖詠を歌い、シンフォギアを纏った。
それを見たアシモフはネフィリムの心臓を起動させると二人の立つ床と海上に浮かぶ、軍艦の甲板へと
「じゃあ僕も早速やるとしますかね」
ウェルもアシモフが二人を送り込んだ事を確認すると共に、ソロモンの杖を起動させるとノイズ達を甲板の上に大量に召喚させた。
そしてそれ確認すると共にアシモフは無線で二人へと命令を下した。
「貴様達に下す命令は先程と同様だ。
その言葉と共にウェルがノイズを使い、攻撃を開始しようとした。
だが、その瞬間。命令を下したと共に米国政府の軍艦の甲板に向けて海中から何かが飛び出す。
飛び出した何か。
それは甲板に衝突する前に三つに割れて、中から何か飛び出した。
「想定以上に早い到着だな。機動二課」
アシモフはそう呟くと共に、甲板に三つの影、赤、青、黄の影が召喚されたノイズを倒しながら甲板に降り立つのを見てそう呟いた。
そう。アシモフの言う通り、その影の正体は機動二課に所属する装者。
天羽奏、風鳴翼、雪音クリスの三人であった。
「立花響はいない様だけど何故だろう?戦力を投下するなら今ここで出すべきだろうに?」
響がいない事をウェルが訝しんでいる。
「立花響はほぼ戦闘不能に近い状態なのだろう。かつて暴走していた事から、戦力として外している。それにあの状態になれば制御が効かん。そうなれば自滅するのが目に見えているのだろうな」
アシモフは自分が分析した事をウェルに伝える。それでウェルもかつての戦闘で絶唱を受け止めた際の響の状態を思い出し、納得していた。
「居ないならば居ないでいい。さて、私は機が来ればすぐに出る。Dr.ウェルもタイミングを見計らい、奴等に絶望を見せてやれ」
アシモフはそう言って、ウェルはそれに了解と返す。
そしてアシモフは戦況を見ながら自分がいつ出れば確実なのか樹を待つのであった。